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【11話】ヴォルフ坊ちゃんとベロニカのお散歩デート

 レーヴェ家が治める荘園では絶対遵守の掟があった。

 黒森に無断で入ってはならない。当主の許しがなければ黒森は人間に牙を向ける。黒森との境界線には赤黒い石が置かれていた。目印の境界標を越えた先は禁域だ。

「もうじき冬が来るね。こうして外を散策できるのは今日が最後かも」

 車椅子に揺られながら、ヴォルフガングは黒森の風景を眺める。

 常緑樹は冬季も葉を広げて太陽光を吸う。未開拓の森では暗がりが広がり、生き物の気配は感じられない。

 冬の備えで野生動物も巣穴に籠っているのだろう。この地で暮らす人々と同じだ。

 レーヴェ村も越冬の準備を進めていた。晩生種の収穫も終わり、荘園で育ったリンゴは貯蔵庫の雪室で熟成し、春先に出荷される。

「本邸の跡地まで行きますか?」

 ベロニカは車椅子の手押しハンドルを握っている。乳袋付きのメイド服が豊満な爆乳を覆う。重たげな乳房はゆらりゆらりとたわむ。母性を強調する肉付きの極みは、堂々たる臨月のボテ腹だ。

「うん。お願い。本邸の焼け跡に村人は近づかないだろうし……。父上と母上、火事で亡くなった使用人達のお墓参りをしよう。ちょっと遠出しよう。ベロニカは大丈夫?」

 ヴォルフガングは身重のベロニカを気遣う。

「よい運動になりますよ。旅の間もお腹の赤ちゃんは大人しかったですわ。こんな母親を労わってくれている優しい子なのです。ふふっ……♥︎ 父親似かしら? きっと私みたいな親不孝者ではないでしょう」

「ベロニカは……。お腹の赤ちゃんを産みたい?」

「私は……。産まないつもりです」

「そっか。そうだよね」

 ヴォルフガングは頷いた。不満はなく、むしろ納得している様子だった。

「お優しいヴォルフ坊ちゃんも、それを望まているのですよね」

「うん……。僕は誰かを犠牲にしたくない。荘園の生活を守るために、仕方のない側面はあるけれど……。もう僕らには元気がありあまっている娘がいる。今の幸せだけで十分じゃないか……。他人の不幸を僕は望まない」

「はい……。それでよろしいと思いますわ」

「それにさ。僕の世話だけでも大変なのに、子育てまでするのは苦労が多いでしょ」

 そう言うものの、娘達の教育をメイドに任せっきりにはしていない。ヴォルフガングは娘達を書斎に呼び、文字の読み書きを教えている。

「賑やかで楽しいですわ。昔を思い出しますもの」

「…………。ベロニカは駆け落ちした後、娘を産んだと言っていたね。子供の相手は懐かしい?」

「はい……。そうだと思いますわ」

「昔のことは聞かないほうがいい?」

「いいえ。もう気にしていませんわ。こうしてヴォルフ坊ちゃんと家庭を築き、再び母親になるとは思っていませんでした。自分の選択を悔いているわけではないのです。心が満たされて幸せなの……」

「よかった」

「十八年前に娘を産んだ幸せが再来した心地ですわ」

「ああ……、そうなんだ。十八年も前なんだね。ははは。そっか、そっか」

「坊ちゃん?」

「僕が産まれた年と一緒だ。僕は今年で十八歳だもん」

 ヴォルフガングは微笑む。背徳的な気分になる。自分が産まれた年に、娘を産んだ年配の未亡人。そんな美熟女とセックスし、赤子を孕ませている。しかも、大貴族の伯爵家で生まれた高貴な淑女である。

 表沙汰になるかは別として、レーヴェ家は家格の高い血筋を取り込んだ。

「昔のことを話すのは嫌じゃありませんわ。でも、歳は気にします。ヴォルフ坊ちゃんは私の年齢をご存知でしょう?」

「年齢は関係ないよ。ベロニカは美人だ。かおを失っても魅力的だよ。まだまだモテる。旅に出たときも心配だったんだよ。ベロニカが誰かに口説かれたりしてないかなってね」

「ふふっ。私を口説く物好きはいませんわ」

「じゃあ、僕はそうなのかもよ」

「ええ。ヴォルフ坊ちゃんは本当に物好きですわ。年増をたぶらかすのがお上手なんだから。……素敵ですわ。心がとろけてしまいそう」

 首無しメイドの異形者に成れ果ててしまったが、ベロニカは幸福を手にした。結婚指輪を外した未亡人は、呪われたレーヴェ家で第二の人生を歩み始める。不具の主人に仕える愛奴は迷いを捨てた。

 ベロニカの熟れた子宮は、ヴォルフガングに恋をしている。

 唯一無二と誓った夫婦愛を解き、二人目の愛し人となった青年。

 愛を育んだ四年の主従生活で、ヴォルフガングはかけがえのない男になってしまった。たとえ墓の下から前夫が蘇っても、ベロニカの恋心は取り戻せないかもしれない。

 本邸の焼け跡に到着したヴォルフガングとベロニカは、大火の犠牲者に鎮魂の祈りを捧げる。

 犠牲者の共同墓地は板石を積み重ねた簡単な作りだ。五年前の大火事は炎が激しく、瓦礫に埋もれてしまった骨もある。村人達が集めてくれたが、誰の骨であるかは判別できなかった。ヴォルフガングの意向により、見つけた遺骨は一つの墓で弔った。

「村長から本邸の建て直し相談されてる。ベロニカはどう思う?」

「別邸の闇樹館で不自由はしておりません。ですが、村の皆さんは違うかもしれませんね。ヴォルフ坊ちゃんにお伺いを立てるとき、大変そうですから。本邸を建て直すお金はありますし、火事から五年経ったと思えば……」

「まだ先の話だけどね。僕は闇樹館を気に入っている。……とはいえ、荘園の規模が大きくなるなら、それなりの建物が必要だ。取引してる商人達からも、宿泊施設が欲しいと言われてる。娘達に家庭教師も付けたい。はは、あははっ……」

「ヴォルフ坊ちゃん?」

「こんな悩み……。まるで父上や母上みたいだ。あれから五年……。あっという間だった。嬉しいよ。僕もやっと当主らしくなってきた」

「レーヴェ家のご立派な当主様になられておりますよ。先代の当主様と奥方様、亡くなられた方々はきっとお喜びですわ」

「うん。そうだといいな。――でも、僕の悪業を許してはくれない」

「…………」

 どんな言葉をかければいいか、ベロニカには分からなかった。傷心の主人を慰めたくなる。

「許しは求めない。報いをいつの日か……。その刻を僕は待つよ」

 ヴォルフガングは心優しい青年だ。他者の不幸を望まない。だが、自身の生命とレーヴェ家の財産を守るために抗った。自己防衛の結果、幾人かの人間は犠牲になっている。

 ベロニカも犠牲者の一人だ。赤子を産まされ、かおを失った。しかし、ヴォルフガングを愛している。

「ヴォルフ坊ちゃん……。あちらの木陰に行きましょう」

 ベロニカは返事を待たなかった。燃え落ちた瓦礫を避けながら、車椅子を押していった。

「構わないけど、どうしたの?」

 レーヴェ家の本邸は木立で囲まれていた。とても古い樹木が並んでいる。その風景は立哨りっしょうする歩兵を見る者に想起させる。

 ベロニカは大樹の根本で車椅子を止めた。

 ここなら視線が遮られ、仮に誰かが近づいてきても隠れて見えない。

「ヴォルフ坊ちゃん……♥︎ 見て……♥︎」

 ベロニカはメイド服のスカートを上げる。立冬の寒風が股を吹き抜ける。ショーツは履いていなかった。丸出しのオマンコを露出魔のようにひけらかす。

「それじゃ、お腹が冷えちゃうよ。ベロニカ」

 困った顔でヴォルフガングは言う。だが、ベロニカが何を望んでいるのかは分かった。

「暖めてください。ヴォルフ坊ちゃんのオチンポで……♥︎ セックスしたいですっ♥︎ ここで……♥︎ 外でセックスしませんか♥︎」

「え……。野外だと見られちゃう。村の皆は滅多に近づかないし、普段は森に入らない。でも、今は狩猟を解禁してる。誰かが来たら……」

「よいではありませんか……。レーヴェ家の荘園で働く者なら、見て見ぬふりをしてくださいますよ。ほんのちょっとだけ……♥︎」

「しょうがないね。分かった。……下着を付けてないってことは、散歩に誘ったときから考えてたんだ。エッチだね」

「はい………♥︎。私は御主人様に欲情してしまうエッチなメイドですわ♥︎」

【10話】屍者からの招状

「悪霊はともかく、レーヴェ家の火事は初耳だわ。大勢が亡くなったの?」

「ああ。レーヴェ家の当主夫妻と使用人が全員死んだ」

「当主の夫妻が亡くなった?」

「建物が全焼したんだ。生き残ったのは一人息子だけさ。古井戸に飛び込んで火の手から逃れた。だが、寒い冬の夜だった。酷い凍傷で手足を切らなきゃ駄目だった」

「凍傷で手足を……」

「両手両足をバッサリだ。無事だったのは胴体だけさ。芋虫みたいな身体さ。レーヴェ村の奴らは『ヴォルフ坊ちゃん』と呼んでる」

(ダミエーラの手紙に書いてあったレーヴェ家のお坊ちゃんだわ。十四歳……いいえ、手紙が書かれたのは四年前だから十八歳に……。私と同い年だわ。可哀そうに。両手両足を失うなんて……)

「俺も商売をしてるからな。ちょっとだけ話したことがある。……悪い御人じゃねえよ」

 行商人は付け加えて言った。

「両手両足が不自由で、領主の仕事が務まるの? 大変でしょう」

細々こまごまとしたことは村長が代行してる。木炭や岩塩の買い付け交渉で出てくるのは村長だけだ。ヴォルフ坊ちゃんは黒森に囲まれた館で暮らしてる」

「一人では暮らせないでしょう。誰か使用人を雇っているのよね?」

「ああ。メイドが一人いる。顔は見たことがねえ……。あの黒い館は薄気味悪い……。あんな恐ろしい森の中で暮らす神経が分からん」

「…………。商人さんはさっき『ヴォルフ坊ちゃんは悪い御人じゃない』と言ったわ。でも、何か……含むところがあるじゃない?」

「最初はな、俺だってヴォルフ坊ちゃんに同情したさ。十四歳で両手両足の切断だ。家族も死んで、不幸のどん底。金はあっても天涯孤独。他に身寄りもいねえし、レーヴェ家も終わりだと思ったね。……ところが、娘が産まれたんだ」

「娘? レーヴェ家に子供ができたの?」

「そうだ。ヴォルフ坊ちゃんの娘だ。あの身体でどうやって子作りしたのか……。そもそも誰が産んだのかも分からねえ。町の司祭様が死んじまった四年前、レーヴェ家に娘が産まれた。その翌年に二人目の娘が誕生した。赤子を産んだ母親は……? 荘園の奴らも知らねえんだ」

「商人さん、大きな見落としを教えてあげる。お世話をしているメイドがいるわ。ヴォルフ坊ちゃんはメイドと二人で暮らしてた。簡単な消去法よ」

 主人と使用人の子供。貴族社会ではよくある話だ。醜聞のくくりに入るが、四肢欠損の田舎貴族に嫁ぐ女性はいないかもしれない。だとすれば、レーヴェ家のメイドが世継ぎを産もうとした気持ちもわかる。

「メイドが母親なら出産のとき、赤子を取り上げたのは誰だ?」

「それは……」

 深い森の中にある館でメイドは娘を産んだ。それなら御産を誰が助けたのか。カレンティアは言葉に詰まる。

「手足のないヴォルフ坊ちゃんか?」

「待って! きっと産婆は荘園の誰かが……」

「さっきも言ったろ。母親を誰も知らねえ! そもそも荘園の奴らは黒森の館に近づかない。掟があるんだ。足を踏み入れちゃならねえ……。四年前に死んだ司祭様は、禁を破ってレーヴェ家の黒森に入った。そのせいで……狂っちまった……!」

「まさか商人さんは……。発狂した司祭さんを見たの……?」

「ああ。そうだ……。そうなんだよ……。四年前に……俺の馬車で司祭様をレーヴェ村に運んだ。今の嬢ちゃんみたいに……。いいか! 約束しろ! 黒森に入るな!! 何があっても道から出ちゃいけねえ! 悪霊は本当にいるんだよ……! レーヴェ家の土地は呪われてるんだ……!!」

 カレンティアは行商人の精神状態を心配した。妄執に取り憑かれている。だが、一つだけ気になった。レーヴェ家の大火事は五年前に起きた。それが本当ならおかしい。

(ダミエーラの手紙は四年前に送られてきた。え? レーヴェ家で大火事が起きた一年後じゃない……! おかしい! それだと時系列が合わないわ。手紙を書いてから、母さんのいるヒースウッド修道院に届くまで一年もかからない。そもそも手紙には四年前の日付が書かれていたわ)

 大火事が起きた年を商人が勘違いしている。それだったら辻褄が合う。ベロニカの失踪とも結びつく。

(ダミエーラに招きで母さんはレーヴェ家に逗留していた。でも、大火事に巻き込まれてしまった。……繋がるわ)

 カレンティアは商人に確認してみる。

「商人さん……」

「悪いな。嬢ちゃん。喋り過ぎた。俺はもう話したくねえ……」

「最後に一つだけ。レーヴェ家の大火事は四年前じゃない? 五年前じゃなくて」

「なんでだ? 大火事は五年前で確かだ……」

「自信を持って言える? 正確に五年前だと? 本当は四年前だったりしないかしら?」

「断言できるさ。大火事は五年前の初冬に起きた。司祭様が死んだのは四年前だぞ。ヴォルフ坊ちゃんの娘が産まれたのも四年前……。だから、大火事は五年前に起きた」

 商人の証言に矛盾はない。司祭が死んだ年、レーヴェ家に娘が誕生した年。その前年にレーヴェ家で大火事が起きた。

(母さんの失踪は四年前……。火事とは結び付かないか……)

 カレンティアは灰色の空を見上げた。厳しい冬が訪れようとしている。行商人は荘園に木炭と岩塩を売り付けたら町に帰る。滞在は一泊、天候次第では二泊するかもしれないが、レーヴェ村で越冬するつもりはなさそうだ。

(クロヴィスに手紙を書こう。行商人さんに渡せば帝都に届くはずだわ。心配させたくない。まさかこんな長旅になるなんて……)

 右手に握りしめた結婚指輪を握りしめる。母親が大切していた夫婦の指輪。なぜ父親の墓前に埋められていたのだろう。墓所を訪れた不審な妊婦の正体も分っていない。

(ここまでの道中、騎士兜で素顔を隠した妊婦の話は耳にしなかったわ。目立つ姿だもの。誰かに見られていれば、必ず覚えているはずなのに……)

 四年前に失踪した母親であるはずがない。だが、墓所で目撃された妊婦が母親だったら、この結婚指輪を嵌めていた理由になる。身籠ってさえいなければ、カレンティアは母親と断定していただろう。

 臨月の妊婦だったという証言。

 ヒースウッド修道院で隠棲し、四十路を超えていた未亡人が妊娠するなんて考えにくい。何よりも母親は亡くなった父親を愛していた。カレンティアは両親の相思相愛ぶりを知っている。

 母親が父親以外の男を愛し、子供を作る姿が想像できない。だから、父親が眠る墓所に現れた妊婦は別人。カレンティアはそう思いたかった。

(母さんがレーヴェ家を訪問したのは四年前……。いったい何が起きたの……。四年前に……)

 四年前なら大火事が起きた後だ。当主夫妻が亡くなり、使用人も全員死んでしまった。生き残ったのは手足を失った〈ヴォルフ坊ちゃん〉ただ一人である。

 レーヴェ家を訪問した母親は〈ヴォルフ坊ちゃん〉と会っているはずだ。まずは彼から話を聞く必要がある。

 そのときカレンティアは恐怖で硬直した。

 気付いてしまった。ヒースウッド修道院で見つけた手紙。ダミエーラが母親をレーヴェ家に招いたのはだ。

(五年前の大火事でレーヴェ家の使用人は全員死んだ……? 変だわ。なら、母さんを呼び寄せたダミエーラも死んでるじゃない……!? 手紙は四年前に書かれた! ありえない! 死人のダミエーラが手紙を書いたとでもいうの……!?)

 カレンティアは荷物からダミエーラの手紙を引っ張り出した。

 文面を最初から読み直す。やはり四年前の日付が書かれていた。だが、当主夫妻は健在で、前年に起きた大火事に一切触れていない。読書家の当主、教育熱心な奥方、剣術や馬術を学ぶ一人息子。手紙の中ではレーヴェ家の幸せな日常が続いている。

(ダミエーラが書いた手紙じゃない……! これは罠よ……!! 誰かが母さんをレーヴェ家に誘き寄せたんだわ!)

【9話】レーヴェ家の荘園へ

 カレンティアはヒースウッド修道院に二日ほど滞在し、ベロニカの消息に繋がる大きな手掛かりを得た。

 院長や修道女への聞き込みでは新しい話が聞けず無駄骨に終わった。ベロニカは旅の目的地を誰にも教えておらず、帝国の北方としか伝えていなかった。結婚指輪を墓所に埋めた騎士兜の妊婦についても訊いてみたが、そんな人物は誰も知らなかった。

 次にベロニカの私室を徹底的に探すことにした。備え付けの机や本棚をひっくり返し、絨毯も引っぺがす。隣室から騒音の苦情が出たので「作業は昼間にやってほしい」と怒られた。

 申し訳なく思ったが、四年前に見つけられなかったモノを探すのだ。さながら官憲の家宅捜索であった。修道女達は眉をひそめた。部屋を荒らし尽くしたお詫びとして、カレンティアが乗ってきた馬を寄付した。

 やるだけの価値はあった。

(灯台下暗しだったわ。本に挟まれてた手紙を四年間も見落としていたんだから……。母さんの足取りを追う手がかりは、ずっとあの部屋に残ってたんだわ)

 間抜けな話だ。冒険者組合や帝国軍まで動かしたというのに、重要な手紙を四年間も見つけられずにいた。もっと早くにこの手紙を見つけていればと悔いる。だが、ベロニカは意図的に手紙を残したわけじゃなかった。

 そそっかしいベロニカが読みかけの本に手紙を挟み、そのまま忘れてしまったのだ。

(手紙を送ってきたのはダミエーラ……。母さんの古い友人……)

 手紙の差出人はダミエーラという女性。手紙の文面によると母親の旧友だ。ダミエーラは伯爵家に仕えてた武家の娘で、それで関わり合いがあったのだ。

 四年前の手紙にはダミエーラの相談事がつづられていた。

 北方辺境の荘園を営むレーヴェ家で、領主夫妻の一人息子に剣術を教えている。准男爵の田舎貴族であるがリンゴ栽培で財を築き、子息を華やかな社交界デビューさせたい。それが奥方の願望だ。

 当主の父親は大それた夢を見ておらず、「自分の剣で腕や足を切らない程度の剣術。馬から落っこちない程度の馬術。それさえ教えてくれればいい」と現実的だった。

 ある日、ダミエーラは奥方の前で「友人に伯爵家の令嬢だった人がいる」と口を滑らせた。過去形なのは家出をしたからだ。つまり、修道院で隠居しているベロニカである。

 そのことを知ったレーヴェ家の奥方は「伯爵令嬢のベロニカ様をお屋敷に招き、可愛い息子の教育係にしたい」と言い始めた。

 これには大きな勘違いがある。まず、伯爵令嬢だったのは三十年前。手紙が書かれた当時、ベロニカを四十歳の未亡人だ。ダミエーラは誤解を正そうとしたが、レーヴェ家の奥方は思い込みが激しかった。

 あわよくば呼びつけた伯爵家の御令嬢との逆玉を狙っていたのだろうが、レーヴェ家のお坊ちゃんは十四歳。成人年齢にすら達していないお子様だ。

 ダミエーラはベロニカが未亡人だと何度も説明を繰り返した。だが、信じてもらえていない。ベロニカと実際に会えば、奥方も分ってくれるはずである。旅費や滞在費を払うので、実際に屋敷を訪れてほしい。

 また、帝国辺境の閉ざされた荘園で暮らす、お坊ちゃんに帝都で活躍する冒険者の話を聞かせてあげたい。

 ――手紙に記されていたのはそんな依頼だった。

 レーヴェ家の醜聞とならぬように口外を控えてほしい。その旨も書き添えられていた。ベロニカは律儀に約束を守り、レーヴェ家の荘園に向かったと誰にも言わなかったのだ。

(もう……。母さんってば……。口外しないでほしいのは依頼内容だけでしょ。どうして行き先まで秘密にしちゃったのよ! それと、大切な手紙を本のしおりにしちゃ駄目! 『ルココ恋愛譚』に手紙が挟まっていて、私は助かったけれど……)

 カレンティアは『ルココ恋愛譚』を読んでいない。

 母親に薦められたが内容が古臭すぎる。三十年前に大流行したらしいが、ご年配のコンテンツに若者は近づかない。

(レーヴェ家の荘園……。場所は北方の最果てか……。帝国軍や冒険者も近づかない辺境の僻地ね。勢いでとんでもない遠くまで来ちゃったわ。帝都に帰るには二週間はかかりそう。雪が降り始めたら……帰れるかしら?)

 准男爵は正式な爵位とは数えられない。帝都の貴族籍名簿を調べても無駄だ。商人や豪農が金で買うような地位なのだ。しかしながら、辺境では大きな意味を持つのだろう。

 レーヴェ家の先祖はリンゴ栽培で成功した。この情報がなければ、カレンティアは荘園に辿り着けなかった。

 偶然の導きに感謝する。修道院を出入りしている行商人が、レーヴェ家で作られたリンゴ酒を扱っていたのだ。行商人の組合を通じて、カレンティアはレーヴェ家の荘園まで連れて行ってもらうことになった。

 ◆ ◆ ◆

「帝国北方の冬は厳しいぞ。嬢ちゃんは帝都の冒険者なんだろ」

 相乗りさせてもらっている行商人は、レーヴェ家の荘園に木炭と岩塩を売ると話す。荘園で働く農民は二〇〇人程度。地図に名前は載っていないが、隣町ではレーヴェ村の通称で呼ばれていた。

「ええ。こんな僻地まで来たのは初めてよ」

「山道は豪雪で使えなくなる。長毛種の馬でも進めない。レーヴェ家の荘園は険しい谷越えだ。しかも、黒森には悪霊が棲みついてる」

「悪霊ですって?」

 冒険者の好奇心がくすぐられた。カレンティアは商人の馬車にお邪魔しているが、代金は払っていない。護衛という名目で乗り込んだ。カレンティアは上位ランクの冒険者である。そこらの用心棒よりもずっと強い。

「ああ。そうさ。町の連中はレーヴェ家を怖がっている。理由が分かるか?」

「町でうとまれてるのは耳にしたわ。商人さんの言い振りだと、リンゴで大儲けしてるそねみだけじゃなさそう」

「評判になってる蜜リンゴの苗木はな。レーヴェ家の初代当主が黒森で見つけたんだ。おぞましい悪霊に人間の血肉を喰わせて、その報酬で苗木をもらった。……そんな噂があるのさ」

「それって噂でしょ?」

「荘園のリンゴは人間の腐肉を肥料にしてる。……信じてる奴も多いぞ」

 偏見から生じた風評被害だとカレンティアは思った。町の人々はレーヴェ家が気に入らないのだ。荘園はリンゴ栽培で大儲けしている。町の人々もリンゴの栽培に着手したが、まったく上手くいっていないのだ。

(母さんが言っていたわ。農業は積み重ね……。未経験の新規参入者が成功するのは稀なことよ)

 人々は失敗の鬱憤うっぷんをレーヴェ家に向けているのだ。人間の死体を肥料しているなんて悪評まで流す。そういう人々は好きにはなれなかった。

「商人さんは信じているの? レーヴェ家との取引で儲けてるんでしょ。商売のお得意様を貶めるのは損得勘定ができてないわ」

 カレンティアはそれとなくたしなめる。行商人はレーヴェ家のおかげで儲けている側の人間だ。レーヴェ家と取引をしている商人こそ、風評被害で困る立場にある。

「……以前は違ったさ。与太話だと思った」

「以前は?」

「四年前だ。町の司祭様が死んじまった。異常な死に方だったよ。司祭様は頭を自分の手でぎ取った。自殺には違いねえ……。だが、普通じゃねえだろ……? 自分の首をじるなんてよぉ……!」

「死んだのは町の司祭でしょう。どうしてレーヴェ家のせいになるわけ?」

「司祭様はレーヴェ家と揉めてた。五年前の大火事でレーヴェ家の人間が大勢死んだ。荘園の奴らは町から入り込んだゴロツキが放火したと思ってる。実際、そうなのかもしれねえ。……司祭様を呪い殺したのは報復なんだ」

「おだやかじゃないわね。呪殺なら官憲に訴えたら? 闇の儀式は重罪よ。教会だって動くわ」

「町の有力者はビビったのさ。レーヴェ家の御屋敷に火を放った連中が誰の指図を受けてたのか……。それを調べられたら困るんだ」

 カレンティアは顔を曇らせる。町の有力者は犯行を自白しているようなものだ。

「じゃあ、司祭様は生贄の子羊?」

「レーヴェ家は異教徒だ。荘園の連中も黒森の悪霊を祭ってる。俺に言わせれば……まあ……いや、どうでもいい。金になる商売だ。奴らが何を信仰していようが関係ねえ……」

 行商人は怯えた様子で黒森を見渡す。手綱を握る者の怖気おじけは、馬車をけん引する馬にも伝播していた。

COMIC ゼロス #127(表紙:えこひいき)

ワニマガジン社『COMICゼロス』
(毎月11日)

えこひいき待望の初表紙!
柔尻女上司との危険な残業43Pの大ボリュームで登場。
さらに、じゅらいが描く《一線を超えちゃう》双子の情事・後編も必見!

「わたしの方が…おっきいでしょ…」

巨尻フェチ必見! 大ボリュームのオフィスラブエロス完結! 表紙&巻頭は、えこひいき『尻で女を見分ける俺は女上司の弱みを握る2』
不真面目社員の佐藤(さとう)はいつも、年上のバリキャリ女上司・藤田(ふじた)課長に怒られてばかり。
だが、ひょんなことから彼女の秘密を握って以来、残業と称して《わからせプレイ》に耽る関係に――
今日も怒られるのはいつも通り……のはずが、藤田課長の様子がどこかおかしくて…!?

「それは…だめ…じゃない…?」

双子の弟と禁断の関係……♪ シリーズ後編! じゅらい『ふたりあそび』
内緒でASMR配信をしていたはずが……双子の弟・リクに完全にバレており、それどころか配信しながらオナニーしていたことまで見抜かれてしまっていた。
これ以上ないくらい動揺し赤面するユノに対し、「エロかったな……」とこぼすリク。
変にギクシャクするふたり。お互いの体は近づいていき……。

新居に潜んでいたのは、まさかの激エロ幽霊!?……ROMUPI『恐怖!! 女悪霊エロ堕落』
自分の好奇心から始まった関係。今日も学校終わりにおじさんの家へ……楠まじり『疚しさと沈む』
人間を逆レする鬼をヤっつけろ! 魔法の妖精からの中出しで魔法少女に変身!……河中島『魔法美少女危機一髪』

<表紙作家>
えこひいき

<収録作品>

尻で女を見分ける俺は女上司の弱みを握る2/えこひいき

ひとりあそび

ふたりあそび/じゅらい

恐怖!! 女悪霊エロ堕落/ROMUPI

疚しさと沈むの検索結果 – FANZAブックス(旧電子書籍)

疚しさと沈む/楠まじり

魔法美少女危機一髪の検索結果 – FANZAブックス(旧電子書籍)

魔法美少女危機一髪/河中島

表紙イラストえこひいき
執筆陣えこひいき,じゅらい,ROMUPI,楠まじり,河中島
価格770円(税込)
発行日2025/09/11

BugBug2025年10月号

辰巳出版『BugBug』
(毎月10日)

■巻頭大特集『野々村病院の人々リメイク』(FG REMAKE)
・FG REMAKEの手でリメイクされよみがえる1994年発売の伝説的名作を表紙&巻頭10ページ総力特集!!
・独占先行公開CGやシナリオプレビューなど歴史的名作ミステリーAVGの魅力を独占情報満載でお届け
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■特別付録「TVで美しょゲー特別付録DVD 280分」
・『野々村病院の人々リメイク』推理AVGの名作が令和に復活!! 動画特集
・「人気美少女ゲームヤリ込み大特集15」2025 October SELECTION
・『何度目かのはじめまして』同じ時間を何度もやり直し幸せな未来に繋げ!! 動画SP

■速報紹介「B.B.HEAD LINE NEWS」
・『搾精病棟R -性格最悪ナースが僕の精子を懇願する逆転入院生活-』(だーくワン!)
・『D.C. Re:tune 〜ダ・カーポ〜 リチューン』(ブシロードゲームズ)
・『ビッチスイッチ☆レボリューション 〜放課後ギャルビッチ搾精プレイリスト〜』(わるきゅ〜れ)
・『キミと恋するハッピーサマー』(PULLTOP LATTE)

■激戦怒涛◆名作ラッシュPickUPソフト特集
・『アマカノ3』(あざらしそふと)
・『下級生リメイク』(FG REMAKE)
・『何度目かのはじめまして』(Purple software)
・『聖奴●学園3』(Liquid)
・『ボクをほっとけない後輩ギャル』(Waffle)

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・『R』バージョンでリブートされた名作『君のぞ』の全貌をロングインタビューで深掘り徹底紹介!!
・今なお輝きを失わない伝説的タイトル再誕の秘密を制作主要スタッフがカラー4ページで語り尽くす

■不定期連載「BugBug声優STATION」「和央きりか」
・幅広いキャラクターを演じ分け人気急上昇の実力派声優・和央きりかさんの素顔に直撃インタビュー
・デビューまでの経緯やオフの過ごし方などいろいろ直撃!! 好評の直筆サイン色紙プレゼントも♪

■連載コミック
・『肉食系女子のおねだり絶頂セックス』(漫画:五十嵐唱乃)

特別付録は付きません。※BugBug電子書籍版に「特別付録DVD」は収録されておりません

表紙イラスト
執筆陣五十嵐唱乃
価格1,100円(税込)
1,680円税込
発行日2025/09/10

COMICグーチョ vol.26 2025年09月号(表紙:しんどう)

サイコロブックス『COMICグーチョ』
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背徳的なエッチでお届けする「COMICグーチョ」vol.26!
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〈収録作品〉

「イモート・インセンティブ!」POLIER

「ドーゾク嫌悪」阪本KAFKA

るあんのきゅんきゅん大作戦!」十はやみ

「お願いしますが聞こえない」ひみの

「2Gals×1Geek」翠野タヌキ

巻末には、表紙ピンナップ付き!

表紙イラストしんどう
執筆陣しんどう,POLIER,阪本KAFKA,十はやみ,ひみの,翠野タヌキ
価格660円(税込)
発行日2025/09/10

【マドンナメイト】素人告白スペシャル エロい人妻との忘れられない旅(素人投稿編集部)

旅愁に誘われ疼く熟れた肉体……
人妻たちは背徳の性悦に溺れゆく。

○混浴露天で青年の肉幹を貪る還暦熟主婦
○着物を脱いで爆乳奉仕する四十路媚女将
○親子キャンプ中に生青姦する三十路麗妻
○絶倫客との猥褻マッサージに嵌る美熟嬢
○温泉街でレズ3Pを愉しむ妖艶熟マダム

・深夜の混浴露天で青年の極太幹を味わう還暦淫熟主婦!
・親子キャンプ中にイケメンパパと背徳の青姦中出し絶頂
・精力絶倫客の巨大男根でイキまくるマッサージ美熟嬢!
・老舗旅館を切り盛りする四十路媚熟女将が爆乳奉仕……
・温泉街で男を逆ナンしレズ3Pを堪能する妖艶マダム!
・推しバンドの打ち上げで貞淑人妻が禁忌のアナル生輪●
・ブルートレインの寝台車でエロJD二人組と濃厚性交!
・鄙びた温泉地で淫乱腋毛コンパニオンの牝穴に挿入……

旅先で遭遇した淫靡な人妻たちとの心と体に刻まれた破廉恥体験告白集!

著者素人投稿編集部
イラスト
価格935円(税込)
発行日2025/09/10

【マドンナメイト】マンション五階は人妻ハーレム(葉月奏太)

マンションの部屋には人妻たちが訪ねてきて
まさに誘惑の嵐の中に──

ある夜、和樹は部屋に侵入しようとしている女性を捕まえ、お詫びに肉体を差し出された。さらに「怖いと濡れる」という女性とも関係を。数日後、五階に住む人妻から二人の女性とのことを追及され迫られ、別の人妻まで紹介されて──

著者葉月奏太
イラスト川島健太郎
価格935円(税込)
発行日2025/09/10

【マドンナメイト】わがまま令嬢と清貧美少女 未熟なシンクロ初体験(浦路直彦)

瓜二つのセレブお嬢様と貧しい美少女は、互いの生活を交換することになって……。

大金持ちの令嬢・桃華と倒産寸前の町工場の娘・詩織は、親でさえ見間違えるほどに瓜二つの美少女――。住む世界が異なる二人は、同時期に正反対の初体験をした。偶然にも二人は出会い、生活を交換することになるが、互いの初体験の相手に未熟な肉体を玩弄されてしまい……。

著者浦路直彦
イラスト大柴宗平
価格935円(税込)
発行日2025/09/10

【8話】結婚指輪を外した未亡人ベロニカ

 ベロニカは結婚指輪をついに外した。それでも、数十年に及ぶ夫婦愛の残像が刻まれている。空白の輪郭は色濃い。薬指を彩る円環の白肌は、未亡人に重たい罪悪感を抱かせた。

 自責で傷ついた心の隙間をヴォルフガングは慰める。寝取り男の打算からではない。四年間の共同生活でベロニカはヴォルフガングの人柄に触れてしまった。

「結婚指輪……。本当に外してしまったんだね。大丈夫? ベロニカ?」

「本音を言ってしまうと、ちょっとだけ後悔してるかもしれません。でも、あのままじゃいけなかった。夫にも、ヴォルフ坊ちゃんにも……すごく失礼ですから……。自分で決めたんです。お墓に埋めてきました」

「結婚指輪を捨てたわけじゃない。ベロニカの中で後悔が残り続けるなら、冬明けに拾ってくればいいよ。僕は気にしてない」

「いいえ、私が捨てたんです。自分の意思で……。外したかったのですわ」

「いいの?」

「はい。ヴォルフ坊ちゃんの手足となり、レーヴェ家に我が身をお捧げします」

「ごめんね……。ベロニカをレーヴェ家に引きずり込んでしまった。僕の子供なんか……産みたくなかったでしょ。ごめんなさい」

「ヴォルフ坊ちゃん……。謝らないでください。ここでの生活は幸せです。無理やり言われてるわけじゃありません。嘘偽りなしの……本心の……告白……。この歳になるとプロポーズは恥ずかしいですわ。自分からは初めてだから……♥︎ ヴォルフ坊ちゃんをお慕いしております♥︎」

「最初の結婚は旦那さんから?」

「はい。十四歳のとき……。御屋敷のバルコニーに連れ出されて……。ああ、嘘みたいです。もう三十年前だわ」

「どんな言葉だった? 参考までに聞きたい」

「秘密です。恥ずかしいので……♥︎」

「あははは! そっか。そっか。仕方ない。秘密ならしょうがない。顔を赤くしてるベロニカが見られないのは残念だ。……僕も前の旦那さんに負けないくらい、ベロニカを愛する。約束する。四肢欠損の田舎貴族じゃ、偉大な英雄に見劣りするだろうけどね」

「そんなことありませんわ。だって、あの人は私を置いて、先に逝ってしまった。でも、ヴォルフ坊ちゃん私を離さずにいる……。ずっと一緒に……♥︎」

「僕は囚われたからね。本当はベロニカを逃がしてあげたかった。レーヴェ家の悪業を許してくれるのなら、ずっと一緒に暮らそう。僕が報いを受けて滅びる去る……。その日まで……」

「はい♥︎ ヴォルフ坊ちゃん♥︎ 寝室に行きませんか? その……ご奉仕をしたいです……♥︎」

 茶黒の乳輪にそびえる突起が勃っている。愛しい御主人様を抱き上げているベロニカは発情していた。無論、美女の裸体にヴォルフガングもオチンポを硬くしている。

 太陽が沈んだ。北方の寒い夜が訪れる。人肌の温かさを互いに欲する。主従の上下関係が崩れ、肉欲で満ちた男女関係が強まる。

「あぁ、でも……夕食の時間でしたね……」

「今晩の夕餉ゆうげはベロニカの母乳で済ませる。寝室に行こう」

「よろしいのですか? ヴォルフ坊ちゃん……♥︎」

「遠慮はいらないよ。ベロニカは結婚指輪を外して、亡くなった旦那さんに返したんだ。今からはだ。もう身分や立場なんか関係ない。愛の名のもとに結ばれよう」

「ふふっ……♥︎ はいっ♥︎」

「ん……。んぅ……。あのさ。恥ずかしくなってきた。ちょっとキザだった? 笑ってるよね」

「失礼しましたわ。理由があります。だって、前の夫とプロポーズが一緒でしたわ」

「えぇ? ほんと?」

「ルココ恋愛譚の台詞を参考になさったのかしら? 三十年前の流行りでしたわ。今時の若い子は読みませんわね」

「ちょっと傷ついた。僕のセンスって三十年前なんだ……。ああ、そっかぁ……。ルココ恋愛譚って母上の本棚にあった小説だった。……古くて当然じゃん……」

「お気になさらず。年増女を誘惑するのはぴったりですわ♥︎」

 ベロニカはヴォルフガングを抱えて寝室に向かった。肉体の淫熱が立ち昇り、漆黒の騎士兜が温かくなっている。寒空の館外に出たら、頭部の天辺から蒸気が昇るだろう。溢れ出た膣汁が内股をびっしょりと濡らした。

 ベロニカはセックスが好きだった。夫の生前は避妊に気を払いつつ、毎晩欠かさずに愛し合った。

 避妊に失敗したのは、カレンティアを孕んだ時だけである。

 妊娠を避けていたのは冒険者という危険な職業柄。もう一つの理由は、伯爵家で起きている後継者問題だ。

 案の定、カレンティアはお家騒動に引っ張り込まれている。未亡人のベロニカでさえ、夫の死後に伯爵家から「本家の血筋を残してほしい」と頼まれた。

(もう子供を産まない。私はきっぱりと宣言したのに……♥︎)

 寝室のベッドで四つ這いになったベロニカは、妊娠オマンコを差し出した。

(あぁ♥︎ 避妊もせずに……子作りセックスをしたから……♥︎ こんな歳で孕んじゃったぁ……♥︎ レーヴェ家の赤ちゃんを……♥︎ でも、いいのぉっ♥︎ だって、誰にも知られていない……♥︎)

 重力で爆乳とボテ腹が垂れ下がり、毛皮の敷布に触れている。

 下腹部の膨らみが後ろからよく見える。暖炉の灯焔とうえんが痴態を照らす。美熟女は背中を弓なりにへこませて、淫裂をくぱぁと開口させる。

「挿れるよ。ベロニカ」

 背面に覆いかぶさったヴォルフガングは、途切れた両脚で立っている。左右の足は太腿までしか残っていない。直立させたところで膝立ち以下の高さだ。しかし、それで十分だ。

 ベッドで腹這いになったベロニカの膣道に押し挿る。青少年のみなぎる若さが、美熟女のオマンコを喜悦させる。ゾクリと全身が震えた。

「おぉっ♥︎ んぉんんぅっ♥︎ あんっ♥︎ あふぅっ♥︎ んゆぅううぅう~~♥︎ おぉっ♥︎」

 ベロニカは女の声で喘ぐ。結婚指輪を捨てる長旅は往路で四日かかった。その間、我慢してきた性欲が爆発する。腹臥ふくがの体位で、肉棒の穿ちに心身を委ねる。

「あぁっ♥︎ んぁっ♥︎ あぁんっ♥︎ ヴォルフ坊ちゃん♥︎ すごいっ♥︎ すごいですわぁっ♥︎ 私達っ♥︎ こんなにぃっ♥︎ ひとつになってぇ♥︎ 繋がってるぅっ♥︎」

「ハアぅ……! ハァハァ……! ベロニカっ……! ベロニカぁっ……!! 暖かいよ。ベロニカの膣内なかはすごく……っ! 僕も気持ちいいっ!」

 四肢欠損の不具は自由を奪う。だが、ヴォルフガングの性技は身体的障害を乗り越える。四年に及ぶ共同生活で、鉄壁貞節だった未亡人の左手から結婚指輪を外させた。

「あぁぁんっ♥︎ ヴォルフ坊ちゃん……♥︎ 愛しておりましゅぅ♥︎ 私の身体は坊ちゃんのモノぉ……♥︎ 好きっ♥︎ 好きっ♥︎ 私は坊ちゃんが大好きぃっ♥︎ こんな私を許してぇ……♥︎ 本気で恋をしちゃったのっ♥︎」

「僕が許すよ。ベロニカ。……旦那さんに先立たれてからずっと耐えてたんだ。寂しかったよね? 辛かったよね? 今までよく頑張った。君には幸せになる権利があるんだ。だから、僕がベロニカを幸せにする……!!」

「はぁ♥︎ はぁあぁぁっん♥︎ ヴォルフ坊ちゃんぅう~~♥︎」

 オマンコに精液の濁流が流れる。絶頂アクメに導かれたベロニカはベッドの敷布を掴む。亀頭が子宮口に押している。お腹で育つ胎児は、出口付近の騒ぎに迷惑しているかもしれない。

「んぁあぁっ……♥︎ あぅっ……♥︎」

 騎士兜が頭部から外れてしまった。漆黒のメタルヘルムがベッドから転がり落ちる。

「あぁ!! はわわぁっ……!?」

 慌ててベロニカは手を伸ばす。だが、掴み損ねた。そのまま床をコロンコロンと二回転する。馬の黒毛で仕立てたカツラが絡まった。

「大丈夫? ベロニカ? 頭が外れちゃった?」

 両手両足が不自由なヴォルフガングでは、ベッドから落ちた騎士兜を拾えない。

「だっ、だじょうぶですよ……。この距離なら問題ありませんから」

 床に転がっている騎士兜が喋る。ベロニカの素顔を見ても友人知人は気付かないだろう。実の娘であるカレンティアですら、母親だと認識できないはずだ。

「頭を拾う? それとも続ける?」

「えっと……あとで拾います。ヴォルフ坊ちゃんの射精が終わったら……♥︎ んぅっ♥︎」

「それはいいけど……。ねえ。旅の間は大丈夫だった? 首無しの妊婦が馬で駆けてた。そんな怖い怪談が巷で広がってないよね?」

「坊ちゃん、おっちょこちょいな私だって外出時は気を付けてましたわ。こんな姿を見られたら大騒ぎですもの」

 首から上には何もない。

 かつて鎮座していた気品ある美顔、プラチナブロンドの艶髪は消えている。頭部がないのだから当たり前だ。

 ――ベロニカの頭部は綺麗さっぱり欠損していた。