【215話】女王の思惑、新王朝の血統
黄葉離宮の浴室に二人の美女が全裸で向かい合っている。 キャルルとセラフィーナ以外、この場には誰もいない。互いに陰部を隠さず、恥じらいなく堂々と見せひけらかす。後宮ハーレムで皇帝の夜伽役を一度でも経験すれば、粗末な羞恥心など掻き消える。普段は真面目に職務をこなす堅物の上級妃であっても、夜の愉しみでは豹変するものだ。「ふ~ん。たしかにベルゼフリート陛下が好きそうなエロいオッパイして...
【214話】直行直帰の幼帝はご機嫌斜め
ベルゼフリートはキングサイズのベッドを一人で占領していた。 左右に身体を転がし、存分にくつろいでいる。 小さな体躯も相まって、可愛らしい稚児の仕草に見えてしまう。だが、当人は頬を膨らませ、ご機嫌斜めの恐ろしげな主君を演じていた。「せっかくの外出だったのに!」 わざとらしい口調を心がけた。流し目で警務女官の反応を伺う。だが、視線の先にいた相手が悪かった。「...
【213話】融資条件
客間で待たされている特級冒険者ネクロフェッサーはギルドマスターに助言する。「事前の打ち合わせだ。おそらく、皇帝陛下は堅苦しい挨拶や社交辞令を省くように言ってくるだろう」「皇帝陛下らしいな。噂の通りというわけか」「その通り。だが、皇帝陛下の言葉を真に受けてはならない」「⋯⋯理由は?」「今回の交渉、警務女官長ハスキーとアレキサンダー公爵家の護衛が同席する」
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【212話】ラヴァンドラ伯爵邸での家族団欒
ラヴァンドラ伯爵家は、帝都アヴァタールの一等地に屋敷を構えている。 広大な敷地を有する本邸のほか、複数の別邸がある。 帝都随一の大財閥ラヴァンドラ商会の本拠も兼ねているため、普段から大勢の商人が出入りしていた。 当主のラヴァンドラ王妃は天空城アースガルズで暮らしており、屋敷に立ち寄る機会は少ない。伯爵家の管理は執事長に委ねられている。 商会に傭兵部門はあるものの...
【211話】謁見に向けた下準備
帝国元帥レオンハルトは筋トレ用の握力ボールを握り潰した。衝撃波で部屋全体が震動する。何ごとかと隣室で控えていた秘書官の側女が執務室を覗きに来る。「何でもない。下がれ」 職務机の上には書類の山が築かれていた。いっそ、本当の山であれば、実力で消し飛ばせたかもしれない。敵を一撃で薙ぎ倒せる絶対強者であっても勝てぬ存在。それは書類仕事デスクワークだった。「いつになったら私の仕事...
【210話】王妃ラヴァンドラの要求
プールサイドに二つのソファベッドが並ぶ。背を預ける愛妾と王妃は、たった一人の少年を誘惑するために、肉感溢れる水着で生肌を露出させている。だが、お楽しみの時間はまだ先だ。 側女達は少し離れた場所で、主人達の対談を見守る。話し続けること、およそ十分。セラフィーナの説明が締め括られた。静かに聞いていたラヴァンドラは即答する。「分かりました。冒険者組合との話し合いがまとまったら、皇女ギ...
【209話】宮中工作
屋内プールに隣接する更衣室は複数ある。その中でも皇帝専用室は、大勢の女官が出入りできる広々とした空間だった。 ――豪華絢爛ごうかけんらん。 ――雄大豪壮ゆうだいごうそう。 華美を極めた着替え所は、厳粛な雰囲気が漂う神殿様式の装飾がちりばめられている。 ベルゼフリートは両手を腰に当てて、仁王立ちする。眺めているのはエロチックな巨大壁画。誰がどう考えても場違い。娼館...
【208話】寡黙メイドの受難
銀髪のメイドは報告書を読み終えた。「⋯⋯⋯⋯」 羊皮紙を一つの束たばにまとめ上げ、バラバラに引き千切ちぎる。一族秘伝の特殊な羊皮紙は脆い。繊維に亀裂が奔った瞬間、紙面に染み込んだインクが消えた。 高位の術式で復元されたとしても、暗号文を読み解くのは困難だ。用心深いメイドは千切った紙束をゴミ箱に入れず、灰皿で念入りに燃やし尽くした。「⋯⋯⋯⋯」 終始無言、...
【207話】大帝国の空白地帯
――熟れた淫女は喘ぐ。少年の陰茎に縋る貪欲な姿は浅あさましく、卑いやしく、穢けがらわしい。 セラフィーナは自身の不埒ふらちで俗悪な所業をよく理解している。辱めを受ける以前の清らかな国母であったのなら、淫らに堕落した今の自分を罵倒していたであろう。しかし、過去に立ち返ることはできない。 ベルゼフリートとセラフィーナの背徳的な結びつきは、より強固なものとなっていた。 敗国の...
【206話】帝都の冒険者組合にて
帝都の冒険者組合ではちょっとした騒ぎが起きていた。 ギルドマスターと特級冒険者二人が応接間に籠もっている。噂好きが盗み聞きしようと近付くが、険しい顔立ちの受付嬢が立ちはだかり、箒で蹴散らしてしまった。 廃都ヴィシュテルで上位種の魔物達が起こした大事件に、特級冒険者ネクロフェッサーは深く関与していた。冒険者であれば誰もが耳にしている。 魔物の帝都襲撃後、緊急依頼で腕利きの...