「困った。どうしよう。うーん。とっても困ったことになった」
無理難題を命じられたオロバス。魔王が帰った後、眉間に皺を寄せ、悩んでいた。
魔族は魔王に従う。その仕組みに理屈や道理は不要だ。どれだけ意に反する命令であろうと、魔族は魔王の命令を忠実に実行する種族なのだ。
「魔王様が停戦と言っているからには⋯⋯しょうが無いけどもさ〜」
敬愛する実父アスバシールを殺した勇者エニスク。オロバスは勇者を憎悪している。
可能ならば、この手で殺してやりたい。けれど、幼年の自分にその力がないことは知っていた。
「勇者の力は想像を絶する。僕の父上だけでなく、他の大幹部も沢山殺された。若輩の僕が戦って勝てる相手じゃない。少なくとも今は無理だ。だからこそ、勇者の母親に獣魔を産ませる計画を進めていたのに⋯⋯」
亡き父が身命を捧げて、人類領から拉致した勇者の母親ルミターニャ・ヴァリエンテを己の子胤で孕ませた。
(勇者の血——。ヴァリエンテ家の血統を恐れる魔族は多かった。血を絶やすべきだという意見は今でも根強い。でも、僕は利用すべきだと思う。根絶するのではなく屈服させる。ヴァリエンテ家の血脈は特別だ。それなら、特性を利用すればいい)
勇者を殺す唯一無二の方法。オロバスはそう考えていた。
馬頭鬼族の内部でも賛否は分かれた。勇者を産んだ母親に、勇者を殺す獣魔戦士を産ませる。突飛な計画であったし、当主となったばかりのオロバスには酷な役目だと、年長者からの反発は強かった。
(障害となっている勇者エニスクを殺し、人類領を征服する。それが僕ら魔族の悲願。勇者を殺せるなら、僕はどんな仕事だってやる覚悟だった)
拉致したルミターニャを殺すのはいつでもできる。そもそも勇者に勝てる可能性があるのなら、試してみるべきだ。
オロバスはこの4年間、ルミターニャを孕ませ、子を産ませることだけに時間と労力を注いだ。立ちはだかる様々な問題を突破し、オロバスの種でルミターニャは多くの子を産み落とした。
そして、ついに魔王に報告する段階まで辿り着いた。その矢先、停戦協定の話が降って湧いた。
「その顔は何なの? ルミターニャはどうして曇った表情してるの? お前は良かったじゃん」
「⋯⋯停戦協定のことでしょうか?」
「そうだよ。戦争が終わるんだ。ルミターニャは故郷に帰れるし、息子の勇者エニスクとも会える。おめでとう。停戦協定のせいで、僕が進めていた勇者殺しの計画は破綻した。最悪の気分だね。だけど、お前は良いこと尽くしだろ?」
「人間と魔族の戦争が終わったのは喜ばしいです。これで戦場にいる息子のエニスクが傷つくこともなくなる⋯⋯。それに⋯⋯血の繋がった我が子同士が殺し合うことも⋯⋯」
ルミターニャは産んだばかりの乳児達に母乳を与えていた。肉体が変貌しようとも、心根に宿る生来の本質は揺るがない。
陵辱による妊娠と出産。ルミターニャは勇者の母親であると同時に、魔族の母親ともなってしまった。
(まさか子どもをこんな形で産むことになるなんて。しかも、相手は魔族。夫を殺した魔族の息子と、私は子どもを作ってしまっている)
ルミターニャは愛する夫を馬頭鬼の大君主アスバシールに殺された。復讐に燃える勇者エニスクは、母親を拉致したアスバシールを追った。
そして、父親を殺したアスバシールを討ち取り、仇討ちを成し遂げた。だが、攫われた母親を取り戻すことはできず、ルミターニャは魔王城に囚われている。
「たとえ魔族の血を引いていても、腹を痛めて産んだ私の子供達です。私は母親としての役目を果たしたいのです」
馬頭鬼は性別で容姿が異なる。雄は名の通り、鬼角が二本生えた馬の頭を持つ。
雌はより人間に近い容姿で、鬼角が一本と馬耳、たてがみが背骨に沿って生えている。
雌雄どちらも胴体部は人間と変わらないが、下半身は馬の両脚だ。
「母親の役目?」
「健やかに育ってほしいと願っています。子供が戦争に行くほど悲しいことはありません。子の幸せは望む。親であれば当然です。私が産んだのは⋯⋯オロバス様の子どもでもあるのですよ。父君として子に愛情を抱かれないのですか?」
ルミターニャの双乳にしゃぶりつき、母乳を吸う2匹の乳児。母親と同じ真っ黒な体毛の馬頭鬼であった。
「子どもには何の罪もありません。平和な世界で幸せに生きてほしい。親のしがらみ、恨み辛みを受け継がせたくはないのです。だって、そんなものは子ども達には、まったく関係ないのですから」
ほんの数時間前、視察に訪れた魔王の眼前でルミターニャが出産した7匹の乳児達。ルミターニャが両手に2匹ずつ抱えて、順番に乳を吸わせている。
たとえ陵辱の末に孕まされ、無理やり産まされた怪物の子であろうと、ルミターニャは母親としての自覚を忘れない。
「は? なにそれ⋯⋯? よく分からないや⋯⋯。お前に産ませたのは勇者を殺すための獣魔でしかないよ?」
魔族であるオロバスは、ルミターニャの人間的な母性愛が理解できなかった。
戦死したアスバシールの跡を継いだ幼き魔族オロバスは、勇者の血脈を征服するためにルミターニャを強姦した。
魔族と人間は掛け離れた生き物である。そのため交配は不可能だと思われていた。しかし、特別な力を秘める勇者の血は、不可能を可能にした。
ルミターニャの母乳を吸った7匹の乳児は、馬頭鬼族と勇者の遺伝子を宿している。すなわち、優れた血統を受け継いだ混血の獣魔であった。
オロバスの精子とルミターニャの卵子が結合し、勇者を育てるはずだった子宮で成長した異形の魔物。
血が繋がっているのだから、当然に両親の形質を継いでいる。
勇者エニスクにとっては、実母が産んだ異父弟妹にあたる存在だった。
「惨いことを仰るのですね⋯⋯。子ども達を使い捨ての道具だと言われているように聞こえます」
「人間の社会だって身分はあるんだろ。だったら、分かりそうなもんだけどね。僕の子供でもそいつらは獣魔だよ」
「はい。分かっています。ですが、納得できようはずがありません」
ルミターニャが産んだ子供達も、大枠では馬頭鬼の魔族だ。しかし、正式に魔族と名乗れるのは一部の者だけである。
獣魔と呼ばれる奴隷身分の生まれと魔族は、扱いがまったく別となっている。
魔王が魔族を束ね、魔族が獣魔を束ねる。それは人間社会の身分制度と異なり、魔族が生まれながらに持つ生態だった。蟻や蜂などの昆虫に近い性質が本能に刻まれている。
序列が引っくり返ることは絶対にない。
「魔王様へのプレゼンは完璧だっただけに残念だ。この視察に合わせて出産日を入念に調整したのに⋯⋯」
ルミターニャは顔を赤らめる。勇者の母親が獣魔を出産する醜態を見せるため、オロバスは努力を怠らなかった。己の肉体に宿した精力の全てをルミターニャの子宮へと注ぎ込んだ。
肉体改造によって強化されたルミターニャの身体でなければ、馬頭鬼の激しい性交に耐えきれなかったはずだ。
「前線での戦闘は休戦状態。3カ月後には事実上の終戦宣言となる停戦協定が結ばれる⋯⋯。はぁ⋯⋯。魔王様が決定したなら仕方ないけどもさ。残念⋯⋯」
魔王はその全てを否定した。けれど、オロバスは反抗心を微塵も抱いていない。
父親を殺した勇者エニスクは憎い。4年間の努力が水の泡となったのは悔しい。できることなら戦争を続けて人類を殺し尽くしたい。
——だが、魔王の命令が下った。ならば、私怨は些末な事情だ。
「とにもかくにも、魔王様の命令に従わないとね。まずどこから手を付けようか⋯⋯」
「私はまた肉体改造をすることになるのでしょうか⋯⋯?」
4年間の度重なる施術で、ルミターニャの肉体は人外のものへと変貌した。だが、これから始まるのは人間の身体に戻るための改造だ。
「う〜ん。外見だけでも何とかするなら、まずは尻尾からかな? いや、肥えさせたオッパイやケツも⋯⋯?」
魔王が突きつけた無理難題。3カ月後に迫った停戦協定の調印式。その期日までにルミターニャ・ヴァリエンテを元通りの身体にして引き渡す。
これをいかに実行するかを考える。
「オロバス様⋯⋯。その⋯⋯自分自身で言うのは変なことかもしれません。しかし、この身体が元通りに直るとはとても思えません⋯⋯。この膨らんだお腹は孕み続けたせいか、ずっと膨れたままです」
出産を終えて子宮は空っぽになった。けれど、膨らんだ大きな腹は丸みを帯びたままだ。
「肉付きが良くなったせいで、体重も増えています。乳房のせいで以前よりも足下が見えにくくなりました。まるで2つの鉄球をぶら下げているようなのです」
「来る前から、そこそこデカかっただろ。俺のせいみたいに言うな」
「は、はい。⋯⋯足下は以前から見えなかったです」
二匹の我が子を抱え、肥大化した乳房からミルクを飲ませる。ルミターニャは苦笑いを浮かべた。
「⋯⋯ですが、以前よりもバストサイズが大きくなったのは本当です」
数年も経てば変貌した自身の肉体に悲哀を覚えない。それだけなら、肉付き豊かな妊婦の身体と誤魔化せる。だが、ルミターニャの尾骨からは黒毛の馬尾が生えていた。
「この変化した両脚だってそうです。蹄鉄を装着した蹄で床を踏む感覚⋯⋯。靴を履いていた頃⋯⋯、昔の歩き方を忘れてしまいました」
タップリと贅肉を蓄えた肉太の大腿、くびれを強調する突き出た巨尻、それらを支える両脚の先端は馬頭鬼の蹄となっていた。
もはや人間用の靴は履けない身体だ。ルミターニャは専用の蹄鉄を装着して生活している。
「戦争が終わるのは良いことです。私がエニスクを説得すればよいのですから、無理に身体を弄らずとも⋯⋯」
「魔王様の命令は絶対だ。お前の意見なんかどうでもいい」
オロバスは冷徹にルミターニャを突き放した。身体は馬頭鬼族の雌に近付いていても、精神までは近づけない。
(この4年間、私はずっとオロバス様の近くで生活していた。夫婦のように交わり、数え切れないほどの子を産んだ。それで分かったのは魔族と人間は、生き方があまりにも違いすぎることでした⋯⋯)
4年間の陵辱と調教でルミターニャは、オロバスの性奴隷となった。他の魔族に害されないため、馬頭鬼族の君主に仕える〈性奉仕婦〉の地位を与えられた。
勇者を憎む魔族が多い魔王城で、ルミターニャが生きながらえてきたのはオロバスの性奴隷であったからだ。
魔族は序列を遵守する。魔王軍の大幹部であり、馬頭鬼族の長オロバスに命令を下せるのは魔王だけだ。
「オロバス様。お聞かせください。私が産んだ子供達はどうなりますか?」
「どうなる⋯⋯? どうもしないよ。戦争が終わるなら、戦わせる機会がなくなる。でも、戦争が起こったときに備えて戦闘訓練させておくかな。あと一歩で勇者エニスクを殺せたんだ。牙は磨いておくべきだ」
「戦争が再び始まれば、この子達は戦場に⋯⋯?」
ルミターニャは乳飲み子を強く抱きしめる。
額から鬼角を生やした馬頭の我が子である。
馬頭鬼の怪物によって孕まされた禁忌の子。
夫との間に産まれた愛息を殺そうとする人外の幼子。
生まれ育った故郷を破壊し、夫を殺した馬頭鬼の血が混じった合いの子。
——それでもルミターニャは母であろうとした。
(夫はきっと堕落した私を許してくれない。エニスクにも忌み嫌われるかもしれない。そうだとしても私はこの子達の母親にならないと⋯⋯)
ルミターニャの母性愛は揺るがない。
薄暗い感情が皆無なわけではなかった。故郷を滅茶苦茶に破壊され、夫は馬頭鬼の大君主アスバシールに踏み殺された。そのとき、ルミターニャは憎悪した。
大切な夫を殺した化け物を恨んだ。殺してやりたいと願った。そして、息子のエニスクがアスバシールの首を刎ねたとき、ルミターニャの復讐心は満たされた。
その後、魔族領に連れてこられたルミターニャは涙を流す幼い魔族と出会った。息子のエニスクと同じくらいの少年に見えた。
——真っ赤な毛並みの馬頭鬼。
父親が凱旋すると期待して、城門で待っていたオロバスであった。血も涙もない悪逆非道に見えた魔族アスバシールにも息子がいた。
(戦争が終わるのなら、復讐の連鎖を断ち切らないと⋯⋯。子ども達のためにも⋯⋯)
ルミターニャとオロバスの関係は複雑だった。
家族を殺された仇同士がセックスをする矛盾。ルミターニャには夫を殺された恨み。オロバスには父親を殺された恨み。
ルミターニャとオロバスの子どもは、勇者エニスクへ復讐するために産み落とされた。子供同士が殺し合う運命。母であるルミターニャには耐えがたい苦痛だった。
「もう授乳はその辺でいい。子守りの時間は終わり」
オロバスは鈴を鳴らして、副官のビアンキを呼びつけた。
「失礼いたします。ご当主様」
隣室に控えていたビアンキは数秒で駆け付ける。
「ビアンキ。子どもを連れていけ。ここは育児部屋じゃない。当主の執務室だ」
「かしこまりました」
ビアンキは主人の命令を遂行する。乳児達を大きな籠にいれて回収していった。
「ビアンキ様⋯⋯。その⋯⋯まだ赤ちゃんがお乳を飲みたがってます⋯⋯。もう少しだけ」
ルミターニャは抱えている子を渡したくなかった。しかし、逆らえない。なぜなら相手は馬頭鬼族の幼主を支える副官だ。さらに経験の浅いオロバスの後見人でもある。
「ルミターニャ。子守りや子育ては貴方の仕事じゃないでしょう?」
「それは⋯⋯そうです⋯⋯」
「ご当主様は高ぶられています。陰茎が勃起しているのが分からないの? はやく癒やしてさしあげて」
同時にビアンキは正妻候補者だ。魔族の成人年齢は100歳。それまでは未熟者として扱われ、正式な妻を持てない。オロバスが100歳になったとき、正妻候補者から妻を娶る。
馬頭鬼の雌は、雄と異なり上半身が人間と変わらない。角と馬耳が生えているだけで、雄に比べると見た目は人間に近しい。
(私の身体を改造したのは、馬頭鬼の雌に近づけるため⋯⋯。肉体改造で私は馬頭鬼族の雌にされてしまった⋯⋯)
尻から生えた黒毛の馬尾や両足の蹄は、オロバスが強く求めて肉体改造を施した。オロバスはルミターニャを初めて見たとき、身体が薄気味悪いと口にしていた。
「もたもたしないでほしいわ。ルミターニャは自分の仕事をしなさい。族長を待たせるのは恥よ?」
「⋯⋯はい」
愛しの乳児を奪われ、ルミターニャは心を切り替える。性奉仕婦の仕事をするため、オロバスの足下に跪いた。
午前中に出産を終えたばかりだが、主人が望むのなら身体を差し出さなければならない。
「——偉大なる馬頭鬼の大君主オロバス様。忠実なる性奉仕婦ルミターニャにご下命賜りますようお願い申し上げます」
両脚を折りたたみ、両手と額を床に擦りつける。尻は頭部よりも上に持ち上げ、馬尾を左右に大きく振る。誠心誠意の忠愛を捧げる意思を示す性奉仕婦の所作だ。
「妊娠させるのは不味いから、アナルセックスで相手をしてよ」
「かしこまりました。悦んでアナルでご奉仕させていただきます。この場で致しますか?」
「寝室でヤる。ついて来い」
「承知いたしました」
ルミターニャを伴って、オロバスは寝室へ向かう。
性奉仕婦の役割は夜伽だ。100歳の成人に達するまで、大半の魔族は旺盛な性欲を抑えきれない。正妻が決まるまでの間、愛人となって性処理を受け持つのが性奉仕婦だ。
これは複数の正妻候補者がいるため、抜け駆けを防止する処置である。ルミターニャはオロバスとセックスし、寝室も自由に出入りできる。
一方でビアンキは寝室に近づけない。未成年のオロバスと肉体関係を持ってしまったら、正妻候補の資格を剥奪されてしまう。
性奉仕婦ルミターニャが寝室の扉が開け、族長のオロバスは堂々たる態度で入室する。室内にいるのは2匹の雌と雄だけ。ほんの少し、静寂の時間が訪れる。嵐の前の静けさにも近しい。
衣擦れの音、ベッドが軋む音、次第に物音が激しくなる。そして、数秒後には室外へと溢れ出る。
「おっ♡ おぉ〜♡ んぉおふぅ〜ぅうっ♡ んおぉぉおあおっほおぉぉぉぉおぁぁああ♡ オロバスさまぁああっ♡ しゅごぃぃい♡ オロバスさまぁあぁぁぁああ〜〜♡」
寝室の分厚い扉から漏れ出した喘ぎ声が廊下に響いた。ビアンキを含め、嬌声を耳にしても気に留める使用人はいない。
夜毎に寝室で行われている淫事は周知の事実だ。
「まだ半分しかはいってない。根元まで飲み込めっ!」
「んひぃっ♡ はいぃっ♡ ご奉仕いたしますぅ♡ でっかいズル剥けオチンポをぜんぶぅうぅ♡ アナルの奥まで挿れてくだひゃいぃぃ♡」
性奉仕婦ルミターニャは馬頭鬼族の巨根をアナルで受け止める。通常の人間なら裂けてしまう人外サイズの極太オチンポを腸内で包み込む。
「いつものは? はやく愛する家族に謝ったら?」
「ごめんなざいぃぃいっ♡ あっ、あなたぁっ♡ エニスクぅぅうぅ〜♡ 淫罪に染まった私を許ぢでぇええっ♡ んあっ♡ あんんぅふぅぅう♡」
「いつも聞こえ心地の良い綺麗事ばっかり言ってるくせに。結局のところ、ルミターニャは人間のセックスじゃ満足できなかったんだろ? この売女めっ!」
「んほぉおぉおっ♡ だってぇ、魔族のセックスぅううぅ♡ 気持ぢぃいよぎぃるのぉ! オロバス様のセックスは激しすぎるのぉおっ〜!!」
普段は冷静で大人しいルミターニャの本性が曝かれる。四つ這いのルミターニャに覆い被さったオロバスは、力いっぱいに腰を打ち込んだ。
「んぎぃおぉお⋯⋯♡」
「勇者エニスクに教えてやりたいよ。自分の母親は犯されてるとき、豚みたいな声で喘ぐってさ。イくときは宣言しろよ」
腹部は膨らんでいる。だが、子宮に胎児はいない。遠慮なく暴力的にアナルを犯す。
勇者の実母ルミターニャ・ヴァリエンテは、馬頭鬼族の幼主オロバスの男根に魅了されていた。
殺された夫を愛し、勇者に覚醒した息子エニスクを大切に思っている。だが、一方で淫悦の味を知ったルミターニャの熟れた肉体は魔族の肉棒に抗えない。
「イくっ♡ オロバスさまぁぁ♡ わたしぃ♡ イぎますぅぅぅうぅぅううぅ♡ イぐっ! イぐっ! イぐぅ! イっちゃうぅのぉおぉ♡ あうあうあうぅぅぅうぅうう〜♡」
もう元には戻れない。ルミターニャは分かりきっていた。魔族との交尾では、人間同士の性行為と比較にならない快楽を得られる。
不可逆的な肉体改造を受けたからでもなければ、四十路の差し迫る年齢でありながら、オロバスの子を出産したからでもない。
自分を守って死んだ夫を裏切り、死地で戦い続ける息子への想いさえ、この瞬間だけは断ち切る。
「あぁ♡ んぁぁああぁ⋯⋯♡ オロバス様の熱々の精子ぃい♡ 美味しいでしゅぅっ⋯⋯♡」
勇者の実母は馬頭鬼の若者と深く交わる。腸内に精子が飛び散るのを感じ、真なる絶頂へと至った。
人類の仇敵たる魔族を封じる勇者の血脈者は、その義務を投げ捨て、馬頭鬼の巨根に性奉仕を続ける。精子を搾り取ろうと巨尻を前後に振る。
「次、ルミターニャが上でいいよ⋯⋯うん⋯⋯。なんか眠くなってきた」
オロバスは仰向けに横たわった。すかさずルミターニャは肉棒に跨がり、騎乗位でのアナルセックスを行う。
激しい魔族の交尾は、夜明けまで続くかと思われた。だが、そんなことにはならない。
なぜならば、オロバスは夜10時になると眠ってしまうからだ。
「はぁはぁはぁ⋯⋯。んぅ、ふぅ⋯⋯。はぁはぁ⋯⋯。オロバスさま? あぁ♡ もうお時間なのですね? おやすみなさい。オロバスさまぁ⋯⋯♡」
汗だくのルミターニャは乱れた息を整える。眠ってしまったオロバスの頭を優しく撫で、身体を冷やさないように寄り添う。
「唇か乾いていますね⋯⋯」
装着している母乳止めのニップルピアスを外す。ミルクが湧き出した乳首をオロバスの口元へと運ぶ。深い眠りに落ちている馬頭鬼の少年は、乳房に抱き付き母乳を吸う。
「赤ちゃんと同じ。きっとオロバス様も⋯⋯この子も甘えたいはずなのに⋯⋯」
オロバスに母親はいなかった。難産だったせいでオロバスを産んだ直後に死んでしまったという。
母乳を与えるルミターニャは、幼かった頃の愛息の姿を思い出す。エニスクは乳離れが遅く、5歳になっても母乳を飲んでいた。
それはエニスクが甘えん坊だったからではなく、ルミターニャの母乳が極上の美味であったからだ。
母乳の成分は血液とほぼ同一である。そして、ヴァリエンテ家は特別な血統の一族だ。母乳を媒介として、血脈に秘められた勇者の力を得られる。
その事実を知ったオロバスは、自身の力を強めるためにルミターニャの母乳を飲み続けている。寝ている最中も飲ませるようにとオロバスは命じていた。
「たとえ憎しみ合い、分かり合えないとしても⋯⋯」
乳飲み子となったオロバスを抱きしめ、お互いの裸体を覆うように毛布を被らせる。
オロバスの性奉仕婦となってから、ルミターニャは魔族の本拠地である魔王城で4年間も生活している。
捕虜となった人間は数多くいる。だが、囚われた兵士がいる場所は、魔族領の僻地にある強制労働施設だ。ルミターニャのように地位を与えられ、共に生活している者はいない。
もっとも身近で魔族と暮らすルミターニャだからこそ思ってしまうのだ。共に生きる方法はないのかと⋯⋯。
ノクターンノベルズ連載
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