2024年 10月13日 日曜日

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〈魔法と奇跡のミスティリオン ~最強を喰らう最弱の聖導士~〉【1話】御嬢様がベタ惚れしている少年(♥)

短編小説魔法と奇跡のミスティリオン〈魔法と奇跡のミスティリオン ~最強を喰らう最弱の聖導士~〉...

あらすじ

人間族が魔法の力を授かってから三千年。

大陸随一の魔法大国であるシュトラル帝国に暮らす少年「シオン」は、生まれながらに魔法の才能がない無能力者だった。

一切の魔法が使えないシオンは老師の勧めで、聖職者の道を進み始める。

魔力を扱えぬ身であるからこそ、誰よりも大聖女の恩寵を与えられたシオンは、魔法を消滅させる〈祓魔の奇跡〉の使い手になった。

悪しき魔法使いを罰する〈聖導師〉を目指すが、シオンは女癖の悪さでも有名なエロガキであった。誘われればどんな相手でも好きになって抱いてしまう色情魔の幼子。

年上の伯爵令嬢を魅了し、酒場給仕の未亡人を惚れ込ませ、古代遺跡で眠っていた謎の美女すらも――。

〈最弱の聖導師〉は〈最強の魔法使い〉を喰らい尽くす。


【1話】御嬢様がベタ惚れしている少年(♥)

「――魔法学院の推薦入学が決まった」

 伯爵家の令嬢シャーロットは、神妙な面持おももちで別れ話を切り出すように語り始めた。

 温室育ちの割りに気性の荒いお嬢様は、感情が口調に表れやすいたちだった。いわゆる激情家の部類である。その性格を雷雲と揶揄やゆする者もいる。しかし、今は意識的にたかぶる気持ちを抑え込んでいた。

 どのような感情が言葉の節々ふしぶしに込められているのか。親しい者でなければ分かりようがない。繊細な機微きびの変化を感じ取れるのは、お城の使用人でも極わずかであろう。

「私は帝都に行く。来月、生まれ育ったこのお城を⋯⋯。ジェルジオ伯爵領を去るわ」

 床には脱ぎ捨てられた衣類が散乱している。シャーロットは乱雑に落ちているドレスを裸足で踏みにじった。

 一糸まとわぬ裸体を晒すことに抵抗はなかった。

 髪結いの紐を解き、ベッドに腰掛ける。くせがついた長髪を指先でかす。寝室の光源は結晶灯の薄明かりのみ。肉体の陰影が際立ち、よりなまめかしく見える。

「へえ。そりゃ、すごいや。帝都の魔法学院。さすが我らのお嬢様。しかも、推薦入学だなんて! 伯爵様と奥方はさぞお喜びでしょうね?」

 ベッドの少年は揉み手でシャーロットを褒め讃える。さながら御用商人のお世辞だ。

「そのへりくだった馬鹿みたいな口調。やめてくれる? イラつく」

 かんに障ったシャーロットはあからさまに不機嫌な顔を浮かべる。両目を細めて睨みつけてきた。

「ごめん。ちょっとしたはあった。悪戯心さ」

「⋯⋯⋯⋯」

 目付きがいっそう険しくなった。しかし、美少女は不機嫌でも見目麗しい。

「そんな恐い顔、やめてくれって」

 おどけた少年は引きつり気味の笑みで、本当のご機嫌取りをする。

「さっきの冗談。ほんとは褒め言葉だよ。お嬢様。いや、マジでさ! 羨望と嫉妬を添加てんかしてもいいよ。お嬢様を賛頌さんしょうしまくりさ」

「はぁ。不真面目。もっと敬意を抱いてほしいわ」

「えぇ⋯⋯? さっきへりくだるなって命じたくせに⋯⋯。矛盾してない?」

「卑屈な態度が気に食わない。私はそう言ってるの」

 ジェルジオ伯爵家のご令嬢シャーロットは十八歳の若娘。当然、未婚である。由緒ゆいしょ正しい貴族家の子女なら、見合い話が一つや二つ舞い込む。帝国の成人年齢の十八歳である。シャーロットは婚約者がいてもおかしくない年頃だった。

 良家の生まれで、容姿端麗の美女。さらに帝都の魔法学院に推薦入学を請われるほどの才能。ジェルジオ伯爵の一人娘を狙う貴族の男達は大勢いた。

 なにせ、ジェルジオ伯爵家には男子がいない。婿入りすれば領地持ちの大貴族になれるのだ。家督を継げない次男や三男からすれば、何としてでも振り向かせたい話題の令嬢だった。

「あぁ、ちょっと待った。お嬢様。寝室の鍵。閉めたっけ?」

「さあ、どうせ誰も来ないでしょ」

「んー。一応、確認しとく。俺ってさ、出かけてからあかりの火を消したか気になるタイプなんだ」

 立ち上がろうとした少年をシャーロットは引き留める。

「しなくていいわ。寝室のベッドメイキングをしてるメイド達は知っているんだから。今さら気にしてどうなるわけ?」

「でもさ」

「私は別に構わないわ。噂になっても⋯⋯」

「俺は気にするよ」

 伯爵令嬢の寝室に招き入れられた少年は天井を見上げる。裸のシャーロットは愛しげに手を重ねてくる。誰かに知られれば、とんでもない醜聞。しかし、知られなければ良いだけの話でもある。

「可愛い。怯えてるの? 私との関係が恐いんだ? いっそ私が言い触らしてしまおうかしら?」

 白味かがった金髪、くすんだ碧眼、やや痩けた貧相な体付き、左右の頬に雀卵斑そばかすが散った男の子。年齢は今年で十二歳。シャーロットよりも六つ年下。少年も服を着ておらず、陰部を恥ずかしげもなく晒していた。

「やっぱ伯爵様や奥方の耳には入ってるよな。俺、どう思われてんだろ」

「どうでもいいわ。親の話はやめて。嫌いよ。?」

「反抗期真っ盛りのお嬢様と違って、俺は伯爵様と奥方を敬愛してるんでね。天涯孤独の俺を拾い上げてくださった大恩人だ。知?」

 領主に対する崇敬は本物だった。たとえ相手が娘のシャーロットであろうと胸を張って言い返せる。ジェルジオ伯爵は領民を大切にする素晴らしい貴族だ。しかし、娘は父親の偉大さを受け入れていない。

「ああ、そう⋯⋯。どうでもいい。⋯⋯ねえ? 肌寒いから早くして? 男のくせに私から誘わないと駄目なのかしら?」

 シャーロットは少年の身体を抱き寄せる。育ち盛りの豊満な女体に劣情を抱かない男子など存在しない。男根が雄々しく勃起する。

「あら? 顔が真っ赤だわ。まだ初心なところがあったのね」

 満足げに口元を歪ませたシャーロットは股を開いた。シオンの両肩に左右の手を乗せて向かい合う。そそり立つ肉棒に女陰の割れ目が触れる。腰を前後に揺らし、湧き出た愛液を擦りつける。挿入を煽るがシオンは動いてくれなかった。

「それを言うなら淑女レディであるべき、伯爵家のご令嬢が召し使いの下男に言い寄るってどうなんだ?」

「どうなんでしょうね。どう思う? 言ってみたら?」

「ん~。黙秘権を行使させてもらうよ」

「賢明だわ。口よりもこっちを動かしてくれたほうが素敵よ。女の悦ばせる技を忘れてないでしょうね?」

 美少女の艶やかな肉付きに比べ、痩せ気味の少年は肋骨が浮かび上がっている。

「シオン。貴方、また痩せてない? しっかり食べてるの?」

「よく気付いてくれた。ダイエット中なんだ。教会の教えでもあるだろ。常日頃から清貧を心掛けろってさ」

「背丈だって伸びてない。ずっとチビじゃないの」

「それは数年後のお楽しみさ。お嬢様を追い越す日は近いと思ってる。毎日欠かさず聖女様にお祈りしてるんだ。そろそろ願いが聞き届けられる頃合いさ」

「どうだか」

 指先で脇腹のみぞをなぞる。シオンと呼ばれた少年はくすぐられて身をよじり始めた。

「ちょっと、やめてよ。そんなところ触られたら。あっはははははっ⋯⋯!」

 ほがらかに白い歯を見せて大笑いする。対照的にシャーロットは深刻な表情で口を閉じていた。

「あっはははははは⋯⋯。あれ? お嬢様?」

「雰囲気をちょっとは考えなさい。これから始めるってときに大笑い。まるで子供じゃない」

「お嬢様。十二歳の少年は世間一般では子供扱いなんだぜ?」

を抱いてるときもシオンはこうなの? 物好きな女が私以外にいるなんて許せないわ」

「こう見えても教会の読師だ。愛の営みは清く誠実に対応してるよ」

「まだ読師のでしょ。不特定多数の女と肉体関係を持つ聖職者はすぐ破門されるわ」

「ルールは決めてる。人妻には手を出さない。自分より年下からの誘いは断る。聖女様に誓いを立てたんだ」

「誓われた聖女が不憫だわ。ずっと見習いのほうがよさそう。不届きな者には天罰が下るわよ。一途な心を持ちなさい」

 シャーロットは艶尻を浮かせる。陰唇で挟んで愛液をたっぷり付着させた男根の真上に座った。狙いは正確だった。亀頭がぢゅぶりと膣口を潜り抜ける。肉襞を押し退けて奥へと進む。

「まだ動かないで。暇なら乳首でも咥えてなさい」

「お生憎様だね。もう乳離れしちゃったよ」

「⋯⋯⋯⋯。酒場の給仕女は吸えて、伯爵令嬢の私が駄目な理由は?」

「え?」

「聞こえなかった? もう一度言いましょうか。酒場の給仕女は吸えて、伯爵令嬢の私が駄目な理由を教えてくださる?」

「あー。お嬢様は⋯⋯。えっと、それは⋯⋯。なぜ? 知ってるんだ⋯⋯。なんで? 誰から聞いたの?」

「騎士団の誰かが噂していたわ。シオンが酒場の給仕女に連れられて馬屋でセックスしてた話。有名みたいよ」

「へえ。なるほど⋯⋯。騎士団の誰か⋯⋯ねぇ⋯⋯! 噂の出所を突き止めて天罰を下してやる⋯⋯! お嬢様にとんでもない噂を吹き込みやがって!」

「それと、私の質問に対する答えになってないわ。どうするの? 私はシオンにとって酒場の年増女としまおんな以下なの?」

「はいっ! 読師見習いのシオン! お嬢様のオッパイを堪能させていただきます⋯⋯!!」

 シオンはシャーロットの乳房にしゃぶりついた。

「素直でよろしい。あんっ⋯⋯あぁ⋯⋯♥︎」

 とっくに破瓜を済ませた非処女のオマンコは、内部に捕らえた浮気性のオチンポに絡み付く。シャーロットは感じやすい体位に微調整する。許しを請う子犬のように乳首を甘噛みするシオンを撫でる。

「あぁ⋯⋯んっ⋯⋯! んっ⋯⋯! さっきの話、続きがあるの⋯⋯。あぁんっ⋯⋯♥︎」

 リズミカルに前後運動をしながらシャーロットは囁いてくる。吐息は熱を宿し、流れ出た愛液がシーツに染みを作った。

「酒場で働いてるアイリスのオッパイを吸ったのは⋯⋯。向こうが誘ってきたんだ。ほんと。これは聖女様に誓っていい。俺の要望じゃなくて、アイリスの性癖なんだよ。乳首を刺激されながらじゃないとイけない体質だとかで⋯⋯! 実は乳首ピアスとかしちゃってるんだ。しかも、母乳が⋯⋯! あ! これ、秘密でお願い!」

「そうじゃない。私が帝都の魔法学院に進学する話よ」

「ああ、そっち? やば。言わなくていいことを言っちゃったな。アイリスに引っぱたかれそうだ⋯⋯」

「シオンはあれを聞いて何も思わなかったわけ?」

「学校には休みだってあるんだろ。お嬢様が帰ってきたときは帝都のお土産をよろし⋯⋯。違うね。うん。導入を間違った。やりなおさせてくれ。ごほんっ! あぁっ! 寂しいなぁ! お嬢様と離ればなれになるなんて! 考えたくもないなぁ!! 俺! どうしたらいいか分かんないよ! 泣きたくなっちまうぜ!」

「心が込められてないわ。乗馬用の長鞭ながむちを取ってこようかしら?」

「下僕への体罰反対⋯⋯! ってのは冗談だとして、お嬢様がいなくなって寂しいのは本音だよ。だけどさ、どうすりゃいいのさ? お嬢様くらい才能があるなら、魔法学院で魔法を学ぶべきだ」

「そう思ってるわけね」

「二年前にも推薦入学の話はあったんだろ。アルバァンダート先生から俺はそう聞いてる」

 シオンが先生と呼ぶ老人アルバァンダートは、ジェルジオ伯爵家に古くから仕える顧問官だ。領民からも知恵者と慕われる人物で、シオンに読み書きを教えた養父でもあった。

「腹立たしいわ。アルバァンダートの耄碌もうろくはシオンに甘いみたいね。言わなくても良いことを教えて、言うべきことを黙っているわ」

「ジェルジオ伯爵領で一番の知恵者であるアルバァンダート先生をそんな風に蔑むのはお嬢様くらいだよ。俺みたいなクソガキの世話をしてくれてる。頭が上がらないうちの一人だ」

「魔法を学ぶのは家庭教師でも十分だったわ。帝都には行きたくない。第四魔法までは修得できたわ」

 シャーロットの才能は抜きん出ていた。ほぼ独学で第三魔法まで修得し、家庭教師の指導を受けて第四魔法を完璧にマスターした。

 魔法学院の非入学者でありながら〈高位魔術師〉と名乗れる位階に達した。第五魔法を修めれば〈魔導師〉となり、弟子を取ることさえできる。これは適性のある真面目な魔術師が努力と探究の末に、老境で到達する域だ。

「お嬢様は天才だ。煽てて言ってるんじゃない。客観的な事実だよ。伯爵様に仕える騎士や兵士だって、お嬢様の魔法には負けてしまう。領民なら誰だって知ってる」

 十八歳の小娘が〈高位魔術師〉に位階を進め、楽々と〈魔導師〉になろうとしている。天才の限界は当人ですら分かっていない。周囲の者達はシャーロットが第七魔法を会得し、国家に数人しかいない〈魔法使い〉の称号を授与されることを期待していた。

「俺みたいな魔力無しとは違う。ちゃんとした教育機関で魔法を学んでくれよ。ジェルジオ伯爵家の次期当主が魔法使いになってくれたら領民は鼻が高いぜ? 俺だって嬉しい」

 魔法は世界の理を歪める術。魔力を扱う御業である。はるか古代、まだ竜族が世界を支配していたドラゴンロードの時代、人間族で初めて魔法を修得した〈滅焉の大聖女〉は、使徒達に人類魔法体系を授けた。

「魔法使いは人類の導き手だ。お嬢様の才能を潰すのはもったいないよ」

 使徒達は教会を創設し、それまで竜族が独占していた魔法を人間族に広めた。強大な魔力を生まれながらに有する竜族は、例外なく魔法を使うことができた。

 一方で人間族は個人差が大きかった。適性のない魔力無者もいれば、竜族に匹敵する魔力を宿す者もいた。ドラゴンロードの圧政に抗った〈名も知れぬ魔女〉は人類の力を結集し、竜族に反乱を起こした。

「力ある強者は力無き弱者を助けなければならない。それが教会の経典に記された聖女様の御言葉だ。お嬢様が偉大な魔法使いになることを願ってる。寂しいとは思う。だけど、俺のワガママで引き留められないよ。それも本音だ」

 シオンはシャーロットの背に両手を回して抱きしめる。深い愛情を抱いている。そのことは理解してくれたはずだ。

「んっ♥︎ あぁ⋯⋯♥︎」

「お嬢様には立場がある。責任だってあるんだ。将来はシャーロット・ジェルジオ伯爵として、領地を治めなきゃいけない。魔法学院には行かなきゃ駄目さ」

 シオンは生まれつき魔力が扱えなかった。どんなに才能の無い人間でも訓練を受ければ石ころを浮かすくらいはできる。しかし、ごく稀に魔力が微塵も扱えない人間が誕生する。シオンは魔力無者と呼ばれる存在だった。

 シャーロットは底知れぬ魔力をその身に宿していた。言うなればシオンの対極に位置する存在。魔法学院の名立たる教授が「一刻も早くシャーロットを入学させ、魔法の鍛錬を始めるべきだ」と父であるジェルジオ伯爵に勧めるほどの天才児だった。

「んっ♥︎ あんっ♥︎ んっ♥︎ シオン⋯⋯! 出してっ⋯⋯! 出しなさいっ!」

「ちょっ⋯⋯!? お嬢様? 避妊薬は?」

「いいの。今日は大丈夫だから⋯⋯! はやくっ⋯⋯! 膣内なかに出してっ⋯⋯!!」

 シャーロットの言葉を信じてシオンは膣内に精子を送り出した。気高い伯爵令嬢は、身分の低い下僕の子種を迎え入れる。

(なぜお嬢様は俺を好いてくれるのだろう?)

 酒場の給仕女くらいであれば、恋愛に理由なんか必要ない。性欲の発散相手に、シオンのようなエロい少年は最適だ。ませ餓鬼ガキは遊ばれているのを承知で誘いに乗る。アイリスはシオンに性技を指導し、シオンはアイリスの持て余した肉欲を癒やす。良好なセフレの関係にあった。

 シャーロット・ジェルジオは伯爵家の一人娘だ。正真正銘の高貴なる令嬢である。情夫を寝室に呼ぶのは貴族的な道徳に反する。結婚までは純潔を守るべきであるし、婚前の性交渉は言語道断だ。

 相手が将来を誓い合った男ならまだ許される。しかし、孤児で平民のシオンと伯爵家のシャーロットが身分差を覆して結ばれる結末など、シュトラル帝国では絶対に起こりえない。

「呼ぶから」

「え? 呼ぶ? 誰を? どこに?」

 間抜けな声でシオンは問い返した。シャーロットが耳元でつぶやいた言葉の意味を考える。いくら考えても答えには辿り着けなかった。

「シオンを帝都に呼ぶ。一年生と二年生は全寮制だけど、三年生からは帝都の別邸から通うわ。身の回りの世話を任せる下僕が必要になる。もう分かるわよね? そのときにシオンも帝都に来なさい」

「俺を三年後に呼ぶってこと? 帝都に? 世話係の下僕として? お嬢様? 本気で言ってる?」

「三年? まさか。そんなにかからないわ。半年以内に呼びつけるから準備しておきなさい」

「はっ、半年!?」

 口をあんぐりと開けたシオンは、下顎したあごの使い方を瞬間的に忘れてしまった。

「私、推薦入学よ。基礎は修得済みだから一年生は飛び級、二年は実技試験に合格すればいいから、数カ月あれば三年生になれるの。どんなに長くかかっても六ヵ月で昇級できるわ」

「いくら何でも⋯⋯」

「私と暮らせるのが嬉しくないの?」

「もちろん、嬉しいけど⋯⋯。帝都の別邸で俺と同棲? 許されないだろ? こう言っちゃあれだけど⋯⋯俺とお嬢様の関係は⋯⋯。ジェルジオ伯爵領だから許されてるところがあると思うんだ。帝都は厳格な身分社会だって聞いた」

「そんなの関係ないでしょ」

「いやいや、大ありだって⋯⋯。俺は平民で、お嬢様は由緒正しい貴族の一人娘なんだぜ」

 シオンは罪悪感で結合部から目を逸らす。男根が突き刺さった伯爵令嬢の膣穴は精液を吸い上げている。純潔を早々にかなぐり捨てたオマンコは貪欲だった。種付けしている男の側が萎縮してしまう。

 精子は子宮内で解き放たれた。避妊薬を飲んでいるという言葉を信じて膣内射精したが、シャーロットの思わしげな表情を垣間見たシオンは寒気に襲われた。

「父親と母親の承諾が必要ってことなら取り付けた。あの二人は何も言いやしないわ。これまで通り黙認。小賢しいアルバァンダートは何か言いたげだったけど、あの陰湿な老人が口を出す問題じゃない」

 男根を引き抜こうとしたシオンを引き留める。無言のまま膣圧がかけられた。シャーロットはこのまま帰らせる気がなかった。

「どうやって認めさせた? まさか魔法を使って操ったんじゃ⋯⋯」

 恐ろしい推測をしてしまう。しかし、シャーロットと両親の関係を知っているシオンは、その可能性を否定できなかった。

「シオンって馬鹿?」

「天才と名乗ったことはないかな」

「人間の精神を操れるのは第六魔法よ。私はその領域には足を踏み入れていないわ。精神や魂魄を弄くれるのは大魔導師よ」

「それは良かった」

「私だったら、すぐになれるとは思うけどね」

「なぜだかお嬢様の将来が不安になってきた。聖女様に祈っておくよ。お嬢様が道を踏み外さず、道徳的な魔法使いになれますように⋯⋯!! ん? あれ? もう既に踏み外しまくってる気がしてきたぞ?」

 シャーロットはシオンの首を愛撫している。歯を突き立てて、わざと噛み跡を残す。射精のご褒美にキスマークは刻む。

「他の女との関係は清算しておきなさい。帝都にまで引っ付いてくるような女とは付き合ってないでしょうね? 私、面倒事はイヤよ。手切れ金が必要なら用立ててあげる。身綺麗になりなさい」

「そこは何とかなるけど、どうしてそこまで⋯⋯?」

 シオンはシャーロットが自分を愛してくれる理由を知りたかった。

 変わり者のお嬢様ではあるが、たった一人の男に対する入れ込み具合が異常だ。事実、シャーロットから返ってきた答えはシオンを絶句させる。

「子供を産むつもりだから。十年は領民の目が届かない帝都で暮らせるはずよ。都合がいいでしょ? あっちでシオンの子を産んであげるわ。私は三人くらい産むつもりだけど、シオンは何人欲しい?」

 茶化ちゃかす勇気はシオンになかった。シャーロットの真っ赤な瞳は炎がめらめらとともっている。有無を言わせぬプレッシャーに圧倒されてしまう。もはや既定事項であり、誰であろうとシャーロットの計画は邪魔できない。おそらくジェルジオ伯爵や夫人もこの支配者然とした気迫に屈したのだ。

「私を孕ませる回数、よく考えておきなさい。返事は待ってあげるわ」

 返答無しの無言無表情をシャーロットは承諾だと解釈した。貪るように淫らな腰使いで前後に揺すり始める。断る選択肢ははなから与えていない。たとえ他の女を抱いていようと、飼い主は自分だと主張していた。

 情けなく言葉を失ったシオンだったが、おとこの生殖機能はしっかり役目を果たしていた。射精で柔らかくなっていた男根が硬さを取り戻す。再装填された精液を搾り取るべく、道は締めつけと緩みの律動を繰り返した。

 ご機嫌なシャーロットはシオンを押し倒す。逃さぬように身体をがっしりと掴む。困惑顔のシオンを見下ろしながら、激しい肉音をかなで始める。最期の一滴まで搾り尽くすつもりだった。

「シオンを寝かせたりしないわ。どうしようもないくらい愛してるの。この世の誰よりも貴方を⋯⋯。私は貴方だけを見ているわ」

 シャーロットの口調は豊満な乳房が実った女らしい艶体だというのに、姫君を口説き落とす凜々しい貴公子だ。

 いっそシャーロットが男子で、シオンが女であったなら、青年貴族と子飼いの情婦で上手い具合に話がまとまっただろう。

(この雰囲気で考えさせてほしいって言ったら、去勢させられちゃいそうだ⋯⋯)

 昔から仲は良かった。しかし、こんなただれた関係になったのは、この数年で起きた変化だ。

 きっかけはよく分からない。話し相手になってくれた年上のお姉さんが突如豹変し、痴女となって肉体関係を猛烈に求めてきた。

 以前からシオンが気づかないだけで、アピールはされていたのかもしれない。初夜は逆レイプに近かった。乗り気じゃないシオンを強引に勃たせて、処女膜を破らせた。

(いくらなんでも子作りは⋯⋯。といっても、相談する相手がいない。あぁ! 聖女様! 俺はどうしたらいいんですか!?)

 シャーロットの父母にシオンは多大な恩義を感じている。教会に捨てられた孤児を引き取り、城で養育してくれた伯爵夫妻は命の恩人だ。

 その大事な一人娘を性欲でけがしてしまっている。良心がキシキシと締めつけられる思いだった。

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