表現規制で起きた逆転ゾーニング アダルト検索だとゼロ件の「奴隷」作品、全年齢向けは該当書籍5000件超に

 クレジットカード会社によるアダルトコンテンツの表現規制によって、起きている不可思議な現象「逆転ゾーニング」を考察していきます。

 最近はクレジットカード会社の表現規制を金融的検閲と呼ぶ方もいますが、厳密には正しくありません。法学をかじった方ならご存知だと思いますが、「検閲」とは国家等の公権力が、表現物を精査し、取り締まることを意味します。

 クレジットカード決済の関係企業は「国家等の公権力」に該当せず、あくまで民間企業です。また「表現物を精査し、取り締まること」にことに関しても、警察などではないため「取り締まる」とまでは言えない⋯⋯と考えています。

 要するにMasterやVisaなどのクレジットカードを使わなければ、作品を発表できる環境だから検閲と言えません。そもそもお国が関与してませんしね。我々が思っている以上に「検閲」の定義はとても狭く、クレジットカード規制とは比べ物にならないほどの人権侵害です。

 細かい「検閲」の定義を語りましたが、現在の問題はクレジットカード決済会社による「表現規制」が妥当だと思います。日本国内においては、民間企業の自主規制です。よって、記事内でも規制と表現します。

 民間企業の「表現規制」が実施された結果、本末転倒な実情が浮かび上がってきました。アダルト売り場でエロワード検索ができず、なぜか全年齢向けの売り場でエロワードが氾濫しているのです。「性奴隷」と「凌辱」、本来なら18禁の卑語がアダルトでは伏せられ、全年齢向けでは堂々と露出しています。

逆転ゾーニング 全年齢向けエロ本?

 記事タイトルの通り、成人向け電子書籍を扱うFANZAよりも、全年齢向け電子書籍を扱うDMMブックスのほうが規制が緩いのです。その結果、エロ本は「奴隷」の検索結果で該当作品0件、全年齢向け一般書籍は5000件超という意味不明なゾーニングが起きました。

 年齢確認が設けられていないDMMブックスで「奴隷」「性奴隷」が堂々と露出し、18未満の閲覧を禁じてるFANZAブックスでは伏せ字処理が行われています。アダルトコンテンツの表現規制を強化した結果、皮肉なことにゾーニングの逆転現象が生じたのです。

泥酔はNG 睡姦はOK

 また、FANZAブックスの規制についても本末転倒な代物で、海外基準の用語規制であるため「折檻」「泥酔」「強制」「薬物」なども対象に含まれています。

 おそらく翻訳の関係で「監禁」「催眠」「強姦」と同義語と見なされたようです。なお、「調教」「睡姦」「強引」「薬漬け」は伏せ字の規制対象になってません。

 基準がいい加減で、馬鹿々々しく、滑稽にも思えます。用語が海外基準であるため、日本人の一般的な道徳観とミスマッチしています。抜け穴だらけの規制ですが、おそらくプラットフォーム側も馬鹿げていると呆れているのでは?。

全年齢向けにだけある「奴隷」本

 FANZAとDMMの両サイトにおいて検証しました(2025年10月10日時点)。

 キーワード「奴隷」で検索したところ、FANZAブックスは0件。表現規制によって「奴●」と伏字の処理が行われているためです。

成人向け電子書籍を扱うFANZAでは「奴隷」で検索結果が0件に

 ところが、DMMブックスでは「奴隷」が禁止ワードになっていません。そのため5103件以上のシリーズタイトルが並びます。なお、セーフモード(強)の場合は1942件まで作品数が減ります。

 セーフモードを使わない検索結果の内訳は「少年・青年マンガ(646)」「少女・女性マンガ(482)」「BL(1141)」「TL(1243)」「文芸・ラノベ(1207)」「ビジネス・実用(382)」「写真集(2)」。

 マンガ作品では男性向け作品が多く、小説媒体では女性向けの「TL」が最多の結果でした。

DMMブックスで「奴隷」を検索、「TL」「文芸・ラノベ」「BL」が上位に(2025年10月10日時点)

「性奴隷」274作品、女性向け過半数

 よりエロ要素の高いキーワード「性奴隷」とした場合でもFANZAブックスは当然0件。しかし、DMMブックスでは274件ヒットします。なお、セーフモード(強)の場合は106件です。

 一般向け電子書籍の「性奴隷」なわけですから、犯罪などを取り扱った作品も検索にかかりますが、274件の内訳は「少年・青年マンガ(39)」「少女・女性マンガ(48)」「BL(60)」「TL(73)」「文芸・ラノベ(37)」「ビジネス・実用(17)」となっています。

 男性向けより、女性向けコンテンツのBLやTLで「性奴隷」が多くヒットしています。文芸・ラノベは男性向けが多い印象ですが、女性向けの本も含まれており、判断に迷うところです。

DMMブックスで「性奴隷」を検索、「TL」「BL」「少女・女性マンガ」が上位に(2025年10月10日時点)

全年齢向け「痴漢本」は女性向けも多い

 「痴漢」で検索した場合でも、DMMブックスの内訳は「少年・青年マンガ(213)」「少女・女性マンガ(97)」「BL(205)」「TL(194)」「文芸・ラノベ(125)」「ビジネス・実用(76)」でした。男性向けマンガとほぼ同数でBLやTLが並んでいます。

 全体ではBL、TL、少女・女性マンガを合計すると女性向けが全体の過半数を占めます。単体では少年・青年マンガがトップですが、文芸・ラノベを男性向けに含めても、女性向けの痴漢本が多数となる意外な結果でした。

 ただし、注意しなければならないのは、FANZAブックスのアダルト検索でゼロ件だとしても、作品が存在しないわけでなく、ゾーニングで結果が表示されていないだけです。痴漢、凌辱、性奴隷など総コンテンツ数はおそらく男性向け作品が圧倒的に多いでしょう。

 DMMブックスの全年齢向け一般書に限定し、キーワード検索で該当した場合の検証結果であることを強調しておきます。

逆転ゾーニングで凌辱本は一般書籍に?

 エロ本を扱うFANZAブックスで「凌辱」と検索して0件。一般向けのDMMでは「凌辱」が638件も表示されます。

 内容がソフトな微エロであるとしても、本当に不可思議な事態が起きてます。「獣姦」などの特殊な禁止ワードは例外ですが、アダルトの表現規制を締め付けた結果、検索システム上でのゾーニングが逆転しているのです。

 昨今のエロ広告問題も同様だと考えています。これはコンテンツメーカー側の売り方にも問題があったものの、アダルトコンテンツの販売経路を絞り上げた結果、全年齢向けの市場に逆流してしまったわけです。

 エロ本では売りにくい、だから一般書籍扱いで売ろう。この慣習がマンガや小説で根付いた弊害です。(筆者自身はその恩恵で書籍化したので、あまり強くは言えないのですけどね)。

成人向けコンテンツで海外基準の表現規制を導入

「Amazon」「DLsite」「FANZA」などで売れなくなる

制作会社・クリエイターが萎縮

一方でエロ作品に対する需要は高まり続ける

規制のない全年齢向け市場で「微エロ作品」を売り出す

「全年齢向け微エロ本」誕生

【ゾーニング逆転】微エロ本が徐々に過激に

本物のエロ本に近づいていく

一般作品の「BL」「TL」でエロ露出が増加
奴隷・性奴隷ジャンルは女性向けが過半数に


全年齢向けエロ本の広告が大量に出回る

注目を集めた結果、問題視されて広告規制

FANZAブックス 禁止ワード

 禁止ワードに指定されているであろう用語をピックアップしました。網羅性はありません。検証で利用したキーワードをまとめたものです。

 全文字が規制対象になっているものは入れていません。「小学生」「中学生」は伏せ字でも表現されていないようでした。フィクションであっても海外基準では児童ポルノ扱いになるロリコン系のジャンルは特に厳しいようです。

FANZAブックス 禁止ワード伏せ字処理読み
犯され犯●れおかされ
犯す●すおかす
強制強●きょうせい
強姦強●ごうかん
昏睡昏●こんすい
催眠催●さいみん
獣姦獣●じゅうかん
折檻折●せっかん
痴漢痴●ちかん
泥酔泥●でいすい
奴隷奴●どれい
薬物●物やくぶつ
夜這い夜●いよばい
凌辱凌●りょうじょく
輪姦輪●りんかん
レイプレ●プれいぷ
ロリロ●ろり
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