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デカジョ! vol.7(表紙:心ぴーち)

一水社『デカジョ!』
(毎月25日)

女はデカければデカいほどイイ!
身長もおっぱいもケツもデカいヒロインばかり!!

デカ女子特化アンソロジー【デカジョ!】第7号です♪

時代はまさに《デカ女子》ブーム到来…!
デカくてカワイイだけじゃない、エロいけどクセも強い
デカ女子の魅力をもっと見たい……そんな願いにお応えしました!

《手羽咲ちきん/ピポ/内東ぐら/泉たいち/歯肉はぐき/
心ぴーち(表紙)》が描くデカ女子たちのドスケベ痴態を満載
した作品のみを収録しました★

今号の表紙は……お祭りの日に純真な少年達をかどわかして
まとめて筆下ろしさせちゃうフンドシ姿の恵体お姉さんが目印♪

《収録作品》

■手羽咲ちきん【デカくてエロい尋問官 後編】
敵国に捕まった匂いフェチマゾの軍人が、精液から記憶を
読み取る激エロエスパー女尋問官から弱点性癖を突かれた
取り調べを受ける後編! 連日の激務で毛の処理どころか
シャワーすら浴びていない臭そうな蒸れ脇を晒す女尋問官の
責めに果たして男は耐え切れるのか…?

低身長マゾ男子を言葉責めとキツい足臭でメロメロに
してわからせちゃうエロくてドSなデカ女たちをこれ以上ない
リアルな臨場感と迫力で活写した作品を収録した電子専売
ハーフコミックス【ザコマゾ・ホイホイ】はFANZA・DLsiteにて
好評配信中!

■ピポ【イケメンとキモオタと地味巨乳】
絶倫キモメン彼氏とのあられもないセックス痴態の配信を
平然と行う三白眼恵体の女子校生・水谷ミナリ。彼氏との
出会いは実に一方的なものだった。ミナリは告白当日に
ゴム無しセックスを許し、恋人の儀式としてベロチュー・
チ○ポキス・アナルキスをさせられるのだった…。

ふしだらすぎる肉感煽情ボディの三白眼少女たちが
妊娠させる気マンマンの本気射精を何度も打ち込まれる
退廃的&厭世的ナマハメ痴態作品を収録した電子専売
ハーフコミックス【地味なカノジョの日常】は好評配信中!

■内東ぐら【橘先輩はガマンできない!】
高身長巨乳の美少女・楓には誰にも知られてはならない
秘密があった。それは抑えられない性欲を発散するために
保健室でオナニーすることだった! いつものように
性器を弄り始めると、その痴態を見ながらオナニーを
している見知らぬ男が眼前にいて…。

オトコの射精欲を煽りまくる大人しい巨乳少女が
ハードセックス調教でスケベなメス顔と大量の
ナカダシ精液が溢れる汁だく結合部を晒しまくる
単行本【ふしだらでドスケベで】は紙・単行本ともに
好評発売中!!

■泉たいち【秘密の自由研究】
夏休みの自由研究のために図書館に行った
少年マナブは、書棚の隙間から見知らぬ女性のパンツを
偶然見てしまう。慌てて立ち去ろうとするマナブに声を掛ける
女性・夏未はマナブの勃起した股間を触ってきて、豊満な
乳房を見せつけてくるのだった…。

■歯肉はぐき【歯肉はぐき劇場×2!】
ショート作品2本立て! 妹目当ての男の言いなりとなって
いるブス恵体の姉は媚薬の効果が無かった事で責められ、
遊園地で猿の着ぐるみバイトをしているメガネ女子はマセガキ
男子達に絡まれておま○こ浣腸&即ハメされるのだった…。

恵体すぎる地味ブス女子がオナホ扱いで無責任
ザーメンを子宮にこってり撃ち込まれる作品を収録した
電子専売コミックス【肉弾パコパコ地味子ちゃん】は
好評配信中!

表紙イラスト心ぴーち
執筆陣手羽咲ちきん,ピポ,内東ぐら,泉たいち,歯肉はぐき,一水社編集部,心ぴーち
価格770円(税込)
発行日2025/09/25

COMIC失楽天 2025年10月号(表紙:utu)

ワニマガジン社『COMIC失楽天』
(毎月24日)

utu描く、金髪ど淫乱ギャルは元教え子で……♪
単行本発売間近のもんちゃんrev3が魅せるエロすぎ受付嬢や、
全裸機密情報室、愛されビッチ、正統派母娘丼など個性派集う!!!!!

「それじゃ せんせ〜に生徒の成長を見てもらいますか〜?」

成長した元教え子と真夏の空の下、アツ〜い野外SEX♪ 表紙&巻頭は、utu『トロピカルな残滓』
労働環境の過酷さから疲れ果て、教師を辞職した桑田(くわた)。
働いていた間に来れなかった夏の海へ来てみたものの、完全アウェイ状態……。
らしくないことはしないのが一番かと人気のない場所で読書をしていると、急に声をかけられた。
声の主である見知らぬギャルに戸惑っていると、まさかの元教え子・甘木(あまぎ)と判明。
「人生お疲れモードみたいだし 特別にアタシが慰めてあげよっか?」
なんて言い出した甘木が自分の手を取り、いきなりキスをしてきて……!?

「私…疲れ切った方のおち○ちんが大好きなんです」

ビジホのマッサージサービスでやってきたのは……痴女!? 単行本発売決定! 注目はもんちゃんrev3『チェックイン』
出張で疲れ切ったサラリーマンの部屋にやってきたマッサージ嬢。
部屋に入った瞬間に服を脱ぎだした彼女の姿に慌てつつも、先ほど会ったばかりのホテルの受付だったことに気が付く。
疲れた男のお○んちんが大好きで……と語る彼女の望むまま、疲れた心と身体を癒される……はずだったが!?

あれ、童貞のくせにち○こ長くね……?……旅烏『ナッガ!!!!!!!!』
情報漏洩のリスクを根絶するため、全裸でお仕事!?……大作『踊るッ!!全裸情報機密室』
今日もナマイキな態度でたくさん煽って純愛ハードSEX♪……ぺに健『叱ってほしい!』
ご無沙汰だった身体が、思わず疼き始める……背徳浮気交尾……虹色ぐいん『堕トサレ母』

〈表紙作家〉
utu

〈収録作品〉
トロピカルな残滓/utu
チェックイン/もんちゃんrev3
ナッガ!!!!!!!!/旅烏
踊るッ!!全裸情報機密室/大作
叱ってほしい!/ぺに健
堕トサレ母/虹色ぐいん

表紙イラストutu
執筆陣utu,もんちゃんrev3,旅烏,大作,ぺに健,虹色ぐいん
価格660円(税込)
発行日2025/09/24

【31話】首無しのハーレム帝国

 帝都で名を馳せた女冒険者カレンティアの失踪事件は、大きな騒動となった。

 母方の血筋が伯爵家であり、ちょうど後継問題で揉めていることも火に油を注いだ。四年前に母のベロニカ、そして娘のカレンティアが連続失踪。

 大混乱の伯爵家は、さらなる事態に見舞われる。老齢の伯爵が心労で亡くなったのだ。

 雪解けの春が過ぎ去り、夏の盛りに差し掛かった頃、カレンティアの捜索は打ち切られた。当主を失った伯爵家では、分家筋が代理当主を擁立していた。本家筋のベロニカやカレンティアが見つかってしまうと非常に不都合であった。

 分家筋が支配を固めた伯爵家では、行方不明になった母娘の帰還を望んでいない。しかし、探し出そうとする者はいた。

 ヒースウッド修道院に出入りする商人達から情報を得て、北方辺境の荘園に辿り着いた冒険者が一人。その男はレーヴェ家の当主が暮らす闇樹館の扉を叩いている。

「――すみません。クロヴィスと申します。帝都からやってきた冒険者です。レーヴェ家の方々に聞きたいことがあって、この地に来ました」

 クロヴィスは手の甲で額に垂れた汗を拭う。北方の夏は涼しいが、炎天下で歩き続けたせいで、滝のように汗が出てくる。

「反応なしだな。本当に留守なのか? 荘園の村長から聞いた話と違うぞ。レーヴェ家の人間はこの屋敷にいると……」

 玄関の周囲を見渡す。人間が暮らしている気配はあった。

 軒先に幼児用の玩具が片づけてある。土いじりをした痕跡も見つけた。綺麗な泥団子が天日干しされている。

(レーヴェ家の当主は火事で手足を失っている。そんでお世話係のメイドが一人、娘が三人だったか……? 四肢を失ってもヤることはヤってんだな。恐れ入るぜ。俺と同い年くらいで三児の父親だろ? こんなド田舎でもお貴族様はやんごとないってことだ)

 隣町でも情報は仕入れた。異教の地を統べるレーヴェ家の評判はとても悪かった。しかし、実際に訪れてみると荘園の住人はクロヴィスを歓待した。荘園の管理を任された村長の頼みで、冒険譚をいくつか披露すると、無償で食事や寝床を提供してくれた。

(やけに親切過ぎる気もするけどな。レーヴェ家の指示だったりするのか? もっと排外的な村社会だと思ってたぜ)

 昨年の冬に行方不明となったカレンティア。父親の墓参りを済ませたのは、村の司祭から聞いている。ヒースウッド修道院では「商人に頼んで帝国北方に向かった」と分かった。カレンティアの足取りはレーヴェ家の荘園に続いていた。

 愛する婚約者は、この地で消息を絶った。そんな気がしてならなかった。

 荘園で働く住人はカレンティアについて「何も知らない」と口を揃える。だが、出入りする行商人は「昨年の冬、カレンティアという娘がレーヴェ家を訪ねたかもしれない」と教えてくれた。

(この地を治めるレーヴェ家に聞けば何か分かる。……と思ったんだがな。誰も出てこない。本当に留守か? 仕方ないな。一度、戻るか?)

 クロヴィスは荘園に戻って出直すつもりでいた。踵を返した瞬間、闇樹館の重たい扉が開き、奇天烈な格好のメイドが現れた。

「どなたですか? 商人さん……ではなさそうですわね?」

 黒騎士の兜で素顔を隠したメイドだった。荘園の村長から話は聞いていた。火事で顔に火傷を負って依頼、レーヴェ家のメイドは素顔をひた隠しにしている。

「俺はクロヴィス。帝都の冒険者です」

「帝都の? 冒険者?」

「……あぁ、えっと……これ、ギルドカード……! 確認してください。俺は怪しいものじゃないですよ」

 メイドが扉を閉めようとしたので、クロヴィスは冒険者の身分を示すカードを見せた。去年の冬に査定で合格し、ランクが一つ上がっている。

「本当に上級ランクの冒険者様ですね。なぜレーヴェ家に? ギルドに依頼を出した覚えはありませんわ」

 半開きの扉はメイドの警戒心を示している。クロヴィスを怪しむ口調だった。

「俺は人を探しています」

「誰かからの依頼で人探しですか?」

「違います。俺の……。個人的な要件です。カレンティアという女性を知りませんか?」

「知っていますよ。今、ここにおりますから」

「え……!?」

 玄関の扉が全開になる。まず視界に飛び込んできたのは、メイドの豊満な爆乳だ。

 大きすぎる膨らみで、メイド服の乳袋がパンパンになっている。重力をひしひしと感じさせ、超大な存在感を放つ。素肌を一切見せていないのに、肉付きだけで淫猥な雰囲気がある。クロヴィスの男根が反応し、半勃起状態になってしまう。

(すっげぇ……デカパイだ……。まるでカレンティアみたいだぜ……。だけど、黒髪だし……声も違うな。それにこのメイドさんは……)

 メイドは妊娠していた。

 腹部の膨らみは肥満にも見えたが、ボディラインの歪さで妊婦だと分かった。しかも、片手で小さな赤ちゃんを抱えていた。

「この子はカレンティアですよ。レーヴェ家の娘ですから、立派な女性レディですわね。冒険者様はこの子を探していたのでしょうか?」

「あ……いや……。この赤ちゃん……カレンティアちゃんって言うんですか?」

「ええ。ヴォルフ坊ちゃんのお嬢様ですわ。去年の冬に産まれた子です。半年ほど前ですわね。白金の御髪が綺麗でしょう? 他にも娘が二人おりますの。子育てで大忙しですわ」

「……メイドさんが母君で?」

 騎士兜を被ったメイドは漆黒の長髪。抱いている女児の髪は眩いプラチナブロンド。必然的にメイドが産みの母ならば、父親のヴォルフガングが白金髪だと思い込んだ。

「私の名前はリリトゥナです。そして、質問の答えは肯定いたしますわ。隣町にも寄られたのなら、当家の噂を耳にしたのでは?」

「ええ。まぁ……。はい」

「あら? もしや勘ぐっておられる? ヴォルフ坊ちゃんとは合意の関係ですわ。顔に大火傷を負った醜女を憐れんでくれたのです。感謝しておりますわ」

「俺は余所者ですし、偏見はありませんよ」

「ふふっ♥︎ 帝都でだって珍しくはないでしょう? ご主人様と使用人の肉体関係なんて、ありふれた話ですよ。もちろん、レーヴェ家が正式な奥方を迎え入れるときは、身を引くつもりですわ。無関係な余所様にお話すしすることではありませんけれど……。ふふふっ♥︎ くふっ♥︎ くっくくくくっ♥︎」

 リリトゥナは嘲るがごとく大笑いする。

「気分を害したなら謝罪します。隣町では色々な噂を聞きました。でも、俺は町の人間じゃありません。ただ……行方不明の恋人を探しているんです。その赤ちゃんと同じ、カレンティアという名前の女冒険者です」

「そうだったのですか。お気の毒に。けれど、そんな女性は知りませんわ。荘園で働く者達に聞かれては? 余所者の相手は村長に任せておりますの」

「もう聞きました。誰も知らないと……。でも、ある行商人が……昨年の冬、カレンティアがレーヴェ家を訪ねたかもしれない。そう教えてくれました」

「……そう。いい加減な行商人だわ。口が軽い癖に、真実でもないなんて。『昨年の冬、カレンティアという娘がレーヴェ家に誕生した』それを勘違いなさったのね。取引先の行商人を変えたほうが良さそうだわ。あとで、ヴォルフ坊ちゃんにお伝えしないと」

「昨年の冬は誰も来なかったんですか?」

「冬の間は誰も来ておりませんわ。唯一の道は豪雪で閉ざされ、春先は雪崩の危険があります。ここは辺境ですから」

 黒騎士の兜でリリトゥナの表情は見えない。しかし、言い表せぬ不気味な感じを覚えた。

(行商人から話を聞いたってのは、言わなきゃよかった。失言だったぜ。怒ってる気がする)

 背筋がぞくりとする。迷宮の最深部で怪物と遭遇したかのような気分だった。

「そうですか。……お時間を取らせてしまって申し訳なかったです」

「いえいえ。とんでもない。わざわざ当家を訪問してくださったのです。よろしければお茶を飲んでいきません? 炎天下の中、荘園から歩いてこられたのでしょう。ゆっくりと涼んでいってください。旅のお話や冒険譚をヴォルフ坊ちゃんにお聞かせく――」

 闇樹館に招き入れようとした瞬間、リリトゥナの胸元に抱かれていた乳飲み子が泣き声を上げた。

「――おぎゃっ! おぎゃあぁあぁー! ふぇええ~~んっ!!」

 空気を押しのける言葉なき叫びが鼓膜を揺らす。母乳のぬくもりを求めて、小さく柔らかな両手でデカパイを掴んだ。

「あら、あら。もう……。本当に……普段は静かな子なのに……。カレンティアったら……。今日はどうしたのかしら? 仕方ありませんわねぇ……♥︎」

 リリトゥナは器用にメイド服の襟元を緩めて、ブラジャーをずらし、左の片乳を引っ張り出した。泣き叫ぶ乳児の唇に乳首を押し当てる。

「おっぱいを吸って静かにしていなさい。お客様の前ですわよ」

 晒し現れた爆乳のバストサイズは、乳児の体躯を上回る。メイド服の上からでもデカパイなのは分かっていたが、実物が露出すると、その存在感は一層大きい。

「じ、ぢぶ……しっ、しつぅ、ごほん! 自分は失礼します! ご厚意はありがたいのです。しかし、これ以上はご迷惑になるので!」

 慌てた様子のクロヴィスは背を向けた。母乳をせがむ愛娘のためとはいえ、初対面の異性に乳房を見せたリリトゥナの行動に動揺した。

(なんていうか、貞操観念がやっぱ田舎だな。教会の教えが行き届いていない異教の地だからか? 普通は見せないだろ……。はあ。こっちが悪いわけじゃないのに……)

 恋人のカレンティアを思い出す。彼女も母親譲りの爆乳の美女だった。リリトゥナの授乳姿を目撃し、クロヴィスはみっともなくギンギンに勃起してしまった。

(メイドのリリトゥナさん……。乳輪がめっちゃデカいな。茶黒色だった。まさに母親ママの身体だな。子供を孕むとああなるのかな。――俺の探してるカレンティアとは大違いだ)

 クロヴィスはカレンティアの美体を知っているつもりだった。乳首の突起は控え目で、鮮やかな桃色の乳輪。爆乳の女性という共通点はある。だが、探している恋人とレーヴェ家のメイドは別人に違いないのだ。

「クロヴィスさんは荘園にいつまでご滞在なさるのですか?」

 立ち去ろうとしたクロヴィスを呼び止める。

「分かりません。近日中に旅立つかもしれません。行商人の話を聞いてここまで来ましたが、カレンティアは見つかりそうもない。いつまでも村長のご厚意に甘えるわけにもいきません。……それに……もう半年以上が経ってしまった。俺だけならともかく、仲間にも迷惑をかけっぱなしだ」

 クロヴィスは振り返らない。黒森の細道を小走りで駆けてくる仲間の姿が見えたからだ。

「あのお嬢さんがクロヴィスさんのお仲間ですか? 冒険者には見えませんね。あんな慌てた走り方では転んでしまいそうですわ」

「旅の同伴者ですよ。彼女は冒険者組合の受付嬢です。俺が北方に旅立つと言ったら、仕事を休職してついてきてくれた。俺まで行方不明になるんじゃないかと心配しているんですよ。長旅と夏バテで疲れていたから、村長の家に置いてきたんですが、追いかけてきたみたいです」

「…………。もし荘園を出られるなら明日がよろしいでしょう。夏は豪雨が降ります。ぬかるんだ悪路では地すべりも起こりますからね。帰れるときに帰ったほうがいい。おやまぁ、やっぱりあのお嬢さん、転びましたね」

 受付嬢は石ころで躓き、盛大にひっくり返った。

「あちゃあ……。たくっ……。怪我してなきゃいいけど……。ドジな奴なんですよ」

「いいえ、あのお嬢さんは狡猾です。アレ、わざと転んでますね」

「へ……。まさか? 演技?」

「はい。怪我はしていないでしょう。クロヴィスさんは慕われているのですね。早く助けにいってあげてください。あのお嬢さんはそれを期待していますわ」

 メイドは玄関の扉を閉める。

「――末永くお幸せに」

 別れの言葉を告げられた。

 その声色は聞き覚えがあった。先ほどまで話していた使用人の口調ではない。勝ち気な女冒険者カレンティアの声に似ていた。自分を叱りつけ、時には励ましてくれた愛する婚約者。もう一度、レーヴェ家のメイドと話してみたくなった。

「え……あのっ……!! ちょっ……!」

 息を呑んだクロヴィスは振り返る。しかし、もはや手遅れだ。

 施錠の音が鳴った。闇樹館の扉はもう開かれない。

「何だったんだ。さっきの声……? カレンティア? いや……まさかな。俺の聞き間違い……か……?」

 釈然としなかったが、クロヴィスは転んだ受付嬢を放置したままにはできなかった。

 メイドが言った通り、派手に転んだくせに受付嬢は無傷だった。わざと転んだ可能性は高い。しかし、それを指摘するほど野暮な男ではない。手を差し伸べると、受付嬢は嬉しそうに笑顔を作った。

 頬をリンゴのように赤く染めた受付嬢はクロヴィスに抱きつく。婚約者を失った男の心は揺さ振られている。カレンティアの手掛かりは途絶えてしまった。これから先、見つかるかは分からない。

「痛い……。お尻を打っちゃいましたぁ……。クロヴィスさん! 酷いです! 私だけ置いていくなんて!」

「悪かったよ。大丈夫か?」

「足を痛めたかも……。痛いです……」

「手を繋いで帰ろうか。あぁ……。そうだな……。もう帰ろう……。十分、よくやったよな。カレンティアは見つからなかったよ」

 クロヴィスの旅は終わった。

 この決断は大帝国の滅亡を決定づけたが、当人達にその自覚はない。

 ◆ ◆ ◆

 メイドは玄関の覗き窓からクロヴィスと受付嬢が帰っていくのを見届ける。

 二人は恋人同士のように手を握っていた。不思議なことに嫉妬で怒りを覚えた。だが、婚約者の不貞を責める資格は、今の彼女にはない。

「これで……戻れないわね……。でも、これでいい」

 肉体の主導権を移譲されたカレンティアは安堵していた。リリトゥナはクロヴィスの首を刎ねるつもりで、闇樹館に誘い込む気だった。しかし、冒険者組合の受付嬢が同行していると知った途端、潔く手を引いた。

 正しい判断だ。利口で狡猾な受付嬢は旅の道中、帝都に手紙を送り続けていた。もし自分達が行方不明になったら、冒険者組合が本格的な調査に乗り出すための布石だ。

 これから先、受付嬢は外堀を埋めていくだろう。帝都への帰路でクロヴィスを自分の物にしてしまう。

(腹立たしい女。でも、しょうがないわ。先にクロヴィスを裏切ったのは私なのだから……。私の子宮はヴォルフ坊ちゃんに恋している)

 カレンティアは子供部屋に赤子を連れて行く。姉のダザリーヌとアヴェロアナがお昼寝している横に寝かせた。自分と同じ名前を与えられた異父妹カレンティア2世。貌を覗き込むと、鏡を見ている気分になる。

「母乳は後で母さんからもらいなさい」

 クロヴィスの前で授乳を披露したが、カレンティアの乳房は母乳が出せない。母胎の泌乳は出産を済ませてから始まる。他の先輩メイドと違って、新人メイドはまだ産んでいない。

 ――もし産むのなら生贄が必要だ。

 カレンティアは寝室に向かう。真夏の最中だが寝室は窓を閉め切っていた。

 熱気が籠ってしまうが、騒々しい喘ぎ声が漏れるよりはいい。扉をノックし、性宴の会場に入室する。

「おぉっ♥︎ んぉっ♥︎ あんっ♥︎ さあ、ヴォルフ坊ちゃん♥︎ たっぷりお飲みください♥︎」

「はぁ♥︎ んぁっ♥︎ あぁんっ♥︎ ベロニカ様ばかりずるいですわ。ヴォルフ坊ちゃん♥︎ 私のおっぱいもお召し上がりくださいっ♥︎」

 ベッドの寝そべった二人の美熟女が、ヴォルフガングを豊満な乳房で挟んでいる。乳首から噴き出るミルクを飲ませていた。四肢欠損の青年は交互に母乳を吸う。

 ベロニカの右手がヴォルフガングの陰嚢を揉んでいる。陰茎の竿はダミエーラの左手が握りしめていた。二人の美熟メイドは股間に手を伸ばし、御主人様のオチンポを苛めるように搾精する。

「くふふっ♥︎ 出したいのですか? ヴォルフ坊ちゃん♥︎」

「あらあら♥︎ でも、まだ射精してはいけませんわ♥︎」

 射精の寸前で手扱きは動きを止める。完璧な射精管理によって、一度も放精が叶わない。亀頭は我慢汁でずぶ濡れだ。

「ふふっ♥︎ ヴォルフ坊ちゃん。ほら、ご覧ください。やっぱり私の娘は戻ってきましたわ。裁きの日は遠退きましたね。賭けは私達の勝ち。これからずっとこの幸福な日々が続く♥︎ 永久に……♥︎ レーヴェ家の繁栄を謳歌したいのです♥︎」

「リリトゥナの予想通り。当然だわ。帝都に残した恋人よりもヴォルフ坊ちゃんを選ぶ♥︎ 分かりきっておりましたわ。さあ、カレンティア。服を脱いで、こちらに来なさいな。このままだと私とベロニカ様の手扱きで、射精させてしまうわよ」

 ベロニカとダミエーラに急かされ、全裸になったカレンティアはベッドの上に登り、猛々しく勃起したオチンポに跨った。

 身籠った下腹部の出っ張りがより目立つ。クロヴィスではなく、ヴォルフガングの精子で孕んだ胎だ。懐妊で肥大化した爆乳は、母親を凌駕する巨峰が実った。乳輪が茶黒に染まったのは、実母からの遺伝で間違いない。

 伯爵家の母娘はそっくりだった。男の好みも――。

「私を探しに来た男は……私を諦めましたわ。私も……昔の男は捨てました。だから、お願いします……♥︎」

 カレンティアは騎乗位でヴォルフガングと交わる。挿入された瞬間、溜めに溜められた精液が噴出した。膣内で精液が暴れている。

「くっ……! うっ……。カレンティア……! 僕は……!!」

 必死に何かを訴える。左右から押し付けられた乳房に溺れて、ヴォルフガングは苦しげだ。だが、カレンティアは構わずに腰を振り始めた。上下に尻の肉が揺れる。金槌で釘を打ち付けるように、リズミカルなテンポで肉音が鳴る。

「いいのっ……♥︎ もう我慢なんかしないで♥︎ 私を奪って……♥︎ 理性なんかいらないっ♥︎ 道徳心も……! 教会の信仰も……!! ヴォルフ坊ちゃんだって、私を犯したいんでしょ? 犯してっ! 滅茶苦茶にしてぇっ!! 私の心を堕としなさいっ……♥︎ ダミエーラや母さんを虜にしたように……!! リリトゥナを誘惑したように♥︎」

「カレンティア……? 操られて……うわっ……!!」

「違う! 本気だから……私は……本気っ……!! ほとぼりが冷めたら、帝都に行きましょう♥︎ 伯爵家の家督を奪いに……! お祖父ちゃんは遺言を書いているわ。分家筋に爵位や財産を渡しはしないっ……♥︎ 奪い返せるわ……♥︎ ヴォルフ坊ちゃんは伯爵家を乗っ取れるのぉっ……♥︎ クロヴィスと結ばれたあの女にも、私の幸せを見せつけてやるんだからっ……♥︎」

「僕はそんなのっ、望ま……はぅっ……くゅ……ん……!」

 首無しメイド達は主人の身体に縋りついた。恥部を擦り付け、一斉に甲高い喘ぎ声を奏でる。三人の肉体に宿ったリリトゥナが悦びを歌う。差し出された三人の乳房を咥える。

「もっと繁栄できるわ。お願いよ。の望みを叶えて……♥︎ 坊ちゃん♥︎」

「黒森の根を広げるのです。伯爵家の力さえ手に入れれば、隣町を潰すのは簡単だわ。本物の貴族になるのですから♥︎ 母娘おやこの懇願をお聞き入れくださいませ♥︎ 坊ちゃん♥︎」

「レーヴェ家の繁栄は当主の義務ですわ。亡くなられた先代と奥方、使用人達の遺志を汲んでくださいませ♥︎ 坊ちゃん♥︎」

 誰かが裁きを下してくれる。しかし、ヴォルフガングの破滅願望は叶いそうになかった。

(いけないことなのに……。僕は……快楽に負けてる……。これからも奪い続けてしまうんだ。カレンティアを盗ったように……。赤ちゃんの胎動が伝わってくる)

 黒森の支配圏はこれからも広がっていくだろう。伯爵家の力を吸い取り、隣町を勢力下に置く。無論、その程度では侵略は止まらない。広大な帝国を少しずつ、長い歳月をかけて着実に蝕んでいった。

 ◆ ◆ ◆

 およそ一世紀後、大帝国を統べてきた帝室がげ変わる。異形の暗躍を悟った冒険者組合は、諸外国に助けを求めた。しかし、反抗の隙を与えぬ鮮やかな帝位簒奪は止められなかった。

 帝室男子は根絶され、皇女や皇妃などの若い女は新帝に娶られた。教会の一夫一妻制を廃し、新帝の子を作るハーレムが誕生した。

 そして、一年と経たずに旧帝国の征服完了はで示される。

 新帝国の樹立を宣言した日、国民の前で首無しの妊婦達がお披露目となった。若い皇女は当然、殺された皇帝の妻である皇妃、さらに徹底抗戦を唱えていた母后までも孕んでいた。

 間引きは完遂され、旧帝室の血筋は完全に滅びた。レーヴェ家の子種で妊娠した女だけが生存を許された。胎を膨らませた旧帝室の女達は敗北を認め、皇朝交代を国民に告げた。

 レーヴェ家の繁栄は極みに達した。

 黒森の根が国土全域に広がり、狂信的な国民は首を皇帝に捧げ始めた。いつしかそれが義務となり、頭部欠損の新生児が生まれるようになる。人間の国ではなくなった。

 黒森に覆われた首無しの帝国。異形の支配する魔境。原生樹の根本に埋まった供物の頭は、おぞましい山を築いていた。原生樹から注がれる生命力で、四肢欠損の大帝は老死を迎えられなかった。

「――あぁんっ♥︎」

 オマンコを貫かれた首無しメイドが喘ぐ。憑代にされている美女は千人を超えた。

 ハーレムの女は等しくメイドだ。妻に相応しい肉体をリリトゥナは求め続けている。

 今、抱いている首無し美女は旧帝室の女。ずっと抵抗を続けた皇帝の母親を犯している。何千人もの家臣を従えた高貴な淑女はメイドに零落し、何十人もの子供を産ませた。玉座に腰掛けた四肢欠損の不具者に性奉仕を続ける。

「ヴォルフ坊ちゃん……♥︎」

 リリトゥナの声が混じっている。母后は両手で乳房を揉み、噴き散らかした。控えていた者達も続々と群がってくる。その中には古参メイドとなったダミエーラ、ベロニカ、カレンティアの三人もいる。原生樹から供給される生命エネルギーのおかげで、オチンポの精力は底なしだ。群がってくる女に種付けする生態系が築かれた。

「愛しておりますわ。もっと私達を抱いてぇ…♥︎」

 ヴォルフガングは無貌の美女メイドに愛されながら、裁き日を待ち続ける。

「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」「坊ちゃん♥︎」

 取り囲むメイド達に代わる代わる種付けしていった。差し出されたオマンコにオチンポを挿入する。交配し、孕ませ、産ませる。赤子には国民達が捧げた貌を与える。植物栽培のような家畜的繁栄だ。

 終わりなき幸福が続く悪夢。勇者が現れ、自分の首を刎ねることを望んだ。

 ――未だに終わりは訪れない。

【30話】原生樹の分娩台、三人目の娘 

 黒森に隠された原生樹は異神の化身である。

 レーヴェ家の荘園で育てられた果樹は、リリトゥナ=キスキルによって齎された恵みだ。

 無貌の異形者は頭部を欲する。この地で暮らす人々は死後に頭部を捧げる。そびえ立つ原生樹の根本では何百年もの間、供物にされてきた頭蓋骨が積み上がっていた。

 おぞましい異教の首塚。教会の信徒からすれば、邪教の祭壇にしか見えない。だが、レーヴェ家と荘園に住む者達にとっては神聖な場所だ。北方の痩せた僻地で、厳しい冬に襲われながらも、裕福な暮らしができるのは、この異神のおかげだ。

 隣町の人間はリリトゥナを悪霊と呼ぶ。だが、レーヴェ家では守護精霊であり、敬愛する女神であった。女神もレーヴェ家の人間を幾代も見守り続け、深く愛していた。

 ダミエーラやベロニカは渇望していた憑代だった。

 レーヴェ家の使用人や荘園で働く人々がずっと羨ましかった。欲しかった肉体をついにリリトゥナは手に入れた。しかも、想いを寄せていたヴォルフガングの幸せに尽くせるのだ。

 原生樹の枝がうねっている。触手のように手足を絡め取り、妊婦の裸体を支える。重力で垂れ下がったボテ腹は、より一層大きくなっていた。膨らんだ巨胎は完熟した果実を思わせる。

「あぁっ♥︎ はぁっ……♥︎」

 ベロニカは原生樹に我が身を委ねている。周囲は雪が降り積もっていたが、この周囲だけは真夏の蒸し暑さだ。裸でも汗を掻くほど暖かい。

「ヴォルフ坊ちゃん。はぁはぁ……。んぅっ……。そろそろですわ……♥︎ 陣痛が激しくなってきました……♥︎」

 原生樹にはヴォルフガングも絡め取られている。何十本もの枝木が四肢欠損の矮躯を抱きかかえ、地中から伸びた根が栄養を血管に注ぎ込む。精力の強制的な供給。地中から吸い上げた絶大な生命エネルギーは、レーヴェ家の若君に授けられる。

 人間は愛情を込めて果樹を育てる。それと同じだ。

 原生樹はレーヴェ家の一族を愛でている。朽ちぬ繁栄のために、ヴォルフガングと優れた女を交配させて子孫を作る。五年前の大火事で、たった一人になったヴォルフガングの種で、レーヴェ家を復興させねばならない。

 伯爵家の血筋を引くベロニカは、とても優秀な胎を持つ美女だった。年齢の問題で孕ませるのは諦めていたが、驚くべきことに二度も身籠った。遺伝子の相性が適合していた。

 英雄の愛妻であった未亡人、異神に愛でられた青年。絶対に結ばれるべきではなかった男女である。だが、一度でも交われば、その繋がりは誰にも絶てない。

「ベロニカ……っ! 駄目だ。僕らの子供が産まれたらカレンティアは……!!」

 ヴォルフガングの男根にベロニカの巨尻が押し付けられた。

 陣痛で痙攣を繰り返す膣穴が、オチンポの迎え棒を懇願している。リリトゥナの化身である原生樹も、抱き吊るし上げたヴォルフガングに挿入を促した。

 前屈まえかがみのベロニカは、立ちバックの体勢で背中を反らし、淫汁の涎で濡れたオマンコを見せる。どんな紳士であれ、男根を生やしたオスはこの誘惑に勝てない。

 ヴォルフガングの勃起オチンポは血管が浮き出るほど硬く、屹立してしまった。

「ヴォルフ坊ちゃんはよくやってくれましたわ。だから、もういいのです……。カレンティアは逃すのはもう無理……。だって、レーヴェ家の赤子を宿してしまった。私やダミエーラのようにっ……♥︎ 憑代としてぇ……♥︎ この地で生きていかねばなりませんっ♥︎」

「でも! でも……! だからって……うっ……!」

 ベロニカのオマンコが亀頭を咥え飲む。媚肉の襞がオチンポを取り囲む。美熟女の使い古された産道は、あどけなさが残る青年の情欲をがっしりと掴む。

「あぁっ♥︎ んぁっ♥︎ ヴォルフ坊ちゃん……♥︎ 私は酷い母親です……♥︎ カレンティアは大切な娘……。でも、やっぱり私は産みたい……♥︎ 授かった赤ちゃんを……♥︎ 愛している御主人様の子供をっ……♥︎」

 原生樹の介助によって、ベロニカとヴォルフガングは背面立位のセックスを遂げる。ぶすりと後ろから突き刺さった肉棒が産道を押し広げ、根元まで食い込んだ。挿入で押し上げられた巨尻が、淫靡な楕円型に歪む。

「こんなことはいつまでも続かない。ダミエーラとベロニカは合意があった。原生樹に捧げられた首だってそうだ。だけど、カレンティアは違うんだよ……」

「えぇ♥︎ そうですわ♥︎ 悪業の報いを受ける日が来るかもしれませんっ♥︎ でも……この幸せには……代えられない……♥︎ とても罪深い。許されざることですわ。けれど……私は誘惑に抗えない……♥︎ 私はカレンティアをお捧げします。十八年前に産んだ我が子を……っ! この生贄を受けて取ってくださいっ……!!」

 ベロニカは宣言してしまった。異神の化身である原生樹は不徳な母の願いを聞き届ける。

 生贄のカレンティアは仰向けで地中に囚われていた。幾重もの根っこに縛られ、身動きが取れない。見上げた視線の先では四年もの間、ずっと探し続けていた母親は淫魔のように腰を振っている。

 母乳を噴き漏らし、快楽に酔い痴れ、おぞましい異教に女神に祈りを捧げていた。自分を産んだ女穴でオチンポを激しくしごき、けたたましい肉音を奏でる。

 夢見心地のカレンティアは、帝都に残した婚約者のクロヴィスに詫びる。帰ったら結婚するつもりだった。しかし、その未来は潰えた。

 引き返す機会は何度も与えられた。

 ヴォルフガングが再三にわたって警告した。しかし、それを無視したのはカレンティア自身の判断だ。母親が新しい男と新たな家庭を築いている。その現実を許容できなかった。

 英雄を愛した未亡人。夫の墓守であり続ける母親を望んだ。ヒースウッド修道院で余生を送り、ずっと自分だけの母親であってほしかったのだ。ベロニカもヴォルフガングに惹かれるまでは、理想の母親を演じ切る覚悟だった。

 ――しかし、運命はじれ狂った。

「んあ゛ぁっ♥︎ あ゛ぁぁっ♥︎ あ゛あぁぁあぁあああああああああああああああああぁぁぁ♥︎ んお゛ぉぉぼぉおぉォォオおおおおおおおおおおおおおおォォォォォオォォォォォォ~~♥︎」

 ベロニカはヴォルフガングを愛し、ヴォルフガングもベロニカを愛した。無貌なる異神は祝福を与えた。

(――ヴォルフ坊ちゃん。私の力をお捧げします。手足を失おうとも、レーヴェ家を復興させる偉大な支配者になるのです)

 リリトゥナの声が脳内に響く。血管に繋がった原生樹の根がヴォルフガングの肉体に生命力を送り込んでくる。陰嚢を包み込んだ細長い根毛は、挿入されたオチンポに絶大な精力を発揮させた。

(大貴族の女をヴォルフ坊ちゃんは征服したのです。英雄と持て囃された冒険者の妻を奪い取った。未亡人のベロニカを孕ませたとき、責任を取ると仰られた)

 リリトゥナは囁く。その声はヴォルフガングとベロニカを導き、生殖器の交合がさらに強まった。絡みついた枝が、セックスする二人の身体を固定する。

「もうっ……十分だよ……。僕とベロニカにはもう娘がいる。アヴェロアナを産んでくれたじゃないか……っ!」

(二人目ができてしまったのですよ。しかも、ぴったりの貌が捧げられたわ。ベロニカの望みを叶えてあげてください。カレンティアを助けることではなく、ヴォルフ坊ちゃんの赤子を産みたがっているわ)

「子供のためにカレンティアを生贄にしたら……」

(よろしいではありませんか。首無しのカレンティアを使用人にするのです。若い胎はレーヴェ家の子をたくさん産んでくれることでしょう。ヴォルフ坊ちゃんは年増がお好きだと存じておりますが、若い娘も悪くはございませんよ……♥︎)

 理性の堤防は決壊し、獣欲が濁流となって善悪の分別を押し流す。射精する亀頭が羊膜を破った。

「ごめんなさいっ……」

 ヴォルフガングは子宮を突き上げる。首無しの赤子は自然出産できない。ダザリーヌやアヴェロアナを分娩させたときも、男根で迎え棒を行った。

「んんぅ♥︎ んぉおぅっーー♥︎ んお゛ぉ♥︎ おぉっ♥︎ お゛っ♥︎ お゛♥︎ んおぉぉおぉォォ~~♥︎ ああぁっ♥︎ んぎぃ♥︎ ぎぃっひぃいっ♥︎ おおおおおおおおおおおおおおォーー♥︎」

 ぢゅぽんっと男根が外れた。

 栓の抜けた風呂桶から湯水が流れ出るように破水した。湯気の立ち昇る羊水が股を流れう。セックスでほぐされ、十分に開大した産道を赤子が通る。

「はぁはぁっ♥︎ はぅ♥︎ ひぃっ♥︎ ふぅっ……うぅ……♥︎ ヴォルフ坊ちゃん……♥︎ 産むっ♥︎ 産まれぢゃうっ……♥︎ 出てくるぅうっ!!」

 黒騎士の兜で覆われた頭部は涙を流さない。だが、もしベロニカの貌が残っていたら、大粒の涙を流していただろう。その涙が何を意味するのかはきっと本人でも分からない。

 ――首無しの女児がこの世に産まれた。

 産声は聞こえてこない。原生樹の根に取り上げられた女児は頭部が付いていなかった。

(ふふっ……♥︎ なんて可愛いお嬢ちゃん。立派な貌をすぐにいであげますわ)

 原生樹は産まれたばかりの赤子をあやす。そして、生贄のカレンティアに語りかける。

(そんな怯えなくていいでしょうに……。安心しなさい。首を刎ねるだけ。殺さないわ。ヴォルフ坊ちゃんを横取りしようとした貴方は気に入らない。けれど、憑代は増やしておきたい。若い召使いが欲しかったの。レーヴェ家のメイドになりなさい)

 カレンティアの首がくるりと回転した。頸部が捩じ切れ、頭部を奪われる。血は一滴も出なかった。漆黒の暗闇が切断面を覆っている。

「はぁはぁ……♥︎ あれを見て……。ヴォルフ坊ちゃん。カレンティアが私達の新しい娘になりますわ♥︎」

「そうだね。ベロニカ……」

 ヴォルフガングは素直に祝福できなかった。しかし、もはや自分では止められない。

 黒森と契約を結び、これまで維持していた異神との均衡を崩したのは自分だ。貞淑な未亡人であったベロニカの心を奪ったのも自分。誇り高き騎士であったダミエーラを蘇らせたのも自分。全ては己が望んだ願いだ。

 黒森の支配者はヴォルフガングの欲望を叶えている。

(誰かが裁いてくれるその日まで……。僕は……捧げられた女性達を孕ませ続けるのだろう……)

 異形の赤子はカレンティアの頭部に手を伸ばした。断面の細胞が結合していく。頭蓋の大きさが縮み、赤子の身体に適合する。

 黒森に産声が響いた。

 首無しのカレンティアがゆっくりと起き上がる。

 異父妹に捧げた頭部の代わりに、漆黒の無貌が形成される。完璧な憑代に仕上がった。主導権を奪われることは絶対にない。

「乳房の重みが軽く感じられます。素晴らしいわ。若くて強い身体です。ベロニカは良い娘を作りましたね。自我が強かったけれど、首を落とせばおとなしいものですね」

 赤子を抱き上げる。母親と勘違いした乳児は乳首を甘噛みしてくる。

「おやおや……。私はママではありませんよ。そのうち、母乳をあげられるようになるでしょうけれど……」

 漆黒で塗り潰された貌は酷く不気味だ。しかし、無垢な赤子に恐怖心はない。たとえその頭部が以前は異形狩りの凄腕冒険者であったとしても。奪い取られた貌は、もう異父妹の身体に馴染んでいた。

「さあ、ベロニカ。どうぞ。貴方の可愛い娘ですよ。おっぱいを吸わせてあげなさい。お腹を空かせているわ」

「はぁはぁ……。わたしの……むす……め……。白金髪の……。可愛い女の子……」

「ヴォルフ坊ちゃんはこちらに。おめでたいですわ。一緒に名前を考えましょう。産声を聞いたダミエーラが迎えに来るまでに決めたいですね」

 母胎と赤子を繋いでいた臍帯を切断し、引きずり出した胎盤は原生樹の肥料となった。

 疲労困憊のベロニカは渡された愛娘に授乳する。娘を産むためにもう一人の娘を生贄に捧げてしまった。重たい罪悪感と新しい子供を産んだ幸福が混ざり合う。

「これからカレンティアの身体をずっと使い続けるつもりかい?」

「ヴォルフ坊ちゃんが望まれるのであれば、そういたしましょう」

 無貌の異神は主人を抱き締めた。

「僕はそれを望まない……。胸が苦しくなる。きっとカレンティアに恨まれる」

「さあ。それはまだ分かりませんよ。私とダミエーラで、ベロニカを誘き寄せた四年前、ヴォルフ坊ちゃんは同じ言葉を仰っておりましたね。しかし、現在はそうなってはいません」

「…………。それって結果論じゃない」

「結果論にどんな問題があるです?」

「一般的には大問題だよ」

 ヴォルフガングは複雑な表情で、三人目の娘を眺めていた。生母の爆乳を美味しそうに頬張っている。四年前に出会ったばかりのベロニカだったら、カレンティアを生贄にする決断はしなかったはずだ。

 ベロニカを淫母に変えてしまったのは、紛れもなくヴォルフガングだ。未亡人の寂しさに浸け込み、恋心を燃え上がらせた。

「ヴォルフ坊ちゃんはご自分が思っている以上に魅力的な殿方なのですよ。婚約者のいる女冒険者くらいお手の物でしょうに……♥︎」

【29話】着床 

「いけませんわ。ベロニカ様……! たとえヴォルフ坊ちゃんの望みであろうとも……。やはりカレンティアは帝都に帰せませんよ」

 現れたもう一人のメイドは剣を握っていた。

 叙勲を受けた騎士の剣が煌めく。無論、メイドは首無しだ。黒騎士の兜を装着している。

「貴女は……!! ダミエーラ……っ!」

 無貌であろうと、カレンティアにはその正体が分かった。背後には紫紺髪を靡かせたダザリーヌの姿もある。

「初めまして、カレンティア。私はレーヴェ家にお仕えするダミエーラと申します。現在はメイド、以前はヴォルフ坊ちゃんの家庭教師をしておりました。私の素性はお聞きになっているのでしょう?」

「……っ!」

「リリトゥナの支配を撥ね退けた精神力は、まさしく英雄の娘。それとも由緒ある伯爵家の血筋とお褒めするべきでしょうか。娘の遊び相手をしてくださり、本当にありがとうございました。子守りがお上手ですね? ダザリーヌはカレンティアを気に入っておりましたよ」

「貴方が母さんをレーヴェ家の荘園に……! 呼び寄せた元凶……!!」

「ええ。はい♥︎ 四年前に手紙で誘き寄せました。リリトゥナと私の策謀ですわ。ヴォルフ坊ちゃんに止められてしまったので、伯爵家の乗っ取りは頓挫しました。あぁ、残念♥︎ しかし、実に幸運です。まさか貴方まで来てくれるなんて……。既成事実を作ってしまえば、ヴォルフ坊ちゃんも受け入れてくださるでしょう」

「悪びれもしないのね! かつては伯爵家に仕えていた騎士だったくせに……!!」

「私はレーヴェ家に朽ちぬ繁栄を与える。そのために蘇ったのです。ベロニカ様がそうであったように、カレンティアにも協力してもらいますわ ふふっ♥︎ くふふふふっ♥︎」

 ダミエーラの声にはリリトゥナの口調が重なっていた。人格が混じっているのだ。

(間違いない。リリトゥナが混ざってるわ。私の肉体から抜け出て、憑依先を変えようとしている……。ヴォルフ坊ちゃんや母さんと違って、こいつらは私を逃がす気がない)

 ダミエーラは黒森の支配者と同化しつつある。憑依先になった人間は、いずれリリトゥナと自我が溶け合う。

「へえ? レーヴェ家の朽ちぬ繁栄? 私の首を刎ねて、赤子に挿げ替える気? リンゴを接木で増やすみたいに……! そうやってレーヴェ家を繁栄させるっていうの!?」

 首のない母親が二人。

 母親とそっくりな顔の娘が二人。

 簡単な足し引きで辻褄が合う。

「異形と人間は子供を成せません。リリトゥナに憑依された女は、首無しの赤子を産み堕とす。けれど、足りないのなら補えばいい。母から娘への贈り物です」

「とても正気とは思えないわ。狂っている! 人間の頭を挿げ替えるだなんて……! どうかしてるわ!」

「そうでしょうか? それなら貴方の母君は異常者? くふふっ……。ベロニカ様は決断してくれましたよ。親友である私の想い。そしてヴォルフ坊ちゃんを愛しているから……♥︎ ダザリーヌとアヴェロアナは母親似の可愛い娘達でしょう?」

「母さんが産む二人目の赤ちゃんのために、私の貌を寄こせってわけ!?」

「ベロニカ様が宿した赤子は女児です。カレンティアの貌がきっと良く似合う。レーヴェ家の娘になってください」

「ダミエーラ……! かつての貴方は尊敬に値する騎士だったわ。レーヴェ家を守るために戦った……! けれど、今の貴方は気高き人間性を完全に失ってしまった!! 黒森の支配者に取り憑かれたせいなの!?」

「さあ? そうかもしれませんね。しかし、後悔はないです。レーヴェ家の繁栄に尽くせるのですから……♥︎」

「行くところまで、行っちゃってるようね」

 カレンティアは説得を諦める。もはや戻ってこられない狂気の先にダミエーラは進んでいる。

「あぁ、その若い身体……。ぜひ欲しい。私達は歳を取り過ぎました。ヴォルフ坊ちゃんの子供を産み続けるのは難しい。年齢の割にベロニカ様は頑張ってくださいましたが、若い母胎が欲しいのです」

「五年前に起きた事件には同情するわ。隣町の司祭が死んだのも自業自得……。だけど、異形が起こす災厄は看過できないわ。レーヴェ家はこれから首を狩り続ける気でしょ。だったら、冒険者としての行動を取らせてもらうわ!」

 カレンティアは滅魔の聖剣を鞘から解き放った。

「――ごめんなさい、母さん! 私、やっぱり見過ごせないわ!!」

 ここで新たな幸せを掴んだ母親にとっては悲惨な結末だ。レーヴェ家の当主であるヴォルフガングも処罰を免れない。異形の存在と契約を交わし、聖職者を殺めさせた。その大罪は極刑でしか贖えない。カレンティアの決断はレーヴェ家を滅亡させるだろう。

(まずはダミエーラを倒して、ヴォルフ坊ちゃんと母さんを説得する! 私の勘が正しければ、リリトゥナには本体がある。おそらく黒森のどこかにある原生樹……。隣町の司祭は悪人だったけれど、倒し方を見つけていたんだわ。リンゴの原生樹を燃やせば……リリトゥナはこの世から消える……!!)

 異神リリトゥナを葬り去ったとき、レーヴェ家の子供がどうなるかは分からない。母親から首を挿げ替えられて産まれた姉妹。もしかしたら死ぬかもしれない。

(たぶん……。私は母さんも殺すことになる……!)

 首を失っている母親は間違いなく絶命する。それでもカレンティアは覚悟を決めた。

 契約を結んでしまった者では止められないのだ。リリトゥナとダミエーラを放置すれば、これからも犠牲者が増え続ける。レーヴェ家を繁栄させるために大勢の人間が苗床となる。

(私がやらないと――)

 レーヴェ家の若君は裁きを望んでいた。報いを受けるその日を待ちわびている。

「――っ!?」

 聖剣を振り上げたカレンティアは驚愕する。渾身の力を込めて握っていたのに、柄がすり抜けた。聖剣がするりと転がり落ちる。

「なっ、なに……!? これぇっ!? ひぃっ! いっ!? んひぎぃっ……! んォ……! オォっ……♥︎」

 カレンティアは下腹部を押さえてうずくまる。

 子宮に熱した鉄球をれられたかのような焼けつく痛み。けれども、激痛以上の快感が伴っている。胎の奥底から生じた官能的悦びが肢体の感覚を麻痺させる。

「いったい……なにを……! ふひぅ♥︎ んぁっ♥︎ んォ♥︎ お゛ぉっ♥︎」

 両脚に力が入らない。新雪の絨毯が敷かれた地面に倒れ伏し、ダミエーラを凝視する。だが、カレンティアの異変は攻撃によるものではない。

「カレンティアを帝都に帰すわけにはいかない。だって、お腹にレーヴェ家の赤ちゃんがいるんですもの。さすがはヴォルフ坊ちゃんの精子♥︎ 優秀な種ですわぁ♥︎」

 ダミエーラは地面に落ちた聖剣を遠くに蹴り飛ばした。

「は? ふざけっ……ふぃんひっ♥︎」

「いくら口で否定しようと、ヴォルフ坊ちゃんに魅了されたのは事実。心を一度でも許し、惹かれてしまった。もはやこの地から逃れられないわ。女神の憑代はレーヴェ家に仕える。それが往古に結ばれた契約よ」

 ヴォルフガングの精子は実ってしまった。カレンティアの胎には新たな命が宿っている。懐妊は帝都に残した愛する婚約者クロヴィスを裏切った証。胎児はこの地に留まるため、母胎を苦しめている。

(妊娠……! そんな私が……妊娠なんて……!!)

 リリトゥナに憑依された状態でカレンティアは懐妊した。赤子は呪われ、異形の姿で産まれ墜ちる。このままカレンティアが帝都に逃げ帰ったら、胎の赤子は堕胎されるだろう。仮に産む決断をしても、赤子は産声を上げられない。

 首無しの赤子には、挿げ替える頭が必要だ。

「あぁっ……♥︎ いぎぃっ……あぁんっ……♥︎ だっ……! だぁすけ……ぇ……! かぁ……さぁ……んっ…………!!」

 カレンティアは口から唾液の泡を吹き漏らす。手を伸ばし、視線で訴える。子供のように泣きじゃくり、母親に助けを求めてしまう。しかし、全ては手遅れだ。

 もうカレンティアの母親ではない。大切な結婚指輪を外し、十五年前に死に別れた夫の墓に捨てた。その瞬間、ベロニカは母親から女に生まれ変わった。

「ごめんなさい。カレンティア。ヴォルフ坊ちゃんの赤ちゃんを宿してしまったら、もう助けられないわ。でも、また私の娘にしてあげる……。また家族になりましょう」

 ベロニカは慈母の眼差しで、倒れ伏したカレンティアの貌を撫でた。限界点まで膨張し、張り詰めた巨大なボテ腹が蠢いている。

「どぅ……しぃ……てぇ……」

「愛してしまったからよ……。心の底からを愛しているわ。貴方の父親よりもヴォルフ坊ちゃんが……今は好きなの……! ふしだらな母と嗤ってちょうだい。若い男に心を奪われた愚母を……」

 ベロニカはカレンティアの頸部けいぶに両手をかける。

 握力を徐々に高めて、喉を圧迫していく。殺意は込められていない。意識を失わせるために優しく締める。

「やっ……! め……ァ……!!」

 カレンティアの意識は漆黒に飲み込まれた。

【28話】接がれた母親の貌

 翌日の早朝、カレンティアは奪われた聖剣を探していた。ヴォルフガングから過去の真相を聞き出し、リリトゥナが黒森に棲みつく異形の存在であると理解した。

 女神、精霊、悪霊、魔物。リリトゥナ=キスキルをどのように評価するかは立場次第だ。四年前にレーヴェ家を嗅ぎまわって殺された隣町の司祭からすれば恐ろしい化け物。しかし、レーヴェ家にとっては守り神である。

 ヴォルフガングの四肢を喰ったリリトゥナは、女の身体に取り憑く能力を得た。今はカレンティアの肉体に封じ込めているが、他にも憑依先がある。ダミエーラとベロニカである。

 時間が経てばリリトゥナは憑依先を乗り換えて、カレンティアの抹殺を図る。その前に逃げてほしいとヴォルフガングに懇願された。

 屋敷内で聖剣は見つからなかった。黒森のどこかに隠されてしまった可能性が高い。しかし、黒森はリリトゥナの縄張りだ。足を踏み入れれば、再び肉体を奪われかねない。

(荘園に戻って村長の家で飼われている馬を盗む……。相当な無茶になるけど……冒険者の私だったら隣町まで逃げられるわ)

 北方の厳しい冬が始まってしまった。

 積雪が山峡の細道を埋め尽くしている。だが、雪崩が起きるほどではない。上位ランクの冒険者であるカレンティアなら悪路を踏破し、隣町に逃げることは可能だ。

 逃げるなら今すぐにだ。迷っている時間はない。

(聖剣を取り戻す余裕はなさそうだわ……。時間が足りない……。でも……母さんを置いては……)

 ずっと探し続けた母親と再会した。

 四年もの間、行方知れずだった母親は妹を産んでいた。新しい男との恋に溺れ、身も心も寝取られてしまった熟母。変わり果てた母とどう向き合うべきか。カレンティアは苦悩する。

(私も妊娠しているかもしれない)

 愛する婚約者を裏切り、ヴォルフガングのオチンポに媚びてしまった自分を恥じる。

 憑依洗脳の状態から脱した後、言い逃れのできない浮気を一度だけしてしまった。子宮の奥底に種を植え付けられた。その瞬間だけは間違いなく、帝都に残したクロヴィスへの愛が上書きされた。

「――お姉ちゃん」

 闇樹館の玄関を出たカレンティアを呼び止める。待ち構えていたアヴェロアナの御髪が冬風で舞う。プラチナブロンドの美髪に目を奪われた。血の繋がりを強烈に意識させてくる。

 異父妹アヴェロアナ。母親が父親以外と愛し合って産まれた娘。しかし、カレンティアと違って浮気ではない。死別して十五年以上もの歳月が過ぎた。娘も成人し、立派に独り立ちしている。

 ヒースウッド修道院で祈りを捧げる寂しい生活。それが母親の幸せだろうか。レーヴェ家で新しい人生を始める。その選択を咎める権利が、娘のカレンティアにあるとは言えない。

「その剣……!いったいどこで……!?」

 驚愕したカレンティアは口を開けた。

 アヴェロアナは聖剣を抱きかかえている。小さな三歳児には重たい。鞘先を地面につけていた。引きずるようにして持ってきたようだ。雪に残った足跡は黒森から続いている。

 カレンティアは聖剣を受け取る。

 この剣を装備していれば、リリトゥナの憑依を防げる。

 聖剣から伝わってくる恩寵に安堵感を覚える。その一方で、この聖剣を返してくれたアヴェロアナの狙いが分からなかった。

(いいえ、そうじゃないわ。これを仕組んだのは……)

 三歳児の幼女は母親に従っただけだった。アヴェロアナは雪が降り積もった玄関先を駆けていき、母親の身体に抱きついた。両手を広げて臨月のボテ腹に張り付いている。

 冬霞ふゆがすみに煙る寒空の下、漆黒の騎士兜を頭部に装着した母親が佇んでいた。

「黒森に捨てられていた滅魔の聖剣を持ってきてもらったわ。貴方が闇樹館を訪れた初日、ダザリーヌが捨てに行ったのをアヴェロアナが見ていたのよ」

 懐かしい母親の声だった。リリトゥナの支配は受けていない。カレンティアには分かった。聞きなれた声色には、もう一人の娘を按じる母親の愛情が宿っている。

「母さん……」

「カレンティアはこんな私をまだ母と呼んでくれるのね」

 妊婦仕様のメイド服を着た母親はもう一人の娘と向かう。結婚指輪を外した左手で、レーヴェ家の娘を撫でている。

 大きく目立つボテ腹に宿す胎児は、ヴォルフガングと愛し合った証。カレンティアの知らぬ四年間で、どれだけの種を注がれたのだろう。四十路の半ばに差し掛かった美熟母は二人目の受胎を遂げた。

「ヴォルフ坊ちゃん……。いいえ、レーヴェ家の当主から真相を聞いたわ。五年前にレーヴェ家で起きたことも……。四年前に母さんが行方知れずになった後の話も……。だけど、私は母さんを助けにきたの! リリトゥナに操られて、レーヴェ家の子供を産まされたんでしょ? 無理やり、メイドに仕立て上げられて……!!」

「私はヴォルフ坊ちゃんをお慕いしているわ」

「母さんは洗脳されてるっ……!」

「聞いてちょうだい。カレンティア……。私は貴方が思っているような女じゃないのよ。理想の母親を……ずっと演じてただけ……。ヴォルフ坊ちゃんとは相思相愛よ。アヴェロアナを産んだのは私がそうしたかったから。……可愛い妹でしょう」

「ここでその娘と……。レーヴェ家で暮らし続けるつもり?」

「ええ。ここが私の新しい故郷。愛する家族だわ。もちろん、カレンティアだって大切な娘よ。十五年前に死んでしまった夫も愛していたわ。何ものにも代えられない存在だった」

 母親はかつての夫を過去形で語る。

「……そんなに……レーヴェ家の当主を愛してしまったの……?」

「ええ。ふしだらな母と罵ってくれていいわ。ヴォルフ坊ちゃんは四年前に私を帰そうとしてくれた。でも、私はここに留まると決めたわ。これはに返して」

 親指で弾き飛ばされた結婚指輪が秀麗な放物線を描き、カレンティアの足元に落ちた。

「父さんの墓前に結婚指輪を埋めたのは……やっぱり母さんだったのね……」

 雪に埋もれた結婚指輪をカレンティアは悲しげに拾い上げる。

「ええ。今の私が身に着けているのは罪深いわ……。自分の身体を埋める代わりに、結婚指輪を捨ててきたの。私はいつだってドジだわ。……そのせいでカレンティアは私がレーヴェ家にいると分かったのでしょう」

「レーヴェ家は四年前に隣町の司祭を殺しているわ」

「もちろん、知っているわ。五年前に隣町の司祭はレーヴェ家の人々を殺したわ。因果応報よ。ヴォルフ坊ちゃんにあんな仕打ちをした奴に同情なんかできないわ」

「レーヴェ家が飼ってるリリトゥナは異形の存在よ。人間に災いをもたらす……。顔無しの……無貌を見たわ……。あの怪物は邪神よ!」

「黒森の主はヴォルフ坊ちゃんを愛しているわ。守ろうとしているだけ。私達は異教の女神と共存し、辺境で平穏に暮らしているのよ。レーヴェ家は悪じゃないわ。……カレンティアは帝都に帰りなさい。聖剣と指輪を持って、私達の前からいなくなってほしい」

「私の言葉はもう届かないの……? 母さんっ……!!」

「ヴォルフ坊ちゃんのお世話をすること。それが私の幸せ。邪魔をしないでほしいわ。それに私の身体は今や異形よ……」

 騎士兜を外した母親は、首無しの身体を娘に見せつけた。切断された頸部の断面で、黒い影が渦巻いている。

「なんでそんな身体に……? なぜ頭部を失ってしまったの!?」

「あら……。そうだったの……。ヴォルフ坊ちゃんは全てを説明してくださらなかったのね」

「やっぱり……。奪われた自分の首を取り戻せば母さんは……。レーヴェ家から逃れられる。そうなんでしょ?」

「捧げた首を取り戻そうだなんて思わないわ。私は自分の意思で三年前に捧げたの……! 取り戻す……。いくらカレンティアでも、それだけは絶対に許さないわ……!!」

 荒々しい口調だった。豹変した母親の怒気にカレンティアは愕然としている。

「え? え……? 母さん……?」

「カレンティア……! 貴方は帝都に帰りなさい。封じ込めたリリトゥナが出てくる前に……。黒森の主が戻ってきたら、きっとカレンティアは殺されてしまうわ。私とヴォルフ坊ちゃんの善意を無駄にしないで……。お願いよ」

 母親の痛々しい懇願。心の移ろいは明らかだ。カレンティアは見ていられなかった。新たな家族を築いた母親にとって、亡夫との間に儲けた娘は邪魔者だ。

 カレンティアが帝都に逃げ帰れば全てが終わってしまう。失踪した母親は世間から忘れ去られる。レーヴェ家で起きた出来事をカレンティアが話さない限り、誰も傷つかない。

(私が秘密を守れば誰も傷つかない。でも、それでいいの? 私が帝都の冒険者組合や帝国軍に通報すれば……)

 表沙汰になれば異形の存在と結びついたレーヴェ家は、取り潰されるだろう。しかし、それで得をするのは隣町だ。荘園の人々は生活基盤を失い、路頭に迷う。

 そこに正義はあるのかと思い悩む。人間には誰しも後ろめたい秘密がある。カレンティアにも婚約者のクロヴィスに話せない背徳的秘密を抱え込んでいた。

(昨夜の過ちは……。クロヴィスに言えないわ……)

 カレンティアは己の淫欲に駆られて、四肢欠損の不具者を逆レイプした。

 クロヴィスとのセックスに今まで不満はなかった。けれども、ヴォルフガングとの肉体相性は最高だった。背徳の拒否感を塗り潰し、子宮が亀頭に吸い付いた。胎が精子を飲む干す快感に酔った。

 母親を寝取ったオチンポの強さは、一生涯忘れられないだろう。

(母さんが愛した二人目の男……。すごく嫌なのにっ……)

 涙ぐんだカレンティアは、母親が捨てた結婚指輪を強く握りしめる。

(レーヴェ家に残る選択をした母さんの意思を尊重するなら……)

 首無しの異形者になろうとも、母親の人格は変わっていない。心を寝取られた以外は、カレンティアが知っている母親だ。異父妹を抱き寄せる愛母に、かつての面影を重ねてしまう。

(え? 待って? アヴェロアナは……)

 初めて見たときから、母親と酷似した幼女だと思った。

 血がつながった親子なのだから、そっくりな容姿は当然だ。しかし、あまりにも似ている。父親からの遺伝は薄く、母親の血が濃い。顔立ちだけは間違いなくそうだ。成長したアヴェロアナは、きっと母親を複製したような美女になる。

「まさか……? ありえないわ……。でも……。うそ……」

 その可能性に思い至る。レーヴェ家の荘園ではリンゴが栽培されている。その栽培方法をヴォルフガングは教えてくれた。優れたリンゴの形質を維持するための方法。交配し続けても、中味の劣化を防ぐ古来からの手段。それは接木である。

 ――接木で増やせば完璧な複製だ。大本になったオリジナルの穂木ほぎが子供を産み続ける。身体を乗り換えながら……。

 母親の貌は消えた。ばっさりと首を刎ねられている。その代わりに、三歳児の幼女は母親と瓜二つの貌がある。それは母親の頭部がどこにあるのかの答えだ。

COMIC BAVEL 2025年11月号(表紙:しおこんぶ)

文苑堂『COMIC BAVEL』
(毎月22日)

夏の残香が漂う夜長に…艶っぽオトメと一献いかがでしょう?
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今月号の表紙絵師は美麗エロスの柔乳絵師・しおこんぶ描く脱ぎかけエロカワ和服美女が目印!! 晩酌酒がおっぱいに滴り落ちるエッチなお座敷遊びをぜひごゆるりと♪

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陰キャ同士の甘くてほろ苦いアオハルSEX♪
『陰キャちゃんとチョロ男(メン)くん』萠乃雪路

憧れのあの人と思い繋がるあまあまエッチ♪
『ギャル恋リアライズ』銀一

笑って共感できる癒やし系日常コメディ第104話っ♪
『ほのみぶれいくっ! 第104話』夢乃狸

表紙イラストしおこんぶ
執筆陣しおこんぶ,Nao,京師すろた,nanohana,夢乃狸,布越たいと,みきちか,ぷかち,萠乃雪路,葱戸ロン,ミツき,近江ななお,栄初涵,ハマチ,noRio2,たまきち。次郎,ばしょたろう,洞窟たまご,茶釜太郎,可座ミドリ,蛸田こぬ,INAGO,茨芽ヒサ,宏式,銀一,あずみ京平,鉢本,コミックバベル編集部,岩崎ユウキ,ナヲフ,魚山ケイジ,東條土筆,きのみき,Agape,シグノマンダラ,オジョウ,紅葉みも,深海TORO
価格1,210円(税込)
発行日2025/09/22

【27話】未亡人ベロニカの陥落

 ベロニカは生理が止まっても単なる不順と思い過ごしてしまった。己の懐妊を自覚したのは悪阻つわりの苦しみで嘔吐していたからだ。

 妊娠による身体の変調はすぐに現れた。

 爆乳に張りが戻り、乳輪の色が日に日に濃くなっていった。そして、ついに母乳の分泌が始まった。ベロニカは二十六歳のときにカレンティアを産んだ。それ以来、赤子に母乳を飲ませたことはなかった。

「ダザリーヌは美味しそうに飲んでるね」

 ヴォルフガングは食欲旺盛な愛娘にご満悦だった。産まれたばかりの長女は、歯も生え揃っていない乳飲み子。子育てを手伝うベロニカは、母乳が出始めたので授乳もするようになった。

 無垢な赤子は可愛い。しかも、親友が産んだ娘であり、顔立ちが瓜二つだ。あと十数年も経てば容姿端麗な母親を完璧に受け継いだ美少女になるだろう。

「ベロニカ様の豊かな乳房を見ていると羨ましくなります。ダザリーヌは私のミルクだけでは満足してくれません」

 騎士兜で素顔を隠したダミエーラは愛娘を撫でる。旧友の貌はもう二度と見られない。きっと幸せそうな母親の顔をしているのだろう。「結婚はしない。好きな相手もいないし、貰い手もいない」と公言していたダミエーラが幸せを掴んだ。素直に祝福している。事情を複雑にしているのは自分の立場だ。

(私も妊娠してしまったわ。ヴォルフ坊ちゃんの赤ちゃんが子宮にいる……)

 子供を産むかどうかはベロニカが決められる。ダミエーラは痛みに耐えてダザリーヌを産んだ。ベロニカは迷っている。そして躊躇ためらいで心が乱れる。出産に伴う苦痛を恐れているからではない。左手の薬指に嵌められた結婚指輪がかせになっていた。

(まだ結婚指輪を外す気になれないわ……。私はヴォルフ坊ちゃんに恋している……と思う。こんな年齢になって……年若い乙女のように……。でも、夫への想いを忘れ去ったわけでもないわ)

 満腹になったダザリーヌはすやすやと可愛い寝息を立て始める。ベロニカは快眠中の乳児をダミエーラに渡した。子供に愛情を注ぐ権利は生母にある。

「ベロニカ様……。私を恨んでおられますか?」

「いいえ。むしろ私が恨まれていると思ったわ。ダミエーラは私が駆け落ちしたせいで、伯爵家にはいられなくなったでしょう。当時は私も考えが回らなかったわ。幼い従者に手助けしてもらうなんて……。残されたダミエーラの立場を考えるべきだった……」

「恨んではおりません。地位を捨てたお嬢様を羨ましいとは思いましたけれど……。今になって思えばお止めするべきでしたわ。お互いに幼かったのです。……けれど、今はもう分別を弁えた大人の淑女レディですわ」

「ええ。そうね。……私が闇樹館に残ると言ったとき、ダミエーラも驚いていたわね。リリトゥナはともかく、私をよく知る従者なら……お見通しだと思ってたわ」

「付き合いの長さや親しさで、相手の心が読めるわけじゃありませんよ。ベロニカ様だって私の手紙を罠とは思わなかったでしょう?」

「ええ……。そうね。とてもよくできた内容でしたわ」

「このままヒースウッド修道院に帰らなければベロニカ様は失踪扱いです。伯爵家やカレンティア様は心配なさるでしょう」

「レーヴェ家の名前は誰にも教えていないわ。……ここは帝国辺境よ。捜索依頼が出されても、誰も辿り着けない。私は隣町にも寄らずに来てしまったから」

「ベロニカ様は御決心なされたのですね」

「ええ。ここで暮らすわ。ヴォルフ坊ちゃんの子供を授かったのは運命だと思いますの。ヒースウッド修道院に戻る気にはなれません」

 頬が赤くなったベロニカは照れながらヴォルフガングを見た。ヴォルフガングも恥ずかしそうにしている。

「ヴォルフ坊ちゃんは罪作りですわね。私とリリトゥナの野望を挫き、入念に練った伯爵家の乗っ取り計画を潰し、まさかベロニカ様を口説き落すなんて……。年上が好みなのは知っておりましたけれど……。ふふっ……」

「それ。リリトゥナにも嫌味を言われたよ。でもさ。僕の知らないところで大それた計画を立てないでほしいかな」

 ヴォルフガングはベロニカを帰すつもりだった。しかし、ダミエーラとリリトゥナは反対した。ベロニカはレーヴェ家の秘密を知り過ぎた。だが、その懸念は杞憂に終わる。ベロニカはヴォルフガングに恋心を抱いた。この地に留まり、共に暮らすことを選んだ。

「リリトゥナはどこに行ったのかしら? 私の中にはいないみたいだわ」

 ベロニカは黒森の主にも順応した。リリトゥナに肉体を明け渡し、ダミエーラと同じ憑依先の受肉者になっている。

「私の身体にもいませんね。おそらく黒森の見回りでしょう。隣町の司祭が嗅ぎまわっているせいです。荘園の者達が言っておりました。隣町は良からぬことを企んでいるのでしょう」

 ダミエーラは吐き捨てる。隣町の司祭は今すぐに殺してやりたい。しかし、ヴォルフガングの許可が下りなかった。

「追い払えばいいよ。五年前と違って重武装になった自警団がいるんだ。武器商人から強奪した疑いで、商会からの信頼も失った。たいしたことはできないよ」

「レーヴェ家の土地に入ってきたら八つ裂きにします。それは荘園で働く者達の総意ですよ。ヴォルフ坊ちゃん」

「分かってるよ。土地に入ってくればね……」

 ヴォルフガングは復讐を望まなかった。隣町の司祭がレーヴェ家の土地に踏み入ってこない限り、手を出しては厳禁。侵入した場合に限って殺害を認めた。

「私はダザリーヌを子供部屋に寝かせてきますわね。ベロニカ様はヴォルフ坊ちゃんのお世話をお願いいたします。――ベロニカ様、ごゆっくりどうぞ♥︎」

 ダミエーラは我が子のダザリーヌを抱いて寝室から去った。残されたベロニカとヴォルフガングは無言で互いを見詰めた。男の視線はミルクが滲み湧く爆乳、女の視線は男根の膨らみに向けられた。

「ずっと思ってたんだけど、ベロニカってセックスが好きなの?」

「はい。夫に先立たれてから我慢していましたが、性欲はとても強い……イヤらしい女ですわ……。こんな……年齢で……妊娠しちゃうくらい……」

 全裸になったベロニカは這い寄る。白金色の美髪を解きほぐし、ヴォルフガングの矮躯をベッドに押し倒した。

「僕の子供を産むの? たぶん……子供を産むためには……」

「ええ。分かっておりますわ。それでもお腹に宿った命を……。ヴォルフ坊ちゃんの子供を愛したい……♥︎ ダミエーラのように……♥︎」

 左手の薬指で輝きを放つ結婚指輪に謝罪する。永遠の愛を誓った夫婦の象徴。絶対的だった情愛はいろせた。

 未亡人は若々しい男根に欲情する。騎乗位セックスでデカ尻を叩きつけて、熟れたオマンコでオチンポをしごく。失踪した自分を探しているであろう家族や友人を忘れ、ヴォルフガングだけに想いを寄せる。

 その年、ベロニカは女児を出産した。

 母親譲りの美貌と白金色の髪が生えた赤子だ。レーヴェ家の血を引く娘はアヴェロアナと名付けられた。

【26話】四肢を捧げた願い レーヴェ家の復興

 古井戸に血塗れのヴォルフガングが落下する。手足の骨が折れないようにリリトゥナは優しく抱きしめた。

「ヴォルフ坊ちゃん……!」

 不届き者がヴォルフガングの死体を井戸に投げ込んだ。最初はそう思い違いをしてしまった。だが、付着した血は全てダミエーラのものだった。かすり傷しか負っていない。

「あぁ……! 良かった……! 本当に良かったわ」

 リリトゥナは心の底から感謝した。女家庭教師ガヴァネスのダミエーラは真なる騎士だった。約束通りにヴォルフガングを井戸底に連れてきてくれた。

「リリトゥナ……?」

 ヴォルフガングは無貌の美女に抱かれていた。

 漆黒が渦巻く異形の女神。その鏡顔きょうめんを直視してはならないとされている。だが、ヴォルフガングは涙目で訴えかけた。

「リリトゥナ……っ! リリトゥナ……!!」

「大丈夫ですわ。ここなら安全。ヴォルフ坊ちゃんは私がお守りいたしますから……」

「違う。そうじゃない。ダミエーラを助けて……お願い……!」

 リリトゥナもそうしてやりたい気持ちだった。しかし、井戸の底でしか力は使えない。どうにかしてダミエーラを引っ張り込めないかと必死に考える。その時だった。

 ダミエーラの身体が井戸に転がり落ちてきた。服は鮮血で真っ赤に染まっていた。身をていしてヴォルフガングの盾となり、太腿には槍先が突き刺さり、胸部には剣の切り傷やクロスボウの鉄製矢ボルトが何本も食い込んでいる。

「助けて……! ダミエーラを助けてあげて……!!」

 ヴォルフガングは黒森の主に命じる。太古の契約により、その願いは聞き入れなければならない。だが、ダミエーラを助けるためには大きな対価が必要だった。

「ダミエーラは首をねられても戦ったのですね。無惨な姿になってまで坊ちゃんを守って……。なんという……献身……。私も助けてあげたいですわ」

 ダミエーラの頭部は、首の皮一枚で繋がっていた。落下の衝撃で千切れて、首無し死体になった。信じられないことに、ダミエーラは首を刎ねられた後も動き続け、ヴォルフガングを守り抜いた。

 息絶えた死体だというのに、まだ剣を離そうとしていない。

「ヴォルフ坊ちゃん。ダミエーラを救う方法が一つだけありますわ」

「教えて! どうすればいいの?」

「私がダミエーラに憑依し、命を吹き込みます。頭部を失っても私なら死にはしません。しかし、ダミエーラの魂と私は癒着し、融合してしまうでしょう。一心同体となってしまう。ダミエーラが私を受け入れてくれれば成功します」

「お願い。助けてあげて……」

「ヴォルフ坊ちゃん。神霊が現世で受肉するためには、生贄が必要となります。とても申し上げにくいのですが、ヴォルフ坊ちゃんのお体を……」

「いいよ。リリトゥナは人間の身体を食べるんでしょ。全部、あげる。僕の身体を全て食べていいから……!!」

「既にご存知だったのですね。しかし、私はヴォルフ坊ちゃんを食べ尽くしたりはしませんわ。私の望みに反します。ダミエーラの願いにも……亡くなったレーヴェ家の犠牲者にも顔向けできません。……だから、手足をいただきます」

「分かった。いいよ」

「本当によろしいのですか? おそらく……。いいえ、間違いなくダミエーラは望んでおりませんわ」

「僕が望んでる。早く食べて……。ダミエーラを蘇らせてほしい」

 異形の女神にヴォルフガングは手足を差し出しだ。食べてしまいたい可愛い男の子。リリトゥナはずっと願っていた。しかし、こんな形で自分の欲望が果たされるのは不本意だった。

「――優しく食べてあげますわ」

 無貌の暗闇にヴォルフガングの手足が咀嚼される。黒森に捧げられる生贄は、自分の意思で我が身を女神に与える。そうでなければリリトゥナの血肉にならない。

 手足を失う激痛でヴォルフガングは気絶する。だが、己の行為に後悔はなかった。たとえ全身を食われたとしてもダミエーラに生き返ってほしかった。

 地上で悲鳴が聞こえる。火災旋風が襲撃犯の生き残りを炙り殺していた。黒森から吹き込んだ強風が竜巻を作り上げ、地獄の業火で破落戸ごろつきどもを焼死させた。

「ヴォルフ坊ちゃん……」

 手足を失ったヴォルフガングは、自分を抱き締めた女性がどちらなのか分からなかった。暗闇の泥で満ちていた枯れ井戸は、何ら変哲のない腐葉土に戻っていた。枯葉と枝が積もっている。

「……ダミエーラ? それとも……リリトゥナ……?」

 頭部は繋がっている。ダミエーラの貌がある。紫紺の髪が垂れさがっていた。声が重なっていて、よく分からない。

「両方ですわ。これからはがヴォルフ坊ちゃんのとなってお世話をいたします。ヴォルフガング・ゴットフリート・レーヴェ卿に永久の繁栄を……。レーヴェ家の初代当主と結ばれた契約は、新たな契りで上書きされましたわ」

 地上ではレーヴェ家の屋敷が燃え盛る。

 井戸の底で四肢を失ったヴォルフガングは新たな契約を結ぶ。リリトゥナとダミエーラを抱き、男女の契りで繋がった。レーヴェ家の若君は童貞を喪失し、美熟の女騎士は処女を散らした。

 十三歳の少年、三十五歳の女性。肉体関係を築く運命になかった男女は、襲い掛かった凶事によって愛が成就する。誰にも邪魔されぬ井戸底で、血塗れの身体を愛し合った。

「処女だったんだ」

 井戸底で横たわったヴォルフガングは嬉しそうにつぶやく。処女オマンコに挿入されたオチンポは、誇らしげに射精している。恋焦がれていた女家庭教師ガヴァネスの膣道で、お坊ちゃんは精通を迎えた。

「お恥ずかしいわ。気付かれてしまいましたか。内緒だったのに……。私は行き遅れの女ですから……」

「僕は嬉しい。だって、僕が一番最初の男なんだもん。ずっとダミエーラが好きだったから。もちろん、リリトゥナもね」

「ふふっ♥︎ お喜びください。ヴォルフ坊ちゃん。リリトゥナも処女だと言っておりますわ……♥︎」

「リリトゥナは嫉妬深いからね。セックスのときは順番に身体を使わないとね」

 ヴォルフガングは精子を送り出す。世継ぎを産ませるため、レーヴェ家の胎に遺伝子を刻む。

 ◆ ◆ ◆

 五年前に起きたレーヴェ家の痛ましい悲劇。

 若君のヴォルフガングは家族と使用人、四肢を失った。しかし、愛する女性を二人も手に入れた。ダミエーラとリリトゥナは妻とは名乗ってくれず、主人に仕えるメイドの立場を貫いた。それでもヴォルフガングは二人を愛する伴侶だと思っている。

 本邸の火災は自然鎮火した。駆け付けた荘園の者達には真相を伏せている。ダミエーラは死亡を偽った。実際、彼女は一度死んでいた。

 突然現れたリリトゥナと名乗るメイドはすぐに受け入れられた。村長のような年配者ほど、その正体を悟っているのだ。

 リリトゥナは素顔を騎士兜で隠した。黒森を支配する主は無貌の女神。その面貌を直視してはならない。

 荘園の老人達は伝承を知っている。

 ヴォルフガングは旧邸の闇樹館に移り住み、一年後には長女のダザリーヌが誕生した。母親のダミエーラとまったく同じ紫紺色の髪が生えた可愛い娘だ。

 ここまでならヴォルフガングは完全な被害者だ。

 異形の存在に生贄を捧げたのは、帝国で禁止された邪術かもしれないが、誰かを傷つけたわけではない。このまま平穏に暮らすのがレーヴェ家の心優しい若君の願いだった。

 ダミエーラとリリトゥナは違う。レーヴェ家の滅亡を謀った主犯は逃げ延びている。隣町の司祭を放置すれば、また同じことの繰り返しだ。敵は殺さねばならぬし、敵を威圧するだけの力を欲した。

 そもそもレーヴェ家は所有する荘園の豊かさに比べて、家格が見合っていないのだ。正式な貴族とは認められない准男爵家。このままでは侮られる。資産に相応しい爵位が必要だ。これは非業の死を遂げた奥方の遺志でもある。

 ダミエーラとリリトゥナの利害は一致していた。

 ――ヴォルフガング・ゴットフリート・レーヴェ卿に永久の繁栄を与える。

 爵位を得る方法はいくつかある。分かりやすいのは戦いで功績を挙げて、皇帝から叙勲してもらうことだ。しかし、四肢欠損のヴォルフガングは武功が見込めない。

 手っ取り早いのは政略結婚である。爵位持ちの貧乏貴族から娘を娶る。成金の商人がよくやる手段だ。たった一度しかできない政略結婚である。どうせやるのなら上玉を狙うべきだ。

 ダミエーラには伝手つてがあった。

 ヒースウッド修道院に隠居した伯爵家の未亡人ベロニカ。過去に駆け落ちの手助けをした大きな貸しがある。旧友のダミエーラが頼めばベロニカは二つ返事で来てくれるはずだ。

 伯爵家の本家は後継者問題を抱えている。ダミエーラの父や兄達からその話を聞いていた。

 重要なのは未亡人ベロニカの貴族籍が未だに残っている点だ。自由身分の冒険者を引退した以上、帝国の法律において貴族である。病弱な当主、老齢の先代が亡くなればベロニカは伯爵の地位を継承する。

 ベロニカは至高の上玉だった。リリトゥナの洗脳で自我を奪い取り、ヴォルフガングと再婚させる。

 伯爵家の乗っ取り計画は四年前に実行された。ダミエーラはヒースウッド修道院に手紙を送り付け、ベロニカをレーヴェ家の荘園に誘き寄せた。しかし、想定外の事態が起こる。

 まずヴォルフガングは計画に賛同しなかった。殺された父親によく似た温厚な性格の若君は、伯爵家の乗っ取りを拒絶した。荘園の暮らしを良くするための努力は惜しまなかったが、過剰な権威は欲していなかった。

 さらなる誤算はベロニカとヴォルフガングの関係性だ。

 ベロニカの人柄をよく知っているつもりだった旧友のダミエーラですら、その展開は予期していなかった。

 先立たれた夫を十年以上も慕い続ける英雄の妻だ。ベロニカは他の男に靡くような寡婦かふではなかった。四年前の当時、ベロニカは四十路を迎えた熟女だ。

 事態を知ったダミエーラとリリトゥナは唖然とした。

 四肢欠損の不具者に哀れみを向けることはあっても、好意を抱くとは想像できない。けれども、ヴォルフガングには年増の美女を堕とす才能があった。

 伯爵家の簒奪計画も頓挫し、企みは失敗に終わった。未亡人ベロニカの自我は奪えなかった。その代わりにヴォルフガングは恋心を我が物とした。

 それまで夫一筋だった人妻は、青年に乙女の魂を奪われた。ダミエーラとリリトゥナは本気でヴォルフガングを愛しているからこそ、ベロニカの惚れ移りが本心だと理解できてしまった。

 爵位を奪えないのなら、誘き寄せた未亡人は用無しだ。しかし、新たな愛を育み始めた男女は引き裂けなかった。

 始まりは最愛の男に先立たれた美熟女を慰め、寂しさを癒すだけだった。背徳感に悶え苦しみながらも夜を重ね、少しずつ惹かれていった。

 ベロニカの愛情をヴォルフガングは真摯に受け止めた。もう妊娠するような年齢じゃない。そんな決めつけを嘲笑うように、二人の間には子供が出来てしまう。

 ヴォルフガングはベロニカをあっけなく孕ませた。

【25話】本邸炎上、襲撃の夜

 レーヴェ家の本邸を襲撃した野盗は十四人。隣町の司祭が雇った傭兵崩れの破落戸ごろつきであった。荘園の自警団が買おうとしていた武器を商人から強奪し、使用人達が寝静まった深夜に侵入した。

 悪党達の目的は火事に見せかけて、レーヴェ家の人間を皆殺しにすることであった。さらにもう一つ、黒森のどこかに隠された原生樹を探し出し、荘園のリンゴ栽培を盗み奪うことだ。

 レーヴェ家の当主は融和政策に偏重し過ぎた。

 隣町の動向に警戒心を抱いていた奥方やダミエーラも見込みが甘かった。いくら険悪な仲とはいえ、暴虐に手を染めるとは考えが及ばなかった。黒森の統べる主、女神リリトゥナ=キスキルですら人間の悪意を見誤った。

 炎上する屋敷でダミエーラは、ヴォルフガングを連れて逃げ回っていた。握った剣からは鮮血が滴り流れる。当主夫妻を殺した襲撃者を三人殺し、ヴォルフガングを救出したが、多勢に無勢であった。逃げ道を探す間にも四人倒したが、ダミエーラも深手を負ってしまった。

 時間を稼げば異変に気付いた荘園の自警団が駆け付ける。だが、その前に屋敷を覆いつくす大火で焼き殺されてしまう。

「くっ……! こっちも駄目か……!」

 天井が焼け落ちて崩落している。瓦礫の下には見知った使用人の死体があった。消火を試みたのであろう。近くにバケツが転がっていた。

 犠牲の身体にはクロスボウの鉄製矢ボルトが突き刺さっている。ダミエーラが商人に頼んでいた武器だ。本来ならば自警団の手に渡るはずだった武装をならず者達が使用している。

(やられたわ……。この襲撃を仕組んだ奴らは、荘園の自警団に罪を擦り付ける気なのだわ。当主様に諭されて私達は武器を買わなかった。でも、外の人間はそれを知らない……)

 荘園で働く村人達の反乱を偽装し、濡れ衣で何もかも奪い取るつもりなのだ。

「ダミエーラ……。手当をしたほうが……」

 ヴォルフガングはダミエーラを心配する。脇腹に深々と鉄製矢ボルトが貫通し、血が流れ出ていた。

「私は大丈夫です。むしろ鉄製矢ボルトを抜くと出血が酷くなりますわ」

 ダミエーラは自分の生存を諦めていた。当主夫妻は助けられず、何とかヴォルフガングだけは救い出せた。しかし、火事のせいで逃げ場がない。

(黒森にヴォルフ坊ちゃんを逃がせば私達の勝ち……。精霊様がきっと守ってくれる。だけど……。逃げ道に油が……。司祭め……。このクソ野郎……! これじゃ屋敷にいる人間は誰一人助からない! 襲撃者ごと全員を葬りさる気だわ……!)

 殺された当主は原生樹の場所を言わなかった。ヴォルフガングだけが黒森の奥地に隠された原生樹の場所を知っている。殺すわけにはいかないはずだった。

(隣町の司祭は異教を嫌っているわ。町の有力者は原生樹を手に入れたがっているけれど、司祭にとっては関係ないのかもしれない)

 火災から離れるため、ダミエーラは中庭に向かった。その判断が正しいかは分からない。深夜に押し入ってきた襲撃者は、使用人を殺し尽くしている。ダミエーラとヴォルフガングの味方は屋敷内にいない。

 おそらく襲撃者達も逃げ場のなくなった屋敷に閉じ込められている。全てを仕組んだ司祭は、安全な場所で高みの見物をしているのだろう。

(敵の生き残りが三人以下なら……。何とかなるかもしれないわ。まだ気絶するな……。この程度の傷で……)

 ふらついたダミエーラは片膝をつく。剣技での勝負なら傭兵崩れを相手に傷を負ったりはしなかった。しかし、飛び道具は凌げない。ヴォルフガングを守りながら戦うとなれば、なおさらだった。

(武器商にクロスボウなんか発注しなければよかった……。自分の首を絞めることに……なるなんて……!)

 ダミエーラは血反吐でむせる。肺に空いた穴のせいで呼吸が苦しい。握りしめていた剣が廊下に転がった。

「ダミエーラ……。もう僕らは……。ここで休もう。僕も一緒にいるから」

 苦しむ姿を見ていられず、ヴォルフガングはダミエーラを抱きしめた。心地よい温もりで意識が遠のいた。このまま炎に飲まれて、死ぬのも悪くない終わりなのかもしれない。ダミエーラはそう思ってしまった。

「――本当に僕はダミエーラが好きだったんだよ。笑わないでね。父上に本気で相談したんだから……。母上だって今なら怒らないと思う。ダミエーラは最期まで僕のために戦ってくれたんだから」

「ヴォルフ坊ちゃん……」

 死にかけのダミエーラは戸惑った。ヴォルフガングは冗談めかして、しきりに結婚相手や恋人の存在を探っていた。まさか本気だとは今まで気付かなかった。

(こうなると知っていれば、ヴォルフ坊ちゃんに処女を捧げておけばよかったわ。どうせ私の相手なんてこの先見つからないし……。身分差や年齢差も……ベロニカ様だったら気にしていなかったでしょうね……。私はいつだって、自分の本心を誤魔化して……気付いた時には手遅れ……)

 ここで諦めて愛する少年と心中する。それも悪くない。だが、ダミエーラは剣を拾い上げて立ち上がった。

「――私もヴォルフ坊ちゃんを愛しておりますわ。だから、ここで死なせはいたしません。私よりも相応しい女性と結婚なさってください。中庭に行きましょう」

「ダミエーラ……。君を苦しませたくない。だったら、ここで……」

「……私にも声が聞こえましたわ。教会のクソ司祭を呪ったからかしら? 精霊様が呼んでいますわ。井戸です。井戸に向かえば……ヴォルフ坊ちゃんは助かりますわ」

「リリトゥナが……?」

「ヴォルフ坊ちゃんは特別な御方です。森の愛し子……。さぁ、参りましょう。はぁ……はぁ……。うがっ……うっ……。この身を捧げてお守りいたしますわ」

 幻聴ではない。ダミエーラは精霊の声を聞いた。

(中庭に逃げ込んだ襲撃者は七人……。でも、やるしかないわ。井戸にさえ……あの古井戸にさえ……辿り着けば……)

 屋敷に侵入した破落戸ごろつきで生き残っているのは七人。

 その全員が中庭に逃げていた。火の勢いが激しく、脱出できていない。馬鹿な傭兵崩れ達は口封じで、司祭に始末されようとしている事実を把握できていなかった。

 枯れ井戸の底から出られないリリトゥナは、ダミエーラに思念を送り続ける。黒森の領域であれば侵入者を呪い殺せたが、レーヴェ家の本邸は人間の縄張りだ。死に瀕しているダミエーラが最期の力を振り絞り、ヴォルフガングを送り届けてくれることを祈った。

 ――ヴォルフガングを守り抜いてくれるのなら、自分の力が及ぶ範囲でどんな欲望でも叶える。ダミエーラの願いを成就させる。

 黒森の主は約束してくれた。そんな報酬がなくともダミエーラはヴォルフガングを守るつもりだ。だが、もしも願いを叶えてくれるのなら、迷わずに「レーヴェ家の繁栄」と答える。

(たった一人の生き残り。可愛い坊ちゃんの幸福。ヴォルフガング・ゴットフリート・レーヴェ卿に永久の繁栄を与えてほしい)

 中庭に辿り着いたダミエーラは剣を掲げる。敵は七人。剣と槍、クロスボウを構えていた。愚かしくも逃げ道はどこだと喚いている。炎上する屋敷に取り残された者達は焼死する運命にあるのだ。

 ――黒森に愛された一人の少年を除いて。