2024年 12月5日 木曜日

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【129話】英雄アレキサンダーの秘密

NOVEL亡国の女王セラフィーナ【129話】英雄アレキサンダーの秘密

 

「実家から取り寄せた資料は全てここにある。これで良かったのか? ユイファン少将」

 金緑きんりょく后宮こうぐう――三皇后の一角、帝国元帥レオンハルト・アレキサンダーの御所に大量の書物が運び込まれていた。

「ありがとうございます。元帥閣下、ヘルガ妃殿下も貴重な資料を提供いただきありがとうございます。しかし、凄まじい量ですね。両家の資料を全て持ってきてほしいとお願いしましたが⋯⋯。これだけ積み上がっているのは実に壮観な眺めです」

 ユイファンはレオンハルトとヘルガに依頼し、死恐帝時代の歴史資料をかき集めていた。

 后宮の一室に積み上がった書物と羊皮紙の山々は、アレキサンダー公爵家とケーデンバウアー侯爵家が保管してきた資料の現物である。

 天空城アースガルズの公文書館には収蔵されなかった私的な記録も含まれている。

「記録を熱心に残す当主がアレキサンダー公爵家では少なかった。大雑把な人ばかり。ここにある資料の八割はケーデンバウアー侯爵家の書物だ」

「資料を残すのは、我が家の趣味みたいなものさ。特に先代のケーデンバウアー侯爵は生真面目な性格だった。死恐帝時代の陰惨な記録⋯⋯。年代記作家は気が滅入っただろうね。帝都ヴィシュテルを放棄し、副都アヴァタールに遷都してからは全く酷い惨状さ。どこそこの都市が壊滅したとか、屍霊に怯える難民の間で邪教が流行っているとか⋯⋯。そういう陰鬱な話ばかり」

 ヘルガは相変わらず全身鎧の装いだ。籠手の指先で本の表紙にこびり付いた埃を払う。

「⋯⋯とはいえ、救国の英雄アレキサンダーが登場してからは面白くなる。先代の日記も持ってきた。筆者の感情が乗っているよ。無機質な記録ではない。運命が反転する気配、そうだね⋯⋯精神浄化カタルシスとでも言うのかな? 大神殿のが表舞台に現われて、先代は何かが起こりそうだと期待を抱いていた」

「とても興味深い資料です。ヘルガ妃殿下。ケーデンバウアー侯爵家の記録は公文書館や帝国図書館にある写しと内容は同じですか?」

「ほとんど同じのはずさ。ケーデンバウアー侯爵家に隠し事はないよ。アレキサンダー公爵家と一緒にしないでもらいたいね。くっくくく⋯⋯!」

「嫌みな女だ。⋯⋯言っておくがな、ヘルガ。祖父がルテオン聖教国と交わした書状の件は寝耳に水だった。祖父はとんでもない負債を残していってくれた。実家に帰ったとき、ちょっとした騒動になったんだぞ⋯⋯」

 英雄アレキサンダーがルテオン聖教国と交わした約束。帝国内における開闢教の信教を保障し、信徒の生命および財産を保障する書状が、今になって問題となっていた。

 国を救った英雄とはいえ、アレキサンダーの行為は批判されて当然だった。しかし、当時は国が滅ぶかどうかの瀬戸際。他に選択肢はなかったという擁護論も強かった。

「ご実家での大騒動は聞いたよ。元帥閣下の姉君がブチ切れたとも」

「くそっ! やはり貴公は知っていたか。公爵家の醜聞だ⋯⋯! どこの誰から聞いた?」

「我らが敬愛する皇帝陛下から♥︎」

「⋯⋯あぁ、なんてことだ。陛下⋯⋯! どうして⋯⋯! 口外しないでほしいとあれほど⋯⋯!! いつも口が軽すぎる!! まったく! 貴公の耳に届いているのなら、天空城アースガルズに戻って三日と経たず話したのだな!」

「いいじゃないか。ちょっとした笑い話だよ。元帥閣下は衆目を気にしすぎではないかな?」

「母上もいい加減な人だが姉も姉だ。親子喧嘩を仲裁する妹の立場も考えてほしい。身内の恥だ。新年の帰省は疲れが溜まった。休むどころではなかったぞ。陛下も陛下で母上に呼ばれて寝室へ行こうとするし⋯⋯!!」

「くっくくくく! 元帥閣下、それは母君とベルゼフリート陛下に揶揄われたのさ。陛下も退屈しなかっただろうね。アレキサンダー公爵家はいつも賑やかで楽しそうだ」

「他人事だったら、笑って済ませるだろうよ。陛下は悪戯だったのだろうが、母上は本気だったと私は疑っている⋯⋯。いや、間違いなくあれは狙っていた。娘の夫に手を出すか? 常識的に考えて? 四十路を過ぎた大人の女がすることか⋯⋯?」

「アレキサンダー公爵家のに増えたら、父親は間違いなく陛下だろうねえ」

 

「自分の身に降りかかると立場になってみろ! 父親は三人もいれば十分だ。妹だって八人目は欲しくないぞ。七人でさえ持て余している!」

「元帥閣下の母君なら陛下にそそられるのも無理はない。⋯⋯しかし、それで元帥閣下の姉君が再びぷっつんというわけだ」

「⋯⋯切れたのは三番目の姉だ」

「アマゾネス族の大家族は大変そうだ」

「はぁ⋯⋯。ともかく祖父がルテオン聖教国と交わした書状の件は確かめてきたぞ。母上も知らなかった。母上が知らないのなら、祖父は祖母にも明かさず、秘密を誰にも明かさなかったのだろうよ」

「さすがは英雄アレキサンダー。死後も我々を悩ませてくれるね」

「ここだけの話、祖父はかなり問題のある人だと聞いていたが、今になって悩まされるとは⋯⋯」

「英雄なんてそんなものさ」

「偉大な英雄なら孫娘に苦労をさせないでほしい⋯⋯」

「私は好きだったよ。太陽のように明るく豪快な人だ。細かな問題を踏み潰して進む。本当に滅茶苦茶なのだよ。なんというか⋯⋯周りを惹きつけ、有象無象を圧倒する覇気があった。⋯⋯しかし、大神殿のご老人達と違って、秘密主義者には見えなかった。なぜ話していなかったのか? その点は疑問だ」

「どうせ忘れてたんだろう。そうに決まってる⋯⋯」

「ああ、あの方なら有り得る話だ。くっくくくくく!」

 英雄アレキサンダーと直接の面識があるのは、この場ではヘルガだけだった。孫娘にあたるレオンハルトは祖父母の死後に生まれた。

 

「ヘルガ妃殿下は英雄アレキサンダーと交友があったのですね?」

 ユイファンの問いにヘルガは頷いた。

「廃都ヴィシュテルの攻略戦で世話になった。先代のケーデンバウアー侯爵が亡くなって、家を継いだばかりの若輩に色々と良くしてくださったり⋯⋯。そういうわけで、私は英雄アレキサンダーの悪口を言えない」

「⋯⋯英雄アレキサンダーから何か聞いていませんか?」

「ユイファン少将が知りたがるような話はしていない。死恐帝の災禍が終息した後は、新帝捜索の協力体制造り、空席になった帝国元帥の対応、廃都ヴィシュテルをどうするか⋯⋯。様々な問題が山積していた。しかし、前向きな議論だから楽しかったけれどね」

「廃都ヴィシュテルの復興は当時も見送られていましたね」

「メガラニカ帝国は滅びる寸前だった。屍霊の巣窟となった廃都を立て直す余力が当時の帝国にはなかったのだよ。それに現帝都の権益問題も絡んできて、どうしようもないと結論づけた。協議を重ねた結果だよ」

「⋯⋯今でも廃都ヴィシュテルは危険な場所だと思いますか?」

「ピクニックの行き先としては、おすすめできない。ケーデンバウアー侯爵家が敷設した空域機雷原は今も現役だよ。命知らずの馬鹿な盗人が忍び込もうとして、この前も怪我人が出た。年に何回かは事故が起こる」

「お気の毒に」

「いいや、彼らは運が良かった。廃都ヴィシュテルは魔物が湧いている。機雷原を抜けていたら、悲惨な死を迎えただろう。腕や足が吹っ飛ぶ程度では済まなかっただろうねえ」

「廃都ヴィシュテルに難度を設定するとしたら?」

「城下街を探索し、生きて帰ってくるのなら二級冒険者以上は欲しい。中心街を抜けて、帝嶺宮城ていれいきゅうじょうまで行くのなら、運も絡むが一級冒険者ですら厳しい」

「⋯⋯死恐帝の災禍が終わった今でさえ、それほどの危険地帯ですか?」

「帝国軍を動員し補給線を確保しながら進むしかない。死恐帝の時代は物量戦で血路を切り開いた。多大な犠牲を払って⋯⋯。最前線の部隊は壊滅状態だったよ。五体満足で生き残った前線の兵士はウィリバルト将軍くらいなものだ。当時の彼は一兵卒だった」

「隣国との戦争で帝国軍は疲弊しています。同じ手段は使いたくありません」

「正規軍による大規模な軍事作戦以外の方法だと選りすぐりの少数精鋭で乗り込むくらいしかない。⋯⋯飛躍的な手段、それこそと同等の戦力を投下するかだ」

 ヘルガは視線をアマゾネス族が誇る最強の女戦士に向ける。

 帝国最強の武人、おそらくは大陸で並ぶ者のいない絶対強者レオンハルト。アレキサンダー公爵家が生み出した最高傑作であれば、魑魅魍魎が跋扈する魔境を突き進み、都の頂きにある帝嶺宮城ていれいきゅうじょうに辿り着ける。

「⋯⋯私と大神殿のご老人なら、ほほ確実だとは思う。しかし、三皇后の重席を占める二人が危険地帯に向かうのは国政上のリスクがある。良い手段とは思わぬし、帝国宰相が絶対に認めないはずだ」

「その件は私も同意見。よければ私が単独で調査しようか?」

「⋯⋯⋯⋯本気か?」

 

「引き際は弁えているつもりだよ。廃都ヴィシュテルの地理には詳しい。逃げ道は把握している」

「許可できぬ。軍閥派、唯一の王妃で、主席宮廷魔術師の貴公は貴重な人材だ。危険な単独任務には就かせたくない」

「そうかい。元帥閣下は部下思いで痛み入るよ。その調子で、今年の研究予算も思い遣りをいただけると助かる」

「軍縮に向かうと決めたばかりだ。追加予算が欲しければ宰相府の連中に言え」

「手厳しい。さて、ユイファン少将はどう思う?」

「賢明な判断と思います」

「おやおや、君まで私の研究費を削減したい派だったのか?」

「いえ、そっちではありません⋯⋯。今すぐ廃都ヴィシュテルを調査すべきとは思いません。だからこそ、両家に協力を要請し、当時の資料を調べ直そうとしているのです。歴史の足跡を辿ります」

「ユイファン少将。一人でやれるのか? 五百年分の記録だぞ」

「ネルティに手伝ってもらいながら、必要な分の情報を集めます。全てを読み直すつもりはありません。ちょうど私の離宮は改修工事中ですから、后宮に居候させていただきます」

「そうか。貴公の自由に使ってくれ。もし⋯⋯いや、何でもない。とにかく好きにしろ」

 レオンハルトはユイファン仕えの側女をもう一人付けようかと思案する。愛妾ではあるが、軍務省における階級は少将、職位は帝国軍参謀補である。副官を数人付けて然るべき地位にいる。

(欲しければ当人から言ってくるはずだ⋯⋯。ならば、こちらから押し付けるのは良くないな)

 天才的な軍略家。用兵術でユイファンに勝る将官をレオンハルトは知らない。だが、真に恐るべき能力は策謀だ。アルテナ王国の王都ムーンホワイトを即日で陥落させた手腕。宮中でユイファンの敵は多いが、その実力は誰もが認めていた。

「まずは死恐帝の亡骸がどうなったのかを調べます。歴代皇帝の御遺体は火葬されるのが慣わし。しかし、死恐帝の葬送儀礼は執り行われていません」

 始皇帝、聖大帝、烈帝、栄大帝、破壊帝、哀帝、死恐帝。連綿と続く歴代の皇帝で他殺された者は二人。破壊帝と死恐帝である。この二人に限り、葬送儀礼は行われていない。

 生きながらに暴走し、狂気に取り憑かれた破壊帝は、黒鉄の勇者によって滅ぼされた。亡骸は勇者が処理し、墳墓は存在していない。

 死恐帝の亡骸は帝嶺宮城ていれいきゅうじょうに安置されたままだと考えられている。英雄アレキサンダーのみが亡骸を確認していた。

「大宰相ガルネットが定めた帝国憲法には、葬礼の方法が明記されています。皇帝と女仙の亡骸は必ず火葬にせよと⋯⋯。もし英雄アレキサンダーが死恐帝の亡骸を燃やしていなければ、不味い事態になっているかもしれません⋯⋯」

「破壊者ルティヤの絶大な力が肉体に宿っていたのなら、抜け殻であっても何かしらの災禍を引き起こすと?」

「はい。元帥閣下。昨年末にセラフィーナさんが起こした騒動で、私達はベルゼフリート陛下の過去を知りました。破壊者ルティヤの転生体は屍体を孕ませ、息子に器を継承し、抜け殻となった後も動き続けていた⋯⋯。我々の理解が及ばない超常の力です。皇帝や女仙の亡骸は、火に焼べるべき理由があるのだと思います」

「屍者を喚ぶ灰色の濃霧が目撃された。魔狩人の報告が事実なら、悪しき者が何者かが廃都ヴィシュテルに忍び込み、メガラニカ帝国で『リバタリアの災禍』を起こそうとしている⋯⋯。死恐帝の亡骸を弄んでいるとすれば許しがたい」

 いち早く凶事の前兆に気付いたのは魔狩人であった。灰色の濃霧。共和主義者に死恐帝が暗殺され、メガラニカ帝国で起きた大厄災。『リバタリアの災禍』は、屍者を喚ぶ霧を発生させた。

 救国の英雄アレキサンダーが死恐帝を鎮めた日から、灰色の濃霧は目撃されていなかった。新帝ベルゼフリートの出現で、メガラニカ帝国は正式に『リバタリアの災禍』の終焉を宣言した。

「一度終わったはずの災禍を再びか⋯⋯。暗躍している者がいるなら、よほどメガラニカ帝国に恨みがある相手だな。虫唾が走る⋯⋯。正体と居所さえ突き止めれば、一日で片を付けてやれるのに」

「死恐帝の亡骸は廃都ヴィシュテルの帝嶺宮城ていれいきゅうじょうにあるはずです。空域機雷原を突破し、魔物が住み着く廃墟群を抜け、宮城の最奥部に侵入したのなら相当な実力者です。――人間であれば」

 災禍の再現。そんなことが可能であるとすれば、何らかの邪術で死恐帝の亡骸を悪用している。ユイファンの推測は大宰相ガルネットが定めた帝国憲法の規定に基づく。簡素簡略を好んだガルネットが、葬礼には事細かく拘った。

 ――必ず火葬にすること。

 ――骨片は残さず砕くこと。

 ――墳墓の位置は秘匿するか、海もしくは川に遺灰を撒くこと。

 華美を好む栄大帝であったが、自身の葬儀はガルネットの遺言に一任した。栄大帝と女仙達の亡骸は火葬に処され、偉業に不釣り合いな小さな墳墓が大陸のどこかにある。

 後世の者達に負担をかけないため、巨大な墳墓を建造しなかったという説が有力である。しかし、隠された意味があるのではないかとユイファンは疑った。

「英雄アレキサンダーは、死恐帝の亡骸を燃やさなかったと思いますか? この五百年間で機会があったのは彼だけです」

「分からぬ。祖父は死恐帝のことを一切語らなかった。母上はそう言っていた。母上だけでなく祖母も祖父の頑な態度を不審がってはいたようだが⋯⋯。そのあたりの事情はヘルガのほうが詳しいだろう? 私は祖父との面識がない」

「色々とあったのだよ。⋯⋯我々は勝利した。しかし、犠牲が大きすぎた。災禍の間、帝国軍を支えていた先代のケーデンバウアー侯爵は戦死した。英雄アレキサンダーが集めた七人の仲間で、生き残ったのはたったの二人。元帥閣下の祖母とカティア神官長だけだ。酷く落ち込んでいた。私達はアレキサンダーを救国の英雄と讃えたが⋯⋯悔いていたように見えた⋯⋯。仲間を死なせた罪悪感で心が衰弱し、晩年は⋯⋯とても痩せ衰えていたよ」

「祖父には悪いが、国家の大事だ。感傷で秘密を墓場まで持って行かれては困る。伝えるべきことは後世に残すべきだった。ルテオン聖教国の書状にしてもそうだ」

「⋯⋯書状の件は忘れていたのだと思うがね。しかし⋯⋯死恐帝の件は明らかに口を閉ざしていた。カティア神官長にすら伝えていないのは、特別な事情があったのだろう」

「この件はユイファン少将に任せるぞ。貴公の手腕に期待するとしよう。必要なものがあればヘルガに要請しろ。私はそろそろ準備をする」

「準備? 元帥閣下はこれからどちらへ?」

「陛下のお相手をする。それとお灸を据えてくる。そろそろ到着する頃合いだ」

「陛下をお呼びしたのですか。あの黄葉離宮から」

「いつまでも愛妾の離宮にいられては、軍閥派の妃達が荒れる。⋯⋯あぁ、その点に関してはユイファン少将とネルティには悪かったな。理由をつけて陛下を追い出してくれて助かった」

「いえ、お気になさらず」

 黄葉離宮に滞在しているベルゼフリートだが、その前はユイファンの光芒離宮に転がり込んでいた。改修工事の邪魔になると、それらしい理由で追い出したのは、レオンハルトからの要請があったからだ。

「陛下はセラフィーナも随分と気に入っている。だが、セラフィーナのほうもあれほど夢中になるとは⋯⋯。人の心はどう転ぶか分からぬな」

「間違いなく陛下自身の魅力ですよ。アルテナ王国の女王を籠絡したのは」

「⋯⋯どちらも入れ込みすぎた」

「セラフィーナさんは本物の忠愛を捧げています。あの調子なら、きっと次の子を年内に孕ませるでしょう。陛下も年上の女性が大好きですから」

「そういう貴公も孕んだな⋯⋯」

「ええ、まあ。ご褒美をいただきました。戦勝式典の欠席は本当に失礼いたしました」

「事情が事情だ。終わったことをとやかくは言わん」

「妊娠六ヶ月で、お腹が出てきました。そろそろ服を変えないといけないかもしれません」

「六ヶ月? 七ヶ月ではないのか? 戦勝式典が開かれた昨年の八月十五日には妊娠していたのだろう? 九月、十月、十一月、十二月、十三月、そして今が一月だ」

「そうでした。妊娠七ヶ月の間違いです。時間の流れは速いですね。あっはははは⋯⋯」

 冷や汗を流しながら、乾いた笑いでユイファンは誤魔化した。


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