セラフィーナは下腹部から昇ってくる性衝動に悶えていた。温室御苑での交わりは、熟した身体で燃え上がる肉欲を消してくれなかった。
子宮で燻る愛欲の焔が肢体を火照らせる。
豊満な尻を左右に揺らし、主人に擦り寄るセラフィーナの振る舞いは、発情した牝犬とそっくりだった。
「陛下ぁ⋯⋯♥︎ よろしければ私のお尻を撫でていただけないでしょうか⋯⋯♥︎」
不完全燃焼のままでは終われなかった。大勢の人間がいる大広間に戻っても、セラフィーナは疼きを抑えきれず、ベルゼフリートに懇願する。
「お尻⋯⋯? 欲求不満なの? たくさん人がいるから、気付かれちゃうよ」
「周りに気付かれてたって構いませんっ♥︎ 熱を帯びた身体が陛下を強く求めているのですわ♥︎ どうか陛下ぁ♥︎ セラフィーナのお尻を慰めて⋯⋯♥︎」
セラフィーナはベルゼフリートの手首を掴み、己の臀部に押し付ける。褐色肌の小さな掌が、柔らかな巨尻の贅肉に触れる。
寡黙な警務女官こと、ユリアナにお灸を添えられたばかりのベルゼフリートは意気消沈していた。淫蕩に浸る気分ではなかった。だが、美女に言い寄られては拒めない。
「そこまで言うならマッサージしてあげる。でも、喘ぎ声は小さくしてね。閉会式の最中だ。騒いだら怒られちゃう」
「あんっ⋯⋯♥︎ あぁ♥︎ あっんぅ⋯⋯♥︎ ありがとうございます、陛下♥︎」
ベルゼフリートは複雑な心境だった。自分の子を孕んだ妖艶な美女。角と羽、尻尾が生えていれば、サキュバスにしか見えない女体。尻を揉まれて悦んでいるが、半年前までは貞淑な人妻だった。
「あぁっ♥︎ んぁ⋯⋯♥︎」
かつては強要される性行為に耐えかねて嘔吐までしていた。清廉だった女王が、今は自ら淫行を求めるふしだらな女に堕ちた。
(んぁ♥︎ あんっ♥︎ 陛下の御手が尻肉を鷲掴みにしている♥︎ あふぅ♥︎ イヤらしい手つきで撫でられて、乱暴に掴まれて、力一杯に引っ張られて、激しく揉まれていますわぁ⋯⋯♥︎)
媚びを売り続けるセラフィーナにも意図はあった。ベルゼフリートの寵愛を掴み、宮廷での立場を強化する。しかし、女の欲求は偽れない。抑えきれない己の劣情を満たすためでもあった。
「はあ、はぁ♥︎ 陛下は女を悦ばせる性技がとてもお上手ですわ♥︎ お尻を触られているだけなのにぃ⋯⋯♥︎ あんっ♥︎ ゾクゾクしてきましたわぁ⋯⋯♥︎ こんな手付きで他の妃達もよがらせているのですね♥︎」
「何ごとも経験。仕込まれれば上手くなるよ」
「んぁ♥︎ 私だって陛下に教え込まれましたわ。セックスの悦びをっ♥︎」
「そうだね。でも、今は僕のほうが負けちゃう。大人はずるいよね。セラフィーナだって最近は僕を押し倒してセックスしてるじゃん。せがんでくるしさ」
「あんっ⋯⋯♥︎ んふぁん⋯⋯っ♥︎ へ、陛下っ♥︎ そこはいけません♥︎ お尻じゃなくてそこはっ⋯⋯♥︎ 股の間に指が割り込んでぇ⋯⋯♥︎ あんっ、あぁん⋯⋯♥︎」
「手マンは初めてじゃないでしょ? いくら敏感だろうとお尻だけだとイけないでしょ? もうオマンコじゃないと満足できない身体だ。指で小突かれた程度だと刺激が足りないかな。本当に欲しいのは何なの?」
「オチンポぉ♥︎ セラフィーナの淫乱オマンコは、陛下のオチンポを欲しがっていますわっ♥︎」
「僕のお子様オチンポでいいの? セラフィーナのオマンコは愛してた旦那さんのオチンポを忘れちゃった? 初めてを捧げた相手でしょ。ガイゼフのオチンポに処女をあげて子供を二人も産んだくせに。それでも僕のオチンポのほうが好きなちゃった?」
「陛下っ♥︎ 意地悪ですわぁ⋯⋯♥︎ 陛下の極太オチンポで、私をこんな淫乱にしたのをお忘れなのですか♥︎ それとも、私の夫にぃ⋯⋯♥︎ ガイゼフに妬いているのかしら⋯⋯♥︎」
「妬いてるかも。だってさ〜、セラフィーナはまだ家族に執着してる。僕とのセックスが好きでも、全部は捨ててくれない。ねえ、答えて。怒らないから、ちゃんとした本音を聞かせて。セラフィーナは僕とガイゼフ、どっちのオチンポが好き?」
「んぁんっ♥︎ もちろん♥︎ 陛下のオチンポですわ♥︎ 陛下の大っきな極太オチンポじゃないとダメなのぉ♥︎ 陛下を知ってしまったら、もう夫のオチンポじゃ満足できませんわぁ⋯⋯♥︎」
「セックスはどっちが好み? 僕? それとも旦那さん?」
「と、とぉぜん♥︎ 陛下ですわっ♥︎」
「最初はあんなに嫌がってたくせに、僕とのセックスが病みつきになっちゃったんだ」
「だってぇ♥︎ 陛下が私を女にしてしまったのですものっ♥︎ セックスがこんなに気持ちいいなんて知りませんでしたのぉ♥︎ 最初は乱暴なセックスだったから、陛下をお恨みしましたわ♥︎ でもぉっ♥︎ 今の私は陛下を求めてしまいますわっ♥︎」
「じゃあ、僕をこの世の誰よりも愛している? 夫として、家族として僕を受け入れてくれるの? ガイゼフ王やヴィクトリカ王女、アルテナ王国、セラフィーナが守りたかった全てを捨てて、僕と共に歩んでくれる?」
「んぁ♥︎ あんっ♥︎ それはできませんわ♥︎ だって、陛下は私を愛してくださっていないから⋯⋯♥︎ 夫婦は愛し合わなければ本物とは言えませんわ♥︎」
「ふ〜ん。言い訳っぽい。前にも聞いた気がする」
ベルゼフリートの指先が止まる。セラフィーナの汗ばんだ皮膚から水滴が垂れる。爆乳を揺らし、背を屈めてベルゼフリートの視線に両目を合わせる。
——そして誰にも聞こえないように耳元で囁いた。
「どうでしょう? 皇帝陛下。私を一番の女にしてくださいませんか。宮廷でもっとも愛されている寵姫として扱ってほしいですわ。壇上に立っている三皇后よりも、私を愛していただけるかしら?」
「一番の女ね⋯⋯。どうしてセラフィーナは一番に拘るの?」
「私をもっとも愛してくださっている殿方は、きっと我が夫のガイゼフですわ。陛下には数多くの女性がいらっしゃる。私はハーレムの一人でしかありません。私は、私を一番愛している殿方を愛したい。そして、その方にアルテナ王国を託そうと思うのです」
「そっか。なかなかに手強いね。僕じゃまだ不足なんだ。でもさ、僕だけに努力を求めるのは不公平だ。僕の一番になりたいのなら、セラフィーナは努力してくれるんだよね?」
「もちろんですわ♥︎ 私の身体で陛下の御体に宿る荒魂を慰めましょう。今宵の夜伽は、私にお任せください。あのガラス張り温室では満足できませんでしたわ。陛下もまだ発散できていないのでは?」
「今日はすぐ寝るつもりだったんだけど⋯⋯」
「私もお供に⋯⋯。陛下の御寝所に泊めいただけませんか?」
「セラフィーナがそこまで言うならしょうがないかな。帝城に帰ったら、続きしちゃう?」
「喜んでお相手をさせていただきますわ。今日の戦勝式典はメガラニカ帝国の皇帝ベルゼフリートが、アルテナ王国の女王セラフィーナを支配したと内外に知らしめる催事。会場の皆様に、私が陛下の女だとお示しください♥︎」
皇帝の女であるとセラフィーナは認めた。ガイゼフの妻でありながら、皇帝の愛人であろうとしていた。セラフィーナの不遜な態度はウィルヘルミナをはじめ、宮廷の妃達から反感を買う。
(――そうなろうと構いませんわ。幼い皇帝を甘い言葉で口説き、誘惑して、心の隙間をちょとずつ埋めてあげる)
セラフィーナには自信があった。
(必ず私に傾いていくわ。私には母親の経験がある。子を産み、育てた母だからこそ、分かりますわ。幼い子供がどんなふうに甘えたいのかも⋯⋯)
壇上のウィルヘルミナから敵意の篭もった視線が放たれていた。だが、セラフィーナは心地好く感じた。
(皇后達は政務に励んでいればいいわ。その間、私は幼い少年の心を手中に収める。男を誘惑する美貌。私が唯一誇れる長所⋯⋯! 貴女達の大切な幼帝を籠絡し、虜にしてさしあげますわ)
セラフィーナは俗悪な微笑を浮かべる。対抗心は燃えたぎっていた。ウィルヘルミナを挑発するため、ベルゼフリートの肩に手を回す。
「ベルゼフリート陛下⋯⋯。お口を拝借いたしますわ♥︎」
「ん? セラフィーナぁ⋯⋯今はっ、だめ、ちょ⋯⋯!! んむうゅ!?」
閉会式の挨拶が終わるタイミングで、セラフィーナはベルゼフリートに接吻した。唇を重ね合わせ、舌を口内に入り込ませる。
お互いの唾液を混ぜ合わせ、交尾する蛇のように舌を絡ませた。
(困ったなぁ。皆が見てるのに⋯⋯。僕が教えた恋人同士のキスしちゃってるよ⋯⋯)
グラシエル大宮殿の大広間に居合わせた全員の目線が、口吸いされる皇帝に集まっていた。
幼い少年の唇を奪う大人の美女。年の差を考えると倫理的にアウトなのだが、女王の淫靡な魔性に目を奪われ、魅了される少年が羨ましく見えてしまう。
「これで私たちの祝宴は終わりましたわ。陛下、一緒に帰りましょう」
さながら自分が正妻と言わんばかりの堂々たる態度で、セラフィーナは言い放った。
アルテナ王国は敗戦国であり、その君主たる女王セラフィーナに屈辱的を与える式典である。勝者達であるメガラニカ帝国の三皇后を差し置き、自分のために開かれたパーティーだと言わんばかりの行動だ。
「陛下? 腰に手を回して、私を支えていただけるでしょうか。お腹が大きくなって、最近は歩くのが辛いのです。お腹の御子も父君である陛下に撫でられれば、きっと喜んでくださいますわ」
「大丈夫かなぁ⋯⋯。これ⋯⋯。後がすっごく恐いんだけど⋯⋯」
ベルゼフリートの顔色は悪い。怯えていた。というのも三皇后の心情を察したからだ。いくらなんでも正妃たる皇后達の前で遠慮がなさ過ぎる。公衆の面前での振る舞いだ。
「ふっふふふふ。寝取りを見せつけるのは効果的ですわ。陛下だって私の夫に淫行の映像を送り付けたではありませんか。私のときは中出しセックスでしたが、今のは接吻だけですわ。この程度の小事で、三皇后がお怒りになりませんよ。それほどまでに器量が小さい方々とは思っておりませんわ」
セラフィーナはベルゼフリートを伴って、悠然とグラシエル大宮殿を退場した。天空城アースガルズに帰る道中、自分が正妻であるかのように悠々と練り歩いた。
戦勝式典での出来事は貴族や商人達を介し、アルテナ王国の人々に伝わり、バルカサロ王国へ逃げ込んだガイゼフの耳にも入った。