一刻の間、人狼状態のコヨトルは放心状態で動かないセドナと繋がっていた。精液を撃ち尽くし、心身を焦がすような暴力的な興奮が鎮火する。時間をかけて、コヨトルは少年の姿に戻っていった。
「はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯。うぅ⋯⋯。いた⋯⋯。頭がいてぇ⋯⋯。どうなって⋯⋯?」
正気を取り戻したコヨトルは猛烈な頭痛に苦しむ。脳が上書きされ、人狼になって侵入者を惨殺し、ムカつく女冒険者を凌辱した記憶が流れ込んでくる。
「俺は呪狼に喰い殺されて⋯⋯。いや、封魔寺院の侵入者を生贄に⋯⋯。違う⋯⋯! これは俺じゃな⋯⋯どっちだ⋯⋯分からない⋯⋯。俺は⋯⋯どうなっちまったんだ⋯⋯?」
儀式が終わり、役目を果たした祭壇は粉々に砕け散った。黒曜石の破片が周囲に散乱する。
「はぁはぁ⋯⋯。祭壇が壊れてる⋯⋯? いったいどうして⋯⋯?」
調査団の白骨体があちらこちらに転がっている。
「異人どもは全員、死んじまった⋯⋯のか⋯⋯?」
血の海だった地下祭殿が、今は血痕が一滴も残っていなかった。儀式を生き延びた者はコヨトルとセドナの二人だけ。他の人間達は降魔儀式の生贄に捧げられた。
「⋯⋯っ!」
生存を喜んだのも束の間、コヨトルは驚きで硬直した。
「なぁっ⋯⋯んな⋯⋯!?」
自分のオチンポが生暖かい柔肉に包まれている。ぬめぬめとした股の割れ目は小便臭い。汗臭さも混じった不快な匂いで思わず顔を背ける。だが、挿入したオチンポを引き抜く気にはなれなかった。
(なんでだ!? 気持ち悪い穴にオチンポを突っ込んでるのに⋯⋯すげぇ気持ちいいぞっ⋯⋯! 薄気味悪い白肌の⋯⋯! 太っちょの異人女なのに⋯⋯!!)
人狼状態時の連続射精で萎びていたオチンポが勃起する。だが、コヨトルは人間だ。男性器は元々の少年サイズに戻っていた。
「はぁはぁ⋯⋯なんか⋯⋯わかんないけど⋯⋯! おしっこ⋯⋯出したい⋯⋯!!」
真っ赤な顔のコヨトルは腰を弱々しくカクつかせて、下手っぴな前後運動を繰り返す。死体のように動かないセドナに覆いかぶさり、豊満な巨尻に押し返されぬよう、満身の力でオチンポを押し出した。
「⋯⋯あっ⋯⋯くぅ⋯⋯!! はぁはぁ⋯⋯。おしっこ⋯⋯異人女のオマンコに出しちまった⋯⋯。なにやってんだ⋯⋯おれ⋯⋯」
コヨトルは初めて自分の意思で射精した。気持ちの悪い行為だったが、性欲の本能に抗えなかった。深呼吸で息を整える。童貞卒業の興奮が冷めてくる。自分のみっともない行為が恥ずかしくなってきた。
「白い汁⋯⋯? ぬちょぬちょしてる⋯⋯これって⋯⋯。え? この白いヤツ⋯⋯。俺のオチンポが出した⋯⋯?」
引き抜いたオチンポから垂れる精液を見て、コヨトルは不思議そうにしている。
「――精液。それは『おしっこ』じゃないわ」
上体を起こしたセドナは、目元に垂れかかった自分の前髪を払いのける。大きな溜め息をつき、膣口から逆流する精液に絶望する。
「うわぁっ!? いてっ!」
腰を抜かしたコヨトルは、すっ転んで尻を石床に打ち付けた。尾骨に奔った激痛で身を捩らせ、涙目になっている。
「泣きたいのはこっちよ⋯⋯。もう⋯⋯避妊薬なんて持ってきてないわ⋯⋯。最悪。本当に最悪⋯⋯。大丈夫なんでしょうね⋯⋯これ⋯⋯」
「お前⋯⋯! なっ、なにをした? 俺に何したんだ!」
「それもこっちの台詞よ。坊やは祭壇から現れた怪物狼に憑依されて⋯⋯はぁ⋯⋯私をレイプしたの」
「れい⋯⋯ぷ⋯⋯?」
「強姦。無理やりセックスしたのよ。坊やの部族では交尾とか、性交って言ったほうが分かる? 私達は子作りしちゃったの!」
「子作り⋯⋯? げぇ⋯⋯!? 異人女に子供なんか産んでほしくないぞ!」
「ええ。そうね。私だって嫌だわ。故郷に旦那と息子がいるってのに⋯⋯。浮気じゃなくて、これは事故みたいなもんだけど⋯⋯はぁ⋯⋯もぅ⋯⋯最悪⋯⋯。未開部族のガキんちょとセックスしたなんて、家族には言えないわ。絶対に墓まで持っていく」
「お前、その刺青は⋯⋯」
コヨトルはセドナの身体を指差す。リュカテオコル族の奴隷紋様が刻まれている。朱色の刺青は、たとえ血肉が朽ちて、生まれ変わっても、誓いを果たす。けして消えぬ、魂の誓約であった。
「気付いたらこうなってた。人狼の呪いってところかしら? 刺青には意味があるんでしょ。私の身体に彫られた紋様はどんな意味があるか分かる?」
「家畜の焼き印と似てる。たぶん奴隷の印だ。もっとよく見せろ。えっと⋯⋯これは⋯⋯〈リュカテオコル族のコヨトルに絶対服従を誓う巫女〉って書いてある」
「そういうこと。だから、坊やに犯されてるとき、身体が動かなかったわけね⋯⋯。ねえ。坊や、この刺青、消せる?」
「いや、刺青は消せないだろ」
コヨトルは転がっていた冒険者の白骨体から服を剥ぎ取る。腰布で恥部を隠し、取り上げられていた自分の弓矢や短剣を取り戻す。その次に、真っ暗な地下祭殿で唯一の光源となっていた鯨油ランプを弄り始めた。
「普通の刺青じゃないんだから消す方法はあるはずだわ。それと、そのランプを傾けないで。火が消えるわよ。扱い方が分からないなら地面に置いておきなさい」
「⋯⋯うるさい。うるさい! 俺に! 命令するな! 異人女!」
コヨトルは不機嫌そうに言い返す。だが、灯りが消えれば困る。情けない気持ちになったが、言われた通りにランプを地面に置きなおした。
「はぁはぁ⋯⋯。痛っ⋯⋯。ああもう⋯⋯。利き足が折れちゃってるわ」
セドナも仲間の白骨体から遺品を漁る。学者の鞄を漁り、目当ての回復ポーションを探す。だが、襲われたときに瓶が割れて、中身がなくなっていた。
(船酔いで回復ポーションをがぶ飲みしなければ⋯⋯はぁ⋯⋯。せっかく旦那が調合してくれたのに⋯⋯)
回復ポーションを探し回ったが、収穫は得られなかった。骨折を治すような高級ポーションは、戦いの最中に使用されてしまったらしい。
「なんで⋯⋯嘘でしょ⋯⋯。なんで私の荷物だけ燃えてるのよ⋯⋯」
背負ってきたバックパックが燃え尽きていた。近くには壊れたランプが落ちている。
(あ⋯⋯! これって私が怪物に投げつけたランプ⋯⋯!)
祭壇から飛び出した呪狼は、炎に耐性があった。無意味な攻撃で、着替えが入っていた荷物を燃やしてしまった。
(しょうがないわ。仲間の遺品を漁ろう。このまま全裸で過ごしていたら、また坊やに襲われるかもしれないわ)
セドナは包帯で爆乳を覆い隠す。腰巻には大きな毛皮のマントを使った。右足の手当てには、男冒険者の大腿骨を添え木に用いる。申し訳なく思ったが、おかげで二足歩行ができるようになった。
(よしっ⋯⋯! 大斧を杖代わりにすれば歩けるわ)
立ち上がったセドナの股から白濁色の雫が滴り落ちた。膣内に射精されたコヨトルの精液が垂れている。
「⋯⋯⋯⋯」
泣き言は漏らさない。セドナは強い女だった。
身体を辱められてしまったが、命は失っていないのだ。調査団で唯一の生き残りとなった。ここで白骨体になった仲間達はクロヴィス帝国には帰れず、二度と家族と会えない。それに比べれば、強姦された程度は安いと切り替える。
「ランプは一番上の取っ手を持ちなさい。厚手の黒皮が巻いてあるところは熱くないわ。燃料は鯨油。クジラ肉から搾り取った油よ。危険なものじゃないわ。でも、防風フードのガラスは触れちゃダメよ」
セドナの助言に従って、コヨトルはランプを持ち上げる。
「⋯⋯地上に戻るわ。マッピングの地図はインクが消えてたわ。食糧は多めに持ちましょう。迷うかもしれないわ」
ダンジョンは帰路のほうが辛い道のりになる。セドナとコヨトルがいる地下祭殿は、封魔寺院の最下層だ。地上の光を拝むには三階層の迷宮を再び突破しなければならない。
「協力しましょう。私は故郷の国に帰りたい。坊やは村に戻りたいでしょう。いろいろとあったけれど、地上に戻る目的は一致してるわ。手を取り合える。坊やが私にしたことは忘れてあげる。⋯⋯私も忘れたいから」
セドナは優しく語り掛ける。しかし、コヨトルは奴隷刺青の紋様をじっと眺めていた。
「――狼の鳴き真似をしてみろ」
主人は命令した。絶対服従を誓った奴隷巫女に拒否権はない。
「アオォオォオーーーーンッ!! アォオオオオオオォォーーーーンッ!!」
セドナは四つ這いになり、雌狼になりきって鳴き声をあげる。
「下手くそ⋯⋯。それ。犬だろ」
コヨトルは滑稽な姿を晒すセドナを嘲笑する。
「ぐぅっ! 身体が勝手に! まさか⋯⋯!?」
「語り部の婆さんが言ってた通りだ。本物の奴隷は主人に逆らえない。朱色の紋様は魂の誓約⋯⋯! お前は俺の命令に歯向かえない! 絶対服従なんだ!」
「やめなさい。後悔するわよ。せっかく歩み寄ってあげたのに⋯⋯!」
「うるさい! 恩着せがましいにも程があるぞ。そもそもお前らのせいで、俺は無理やり連れてこられたんだ。俺の奴隷としてこき使ってやる。俺を出口まで案内しろ。それが次の命令だ!!」
肉体に呪狼の力が宿っていた。勝ち誇った表情のコヨトルは、餓狼の大口で笑う。両端の口角が裂けて、人喰い狼の牙が見えた。生えてきた狼の尻尾を嬉しそうに振っている。
「分かったわ⋯⋯っ⋯⋯! くぅっ⋯⋯!」
こうして女冒険者セドナの奴隷生活が幕を開けた。
