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【30話】原生樹の分娩台、三人目の娘 

 黒森に隠された原生樹は異神の化身である。

 レーヴェ家の荘園で育てられた果樹は、リリトゥナ=キスキルによって齎された恵みだ。

 無貌の異形者は頭部を欲する。この地で暮らす人々は死後に頭部を捧げる。そびえ立つ原生樹の根本では何百年もの間、供物にされてきた頭蓋骨が積み上がっていた。

 おぞましい異教の首塚。教会の信徒からすれば、邪教の祭壇にしか見えない。だが、レーヴェ家と荘園に住む者達にとっては神聖な場所だ。北方の痩せた僻地で、厳しい冬に襲われながらも、裕福な暮らしができるのは、この異神のおかげだ。

 隣町の人間はリリトゥナを悪霊と呼ぶ。だが、レーヴェ家では守護精霊であり、敬愛する女神であった。女神もレーヴェ家の人間を幾代も見守り続け、深く愛していた。

 ダミエーラやベロニカは渇望していた憑代だった。

 レーヴェ家の使用人や荘園で働く人々がずっと羨ましかった。欲しかった肉体をついにリリトゥナは手に入れた。しかも、想いを寄せていたヴォルフガングの幸せに尽くせるのだ。

 原生樹の枝がうねっている。触手のように手足を絡め取り、妊婦の裸体を支える。重力で垂れ下がったボテ腹は、より一層大きくなっていた。膨らんだ巨胎は完熟した果実を思わせる。

「あぁっ♥︎ はぁっ……♥︎」

 ベロニカは原生樹に我が身を委ねている。周囲は雪が降り積もっていたが、この周囲だけは真夏の蒸し暑さだ。裸でも汗を掻くほど暖かい。

「ヴォルフ坊ちゃん。はぁはぁ……。んぅっ……。そろそろですわ……♥︎ 陣痛が激しくなってきました……♥︎」

 原生樹にはヴォルフガングも絡め取られている。何十本もの枝木が四肢欠損の矮躯を抱きかかえ、地中から伸びた根が栄養を血管に注ぎ込む。精力の強制的な供給。地中から吸い上げた絶大な生命エネルギーは、レーヴェ家の若君に授けられる。

 人間は愛情を込めて果樹を育てる。それと同じだ。

 原生樹はレーヴェ家の一族を愛でている。朽ちぬ繁栄のために、ヴォルフガングと優れた女を交配させて子孫を作る。五年前の大火事で、たった一人になったヴォルフガングの種で、レーヴェ家を復興させねばならない。

 伯爵家の血筋を引くベロニカは、とても優秀な胎を持つ美女だった。年齢の問題で孕ませるのは諦めていたが、驚くべきことに二度も身籠った。遺伝子の相性が適合していた。

 英雄の愛妻であった未亡人、異神に愛でられた青年。絶対に結ばれるべきではなかった男女である。だが、一度でも交われば、その繋がりは誰にも絶てない。

「ベロニカ……っ! 駄目だ。僕らの子供が産まれたらカレンティアは……!!」

 ヴォルフガングの男根にベロニカの巨尻が押し付けられた。

 陣痛で痙攣を繰り返す膣穴が、オチンポの迎え棒を懇願している。リリトゥナの化身である原生樹も、抱き吊るし上げたヴォルフガングに挿入を促した。

 前屈まえかがみのベロニカは、立ちバックの体勢で背中を反らし、淫汁の涎で濡れたオマンコを見せる。どんな紳士であれ、男根を生やしたオスはこの誘惑に勝てない。

 ヴォルフガングの勃起オチンポは血管が浮き出るほど硬く、屹立してしまった。

「ヴォルフ坊ちゃんはよくやってくれましたわ。だから、もういいのです……。カレンティアは逃すのはもう無理……。だって、レーヴェ家の赤子を宿してしまった。私やダミエーラのようにっ……♥︎ 憑代としてぇ……♥︎ この地で生きていかねばなりませんっ♥︎」

「でも! でも……! だからって……うっ……!」

 ベロニカのオマンコが亀頭を咥え飲む。媚肉の襞がオチンポを取り囲む。美熟女の使い古された産道は、あどけなさが残る青年の情欲をがっしりと掴む。

「あぁっ♥︎ んぁっ♥︎ ヴォルフ坊ちゃん……♥︎ 私は酷い母親です……♥︎ カレンティアは大切な娘……。でも、やっぱり私は産みたい……♥︎ 授かった赤ちゃんを……♥︎ 愛している御主人様の子供をっ……♥︎」

 原生樹の介助によって、ベロニカとヴォルフガングは背面立位のセックスを遂げる。ぶすりと後ろから突き刺さった肉棒が産道を押し広げ、根元まで食い込んだ。挿入で押し上げられた巨尻が、淫靡な楕円型に歪む。

「こんなことはいつまでも続かない。ダミエーラとベロニカは合意があった。原生樹に捧げられた首だってそうだ。だけど、カレンティアは違うんだよ……」

「えぇ♥︎ そうですわ♥︎ 悪業の報いを受ける日が来るかもしれませんっ♥︎ でも……この幸せには……代えられない……♥︎ とても罪深い。許されざることですわ。けれど……私は誘惑に抗えない……♥︎ 私はカレンティアをお捧げします。十八年前に産んだ我が子を……っ! この生贄を受けて取ってくださいっ……!!」

 ベロニカは宣言してしまった。異神の化身である原生樹は不徳な母の願いを聞き届ける。

 生贄のカレンティアは仰向けで地中に囚われていた。幾重もの根っこに縛られ、身動きが取れない。見上げた視線の先では四年もの間、ずっと探し続けていた母親は淫魔のように腰を振っている。

 母乳を噴き漏らし、快楽に酔い痴れ、おぞましい異教に女神に祈りを捧げていた。自分を産んだ女穴でオチンポを激しくしごき、けたたましい肉音を奏でる。

 夢見心地のカレンティアは、帝都に残した婚約者のクロヴィスに詫びる。帰ったら結婚するつもりだった。しかし、その未来は潰えた。

 引き返す機会は何度も与えられた。

 ヴォルフガングが再三にわたって警告した。しかし、それを無視したのはカレンティア自身の判断だ。母親が新しい男と新たな家庭を築いている。その現実を許容できなかった。

 英雄を愛した未亡人。夫の墓守であり続ける母親を望んだ。ヒースウッド修道院で余生を送り、ずっと自分だけの母親であってほしかったのだ。ベロニカもヴォルフガングに惹かれるまでは、理想の母親を演じ切る覚悟だった。

 ――しかし、運命はじれ狂った。

「んあ゛ぁっ♥︎ あ゛ぁぁっ♥︎ あ゛あぁぁあぁあああああああああああああああああぁぁぁ♥︎ んお゛ぉぉぼぉおぉォォオおおおおおおおおおおおおおおォォォォォオォォォォォォ~~♥︎」

 ベロニカはヴォルフガングを愛し、ヴォルフガングもベロニカを愛した。無貌なる異神は祝福を与えた。

(――ヴォルフ坊ちゃん。私の力をお捧げします。手足を失おうとも、レーヴェ家を復興させる偉大な支配者になるのです)

 リリトゥナの声が脳内に響く。血管に繋がった原生樹の根がヴォルフガングの肉体に生命力を送り込んでくる。陰嚢を包み込んだ細長い根毛は、挿入されたオチンポに絶大な精力を発揮させた。

(大貴族の女をヴォルフ坊ちゃんは征服したのです。英雄と持て囃された冒険者の妻を奪い取った。未亡人のベロニカを孕ませたとき、責任を取ると仰られた)

 リリトゥナは囁く。その声はヴォルフガングとベロニカを導き、生殖器の交合がさらに強まった。絡みついた枝が、セックスする二人の身体を固定する。

「もうっ……十分だよ……。僕とベロニカにはもう娘がいる。アヴェロアナを産んでくれたじゃないか……っ!」

(二人目ができてしまったのですよ。しかも、ぴったりの貌が捧げられたわ。ベロニカの望みを叶えてあげてください。カレンティアを助けることではなく、ヴォルフ坊ちゃんの赤子を産みたがっているわ)

「子供のためにカレンティアを生贄にしたら……」

(よろしいではありませんか。首無しのカレンティアを使用人にするのです。若い胎はレーヴェ家の子をたくさん産んでくれることでしょう。ヴォルフ坊ちゃんは年増がお好きだと存じておりますが、若い娘も悪くはございませんよ……♥︎)

 理性の堤防は決壊し、獣欲が濁流となって善悪の分別を押し流す。射精する亀頭が羊膜を破った。

「ごめんなさいっ……」

 ヴォルフガングは子宮を突き上げる。首無しの赤子は自然出産できない。ダザリーヌやアヴェロアナを分娩させたときも、男根で迎え棒を行った。

「んんぅ♥︎ んぉおぅっーー♥︎ んお゛ぉ♥︎ おぉっ♥︎ お゛っ♥︎ お゛♥︎ んおぉぉおぉォォ~~♥︎ ああぁっ♥︎ んぎぃ♥︎ ぎぃっひぃいっ♥︎ おおおおおおおおおおおおおおォーー♥︎」

 ぢゅぽんっと男根が外れた。

 栓の抜けた風呂桶から湯水が流れ出るように破水した。湯気の立ち昇る羊水が股を流れう。セックスでほぐされ、十分に開大した産道を赤子が通る。

「はぁはぁっ♥︎ はぅ♥︎ ひぃっ♥︎ ふぅっ……うぅ……♥︎ ヴォルフ坊ちゃん……♥︎ 産むっ♥︎ 産まれぢゃうっ……♥︎ 出てくるぅうっ!!」

 黒騎士の兜で覆われた頭部は涙を流さない。だが、もしベロニカの貌が残っていたら、大粒の涙を流していただろう。その涙が何を意味するのかはきっと本人でも分からない。

 ――首無しの女児がこの世に産まれた。

 産声は聞こえてこない。原生樹の根に取り上げられた女児は頭部が付いていなかった。

(ふふっ……♥︎ なんて可愛いお嬢ちゃん。立派な貌をすぐにいであげますわ)

 原生樹は産まれたばかりの赤子をあやす。そして、生贄のカレンティアに語りかける。

(そんな怯えなくていいでしょうに……。安心しなさい。首を刎ねるだけ。殺さないわ。ヴォルフ坊ちゃんを横取りしようとした貴方は気に入らない。けれど、憑代は増やしておきたい。若い召使いが欲しかったの。レーヴェ家のメイドになりなさい)

 カレンティアの首がくるりと回転した。頸部が捩じ切れ、頭部を奪われる。血は一滴も出なかった。漆黒の暗闇が切断面を覆っている。

「はぁはぁ……♥︎ あれを見て……。ヴォルフ坊ちゃん。カレンティアが私達の新しい娘になりますわ♥︎」

「そうだね。ベロニカ……」

 ヴォルフガングは素直に祝福できなかった。しかし、もはや自分では止められない。

 黒森と契約を結び、これまで維持していた異神との均衡を崩したのは自分だ。貞淑な未亡人であったベロニカの心を奪ったのも自分。誇り高き騎士であったダミエーラを蘇らせたのも自分。全ては己が望んだ願いだ。

 黒森の支配者はヴォルフガングの欲望を叶えている。

(誰かが裁いてくれるその日まで……。僕は……捧げられた女性達を孕ませ続けるのだろう……)

 異形の赤子はカレンティアの頭部に手を伸ばした。断面の細胞が結合していく。頭蓋の大きさが縮み、赤子の身体に適合する。

 黒森に産声が響いた。

 首無しのカレンティアがゆっくりと起き上がる。

 異父妹に捧げた頭部の代わりに、漆黒の無貌が形成される。完璧な憑代に仕上がった。主導権を奪われることは絶対にない。

「乳房の重みが軽く感じられます。素晴らしいわ。若くて強い身体です。ベロニカは良い娘を作りましたね。自我が強かったけれど、首を落とせばおとなしいものですね」

 赤子を抱き上げる。母親と勘違いした乳児は乳首を甘噛みしてくる。

「おやおや……。私はママではありませんよ。そのうち、母乳をあげられるようになるでしょうけれど……」

 漆黒で塗り潰された貌は酷く不気味だ。しかし、無垢な赤子に恐怖心はない。たとえその頭部が以前は異形狩りの凄腕冒険者であったとしても。奪い取られた貌は、もう異父妹の身体に馴染んでいた。

「さあ、ベロニカ。どうぞ。貴方の可愛い娘ですよ。おっぱいを吸わせてあげなさい。お腹を空かせているわ」

「はぁはぁ……。わたしの……むす……め……。白金髪の……。可愛い女の子……」

「ヴォルフ坊ちゃんはこちらに。おめでたいですわ。一緒に名前を考えましょう。産声を聞いたダミエーラが迎えに来るまでに決めたいですね」

 母胎と赤子を繋いでいた臍帯を切断し、引きずり出した胎盤は原生樹の肥料となった。

 疲労困憊のベロニカは渡された愛娘に授乳する。娘を産むためにもう一人の娘を生贄に捧げてしまった。重たい罪悪感と新しい子供を産んだ幸福が混ざり合う。

「これからカレンティアの身体をずっと使い続けるつもりかい?」

「ヴォルフ坊ちゃんが望まれるのであれば、そういたしましょう」

 無貌の異神は主人を抱き締めた。

「僕はそれを望まない……。胸が苦しくなる。きっとカレンティアに恨まれる」

「さあ。それはまだ分かりませんよ。私とダミエーラで、ベロニカを誘き寄せた四年前、ヴォルフ坊ちゃんは同じ言葉を仰っておりましたね。しかし、現在はそうなってはいません」

「…………。それって結果論じゃない」

「結果論にどんな問題があるです?」

「一般的には大問題だよ」

 ヴォルフガングは複雑な表情で、三人目の娘を眺めていた。生母の爆乳を美味しそうに頬張っている。四年前に出会ったばかりのベロニカだったら、カレンティアを生贄にする決断はしなかったはずだ。

 ベロニカを淫母に変えてしまったのは、紛れもなくヴォルフガングだ。未亡人の寂しさに浸け込み、恋心を燃え上がらせた。

「ヴォルフ坊ちゃんはご自分が思っている以上に魅力的な殿方なのですよ。婚約者のいる女冒険者くらいお手の物でしょうに……♥︎」

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