子供部屋で寝ていたジェイクは、肌寒さを感じて目を覚ました。
冷気で身体の節々が硬くなっていた。薬物で数日間も寝かされて関節が固まっている。けれど、ジェイクは自身の置かれてる状況を知らない。身体が動かしにくいとしか思わなかった。
ジェイクはぎこちなく軋む身体をほぐして起き上がった。
「うぅ……さむい……」
寒気と同時に強い空腹感に襲われた。
眠る前に何をしていたかは覚えていない。いつの間にか眠っていて、目覚めたら子供部屋にいた。
窓を見るとカーテンの隙間から月明かりが差している。
「夜……。お腹すいた。まま。まだ起きてるかな……?」
お昼寝をして、そのまま眠っていたとしても、普段なら夕食の時間に母親が起こしてくれるはずだった。だが、今日はそうならなかった。
ジェイクの胃袋は空っぽで、何でもいいから食べ物が欲しかった。
「んぁぁぁぁあぉおおっ! ぁはんああぁんぁぁあーーっ!! あふぅぅううう! ふぅーふぅうぅうぅぅう……っ! んあっ! イぐぅう! あぁっあんああああぁあああああぁぁーーー!」
ジェイクの耳が奇声を捕らえた。女性の苦しそうな叫び声が聞こえる。その声の主にジェイクは心当たりがあった。
「まま……?」
子供部屋を出たジェイクは母親がいるであろう寝室へと向かった。家の廊下は結晶灯が付いておらず、窓から入ってくる月明かりだけが光源だった。
ゆっくりと恐る恐る進んでいく。近付くにつれて聞こえる声は大きくなっていく。眠っていたジェイクは闇に目が慣れていたので転ぶこともなく、母親の奇声が聞こえる寝室まで辿り着いた。
ベッドの支柱がぎしぎしと軋む音、パンパンパンッ!と肌をぶつけ合う荒々しい打音が聞こえてくる。
「…………まま?」
母親の息苦しそうな声が寝室から漏れ出していた。ジェイクは一瞬、開けるのを躊躇した。だが、勇気を出してドアノブを捻る。
寝室の中で、実母の身に何が起こっているのか知るために覗き込む。
「んんっ! んぁああぁああァ…………!! ぁあん……っ! ひぐぅ……っ! イくぅっ! イぐぅぅうぅう……!! イっ、イィかされるぅぅぅうううううーーーっ!!」
狂獣と化した母親がベッドで叫んでいる。全裸で四つ這いになった母親は髪が乱れ、汗の飛沫が舞っている。背後から誰かに虐められている。だが、嫌がっている様子はない。
虐められているのを喜んでいた。力強く尻に打ち付けられる男の股間。母は唾液を垂らしながら笑っている。
母親の嬌態がジェイクには堪らなく不気味だった。
セックスの知識がないジェイクでも、母親のしている行為が恥ずかしいものだとは分かる。
母親に男性器を突き刺しているのが父親であれば、数年後には笑い話となる。だが、母親の相手をしている男は父親ではなかった。しかし、見覚えのある男だった。
夜の月明かりが母親を犯している男の顔を照らし出す。
(サム兄ちゃん……? ままと何をやってるの?)
母親を犯しているのは父親イマノルの愛弟子で、自分の遊び相手にもなってくれるサムだった。
ジェイクにとってサムは優しい兄のような存在だ。気心の知れたサムが母親と良からぬ行為している。寝室で行われている男女の交わり。母親の大きな尻にサムは男根が生えた股間を打ちつける。
――母親の陰裂に肉棒が深々と食い込んでいた。
廊下から寝室を覗き込み、不貞の現場を見て硬直するジェイク。師匠の妻を寝取っているサムの目がゆっくりと向けられた。その間も腰を動かすのを止めない。母親は淫靡な雌の声を上げ続けていた。
「まま? サム兄ちゃん?」
問いかけてもサムは、何も言ってこない。無言でニヤリと笑う。母親の髪の毛を乱暴に掴んで、アクメ顔の母親を見せつけてくる。
「――ひッ!」
母親を犯しているサムの瞳は、魔獣の妖光を宿しており、恐ろしく不気味だった。恐怖心を抱いたジェイクは尻もちをつく。
「ひぃっ……! ままじゃない……!」
慄いたジェイクは子供部屋に逃げ帰る。寝室にいたのはジェイクの知るサムではなかった。そして、サムとの淫行に耽る母親は、どう見ても様子がおかしくなっていた。
ジェイクが恐怖心で逃げ出したのは、妖光を宿した瞳に睨まれたせいだけではない。
生存本能が警告したからだ。サムと母親の姿をしている人物が恐ろしい怪物に思えた。恐怖で空腹感は吹き飛んでしまった。逃げ帰って、子供部屋のベッドに飛び込む。
イマノルが帰ってくるまで、ジェイクはぶるぶると震えながら、恐怖の夜を過ごした。
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寝室の端に隠れていたシェリオンは、ジェイクが半開きにした扉を閉めた。
「ジェイクはしっかり見たか?」
「はい。母親が弟子と姦通している現場をしっかりと目に焼き付けています」
「そうか。よしよし。順調だ。これでカバーストーリーは出来上がった」
ジェイクが逃げ帰ったのを確認して、ルキディスはサムの姿から通常時の姿に戻る。
〈誘惑の瞳〉で恐怖心を植え付けられたジェイクは、日が昇るまで子供部屋に引き篭もるだろう。父親が家に帰ってきたら、愛妻と愛弟子が夫婦の寝室で、何をしていたか証言してくれるはずだ。
「イヤらしい淫母だ。愛しの息子がやってきたというのに、俺との種付けに夢中だとはな。怖がって逃げていったぞ?」
「んぁつ……っ! いいのよぉ……! あなたともっと可愛い子を作るからぁ……っ! ぁあんっ! あなたとの可愛い子を沢山産むから、あんな子は、もう……、どうでもいいですわぁ……っ!」
カトリーナの子宮は精液で満たされ、下腹がポッコリと膨張していた。魔素耐性を上昇させる薬が抜け、やっと魔物への転化が始まったのだ。
「子宮の仕上げは済んだ。冥王の子を産む身体へと変わったな」
連日連夜の種付けで、カトリーナの子宮は魔物の子を受胎できるように変貌していた。
「もはや貴様の子宮は孕み袋だ。出すぞ。ご主人様と呼んで媚びろ」
「来るぅ……っ! 凄いのが私の中に来るぅ……! ご主人様の熱い子種でイぐぅっ! オマンコがヒぃ、ひぐぅぅぅうううううううゥ……っ!!」
カトリーナは夫と息子への愛を捨て、冥王との主従関係を受け入れる。
ユファと交代で情事を見守っていたシェリオンはイき狂う雌を羨ましげに眺めている。我慢しているものの、ユファのように一度くらい混ざってみたいというのが、シェリオンの本心だった。
「絶対の忠愛を誓え。カトリーナは俺の下僕となったんだからな。魂を魔に捧げ、生まれ変わるのだ!」
「ご主人様ぁあっ♥︎ あなた様だけを愛してるわぁ♥︎ 好きになってしまったのぉお♥︎ たとえあなたが化け物でも愛してるぅうぅっ♥︎ あなた様の女になりたいのぉおっ♥︎ 私を奪ってぇ♥︎ 犯して♥︎ 孕ませて♥︎ んぁッ! ぁぁ、ぁああっッ! イくぅうぅぅううううううーーーーっ!!」
――カトリーナの肉体に変異が起こる。
「あっ……? うっ……ぃ……!?」
澄んでいた紫色の瞳が急速に白濁していく。暴力的な快楽がカトリーナの脳細胞を破壊する。魂の自壊は苦痛を伴う。だが、冥王の魔素と瘴気で起こる魂の破壊は悦楽による狂い死にだ。
痛みも恐怖もない。快感に溺れて死ぬ有り様は腹上死に近い。
「ちっ! 孕みはしたが壊れたな……。こいつも苗床堕ちだ」
ルキディスはカトリーナの精液ボテ腹を掴んだ。冥王の魔子が宿っている。だが、肝心の母胎は魂が壊れ、自我を失っていた。
「残念でしたね。ご主人様……。カトリーナは眷族となるだけの器を持っていなかったようです」
「そのようだ……。ついさっきまでは順調に溶け込んでいたが、駄目になってしまった。魂が壊れた。二連続で眷族を引き当てることはできなかったか。残念だよ、カトリーナ。貴様との不倫セックスが愉しかっただけにな……。この尻も名残惜しい……」
カトリーナの両目は濁りきっていた。自我は永遠に戻ってこない。魂が自壊するとはそういうことだ。カトリーナは魔物を産む繁殖母体と成り果てた。
「――カトリーナと俺なら良い夫婦になれると思ったが」
ルキディスはカトリーナの巨尻を抓んだ。肉厚の柔らかな媚肉が性欲を煽り立てる。
「苦労して開発した薬も意味がなかったな……。がっかりだ。だが、まあ、仕方ない。こういう運命だったんだろう。元々の計画はイマノルを引き抜くことで、カトリーナの眷族化はオマケだ。苗床堕ちだが、良い魔物を産んでくれ。カトリーナ・アーケン」
「アァァアアア……♥︎ アァァァ……♥︎」
冥王に褒められ、壊れたカトリーナは微笑んだ。しかし、言葉の意味は理解していない。繁殖母体となったカトリーナは冥王の言葉に反応する空っぽの肉人形となった。
「撤収を始めるぞ、シェリオン。明日にはイマノルが帰ってくる。この置き手紙を読めばカトリーナとサムが駆け落ちしたと理解するだろう。ジェイクの証言もある。全てこちらの予定通りに進んだ」
撤収を命じられたシェリオンは、苗床化したカトリーナを布で包み、乱暴に担ぎ上げた。
そのほかにも体液が付着したベッドシーツなど、魔素が付着してしまった衣類も持ち帰る。可能な限り痕跡は残さない。ルキディスは床に飛び散った淫事の証跡を拭い取った。
「溜まっていた案件が片付いてよかった。狐族の女奴隷は予算内の値段で買い戻せそうだ。有力な買い手が競りの前に降りてくれた。これなら近日中に開放できる。身柄の引き渡し後は大使館の別館で面談をおこなって、帰国の意思を確認しよう」
眷族を作ることはできなかったが、本来の目的は鍛冶職人イマノルをサピナ小王国に招致することだ。
「妻と弟子が消えれば、イマノルも我々の誘いに乗ってくれるはずだ」
愛妻と愛弟子に裏切られ、笑いものとなった男が今までの環境を捨てて新天地に逃げ込む。容易に想像できる未来だ。
――明日、鍛冶職人イマノルは、絶望のどん底に追いやられる。
――明日、狐族の少女ジュリエッタは希望を得る。