――少年は激怒した。
必ず、かの無表情の竜王エリザベータを絶頂させねばならぬと決意した。
幼少の少年には性技が分からぬ。人間の少年、シャルンは村の牛飼いであった。
「ヤるのはいいよ! もうそこは諦めたさ! いいよ! 好きなだけセックスの相手をしてあげるよ! 僕の子供を産みたきゃ、何人でも産めばいいさ!」
「⋯⋯⋯⋯?」
「でも、なんで無表情なの!? しかも、無反応!! もうちょっとさ⋯⋯なんかあるでしょ⋯⋯」
シャルンはふかふかの羽毛枕に顔をうずめた。竜王の居城に囚われて長い歳月が経っていた。
巨大なベッドに同衾し、添い寝してくれている美女は淡々と答える。
「気持ち良かったですよ⋯⋯?」
美しく、華麗で、妖艶な女性はつぶやく。しかし、その表情は氷の仮面と称されるほど、感情が浮き出てこない。
「言葉に感情がこもってない⋯⋯!」
いじけたシャルンは背を向ける。
「そう言われましても、この顔は生まれつきです」
「⋯⋯⋯⋯むぅ」
「頬を膨らませて、シャルンはとても可愛いですね」
「⋯⋯⋯⋯僕は寝る」
「分かりました。今夜はこれで終わりにして眠りますか」
竜王エリザベータは側近から手渡された綿紗で女陰を拭い始める。
(近頃は情緒が不安定ですね。倦怠期? いえ、反抗期でしょうか⋯⋯?)
少年の小さな男根で掻き混ぜられていた膣穴は、子宮に注ぎ損ねた精液が垂れ流れている。
「残念です。子胤が入りきっていない。困りますね。シャルン、しっかり中出しをしてくれないと⋯⋯」
「そんなの知らないもん⋯⋯!」
むくれ顔のシャルンは納得していなかった。エリザベータは続きをして欲しかったが、ご機嫌斜めで不貞寝の姿勢に入ってしまった。
「仕方ありませんね⋯⋯。では、寝るとしましょう」
こうなってしまったら、世界の魔物を支配する竜王といえど、どうにもならない。エリザベータは控えていた側近に灯りを弱めろと命じる。
魔法光の灯りが煌々と輝いている間、シャルンはなかなか眠りに落ちない。だが、真っ暗闇だとエリザベータの紅瞳が恐ろしいと怖がる。なので、就寝時は完全に消灯せず、弱めに光度を下げている。
(こうも中途半端だと性欲を持て余します。子宮のムラムラが収まりません。もうちょっとアプローチしてみましょうか⋯⋯。誘ってみれば、もしかすると⋯⋯)
背を向けて寝るシャルンに、エリザベータは豊満な乳房を押し当てる。
寝るとき、二人はいつも裸体だ。よほどの事情がない限り、セックスは欠かさずに行っている。
柔肌が擦れ合う。互いの体温が伝わってくる。
「⋯⋯っ! んくっ⋯⋯! オッパイあてないでよ」
シャルンは居心地が悪そうにもぞもぞと身体を動かす。大柄なエリザベータは少年の矮躯を包み込む。試しに指先を男根に伸ばしてみる。
(反応あり⋯⋯。本気で嫌がらないのなら、このまま続けてみましょう)
少年の愛らしいオチンポを撫でる。嫌がる素振りをしているが、本気で抵抗はしていない。
(まだまだ射精できそうですね。指で扱いて、勃たせてしまえば⋯⋯)
エリザベータは鋭い爪で傷つけぬように気をつけながらオチンポを弄くり始めた。声変わり間近のショタ声でシャルンは喘ぐ。手扱きの技は配下のサキュバスから習っている。
(せっかくですし、射精の直前で挿入してもらいましょうか。世継ぎを産める機会は多ければ多いほど良いのですから)
牛飼いの少年と世界を統べる竜王が子作りをしている理由。それはシャルンの血筋に原因がある。
予言者は謳った。竜殺しの勇者、不死の竜王を殺せる英雄が誕生する。魔物を支配し、世界を手中に収めた竜王の一族は危機感を募らせた。
勇者が生まれる前に血筋を絶やす。先々代の竜王は予言を恐れるあまり、勇者の血筋を消し去ろうとした。しかし、予言の絶対性を考えれば、生まれる前に消すのは不可能だ。
――謳われた予言は必ず実現する。
不死の竜王を殺せる人間は絶対に現われる。たとえ人類を虐殺しても、生き残りから勇者は出現するのだ。
竜殺しの誕生を恐れて、不毛な大戦争を始めた先々代の竜王は追放された。そして、王位を引き継いだ穏健派の先代竜王は閃いた。
予言によれば「不死の竜王を殺せる勇者」とある。つまり、殺すとは限らない。
人間と和睦した先代竜王は、講和条約に一つの条件を加えた。
勇者の血筋を引き渡し、自分の娘と結婚させることであった。
「あっ⋯⋯! ちょっと! んぁ⋯⋯!!」
シャルンはエリザベータに引き寄せられる。ベッドがギギッと軋んだ。指先で扱かれ、射精寸前だったオチンポが膣穴に捕食される。
「やめ⋯⋯あ⋯⋯!?」
「シャルン、動いてはいけません。神聖な交わりの最中ですよ?」
エリザベータは唇に手を当てる。無表情かつ無反応。けれども分厚い膣襞は、咥え込んだシャルンの亀頭を搾精する。竜王のオマンコは子胤を吸い上げた。
「お上手です。遠慮なく、全てを出し切ってください。竜王の膣内に胤を捧げるのです」
「あ⋯⋯いぃっ⋯⋯ぁ⋯⋯!」
「素晴らしい。よく出来ました。いっぱい射精できましたね」
苦しそうに悶えるシャルンを眺める。エリザベータは鼻息すら乱れていないが、セックスの快楽は感じている。
義務感から始まった肉体関係だが、今は性的快楽を心から愉しんでいた。
(これほど愛しているのに⋯⋯)
表情筋が死んでいるのは生まれつきだ。幼少期からエリザベータはちっとも笑わず、泣きもしなかった。数百年が経ち、竜王の地位を継いでからも感情の機微が顔に表れない。
配下から恐れられることも多かった。無表情ゆえに褒めているつもりでも真意が伝わらないのだ。
(いずれにせよ、竜殺しの予言は解決したようなものです。不死の竜王を殺せる強者。敵であれば大きな脅威ですが、我が子であるのなら祖国を強大にしてくれることでしょう)
牛飼いの少年シャルンは勇者の血筋だった。シャルンの系譜から竜殺しの勇者は現われる。だから、竜王エリザベータはシャルンと交わる。
「はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯。ん⋯⋯ぁ⋯⋯。僕、はぁ⋯⋯んくゅ⋯⋯!」
「寝るには少し早かったですね。夫婦の営みを続けましょう」
エリザベータは頬を赤く染めたシャルンに口付けする。誰にも渡すつもりはなかった。勇者の血筋は綺麗で美しい。老いて死なぬように魂に縛りをかけた。
(あぁ⋯⋯。可愛い坊や。私だけの愛おしい宝物⋯⋯)
竜王たるエリザベータが存命のかぎり、シャルンは衰えず、害されることもないのだ。大竜の紅い瞳は小さな人間の少年に執着する。
◆ ◆ ◆
「今年こそはぎゃふんと言わせたい! そう! ぎゃふんと⋯⋯!! 僕は竜王エリザベータに言わせたいんだよ!!」
シャルンは門客として丁重に扱われている。拉致されてきた人間の少年だが、実質は竜王エリザベータの婿である。
「新年早々にお盛んなご様子で、大変よろしいではございませんか? 臣は大変、嬉しゅう思います」
シャルンの相談相手はニュルニュルの触手だった。中央に巨大な目玉が浮かんでいる。大書庫を管理する上級の悪魔である。
不気味な姿だったが、愛嬌のある女性だった。竜王城で暮らすようになったシャルンの教育係を命じられている。
「デビルアイさん! そうじゃなくて⋯⋯! 何かいい方法を教えてよぉ⋯⋯。竜王の弱点とかさ」
「シャルン様がおっしゃりたいことは分かっております。けれど、お相手は竜王エリザベータ様でございます。完全無欠のドラゴンロードに弱点は存在しません」
魔物の最上位種であるドラゴン族。その頂点に君臨する竜王は完全無欠のドラゴンロードと呼ばれる。
「う~ん。セックスしてるときに脇腹をくすぐったら笑ったりしないかな⋯⋯」
「さて、どうでしょうね。私は竜王様が笑ったところを見たことがありません」
異形の外見に反した落ち着いた声でデビルアイは微笑する。
「だろうね。年始宴会で大道芸をやってくれた魔物が可哀想だったよ。一昨年だったかな? エリザベータは愛想笑いすらしないんだもん。すごかったのになぁ⋯⋯。炎タイプの魔物でも冷や汗って流すんだね」
「あの炎芸は見事でしたね。新鋭の若手と聞いております。今後も頑張ってほしいですね」
年始に竜王城で催される祝賀の大宴会には、人気の曲芸師が招かれる。
昨年の年始もシャルンは披露された大道芸を大いに愉しんだ。一方、傍らのエリザベータは無表情で眺めていた。曲芸師は不興を買ってしまったのではないかと戦々恐々の思いだったろう。
「僕はエリザベータが動揺するところを見たいんだよ」
「側近達の噂話によれば、喘ぎ声が衛士の控え部屋まで聞こえてくるそうですが?」
「⋯⋯その喘ぎ声って僕のじゃない?」
「ああ、確かにそうかもしれません」
「喘がなくても、笑ったり、とにかく感情を爆発させたい。このまま僕だけがいいように弄ばれ続ける! 竜王エリザベータの澄まし顔をどうにか崩したい!」
「お熱い夫婦仲、実によろしいことでございますね。応援いたしますよ。世継ぎが多ければ、我が国も安泰でございます」
シャルンは城内であればどこでも好きな場所に行ける。連れてこられたばかりの頃は怯えて、部屋に閉じこもっていた。なにせ城の住人は魔物ばかりで、人間は一人もいない。人間の姿に化けている魔物もいるが、腕の本数が多かったり、角や翼が生えていたりする。
ちっぽけな人間が住める場所とは思えなかった。しかし、歳月は全てを解決してくれた。今や、牛飼いの少年は竜王の呼び捨てが許された唯一の者。互いを名前で呼び合う仲だ。
「ねえねえ。ドラゴンロードって本当に弱点がないの?」
「竜王様は完璧な不死でございます。不老ではありませぬが、何者も竜王様に傷を与えられません」
「でも、僕との初夜は股から血が流れてたよ?」
「自傷行為の扱いなるので、処女膜の貫通は負傷とは異なりますね。御髪を切り揃えるのと同じです」
「へえ。随分と便利で都合のいい無敵だね」
「唯一の例外は、予言で謳われる竜殺し勇者でございます」
「予言が本当かどうか怪しいけどね。⋯⋯あれ? でも、先々代の竜王を追放したって歴史の講義で言ってなかった? どうやったの?」
無敵の不死。完全無欠の竜王をどうやって追放したのだろうか。シャルンは首を傾げる。
「歴史書では追放と書かれていますが、お城の地下深くに幽閉したのですよ。任期が切れれば竜王の地位は引き継がれます」
「ふーん。まあ、別に倒すっていっても、僕が求めてるのはそういう意味じゃないし⋯⋯。そもそもエリザベータは生まれたときから、ああいう感じなんだよね?」
「そうでございますねえ。お生まれになってから、ずっとああいう感じだったかと思いますよ」
不動の鉄面皮を攻略したい。決意を昂ぶらせるシャルンだったが、妙案は得られなかった。
「休憩は終わりにして、講義の続きをしましょうか。竜王歴三世紀、七〇一年に起きたミスリル銀山の戦いでは――」
デビルアイのチョークを握った触手が凄まじい速度で動き出す。牛飼いのシャルンは教育を受けておらず、簡単な読み書きもできない有様だった。
エリザベータは家臣達にシャルンの教育を命じた。時にはエリザベータ自らが教鞭を執ることもあった。
起床後、朝食を済ませたらシャルンは授業を受ける。午後は自由時間であるが、エリザベータの近くで過ごすように言われている。
その日もデビルアイの講義を終えて、脳がくたくたに疲れたシャルンは、エリザベータの執務室で昼寝に勤しんだ。
◆ ◆ ◆
「くひゃひひ! 大書庫のデビルアイから聞きましたよォ 竜王の弱点を探っているそうですねェ。で、どうかしら? 逆鱗の剥げ落ちたドラゴンロードの倒し方は分かりましたかァ? ドラゴンスレイヤーの勇者殿! くひひっひひ!」
惰眠の絶好調を妨げられた。ネチっこく、仰々しい口調で、誰かが囁いた。いや、誰かではない。目覚めた時点でシャルンは犯人が分かっていた。
「宮廷道化師のフューラーは噂の仕入れが早いね。どこで盗み聞きしてたの?」
シャルンは柔らかなクッションに横たわるのを止める。上半身を起こし、天井を歩く淫魔族の少女に問いかける。
「盗み聞き? とんでもないっ! あたしはデビルアイから聞いたのですよォ? くひひひっ!」
宮廷道化師のフューラーは間抜けな格好だった。天井を歩いているせいで、ドレスのミニスカートが逆さまだ。卑猥な下着が丸見えになっている。
「道化師の文化は学んだけどさ。いくらなんでも、その格好は不味いんじゃない? 大事なところが見えてるよ。休みボケ?」
竜王の執務室に上がり込み、下着を露出させている淫狂の少女。宮廷道化師の身分がなければ、すぐさま衛士に摘まみ出されている。
「おやおや? お子様にセクシーランジェリーは刺激が強すぎましたかねェ♥︎」
「お子様って歳でもなくなったよ。あと、僕が言いたいのはいくらなんでも品性が欠けてるってことさ。その下着、めっちゃ透けてる」
「ほほう! 品性! おおォ! 品性とは何かな? うーん。数千年ほど生きているが、使った覚えがないねェ。あたしには不要みたいだ」
「君はそうだろうね。いっそ裸になったほうがいい。どうせ羞恥心もなさそうだし」
「おやおやぁ。スケベだねえ。女子の裸が気になるお年頃かなァ?」
フューラーはあらゆる無礼が許される。相手が竜王であろうともだ。それが貴族の文化だとシャルンは教わった。そして、戯けている宮廷道化師を軽んずるなとも警告された。
――賢いからこそ、愚者を演じられる。
先々代の竜王は竜殺しの勇者を恐れるあまり、人類との不毛な戦争に明け暮れた。
主君の怒りに触れたくなかった臣下は口を噤んだ。しかし、宮廷道化師のフューラーだけは公然と竜王を罵った。
無知蒙昧な言動の裏には隠された意味がある。
宮廷道化師フューラーは強大な魔法使いでもある。国政を顧みず、戦争に狂った竜王を幽閉した立役者。ある意味では多くの人類を救った偉大な魔物だった。
「そうだ。ねえ、フューラー! 僕の悪巧みに加担するつもりはある?」
「悪巧み? おぉ! 何を言われるかと思えばァ! あたしはそのために誕生したといっても一言ない!」
「過言ないでしょ」
「だったかもねェ。で、悪さの内容は? 世界最強の魔法使いが全力で後ずさりしてあげるよォ?」
「後押しね。竜王エリザベータの鉄面皮を剥がしてやりたいんだ」
「あぁ。なるほど。夜の営みだねェ? 悩んでるそうじゃないかァ。くひひひひっ!」
「僕はエリザベータの喘ぎ声を聞いたことがない。悔しいんだ! このままじゃやられっぱなし! 本人は『気持ち良いですよ』とか、『久しぶりに乱れてしまいました』とか、そんなことを言ってるけど⋯⋯まったく変化がないんだ!」
「くひっひひひ! シャルン君の性的な悩みは分かりましたよォ。いいでしょうともォ!耳遠い情報をお教えいたしましょうかねェ!」
「耳寄りな情報ね」
「知っていますかァ? 気の強い女はアナルが弱いのですよォ?」
「アナル? アナルセックスは何度もやってるよ。週に一回は特殊プレイの日だからね」
「ふぇ?」
「アナルにオチンポを挿れて、真っ赤になるまでエリザベータのお尻を叩くの。あれって気持ちいいのかな? あんまり反応ないから、いつまで叩けばいいのか分からないんだよね」
「――他にはどんなプレイを?」
床に降り立ったフューラーは軽薄な笑みを取り繕う。瞳の奥では淫魔にあるまじき真摯な精神が揺らめいていた。シャルンの答えは意外だった。
(まさか既に経験済みとは⋯⋯。あれェ⋯⋯? 思ったよりも随分と話のレベルが高い⋯⋯?)
シャルンの口から語られる夜の営みは、とても口外できない高水準の淫交だった。
「基礎の四十八手は当然として、えっと――」
熟達の淫魔でさえ、このレベルのセックスを経験している者は少ない。
(恐ろしい淫能⋯⋯! おそらく、あたしがこの域に達したのは二〇〇歳の後半⋯⋯!)
経験人数が竜王エリザベータしかいないため、シャルンは無自覚だった。普通の夫婦がする当たり前の子作りだと認識している。
「――って感じなんだけど、どうすればいいかな?」
(想定の三〇〇〇倍くらい竜王様がド淫乱のスケベ女だった。もはや子作りは単なる名目で、シャルン君とのセックスが好きなだけでは⋯⋯?)
フューラーは考え抜いた末、シャルンに秘薬を授けようとした。
「これは?」
「くひひひっ! 巨根薬♥︎ これを飲めば小鬼族のオチンポが棍棒サイズに膨れ上がる秘薬ですよォ♥︎」
「僕にも効果ある!?」
「ええ、もちろん♥︎ 人間にも効果はあります。これを使えばデカチンで竜王様の子宮をごときゅごきゅと突き上げられる。もうお分かりですね?」
「おおっ! すごい! これはすごいかも! ヤれる気がしてきた!!」
「デカさこそパワーなのですよォ~! 何なんら、今、ここで試してみますかァ? 私が練習相手になってあげ――」
水薬が入った小瓶を受け取ろうとした瞬間、シャルンの眼前で竜炎が上がる。
「へ⋯⋯?」
「あ、これダメなパターンだ⋯⋯。逃げたほうがいいよ。フューラー」
シャルンを保護する防衛魔法陣が起動していた。エリザベータが施した最上級魔法〈竜王の息吹〉によって、シャルンは護られている。
「そんなァ⋯⋯! ちょっ! 竜王様! 待ったァ! 毒じゃないのにィ! それとさっきのは冗談でェ! ひえええ~~!」
〈竜王の息吹〉は危険物を遠ざけ、シャルンに危害を加えようとした者を自動攻撃する。
「あちっ! あちちッ! あついっ! ひひぃい! 尻尾ぉおお! あたしの大切な尻尾が燃えちゃうよぉおっ⋯⋯!!」
フューラーの尻尾が大炎上している。窓から飛び出し、そのまま中庭の噴水に飛び込んだ。水飛沫が舞い散る。
「あーあぁー。大丈夫かな? まあ、死にはしないからいいや」
「シャルン。愚か者の道化師から危ない薬をもらってはいけません」
執務室に側近を引き連れたエリザベータが入ってきた。閣僚との会議を終えて、戻ってきたらしい。机に腰掛け、積み上がった書類の精査を始める。
「僕、あの薬が欲しかったんだけど⋯⋯」
「駄目です。あの薬は市場流通が禁止された劇薬。使ったら局部の重さで歩けなくなりますよ。淫魔族が悪ふざけで創った薬のせいで、どれだけの小鬼族が魔科医に泣きついたか、知らないのでしょう?」
「ええぇ⋯⋯。ヤバい薬じゃん」
「愚者のフューラーを頼るからですよ。良かったですね。あやうく笑いものでしたよ。お手隙ならばこちらへ。労っていただけますか?」
「肩でも揉めばいいの?」
「母乳を搾ってください。乳房の凝りというか、張りというか⋯⋯。朝に搾乳してもらわないと午後が辛いですね」
「母乳の分泌量が多いのは、むしろ搾りすぎな気もするよ」
シャルンはエリザベータの前ボタンを外す。豊満な乳房を包み込むブラジャーを外し、自分の頭より大きな巨峰と体面する。
牛飼いだったシャルンは乳搾りに慣れている。竜王の爆乳を両手で揉みながら、乳首に吸いついた。まずは右乳から搾っていく。母乳を吸われている間、エリザベータは書類仕事を進める。
「んっ⋯⋯! んんぅっ⋯⋯! んくっ⋯⋯!」
シャルンは喉を鳴らし、絶え間なく溢れ出るミルクを口内に収める。エリザベータは片手を添えて、しがみつくシャルンを抱きかかえる。その姿はさながら乳飲み子に授乳中の母親だった。
(蜂蜜が溶けた牛乳みたいに甘い⋯⋯! なんて⋯⋯優しい味⋯⋯! でっかくて、すごい量だ⋯⋯。溺れちゃいそうだ まだ右乳の半分も吸い出せてないのに⋯⋯!)
乳房の張りはまだ健在だ。乳腺にたっぷりと貯えられている。全てを飲み尽くすのも一苦労だ。
「んうっ⋯⋯んぢゅ⋯⋯んっ⋯⋯! んふぅっ⋯⋯ふぅっ⋯⋯」
乳房にしゃぶりつくシャルンは上目遣いで、エリザベータの表情を覗う。
いつも通りの無表情。空いている右手で、書類に決裁の御璽を捺している。
「竜王様。ご報告⋯⋯が⋯⋯ぇ⋯⋯あぁ⋯⋯! シャルン様⋯⋯! これは大変な無礼を! お取り込み中のところ、失礼いたしました! 出直してまいります!!」
執務室に入ってきた近衛騎士は、首無しのデュラハンだった。頭部の欠損に今ほど感謝した瞬間はない。爆乳を露わにした主君が寵児を可愛がっている真っ只中だった。
「構いません。報告をどうぞ? 急ぎなのでしょう?」
エリザベータは眉一つ動かさず、普段通りの冷静沈着な態度で近衛騎士を引き留める。来訪者に気付いたシャルンは乳吸いを中断しようとしたが、エリザベータは続けさせた。
「ですが⋯⋯」
「こちらにはお構いなく。私もシャルンも気にしません。それで? 報告とは何ですか? 中庭の噴水で宮廷道化師フューラーが泳いでる件であれば放っておきなさい。古き時代から生きる大淫魔です。〈竜王の息吹〉でも死にはしないでしょう」
「第七王女ミウ殿下の啼泣が収まらず、女官達の手に負えないようです。黄昏宮で小火が起きています。消火活動に騎士団を出動させたいのですが⋯⋯」
「ミウ⋯⋯。一昨年の暮れに卵から孵った娘ですね。あの子はいつも騒動を起こす。元気なのは良いことですが、有り余りすぎるのは考えものです。誰に似たのでしょうね?」
エリザベータはシャルンの髪を愛おしげに撫でる。二人の間には両手で数え切れないほどの子供が生まれていた。産み落とした子供の世話は女官に任せ、竜王は国政と子産みに励んでいる。
「んっ⋯⋯! くぅ⋯⋯んぁぱぁ⋯⋯。ふはぁふぅ⋯⋯。ママの母乳が欲しいとかじゃないの? 僕が今、飲んじゃってるけどさ」
シャルンはやっと右乳の母乳を絞り終わった。
「上の兄姉は乳母で満足していますけれどね。私の母乳はシャルンにしかあげられません。シャルンも我が子とはいえ、私の母乳を取られたくはないでしょうし⋯⋯」
「いや、そんなことないけど⋯⋯。そもそも母乳はパパじゃなくて、子供達が吸うものだよ」
「ええ、もちろん、分かっています。安心してください。私の乳房はシャルンだけの独占物。誰にもあげたりはしませんよ」
「おかしいなー。会話が噛み合ってないなー。伝わってないな~」
「手と口が止まっていますよ。もう片方も吸い尽くしてください」
「んぎゅ⋯⋯んぶぁっ⋯⋯!?」
左の乳房を押し当てられて、シャルンは口を封じられる。
「騎士団の出動を許可します。竜火を抑えきれないときは、宮廷道化師フューラーを働かせなさい」
「御意! それは行って参ります」
「赤子とはいえ、私の子供です。怪我をしないようにお気を付けて」
首無し騎士はそそくさと執務室を退出する。
「ドラゴン族は子を滅多に産まないのですが、シャルンの子胤は特別ですね。さすがは竜殺しの血脈。竜の支配者たるドラゴンロードの子宮を容易く孕ませる⋯⋯。まるで家畜胎のように⋯⋯。一〇〇年と経たずに、私を子沢山の母親にしてくれた。まだまだ私達は子孫を増やせそうです」
エリザベータの竜瞳に紅蓮の炎が灯る。豊潤な魔力が母乳を介して、シャルンの肉体に流入する。強制的にオチンポを勃起させる。
(やばいっ⋯⋯これ⋯⋯。エリザベータが僕のオチンポをいじくってくる⋯⋯! 母乳から口を外せない⋯⋯。あぁっ⋯⋯射精させる気だ⋯⋯。ズボンだけじゃなくて、下着も脱がされちゃった⋯⋯!)
長い人差し指が陰嚢の皺をなぞる。気を利かせた側近達は執務室から退去し、エリザベータとシャルンは二人っきりになる。
「挿れたいですか?」
暴発寸前のオチンポを握り締め、エリザベータは問いかける。
「ぅん⋯⋯。あぁ⋯⋯はぁはぁ⋯⋯挿れたいよ⋯⋯」
母乳の魔力で酔わされたシャルンは頷いた。
「抱き合いましょう。ほら、恥ずかしがらずに⋯⋯」
エリザベータは両目を細める。鉄面皮の彼女なりの笑みだった。
ショーツをずらし、挿入の経路を導く。淫熱で暖められたオマンコにシャルンは亀頭を沈める。
「はぁ⋯⋯んぅっ⋯⋯あ⋯⋯っ!」
根元まで挿入した瞬間、シャルンは射精した。
執務室の豪奢に椅子に腰掛けるエリザベータは、両脚を開いて抱きしめる。ビクビクと身体を震わせるシャルンを褒める。
「ちゃんと膣内に出せましたね。偉いですよ。立派な父君ですね」
「はぁ⋯⋯んぅ⋯⋯はぁ⋯⋯。動いていい? 射精してるのに⋯⋯ちっとも鎮まらない⋯⋯。まだ夜じゃないけど⋯⋯ヤりたい⋯⋯。エリザベータとセックスしたい すごく⋯⋯昂ぶってる⋯⋯」
「構いませんよ。私達は夫婦なのですから。今年もシャルンの子を産ませてください。元気のいい竜の赤子を授けて⋯⋯♥︎」
乳間に顔面をうずめたシャルンはいつも気付かない。無我夢中で腰を振るう。エリザベータは口元を釣り上げ、鋭い竜牙を露わにして笑う。
竜王は幸福だった。自分を孕ませようと必死になっている人間の少年が愛おしい。世界の覇者たるドラゴンロードが脆弱な子供に犯されている。堪らなく興奮するのだ。
(あぁ⋯⋯♥︎ 愛しい♥︎ 恋しい♥︎ 慕わしい♥︎ シャルンは誰にも渡さない。誰にも⋯⋯。血を分けた我が子達⋯⋯。息子や娘にさえ、分け与えたりはしない♥︎ 絶対、独り占めにする♥︎ ずっと私だけを魅せていたい⋯⋯♥︎)
エリザベータが絶頂の淫悦顔を浮かべているとも知らず、シャルンは呼吸を荒げ、前後運動を加速させる。
「ん⋯⋯んぁ⋯⋯くっ⋯⋯! イけっ! イっちゃえ! 孕んじゃえ⋯⋯!!」
舌足らずな淫語で罵ってくれる。仕込んだ甲斐があったと笑みを浮かべる。
「はぁ⋯⋯んぅ⋯⋯! ん⋯⋯! はぁはぁ⋯⋯」
シャルンのオチンポが脈動する。二度目の膣内射精を優しく受け止める。濃厚な精子が子宮を駆け巡る。
「ねえ、ちゃんとイってくれた?」
「もちろん。たっぷり堪能させてもらいました」
エリザベータはいつもの鉄面皮に戻り、嘘偽りない本音を告げる。だが、シャルンは納得がいかず不満げな顔だ。中出しを決めたとき、エリザベータがアヘ顔で絶頂していたことに気付いていない。
「本当です。自信を持ってください。さあ、続けて」
「疲れたから休憩する。⋯⋯あ⋯⋯あれ? 抜けない。あっ⋯⋯うっ⋯⋯! オマンコがきつなって⋯⋯はぅ⋯⋯!! 締めないでよ⋯⋯!」
「シャルンのオチンポが美味しすぎるからですね。もっと射精してくれないと抜けそうにないです。母乳を飲んで、精気を回復してください」
「もしかしてさ⋯⋯、いや⋯⋯、もしかしなくとも発情期に入った⋯⋯?」
「かもしれません。発情期は二十年ぶりですね。政務を少しお休みして子産みに専念しましょうか。今年は幸先のよいスタートです」
「年始から積極的な理由はそういうこと⋯⋯? 母乳もたくさん出てくるわけだよ」
発情期に入ったドラゴンロードは不眠不休で交尾を続ける。不老の少年を竜王は心から愛しむ。少なくとも数ヵ月間はセックス漬けの日々となる。
「私をいっぱい絶頂させてくださいね。シャルン」
【キャラ紹介】
◆シャルン
牛飼いの少年。予言に謳われた血筋だと判明し、拉致された人間族の子供。ただし、攫われてから、そこそこの年月が経っているので、姿形は少年でも実年齢は大人。精神が幼いままなのは絶対にエリザベータが何かをしているせい。
既にエリザベータとの間に沢山の子供がいる。だけど、あまり会わせてもらえない。愛情が子供に向くのを阻止したいこと、父親の自覚で精神が成長するのをエリザベータが嫌がってるからだったりする。
本人は普通だと思っているが、えげつない性技を仕込まれている。かなりの特殊なプレイにも対応した竜王専用の夜伽相手。人間の世界に戻りたいとは思っておらず、エリザベータを喘がせるのが最近の望み。
牛飼いだったので搾乳は得意。子供を産んでからエリザベータの母乳を搾ってあげている。
◆エリザベータ
無表情、無感情、不動の鉄面皮。ゴーレムのようだと称された爆乳美女の竜王。
戦争を終わらせた父親の遺言で〈勇者の血筋〉と交わり、子を産む使命を与えられる。初夜でセックスの快楽に目覚め、子作りというより、自分の性欲を満たすためにシャルンとの営みに夢中。誰も見ていないところでは、ヤバい表情でイき狂うド淫乱である。
ショタが好みだと自覚し、シャルンを不老にしている。ショタの巨根や陰毛を認めない原理主義者。産まれた子供達に愛情はあるが、シャルンへの激重愛情に比べると微々たるもの。Hカップの乳房から溢れ出る母乳は子供には一滴も飲ませていない(もはや育児放棄⋯⋯)。
予言はどうでも良く、セックスの副産物で世継ぎを産んでいる状態。発情期のドラゴンは性欲が普段の数倍になる。
短編の描写では省かれたが、趣味は〈馬車〉の蒐集。城の地下倉庫にさまざまな馬車がコレクションされている。
◆デビルアイ
シャルンの教育係。書庫の番人。完全異形の魔物だが、極めて常識的な人。姿にビビっていたシャルンも比較的早めに馴染んだ。ただ、精神洗脳でシャルンの心的成長を遅滞させていたりする。シャルンから子供っぽさが抜けないのは、デビルアイの講義を普段から受けているせい。全ては竜王の命令によるもの。
◆フューラー
先々代竜王の凶行を止めた宮廷道化師。愚者を演じる賢者。古き時代から生きながらえる淫魔の大魔法使い。竜王に対抗できる数少ない魔物。シャルンにちょっかいを出しては、エリザベータの竜炎で焼かれている。
裏設定では魔物と人類を共存させるために、さまざまな工作をしかけていた苦労人。魔物と人類の異種交配方法を確立しようとしていたが、特に何もせずともエリザベータとシャルンの間に子供がわんさか産まれて吃驚している。