作品紹介
河出文庫から『官能小説「擬声語・擬態語」用例辞典』が8月6日に発売された。
今回発売された辞典は、『オノマトペは面白い 官能小説の擬声語・擬態語辞典』(2012年刊行)の改題・新装版。 編者の永田守弘さんは、1933年生まれの官能小説評論家。
2020年にこの世を去ったが、生前は50年以上に渡って年間約300編の官能小説を読みこなした官能小説界の第一人者。最新作品の蒐集も常に怠らなかった永田さんが、およそ700冊近い官能小説群から採取して編纂した。
男女の身体の部位別に、さまざまな場面で表現された擬声語・擬態語のバリエーションの豊穣さ、日本語の面白さに読者は心底驚かされる。
読み物としても楽しめるが、好評発売中の姉妹編『官能小説「絶頂」表現用語用例辞典』と同様に、小説、漫画、映像作品などを創作するクリエイターにとって絶好の資料となる。エロ小説家・BL作家に強くオススメしたい。官能表現の厚みを持たせる必携の資料本。
編者・永田守弘より
(序文より一部抜粋)
官能小説のオノマトペ(擬声語・擬態語)は、いわば格別の世界だろう。とにかく多彩で、情感と迫力があって、面白く、楽しい。読み慣れていくほど、かなりオーバー気味の用法、こそばゆい違和感への抵抗も薄らいで、味わいが出る。
格別の世界という理由の一つは、文芸の一般的な文章作法では、オノマトペの多用はよくない、とされていることにもある。文章読本などでは、多用は慎重にとか、なるべく使わないようにとか、戒められていたりする。
それが、官能小説では、まるで事情が違う。オノマトペのない文章はワサビのない鮨のようだ、と言われるぐらいに、よく効いて、淫心をかきたてる。オノマトペの使い方で、読者の淫情がまるで違ってくるほど、肝要な役目を果たしている。
だからといって、オノマトペを多用すればいいとか、官能小説では使い方がやさしい、というわけではない。効果的に、しかもなるべくユニークな、新鮮味のある感覚で使おうとすると、作家にはそれぞれ苦心が必要とされる。
永田 守弘(ながた・もりひろ)
1933-2020年。東京生まれ。半世紀以上にわたり官能小説を読みこなし、新聞、雑誌などに紹介してきたこの分野の第一人者。古今東西のポルノにも精通。『官能小説用語表現辞典』『官能の淫髄』など著書多数。
編者 | 永田守弘 |
ページ数 | 432ページ |
価格 | ¥1,100 税込 |
発行日 | 発売日:2024.08.06 |
三紋昨夏からの一言
姉妹書の「官能小説用語表現辞典」を電書で持っていますが、紙版での購入を強くオススメします。事典・辞書は紙媒体のほうが調べ物に向いています。編者が異なりますが、「いろごと辞典 (角川ソフィア文庫) 」も類書としてオススメです。