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【20話】覗き見

 夕食ではリリトゥナが絶品の手料理を振舞った。

 カレンティアも人並程度の料理はできる。しかし、冒険者の粗野な食事だ。味は悪くないものの、見てくれが悪い。本職のメイドには逆立ちしても勝てない。

 一宿一飯の恩義は、子守りで返すことになっている。姉妹の入浴を手伝い、ついでに自分も長旅の汚れを落とした。レーヴェ家は越冬用の薪と木炭を大量に備蓄していた。井戸から自噴した水を湯釜で沸かし、木製の湯舟に注いでいる。

 湯水を豪勢に使えるのは、荘園の収益が大きいおかげだ。

 燃料代を気にしている様子はない。闇樹館は暖炉の熱を床下に流す暖房構造であるため、火を絶やさなければ建物全体が暖かくなる。

 ダザリーヌとアヴェロアナはそれでも寒いという。だが、他の家で暮らした経験がないからだ。平民の家は鼻水が凍るほど寒くなる。暖房がしっかりしている貴族の家でも、廊下では吐く息が白くなる。

 レーヴェ家の本邸が焼け落ちる前、闇樹館は別邸扱いでほとんど使われていなかったが、とても勿体ないことをしていたとカレンティアは思った。冬の間、これほど居心地がよい家はない。

「――でも、やっぱり変だわ」

 与えられた寝間着で、客間のベッドに寝る。天井を見上げていた。

 ダザリーヌには子供部屋で一緒に寝ようと誘われたが、アヴェロアナに配慮して辞退した。人懐っこい姉と違って、物静かな妹はカレンティアを身内と思っていない。

(夕飯のとき、リリトゥナさんは食事に手を付けなかった。顔に火傷があるから……。でも、素顔を隠してるのは気になる……。両手も……ずっと黒手袋で隠したままだったわ)

 寝転んでいたカレンティアはガバッと起き上がる。ノーブラの爆乳が勢いでこぼれそうになった。胸元を締めて直して、装いを整える。

 すぐに確かめなければ気が済まなかった。

(きっと今頃、浴室はヴォルフガングさんが使っている。一人でお風呂には入れないから、介助でリリトゥナさんも……。入浴中ならあの騎士兜を外す……。左手の薬指も確認できるわ)

 姉妹は子供部屋で寝ている。カレンティアが客室から消えていても不在は悟られない。

(結婚指輪を父さんの墓前に埋めた妊婦は、絶対にリリトゥナさんだわ。その理由は何? なぜ嘘をつくの? ヴォルフガングさんが私に警告したのだって……)

 カレンティアは客間のクローゼットで干されている自分の服を見た。紅茶の色が染みているが、乾ききっている。

(嵐は局所的……。闇樹館から逃げて……。荘園の馬を盗めば……。いいえ、駄目よ。レーヴェ家の若君も怪しいわ。だって、彼は私を見てと言ったのよ。つまり、四年前に失踪した母さんを見てるってことじゃない……!)

 もし母親が何らかの理由でレーヴェ家に囚われていたなら、ここで自分が逃げ出せばどうなるだろう。母親とは二度と会えないかもしれない。

(――覗きに行こう。リリトゥナさんの素顔を見たい。レーヴェ家の秘密……。隠している何かが分かる気がするわ)

 暗闇の廊下を忍び足で歩く。闇樹館の窓枠には遮蔽扉がある。分厚い鉄板が月明りを遮っていた。嵐の雪雲で夜空は覆われているだろうから、カレンティアは最初から月光を当てにしていなかった。

 冒険者がマーキングに使う夜光塗料のペンダントで足元を照らした。螺子ネジを緩めれば塗料の水滴が目印となる。暗がりでは便利な道具だ。今回は液を垂らさずに、ペンダントから放たれる光を頼りに進んでいく。

 脱衣所の扉から明かりが漏れている。ヴォルフガングとリリトゥナは入浴中のようだ。足音を殺しながらカレンティアは扉に近づき、様子を窺うために耳を当てた。

「あんっ♥︎ あんっ♥︎ あんっ♥︎ あんっ♥︎ あんっ♥︎ あんっ♥︎ あんっ♥︎ あんっ♥︎ んぁっ♥︎ あぁっ♥︎ ああぁっ♥︎ んぁああぁぁっ~~♥︎」

 官能的な嬌声を盗み聞いてしまい、カレンティアの頬が赤くなる。予想はしていた。しかし、想像を凌駕する激しい営みが行われている。

 幼い娘達を子供部屋で寝かしているのも、男女の営みを見せたくないからであろう。入浴中のエッチは夜戦の前哨戦に過ぎない。本番のセックスは寝室で行われる。

(さすがに悪い気がしてきたわ……。でも、今なら絶対に裸のはずだわ……。まさかセックス中も騎士兜を装備してるなんてないわよね?)

 カレンティアは脱衣室の扉をゆっくりと開ける。喘ぎ声に加えて、素肌が触れ合う生々しい肉音まで聞こえてきた。

(セックスは浴室でしているようね。これだけ喘いでいるなら、私に気付くわけないわ。車椅子の横に木編みのバスケット……。メイド服と……黒い騎士兜……。黒手袋も外してるわ。――よし、ちょっとだけ覗こう。顔と薬指。それさえ見たら撤退する)

 カレンティアは冒険者パーティーではもっぱら前衛戦闘を担う。斥候役は婚約者のクロヴィスだ。隠密行動は専門外だったが、素人に気付かれる下手は打たない。気配を殺し、脱衣室に侵入した。

 浴室は真っ白なカーテンで囲まれていた。油を塗り込んだ長布は撥水効果を発揮する。

 カーテンが適度に湯気を閉じ込めて、風呂釜から立ち昇る水蒸気でサウナを楽しめる。

 カレンティアは姉妹達と湯を溜めて普通に入浴したが、ヴォルフガングとリリトゥナは半身浴で汗を流していた。蒸し風呂状態の浴室からは性臭が漏れ出している。

(精液の匂い……)

 子種の芳香が鼻孔を刺激する。ヴォルフガングとリリトゥナの入浴はいつも最後だという。風呂にこもった淫行の残り香を娘達に嗅がせないためだ。

「あぁんっ♥︎ んんぅっ♥︎ んぉああぁっ♥︎ あっあぁっぁぁっ~~♥︎ ヴォルフ坊ちゃんっ……♥︎」

 湯舟の波音が荒ぶっている。

 淫猥な雌声で叫び、悶え悦びながら、リリトゥナは陰部を打ち付けていた。

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