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【257話】破瓜〈前編〉‐Queen Slave SIDE‐

 厳粛な修道院で生まれ育ったイシュチェルは還俗するまでの三十二年間、ただの一度も異性と触れた経験がなかった。

 純潔の誓いを立てた修道女は、生涯未婚の人生を貫く。教皇庁の許可がなければ、国王チャドラックの求婚も通らなかったであろう。バルカサロ王国では教会の権威を尊重し、修道院は手厚く保護されていた。

 前王妃エルシェベナが急死した直後に、国王チャドラックが再婚を急いだ理由は不明だ。既に五人の王子がおり、王の後継者は足りていた。

 後妻が子供を産む必要はなかった。しかし、老齢の国王チャドラックは王妃となったイシュチェルに子供を産ませるため、あらゆる手段を尽くした。

 結婚初夜、イシュチェルは三十二年歳で処女を散らし、男との交わりを知った。

 純潔を失ったイシュチェルは子作りに専念させられたが、淫欲とは無縁であった。性交の快楽は人並みに感じた。しかし、国王チャドラックの子供を産まなければならない義務感が圧倒的に強かった。

 国王と王妃の交わりは愛を育むというよりは、病の治療をするような厳かさがあった。イシュチェルも若い娘ではなく、二十代を過ぎて加齢の影響が目立ってくる年頃。苦労と苦難の夜が続き、教皇の聖印を授かって、やっと待望の第六王子アーロンを授かった。

 王妃イシュチェルは夫たる国王チャドラックを愛していた。しかし、心中に大きな疑問を抱いていた。なぜ自分を王妃に娶ったのか? どうして子供を作りたがったのか?

 その真意をいつかは確かめなければと思い悩んだ。

 前王妃エルシェベナの旧臣達は、修道院から嫁いできた新王妃イシュチェルを疎み、王宮に大勢の政敵がいた。国王チャドラックや第一王子ドラミホールは醜い諍いをやめさせようと強権を振るったが、その後に起きた顛末を考えれば逆効果であった。

 イシュチェルは自責の念を感じていた。

 バルカサロ王国で起きた大惨事は、自分が王妃になったことで引き起こされた。国王チャドラックの求婚を拒絶していれば、こんな未来は訪れていなかった。

(痛いっ⋯⋯! 裂けてしまうっ⋯⋯!!)

 グウィストン川で行方知れずとなった我が子の生存を信じて、母親は己の身体を売った。だが、取引は対等な者同士で成立する行為。イシュチェルはバルカサロ王国の王妃であったが、歴史の表舞台から退場させられていた。

 イシュチェルがどんな扱いを受けても、存在しない死人は誰も助けてくれない。

(痛いっ⋯⋯! 痛いっ! 痛いっ! それ以上は⋯⋯!! らめぇっ! 無理ですわっ! 大きすぎるっ⋯⋯! そんなに拡がらないっ! もう入らないっ!)

 焔が燻る松明を肛門に捩じ込まれたような激痛。悲涙の雫が滲み、食いしばった口から流涎が滴る。押し入ってくる巨根は、まだ半分ほどしか挿入されていない。常人とは異なる異形化したオチンポは、成人男性の常識的なサイズを遥かに凌駕し、見た目は馬の生殖器に似ている。

 当然、老王チャドラックの逸物よりも大きい。極太極大の亀頭が未踏地のアナルを侵略し、皇帝ベルゼフリートは敵国の王妃イシュチェルを凌辱する。

「盛り上がりに欠けるね。ずっとだんまり? セラフィーナを強姦レイプしたときは、もっと激しい反応をしてたよ。催淫香だけじゃ感度不足? じゃあ、サキュバス特産の淫酒を飲ませてあげるね」

「な、なにを⋯⋯!? んぎゅっ!?」

 イシュチェルを取り囲む側女達は、無理やり白濁色の淫酒を飲ませてくる。

「黄葉離宮の女仙は全員が妊娠してるから飲酒禁止なんだよね。このままだと無駄になっちゃうから、イシュチェルに全部あげる。このお酒を飲むとお喋りになるんだよ。もっと饒舌になってくれるよね? ああ、それと、眠ったらエッチな夢を見ちゃう副作用があるらしいよ。夢の中でアクメしないと目覚めないとか、なんとか⋯⋯。本当かな? くすくすっ!」

 異物挿入の激痛で呻いていた肛門がヒクヒクと痙攣する。催淫香を吸い込み、淫酒を飲まされた影響が肉体に現れた。

 背徳的な高揚感が全身を包み、背中と巨尻に覆いかぶさるベルゼフリートの体温が心地よい。アナルが収縮を繰り返し、突沸した快楽でとろけていった。

「あっ⋯⋯♥︎ んぁっ⋯⋯♥︎ ああぁあぁぁぁぁ~~っ♥︎」

 酔い痴れたイシュチェルは我慢しきれず喘いだ。生涯不変の愛を誓った国王には、見せられぬ王妃の痴態。下腹部に刻まれた聖印はオマンコを護り続けるが、アナルは無防備だ。子宮の裏側から攻め立てられ、ついにイシュチェルは絶頂に達する。

 アクメの衝撃が脊髄を駆け抜け、意識が真っ白に染まった。

「あぅぁ⋯⋯あぁんっ⋯⋯♥︎」

「やっと感じてくれるようになった。でも、夜はこれからだよ。イシュチェルのことを教えてよ。隠し事があるよね? 僕、分かるんだ。そういうの。ねえ、教えてよ。知りたいな。まだ話したくない? じゃあ、教会については? 修道女だったんでしょ。教皇候補だった元聖女とは話が合ったんじゃない? 仲良くできそう?」

 亀頭で尻穴を穿ほじくり回しながら、ベルゼフリートは質問を浴びせかける。正常な思考が働かないイシュチェルは、夢見心地で話してしまう。ただし、絶対に話してはいけないアーロンの秘密だけは守り抜いた。

 黄葉離宮で催された乱交の淫宴、新入りのイシュチェルは肛辱の歓迎を受けた。

 ベルゼフリートは間隙を縫って処女膜を破ろうとしたが、後宮入内の初夜では成し遂げられなかった。その腹いせに乳首や臀部、アナルを徹底的に苛め抜いた。孕み腹の側女達も積極的に参加し、イシュチェルの身体は弄ばれた。

 ◆ ◆ ◆

「あぁぁっ! あっ!? あうっ! あっ、あぁあぁぁーーーーっ!!」

 飛び起きたイシュチェルは、鼓膜をつんざく金切り声を叫ぶ。淫惨な記憶がフラッシュバックした。

(私は身体を売ってしまった⋯⋯。で、でも、あれは強引に⋯⋯! 仕方なかった⋯⋯。汚らわしい行為を⋯⋯! 罪を犯してしまった⋯⋯! 不義を⋯⋯! 国王陛下に対する裏切り⋯⋯! 背徳の大罪! 肉欲に負けてしまった⋯⋯!! もしも誰かに⋯⋯! バルカサロ王国の人々に知られたら⋯⋯! あぁっ⋯⋯あぁぁぁ⋯⋯!! 犯された⋯⋯犯されてしまった⋯⋯!! もう取り返しがつかない⋯⋯!)

 我が子を守らんとする気高い母親の覚悟は踏みにじられた。

 自己嫌悪で喉元を引っ掻き、首を絞めようとした。だが、自傷行為に及ぼうとするイシュチェルの両手を誰かが掴む。

「イシュチェルさん。落ち着いてください。この部屋には私しかいません。大丈夫です。誰も貴方を傷つけません」

「はぁはぁ⋯⋯。マリエールさん⋯⋯?」

「ここは私とイシュチェルさんに与えられた私室です。今は夕暮れですよ。ずっと寝ておられたのです」

「誰が私をここに⋯⋯?」

「女官達がイシュチェルさんを運んできました。失礼ながら私のほうで身体を拭かせていただきました。神力を封じられていますが、医療の心得はあります」

「そうだったのですね⋯⋯。ごめんなさい。ご迷惑をおかけいたしましたわ」

「とんでもない。お助けできず、申し訳なかったです。⋯⋯寝ている間、随分とうなされておりましたが、今はどうですか?」

「多少は⋯⋯良くなってきましたわ⋯⋯。昨晩、変なお酒を飲まされたせいです」

「お水をどうぞ。喉が渇いているはずです」

 マリエールが差し出してくれたコップを受け取り、ゆっくりと水を飲み干した。汗を吸い込んだ肌着がぴったりと皮膚に張り付いていた。

(全身が汗でびっしょり⋯⋯。服を着替えたいですわ)

 おぞましい淫夢に苦しめられている間、イシュチェルは大量の汗を流していた。

「お気遣いいただき、ありがとうございます。マリエールさん」

「困ったことがあったら相談してください。私はメガラニカ帝国側の人間じゃありません。秘密は厳守いたします。逆に私の相談事も聞いてくれたら嬉しいです」

「マリエールさんは⋯⋯その⋯⋯大丈夫⋯⋯?」

 自分と同じような淫事を強要されたのではないかと心配する。だが、マリエールは首を横に振った。

「教会関係者の私は警戒されているらしく、遠ざけられてしまいました。仕方ありません。私は自分で売り込みを仕掛けた人間ですから。できれば、イシュチェルさんと役目を交代したかった」

「あの皇帝は⋯⋯」

「皇帝陛下。⋯⋯メガラニカ帝国の後宮ではそう呼ぶべきですよ。絶対に」

「は、はい」

 イシュチェルの不用心をマリエールは咎めた。

「この部屋には私しかいません。しかし、会話を盗み聞きする人間はいるかもしれない。異能持ちの警務女官が大勢おります。お互いに気を付けましょうね」

「失礼しましたわ。気が緩んでいたようです。皇帝陛下は?」

「庭で警務女官達と馬蹄投げをしておられましたよ。無邪気に遊んでいる姿はごく普通の少年ですね」

 馬蹄投げは馬の蹄鉄を投げる庶民的な遊戯である。参加者は輪投げと同じように得点を競う。

 警務女官達は最下位の人間が服を一枚脱ぐ特殊ルールを採用し、下品な遊び方は生真面目な妃達からの顰蹙ひんしゅくを買っていた。ベルゼフリートも脱がされる側で、警務女官は手加減をしない。白熱の脱衣ゲームなのである。

「夜になったら、私はまた寝室に呼ばれるのでしょうか⋯⋯。皇帝陛下は私に子供を産ませると言っていましたわ」

「やはりそうでしたか。皇帝陛下は『イシュチェルさんの聖印を解除しろ』と私に命じてきました」

「えっ⋯⋯!?」

「大丈夫。ご安心を。教皇猊下の祝福を私が消すなんて不可能です。その聖印はイシュチェルさんの子宮を護り続けます」

「あぁ、よかったわ。⋯⋯この聖印がある限り、私は妊娠せずに済みます」

「不思議ですね。何故イシュチェルさんを無理やり妊娠させて、子供を作りたがっているのでしょうか? メガラニカ帝国の狙いは何でしょう?」

「分かりませんわ。私自身はバルカサロ王家の血筋というわけじゃないのに⋯⋯」

「教会の修道院でお育ちになったと聞いておりますが、イシュチェルさんのご両親は?」

「よく知りません。物心がつく前から修道院に預けられていましたわ。育ての親は修道院の院長先生です」

 イシュチェルは生まれ育った修道院について語ってくれた。それを聞いたマリエールは一つの可能性に気付いた。

(イシュチェルさんは特別な血筋かもしれない。状況証拠でしかないけれど、その説は濃厚⋯⋯。バルカサロ王国の国王もイシュチェルさんとの子供を欲しがった。あらゆる手を尽くし、アーロン殿下が生誕した。⋯⋯君主は劣情だけで女を抱かない)

 大国を背負う国主に自由恋愛はない。

(――絶対に何かある)

 バルカサロ王国の国王チャドラックとメガラニカ帝国の皇帝ベルゼフリート、二人の大君主がイシュチェルの血筋を重要視している。

(皇帝陛下は事情を伝えられていない様子だった。上からの命令でイシュチェルさんを抱いている⋯⋯。最高権力者の三皇后に接触すれば、真意を確かめられるかもしれない。そのためにも皇帝を口説き落とさないと⋯⋯)

 そっけない態度で寝室から追い出されたことが、マリエールはショックだった。

(色仕掛けは専門外です。美女が大勢いる後宮では、私の顔も没個性ですし⋯⋯。困りましたね。相手は子供⋯⋯。まずは遊び相手からでしょうか? 馬蹄投げの練習をしておきますかね)

【レビュー】MAFIC「ケンタウロスの懐胎」 四脚魔獣と強制交尾、ケンタウロスを孕み産む女狩人

作品紹介

魔獣狩りは、魔獣を産みだす母胎となる―

相棒の四脚魔獣プリオと女狩人ピルラは、1人の老人の駆除依頼で魔獣の潜むという洞窟を訪れる。

しかしそれは罠だった。

老人は魔術によってピルラと魔獣を交わせ、軍用兵器ケンタウロスの生産しようとしていた。

かくしてピルラとプリオは強●的に交尾させられる。

ピルラは成すすべなく自身の相棒の仔を産み続けることに―

発売元(サークル名)MAFIC
発売日2025/06/26
価格880円
ジャンル触手/母乳/異種姦/男性向け/成人向け/妊娠・孕ませ/出産/準新作
妊娠あり。
ヒロインの女狩人ピルラは、魔術師の策略によって相棒の四脚魔獣プリオと強制交尾。異種姦で仔(ケンタウロス)を産み続ける。

三紋昨夏の個人的レビュー

 魔術師が仕掛けた策略で、相棒の四脚魔獣プリオと強制交尾させられてしまう女狩人ピルラ。魔獣と人間を交配し、軍用兵器ケンタウロスの生産を目論む魔術師は、女狩人ピルラに四脚魔獣プリオの仔を産ませ続ける。

 妊娠、出産、我が仔への授乳。異種姦のセオリーを上手になぞった展開で、普通なら高評価になるのですが、既に似たような作品がこの世にあります。そうなってくると、既存作品に比べて優れているか……となってしまう。

 これが難しい。完璧なオリジナリティを持つ作品なんて、この世にはありませんし、短編の読み切りともなれば展開は似通ってきます。パクリとかそういうのではなく、物語構成の枯渇とでも言いましょうか……。

 魔術師の力で即時妊娠からの超速出産は……漫画的なテンポもありますが好みが分かれるところです。自分はじっくりやってほしい派。

 また、肉屋の青年アドニスが冒頭と中盤で登場しますが……あまりキャラ立ちしていない印象でした。NTRを入れようとしてやめたのか、そもそもモブキャラでしかなかったのか。しかし、この青年が目立っても話がとっ散らかるだけなので、そこはしょうがない。

とてもよく似た作品「白薔薇の騎士ローリアナ」

 佐藤想次先生の単行本「異種孕聖女〜獣属の騎士ローリアナ〜」に収録された『白薔薇の騎士ローリアナ』でも、女騎士が馬と交尾させられ、生まれたケンタウロスの仔が軍事面で活躍する。そういう展開になっています。

 こちらでは妊娠&出産までしか描かれず、母性愛的な描写には欠けますが、先駆者ということもあってオリジナリティがあります。馬の描写についてもこちらのほうが好み。「ケンタウロスの懐胎」を気に入った方にはとてもオススメです。

異種孕聖女〜獣属の騎士ローリアナ〜

【256話】バルカサロの厄種〈後編〉 ‐Kingdom SIDE‐

 国王チャドラックの謀殺後、混迷を極めるバルカサロ王国は、三つの勢力によって内戦状態に陥っている。

 第二王子ジルベールと第三王子ザトリシオの跡目争い。骨肉の殺し合いをさらに激化させた第三勢力は、第一王子ドラミホールの妻であった王太子妃ヴァテリィだ。

 王宮大逆事件で命からがら逃げ延びた王太子妃ヴァテリィは、国王ともども惨殺された夫の仇討ちをするため、故郷で愛国義勇軍を結成した。

 国王殺しの首謀者はイシュチェルとされたが、その発表を鵜呑みにする者ばかりではない。前王妃エルシェベナの旧臣達が首謀し、乗せられた第二王子ジルベールと第三王子ザトリシオが王位簒奪を目論んだと聡い者達は勘付いていた。

 大逆に手を染めた二人の王子は争い始め、運悪く凶作も重なり、国土は荒れ果てていった。困窮する人々の心は次第に王太子妃ヴァテリィの愛国義勇軍に流れつつある。

 ――しかし、台頭した第三勢力も清廉潔白な存在ではなかった。

「それで? 死体はどうしたの? 答えなさい」

 ヴァテリィは自室に呼び寄せた部下を鬼の形相で問い詰める。美しい女性であったが、血走った瞳には一種の狂気が宿っていた。

「イシュチェルの死体を見つけないとお話にならないわ」

 軍部から盗み出した情報で、イシュチェルとアーロンが東アルテナ王国に亡命すると知ったヴァテリィは刺客を差し向けていた。

 王妃イシュチェルと王太子妃ヴァテリィには、夫を殺された妻という共通点がある。だが、二人の未亡人には決定的な違いがあった。

 ――子供の有無である。

 第一王子ドラミホールと王太子妃ヴァテリィの間には子供が一人も産まれなかった。不妊の原因は分かっている。ヴァテリィの子宮は先天的な問題で、赤子を孕む機能が欠落していた。

「なぜずっと黙っているの? どうしてイシュチェルの死体が見つかっていないのかしら? 首と子宮を持ち帰れと命じたはずよ! 私の命令を忘れたとは言わせないわっ!!」

 ヴァテリィは王殺しの真相を知っている。彼女自身が王宮から逃げ延びた数少ない生存者だった。前王妃エルシェベナの旧臣派閥が結託し、第二王子ジルベールと第三王子ザトリシオに大逆を教唆した。

 その結果、夫の第一王子ドラミホールは殺された。

 ヴァテリィが結成した愛国義勇軍は、同じ被害者であるイシュチェルを擁護する立場だ。王宮大逆事件の真相究明を掲げ、民衆からの支持を集めている。しかし、それは表向きの話。裏の実情は異なる。

「イシュチェルが生きていたらどうするつもり!?」

 王太子妃ヴァテリィは王妃イシュチェルを心の底から憎悪していた。

 修道院と国軍が秘密裏に企てていた亡命計画を察知し、暗殺者の一団を送り込み、死体の一部を回収するように命じた。怒りで両肩を震わせる姿はまさしく鬼女であった。若々しい美女は両目をギラつかせ、殺意が溢れ出ている。

「失敗したわけじゃないでしょうね」

「申し訳ございません。木造船は炎上し、イシュチェルの死体はグウィストン川に流れてしまったのです⋯⋯。東アルテナ王国でアーロン王子らしき男児の溺死体が見つかっております。ほぼ間違いなく、誰も生きてはいないでしょう」

 腹心の家臣は救助された者が一人もいなかったと強調する。

「ほぼ⋯⋯ですって? 間違いなく⋯⋯? それは確実なのかしら? その報告は本当? 私は貴方を信じていいのよね」

 いい加減な報告をしているのなら、首をねても構わない。屠殺寸前の家畜を見るような睨みだった。女主人のあからさまな威迫に家臣は怯えていた。蒼白の願面をうつむかせ、縮んだ胃の鈍痛に苛まれる。

「もっ、もちろんです! 奥方様⋯⋯! 確実に仕留めるため、精鋭を送り込みました。先程の情報は国軍の情報部も確認しております! 東アルテナ王国のヴィクトリカ女王が犠牲者を弔っております。生存者は一人もおりません!」

「ふんっ! まあ、いいでしょう。死んだというのなら⋯⋯。アーロン王子の死体は東アルテナ王国に回収されてしまったけれど、誰の死体かなんて判断できるはずがないわ。後でどうとでも誤魔化せる。⋯⋯それよりもイシュチェルの死体よ。とにかく探し続けなさい!」

「はい。アルテナ王国に送り込んだ偽装難民を使って捜索を続けます」

「これで目障りな女は消え去った。私の夫を奪おうとした罪は償ってもらったわ⋯⋯。ああ、それと、私達の蠢動は軍師団に気取られていない。そうよね?」

「はい。国軍の上層部は難民対応とメガラニカ帝国軍への警戒で手一杯です。万が一の際は、軍師団の内部にいる協力者が動いてくれます。いざというときは、第二王子と第三王子に罪を擦り付け、愛国義勇軍の大義はさらに強まることでしょう」

「第二王子と第三王子は? 王都を追い出されて、その後はどうしているの?」

「相変わらず地方で小競り合いを起こしております。王都周辺の争いは国軍が禁じています。これ以上の戦火拡大を軍師団が許さないでしょう。⋯⋯既に甚大な被害です」

「飢饉で苦しむ民は、国外に逃れているわ。本当に戦争が下手」

「両王子はどちらも自陣に引きこもり、兵力集めと戦費徴収に勤しんでおります」

「大凶作の時世に強制徴用? 馬鹿丸出しだわ。物流が寸断された地域では餓死者も出始めているのよ。持たざる農民から奪い続ければ恨みを買う。あの馬鹿王子達はそんな簡単な道理も知らないのね」

「まさしくその通りでございます。奥方様」

 愛国義勇軍は徴収徴用を行っていない。ヴァテリィの実家はバルカサロ王国で随一の資産家であり、有志を募る義勇軍という形式を取っている。自由意志に基づく金品の寄付、そして難民の保護という名目で人員を集めた。

 専門軍人が多く属する国軍には及ばないが、頭数は揃った。第二王子と第三王子の戦力を上回りつつある。

「王妃イシュチェルを亡き者にした今、重要なのは国軍の指揮権を握る軍師団よ! 私達の陣営になんとしてでも引き込みなさい!」

「軍師団の重鎮がルテオン聖教国を訪れております。第四王子ロアフォード殿下に接触し、説得を試みているのかと⋯⋯」

「ロアフォード殿下は王位継承権を捨てて侯爵になっていたわね。今こそ彼に戻ってきてほしい。でも、あの御方は争いごとが嫌いなのでしょ?」

「はい。昔から聖職者になりたいと言われていた方です。侯爵家に婿入りされる以前、王族特権で与えられるはずだった国軍の将軍職を固辞し、下士官の聖職者になったくらいです」

「そのおかげで兵士からの信頼は厚いわ。国軍をまとめ上げている軍師団はロアフォード殿下を次の王にしたいはず」

「しかし、ロアフォード殿下は王位継承権を喪失しております」

「関係ないわ。王殺しの馬鹿二人に王座を明け渡すくらいなら、軍師団はロアフォード殿下の王位継承権を復権させる。きっとそうに違いない。保守的な国軍が好む道理。幸いにも愛国義勇軍と利害は一致しているわ」

「よっ、よろしいのですか? その場合は内乱の鎮圧後に⋯⋯ロアフォード殿下が実権を握ることになりますが?」

「ロアフォード殿下は権力欲が皆無に等しいわ。あの方が野心家だったら、国軍の口車にのって今ごろ意気揚々と王都に凱旋していたでしょう。そうはなっていないわ。大逆犯を一掃しても王座に座るのはきっと嫌がる。だから、狙い目なのよ。分かる? この計画はきっと上手くいく。いいえ、私は必ず成し遂げるわ⋯⋯!」

 ヴァテリィは戸棚の奥に保管しているアーティファクトを取り出す。男性器と睾丸を模した石壺。指先を根本に触れさせると卑猥な形状の石壺は力強く脈動した。

「――私こそが国母にふさわしい」

 生殖器のように血管が浮かび上がり、ほんのりと発熱している。

流離さすらい魔女から買い上げた宝具⋯⋯。ついに成熟したわ。ドラミホール様のご遺体から切り取った逸物を捧げてから、こんなに逞しく成長して⋯⋯♥ この壺は私の宿願をきっと叶えてくれる⋯⋯!)

 アーティファクト〈睾玉こうぎょく嚢壺のうこ〉は、貯精機能を持つ生きた宝具であった。切り取った局部を捧げることで発動し、壺に生殖機能を与える。

(あとはイシュチェルの子宮さえ手に入れば完璧だわ。私は遺児を孕む。そう、教皇猊下が施された聖印さえ手に入れば⋯⋯!! たとえ死体が朽ちても刻まれた祝福は消えないわ)

 ヴァテリィは殺された第一王子ドラミホールの男性器を喰わせた。愛する夫の死体を損壊してでも、未亡人は遺児を産み落としたかった。

 ドラミホールの男根を取り込んだ〈睾玉こうぎょく嚢壺のうこ〉は、子種の生成を始めていた。淫猥な形状の壺底で夥しい数の精子が蠢く。膣穴を近づければ、男根を模した壺から伸びた触手が女体を犯し、生殖器の機能を果たす。

(王妃イシュチェルを殺し、死体から刻まれた聖印を奪う。不妊を治す祝福さえ手に入れば、〈睾玉こうぎょく嚢壺のうこ〉で私はドラミホール様の遺児を産める。アーロン王子の生存を偽り⋯⋯赤子をすり替える⋯⋯)

 ヴァテリィはアーロンを産んだイシュチェルが許せなかった。

(バルカサロ王家の王統は私の血脈に宿る⋯⋯!)

 王宮で囁かれていた噂は真実を言い当てている。アーロンの父親はドラミホールに違いないのだ。ヴァテリィは女の直感で分かってしまった。どんな手段を使ったかは分からないが、イシュチェルはドラミホールと密通し、不義の子を産み落とした。

 ドラミホールがアーロンに向ける視線は、異母弟に向けるものではなかった。問いただすまでもなく、ドラミホールとアーロンは親子だと確信した。

(聖印は私の子宮に刻まれるはずだったわ。それをイシュチェルが横取りした⋯⋯。しかも、夫の子種まで⋯⋯。こんな屈辱を受け入れられるはずないでしょう? 妻の気持ちさえ悟れないから、馬鹿な弟達に殺されてしまうのよ⋯⋯。でも、大丈夫。このアーティファクトさえあれば、死んでしまったドラミホール様の赤子を私が産める⋯⋯!!)

 未亡人は〈睾玉こうぎょく嚢壺のうこ〉を愛でる。

 夫の逸物を取り込んだアーティファクトは我慢汁を漏らしていた。ヴァテリィは指先に付着した孕ませ汁を舐め取った。

 教皇の聖印はまだ入手できていないが、イシュチェルの死体を見つければ祝福を引き剥がし、己の子宮に移植する。魔女の言葉に嘘偽りがなく、〈睾玉こうぎょく嚢壺のうこ〉に本来の力が宿っていれば、ヴァテリィの宿願は叶ったであろう。

 ◇ ◇ ◇

 バルカサロ王国から遠く離れた帝国本土、魔狩人の狩猟本館で軟禁中の妊婦は取り調べを受けていた。

 女仙化した肉体は微弱ながらも瘴気を放っている。大神殿が施した結界で瘴気を緩和し、穢れの滞留を防いでいるが、それもいつかは限界を迎える。帝都近郊か副都ドルドレイへの移送計画が進んでいた。

 異国からの訪問団は、そんな折に押しかけてきた。

(腹立たしい。筋肉が柔らかな駄肉に移り変わっていく。弱々しく、脆い⋯⋯。魔物であった頃の感覚や記憶が薄れている。私の精神までもが人間に近づいているせいだ)

 英傑を屠ってきた殺戮の魔牛は、肥えた牝牛に変貌した。人並みの身体能力しか持たず、大きな乳房の重みで肩凝りを患う有り様だ。胎児が育つにつれて、母胎の身体も成長する。

「バルカサロ王国での活動については何も知らない。レヴェチェリナとピュセルに聞け。⋯⋯二匹とも仲良く死んでいるがな」

 保護された当初は質問攻めだったが、最近は身体の検査がほとんどで聞き取り調査は久しぶりだった。

 苛立っているキュレイは、遠方から訪れた魔狩人に視線を合わせない。魔物から人間に生まれ変わった元牛魔の美女は、胎児を黙らせるために、自分の腹部を軽く叩いた。

(餓鬼め⋯⋯。訪問者がくるといつもこれだ。騒ぐな。下腹部が煩わしい⋯⋯。おとなしく眠っていろ⋯⋯! うぅっ⋯⋯くっ⋯⋯!)

 誰かが話しかけると、胎児は活発に動き始める。母性愛よりも嫌悪感が勝った。好き好んで孕んだわけではない。無理やり赤子を産み付けられたのだ。

(苦しい⋯⋯! なぜ私がこんな醜態を⋯⋯!!)

 神喰いの羅刹姫ピュセル=プリステスの生まれ変わりが宿っている気がしてならなかった。

「私は気分が悪い。はやく出ていけ」

「そう言わないでください。貴方は人間なのです。協力しましょう」

 バルカサロ王国で活動する魔狩人はキュレイに優しい言葉をかける。親しげな態度の女性であったが、右手の指が欠損し、痛々しい噛み傷が手首に残っていた。

(この女⋯⋯。戦い慣れている人間だ。私がこうなっていなければ、面白い殺し合いができたかもしれない。⋯⋯今の私では手も足も出ないがな)

 魔物であったキュレイは、鉄格子の向こう側に座る狩人が熟練者だと分かっていた。警戒心を巧みに隠しているがキュレイを信頼せず、いつでも武器を抜ける体勢で話しかけてくる。

 魔物が人間になったと信じきれていない。その気持は当人のキュレイも同じだ。敵対していた人間に協力するつもりはなかった。

「隠し事をしてるわけではない。知らんものは知らん。暴れ回れれば、それでよかった。魔物はそういう存在だ。メガラニカ帝国を滅ぼせると聞いたから、大妖女レヴェチェリナの誘いに乗った。⋯⋯あの女は魔物でありながら退魔結界を通り抜ける能力があった」

「大陸各地で暗躍されていたそうですね。恐ろしいことです」

「大妖女レヴェチェリナは結界を壊す方法も熟知していた。事実、帝都アヴァタールの守護防衛陣を機能不全にした。一時的にではあったが、帝国軍は相当な慌てぶりだった」

「魔物が退魔結界を破る⋯⋯。信じたくありませんが、大妖女レヴェチェリナの出自に破壊帝が深く関わっていたのなら、世の理を誤魔化せたのでしょう。⋯⋯そのせいでメガラニカ帝国は窮地に陥った。危うく皇帝を失うところだった」

「おや? 貴様はバルカサロ王国の魔狩人なのだろう。メガラニカ帝国とは敵対しているはずだ。敵国の不幸を喜ぶべきだろ?」

「いいえ。魔狩人は中立ですよ。魔物を狩るために国家と協力していますがね。⋯⋯今回、懸案は大妖女レヴェチェリナがバルカサロ王国で活動していた痕跡があることです。それと神喰いの羅刹姫ピュセルがどんな計画を持っていたのかも気になる」

「そいつらは死んだぞ。アレキサンダー公爵家の筋肉女どもに殺された」

「上位種の魔物で、あれほど高い知能を持つ個体は稀です。討滅されましたが、恐ろしい置き土産があるかもしれない。⋯⋯いいえ、絶対に何か残している。私はそう考えます」

「私の子宮に植え付けられた胎児がまさしくその置き土産だぞ」

「その件は、メガラニカ帝国の魔狩人が対処するでしょう。現時点では人間の胎児と診断されました」

「チッ! 貴様もか」

「魔狩人の誓いは絶対です。殺人を禁じられた魔狩人の手で、胎児の堕胎はできませんよ」

「そいつは残念だ。役立たずどもめ。赤子の首すら捻れないとは⋯⋯。情けない」

「話が逸れてしまいましたね。我々が会いに来た理由は、この絵に描かれたアーティファクトを誰に渡したか⋯⋯。それを知りたいからです」

 魔狩人は下品な壺が描かれた絵を見せてくる。

「何だそれは? 気色悪い」

「その言葉に同意いたします。〈睾玉こうぎょく嚢壺のうこ〉と呼ばれていたアーティファクト。大陸東部の離島で祀られていた来歴不明の魔神器でした。今から百年以上前、ある魔物が島民を皆殺し、奪われてしまった。人類側の記録はそこまでしか残っていません」

「ピュセルの仕業だな。あの女がやりそうな手口だ」

「〈睾玉こうぎょく嚢壺のうこ〉を奪った魔物は、詐術で人間を操り、漁村の退魔結界を解除させたと推測されています。生存者は一人もいなかった。証拠はありませんが、神喰い羅刹姫ピュセルの犯行だったと我々も考えています。あの魔物は人類を研究するため、人間の子供を飼っていた時期さえある」

「――で? その話を私に聞かせてどうしたい? 奪われたアーティファクトを取り戻したいのか? 私はこんな壺を見ていない」

「大妖女レヴェチェリナはアルテナ王国の人々を拉致し、妖魔兵に改造していました。残されていた培養槽を調べたところ、〈睾玉こうぎょく嚢壺のうこ〉を参考に作られていた形跡がありました」

「ほぉ。レヴェチェリナの工房を調べたのか? お気の毒だ。まともな人間にはキツイものが沢山あったろ」

「情報面の収穫は多かったですよ。〈睾玉こうぎょく嚢壺のうこ〉は男性器の模造品ですが、大妖女レヴェチェリナの培養槽は子宮を模造していました」

「だから?」

「神喰いの羅刹姫ピュセルが奪った〈睾玉こうぎょく嚢壺のうこ〉は、大妖女レヴェチェリナの手に渡っていた。しかし、現物は未だに発見されていません」

「話が見えてこない。くどい。もう帰れ。疲れた」

「まあ、まあ、もう少しだけ。ここからは推測ですが、退魔結界を通り抜けられる大妖女レヴェチェリナは資材を集めるために、バルカサロ王国で、〈睾玉こうぎょく嚢壺のうこ〉以外にも複数のアーティファクトを売却しています。我々は既に一つを回収し、破壊しました。魂を吸い取る凶悪な代物だった。バルカサロ王国の豪商がコレクションに加えており、知らぬ間に数十人の使用人が犠牲になっていた」

「被害者を出したくないから〈睾玉こうぎょく嚢壺のうこ〉とやらを探してるのか? だったら、早くバルカサロ王国に帰って宝探しをしていろ。こんなところで時間を無駄にしていれば、大勢の人間が死ぬぞ? 私はそれでも一向に構わんがな」

「手がかりがありません。誰に売ったか情報が欲しい。〈睾玉こうぎょく嚢壺のうこ〉は生殖能力を持つアーティファクトです。心当たりはありませんか?」

「何度も言わせるな。あるわけがな⋯⋯」

 キュレイは思い出してしまう。人間になった影響であろう。不意に湧き出た感情を隠すのが苦手だった。

「心当たりがあるのですね。些細なことで構いません。どうか、ご協力をお願いします。情報提供していただけるのなら、待遇改善を働きかけますよ」

「はぁ⋯⋯。心当たりを話せば、貴様は私の前から消えるか?」

 キュレイは下腹部を押さえ込む。魔狩人と会話している間、胎児が子宮を疼かせていた。

 望まぬ妊娠をさせられたキュレイにとっては不快極まる感覚だった。

「ええ。もちろん。用が済んだら消え失せます」

「私が帝都襲撃を仕掛ける前、ピュセルの奴が言っていた。人類の賢者は三つの条件で生物を定義した⋯⋯。そういう内容だ。あいつは魔物が二つしか条件を満たしていないと話した」

「生物の三条件ですね。細胞と代謝⋯⋯。そしてで。生物は自己を複製して子孫を残す。三つ目の生殖機能は魔物に備わっていませんね」

 魔狩人はキュレイの膨らんだ胎を見詰める。魔帝とピュセルの胎児を育てる子宮。人間の赤子を育むキュレイは人間だった。

「ピュセルの目的を考えれば、生殖能力を持つアーティファクトは有用だった。〈睾玉こうぎょく嚢壺のうこ〉とやらをレヴェチェリナに譲り渡したのなら、その道具を研究し尽くしたからだろう。⋯⋯アーティファクトは使い手を選ぶ。必要とする者に引き寄せられる」

「必要としている者に⋯⋯」

「レヴェチェリナは子供を欲している女にアーティファクトを渡したはずだ。悪意を抱いてな。⋯⋯元凶が死んでもバラ撒いた種はいつ芽吹くか分からん。〈睾玉こうぎょく嚢壺のうこ〉は具体的にどんな力がある? 人間はどんな用途で使っていた?」

「人類側の伝承によれば、夫を失った妻が子供を授かる魔神器でした。島民が全員死亡しているため、本来の使用方法は失伝してしまった。しかし、島民に祀られていたときは、邪物の類ではなかった」

「細工を施す時間は十分にあった。力ある魔神族が作った宝具だろうと、ピュセルとレヴェチェリナによって穢されているだろうな。予想はつく。⋯⋯何も知らずにその〈睾玉こうぎょく嚢壺のうこ〉とやらを使った女は、恐ろしい怪物を産むことになる。魔物を人間にするのは難しいが、人間を魔物に堕とすのは簡単だ」

「旧帝都ヴィシュテルの帝嶺宮城で、淫獄の檻と呼ばれていた場所がありますね。そこでは拉致された女性が囚われ、魔帝の子を産まされた。他にも祭壇などが見つかっています。あれらは〈睾玉こうぎょく嚢壺のうこ〉の機能を模倣していたかもしれません」

「もういいだろう。話すべきことは話したぞ。はやく消えろ。レヴェチェリナとピュセルが遺した厄種をさっさとどうにかすることだな」

 キュレイは淫獄の檻で起きた出来事を思い出したくなかった。

(屈辱だ⋯⋯。人間の身体は⋯⋯下劣な快楽を求める⋯⋯)

 弱りきった肉体から魔素を取り除かれ、人間の女に転生させられてしまった。大きく盛り上がった下腹部は辱めの証だ。生まれ変わったキュレイは、人間の母親としてピュセルの遺児を産まなければならない。

【レビュー】カプチーノ「忍」 悪徳商人に捕まった「くノ一」が母親になるまで、妊娠・出産・授乳!

あらすじ・作品紹介

国家売却計画を策略する悪徳貿易商人・黒田助平その悪事を暴くため

幕府に雇われた忍・藤林凛が黒田の屋敷に潜入する

悪事の証拠を集め屋敷を脱出しようとするが全てが黒田にばれており囚われの身に

何とか隙を伺い逃げようと試みるが・・・

黒田や配下のくの一達にいやらしい調教を受け任務は失敗に・・・

それでも凛は最後まで諦めず従順なフリをして脱出の機を探る

しかし、黒田はそれすらも見抜き、凛を本格的に己のモノにするため、交渉をもちかける

果たして藤林凛は黒田の魔の手に堕ちてしまうのか・・・彼女の運命は

発売元(サークル名)カプチーノ
発売日2025/07/15
価格770円
ジャンルくノ一 快楽堕ち 出産 拘束 閉じ込め 命令/無理矢理 ぼて腹/妊婦 処女
妊娠描写妊娠・ボテ腹・出産シーンあり
ヒロインの凛は悪徳商人・黒田の種で妊娠。子供を出産して母親になってしまう

三紋昨夏の個人的レビュー

忍

 まず最初にイラストの評価が★1となった理由は、画力ではなく漫画の構成です。「吹き出し」「内枠」「テキスト配置」で、とても読みにくい漫画になってます。自分は漫画家というわけじゃないですが、かなり損をしているので続編では、ぜひ改善してほしい( ゚Д゚)

 内容や構成はめっちゃ好み。だからこそ、ほんのちょっと変えるだけでマジで見やすくなりますよ!

気になるポイント(次回作で改善してほしい)

 「吹き出し」が小さいので大きく。台詞を目立たせるにはスペースが必要! キツキツだと読みにくいのだ( ゚Д゚)

 「内枠」についても狭すぎる。縦線の区切りは細くても大丈夫ですが、横線の区切りはスペースが必要(場面・視点の大きな区切りであるため)。

 そして一番が「テキスト」が中央揃えになっていること。縦書きの文章は絶対に「上揃え」です。天辺で揃えないと文章がガタつき、読み手の視線が迷子になります。縦組みは「上揃え」が大原則!!

 ――というわけで、冒頭のページを弄らせてもらいました。

 左が修正前、右が修正後。テキストを「上揃え」にするだけでも読みやすさが格段にあがります。行間も狭かったので広げてみました。

悪徳商人に一万両で買われた女忍

 凛は幕府に雇われた「くノ一」。所詮は雇われ者。黒田に「いくらで自分を売るか?」と問われ、「一万両」と答えて買われてしまう。江戸時代の前期では高額ですが、幕末だと現代の1億円くらいなんだとか。南蛮貿易で財を築いた豪商なら安いもんでしょうな。

幕末に召し抱えられても、江戸幕府は潰れるんだよなぁ(´・ω・`) 安泰とは程遠いぞ!

 幕末の時代設定が好きなので、このシチュは気に入りました。

 ただ、幕末の江戸幕府は歴史的にも負けが確定しているわけで、売国奴ではあるものの、外国との交易で巨万の富を築いてる黒田は勝ち組。幕府につくよりは黒田についたほうが勝ち組じゃん……と思ったのは内緒。黒田の妻か妾になれば将来安泰です(明治維新が迫ってるのに、江戸幕府に忠義を尽くしてもね)。

 黒田に買われた凛は、教養を身に着けるための学問・芸・舞を覚えさせられる。……教育を施してくれるなんて……めっちゃホワイトじゃないか!?

 出産のときも、立ち会うどころか赤子を取り上げる黒田……。これもう子煩悩の父親では……!? 凛も母性に目覚めて、我が子の誕生に喜びを見い出しているし、無理やり孕まされた悲壮感は皆無です。

 囚われた姉を救出するため、動き出した妹の百(もも)が次回作でどうなるかが楽しみです。姉妹丼かな。姉の凛が出産した事実を知った時、どんな反応をしてくれるか。次作に期待です。

【レビュー】かきそば「町中華、準備中に人妻は…」 店主のオッサンに孕まされ、托卵してしまう人妻

あらすじ・作品紹介

 妊活中の主婦、麻美は子育ての資金を貯めるため、住宅地にひっそり構える中華屋でバイトを始める。

 すっかり店にも慣れた頃、店主から耳を疑う提案をされる。

 それは「給料を上げる代わりに胸を揉ませてほしい」というものだった。

 初めは胸だけならと受け入れる麻美だったが、要求は日毎エスカレートしていきついには体の関係を持ってしまう。

 家計のためと言い聞かせ関係を続ける麻美だったが……。

 昼下がりの町中華で行われる、ひと夏の濃く熱い営み。

発売元(サークル名)かきそば
発売日2025/07/16
価格1,210円
ジャンル人妻・主婦/巨乳/寝取り・寝取られ・NTR/フェラ/退廃・背徳・インモラル/騎乗位/陰毛・腋毛/ぶっかけ
妊娠描写ヒロインの麻美が中華料理店の店主(老人)に売春
妊娠発覚の描写あり、托卵END(ボテ腹は無し)

三紋昨夏の個人的レビュー

町中華、準備中に人妻は…

 物語のエロ導入は、妊活中の主婦・麻美は時給を倍にすると持ち掛けられ、中華料理店のオッサン店主に身体を許してしまう。時給1800円の倍だから時給3600円か……。

 最初は乳房を揉ませるだけだった性行為も徐々にエスカレートしていき、フェラ、ゴム付きセックス……そしてゴム無しの本番セックスへ。

 お金で釣っているものの、NTRとしては合意セックス。寝取られではありますが、ちょい不倫・浮気ものですかね。夫は愛しているが、セックスには溺れちゃうみたいな?

 麻美も店主のオチンポで突かれるのが気持ちよくなっていき、終盤は騎乗位で腰を振るようになります。おそらくここでの中出しで妊娠したっぽい。射精後に自分からオチンポをフェラお掃除する描写が実に良かったです。

 妊娠した麻美はバイトを辞めて、旦那には何も言わない。

 明確に誰の種で妊娠したかは描写がないですが、麻美の表情から察するに……夫の子供じゃないでしょうね。

 一方、中華料理店の老店主はニヤつきながらダルマを棚に飾る。四つのダルマがあるってことは、アルバイトを四人は孕ませてるのかな。

 セックスの最中、やけに背景のダルマが強調されると思ったら、こういうことだったのかと思いました。

 最終ページはアルバイトの面接をお願いする電話がかかってくる。募集要項に女性優遇とあるけど、男性を採用することは絶対にないでしょう……。

comicアンスリウム Vol.148 2025年8月号(表紙:真白しらこ)

ジーオーティー『comicアンスリウム』
(毎月20日)

情熱と煩悩のアダルトコミック誌『comicアンスリウム』2025/08月号!

真白しらこ先生表紙&待望新作!!!! 頭脳明晰クール系美少女からHな勉強会のお誘い♪

その他にも、発情MAXセフレ従姉妹、愛嬌いっぱい後輩OL、伝説の性器を求めるサキュバス姉妹、ナマイキ競泳女子などゾクゾク満載!

さらに今回は、ジーオーティー漫画大賞を受賞した3作品を大・放・出!!!!

アツイ夏を盛り上げる、濃密エロスのスプラッシュ♪

もち肌美少女クリエイター・真白しらこ先生が描く、一見クールなむっつり優等生と放課後ハジメテH♪
豊満発情ヒロインの金字塔・餅田こゆび先生が贈る、スーツに疼いちゃう恋人兼従兄妹と公衆トイレで没頭SEX!
あまあまオフィスラブマスター・ももずみ純先生が贈る、元気系OL×仕事にストイックな先輩社員の急接近SEX♪
ドラマチックエロの名手・チキン先生が描く、サキュバス逆レからの逆転わからせ3P☆
巨乳JK職人・たご坊先生が描く、性欲つよつよ競泳女子とデカチンコーチの本能全開背徳ファック☆
女性上位の夢シチュ作家・かふぇいん中毒先生が贈る、小悪魔コスプレイヤー先輩の童貞翻弄えっち☆
快楽堕ちエロの乳スター・鷹丸先生が贈る、渾身の王道人妻NTR!
爆発力満点でデビュー! マインスロア先生が贈る限界姉さんと生ハメ近親相姦☆
技巧派の新生・まやまん先生熱筆! 厳しい女上司と想いを通わす純情はずかしH♪
個性的実力派・エコギ先生鮮烈デビュー! 大人気アイドルが好き放題にマネージャー逆レ4P!!
期待のハードファッカー・佐咲和由喜先生が描く、ギャルJKに脅され背徳浮気SEX!!
超圧倒的淫モラル派・やまもと先生が贈る、童貞を奪ったお姉さんに脅迫ファック!
新世代肉欲特化型ルーキー・矢矧稚彦先生が贈る、処女委員長徹底アナル開発!!
ゆっくり濃密えっちの新鋭・脱脂粉乳先生が描く、発情処女のヤリすぎアピール♪
超恵体お姉さんマイスター・核座頭先生が贈る、天才発明家お姉さんに妄想全部叶えてもらう夢シチュえっち☆
性癖揺さぶる純愛派・みなまっくす先生描く、純情お尻H♪

表紙イラスト真白しらこ
執筆陣真白しらこ,餅田こゆび,ももずみ純,チキン,たご坊,エコギ,やまもと,矢矧稚彦,かふぇいん中毒,みなまっくす,マインスロア,脱脂粉乳,鷹丸,士郎正宗,佐咲和由喜,ごさいじ,山本AHIRU,核座頭,あるぷ,クール教信者,まやまん
価格1,070円(税込)
発行日2025/07/20

コミックB地区 Vol.10(表紙:ざんどろ)

ぶんか社『コミックB地区』
(毎月20日)

■ちっぱい先輩は胸を大きくするためと言えばわりとなんでもヤらせてくれる【第3話】/サツキソウジ
■小悪魔ちゃんは食べ盛り【第4話】/秋
■キミのいいなり【第2話】/くろいわしんじ
■もっともぉ〜っとおしえろっ/なすきち
■アンダーグラウンド【第2話】/花見沢Q太郎

■表紙イラスト/ざんどろ

表紙イラストざんどろ
執筆陣ざんどろ,サツキソウジ,秋,くろいわしんじ,花見沢Q太郎,なすきち
価格880円(税込)
発行日2025/07/20

G-エッヂ Vol.065(表紙:瀬戸内くらげ)

ゲネシス『G-エッヂ』
(毎月20日)

キュートでハードな切れ味で贈る「G-エッヂ」Vol.065は
水着をずらして誘惑してくる美女が表紙!

チョコぱへ「ヤリモクアプリで来た人は…」では
ヤリモクアプリでマッチングしたのは’しごでき’女上司!?

景山玄都「となりの部屋で、ずっと見てた」では
一人暮らしの女子大生・春宮しおりの隣に住む人は……。

人妻から獣人・女上司・巨乳美女・調教などなど特濃エロスの目白押し!
あなたの欲望を満足させる作品を取りそろえております!!

【収録作品】

■瀬戸内くらげ:あやかし旅館こっくり堂【第5話】
■フロモチ:柚夏さんはお酒が飲みたい【第2話】
■乱満:幻色の孤島 其の弐 〜魔界樹の森・運命の巫女〜
■チョコぱへ:ヤリモクアプリで来た人は…
■巻貝一ヶ:ぬるっと生ハメ! ギャル温泉
■景山玄都:となりの部屋で、ずっと見てた
■三顕人:人妻NTRプレイ

■表紙イラスト/瀬戸内くらげ

表紙イラスト瀬戸内くらげ
執筆陣瀬戸内くらげ,フロモチ,乱満,チョコぱへ,三顕人,巻貝一ヶ,景山玄都
価格660円(税込)
発行日2025/07/20

【255話】バルカサロの厄種〈前編〉 ‐Kingdom SIDE‐

 大陸北方の大国、バルカサロ王国の政情は激変した。

 王宮大逆事件で起きた大粛清により、国王チャドラックと第一王子ドラミホールの勢力は壊滅状態に陥っている。首謀者である前王妃エルシェベナの旧臣達は、王殺しの大罪を王妃イシュチェルになすり付け、第二王子ジルベールと第三王子ザトリシオを担ぎ上げた。

 王位簒奪の陰謀は途中までは順調に進んだ。しかし、強引な手段で国主を排除した歪みは大きかった。

 第二王子ジルベールと第三王子ザトリシオは、実父と長兄という政敵を排除したが、それで争いは終わらない。そもそも両王子の間に信頼関係などなかった。互いに王位を巡って争いを始めた。

 バルカサロ王国から遠く離れた大陸中央部のルテオン聖教国で、兄弟の醜悪な殺し合いに辟易へきえきしている人物がいた。

「父上も兄上達も⋯⋯。やれやれ⋯⋯。頭が痛くなる惨状だな。揃いも揃って愚かなことを⋯⋯」

 第四王子ロアフォードは重たいため息をつく。同じ父母から生まれた家族であるが、野心的な兄達には嫌気が差していた。

「我が家の血筋なのだろうか? 所詮、カエルの子はカエルだな。私が他人事のように言い捨てるのは⋯⋯無責任かもしれないが⋯⋯。とはいえ、今の私からすれば他人事なのだ。バルカサロ王国を出たとき、私は王位を放棄した身だぞ。殿下と呼ばれる身分ではない気がする」

 王位継承権を放棄し、ルテオン聖教国の侯爵家に婿入りしたロアフォードは王族の地位を手放していた。未だに周囲から王子殿下と呼ばれているが、自分では名乗っていない。

 バルカサロ王国に戻るつもりはなかった。

 今、祖国に帰ればロアフォードは殺されかねない。実父と長兄を殺した二人の兄達は疑心暗鬼に陥っている。

「――という話を手紙で何度も書いただろう。口頭で言う意味もない」

「ロアフォード殿下。そんなことを仰らず⋯⋯。どうかお力添えを⋯⋯! 何とぞ⋯⋯! このままでは祖国が滅んでしまう⋯⋯!!」

 沈痛な面持ちの老人はロアフォードに縋り付き、説得を繰り返していた。しかし、ロアフォードの意思は固かった。

「やめてくれ。ご老人、情に訴えるなよ。泣き落としは無駄だ。何もできない。兄弟喧嘩の仲裁は不可能だ。気が済むまで殺し合わせておけ。被害を被る国民には申し訳ないがな」

「ロアフォード殿下のお言葉であれば、耳を傾けるやもしれませんぞ?」

「それはない。止まるべきところで止まらなかった報いだ。王位簒奪をするだけの根回しはできていたんだ。王殺しなんてするべきじゃなかったし、ドラホミール兄さんも殺してはならなかった。流刑や監禁で十分。それをド派手に皆殺しだなんて⋯⋯。実に無知蒙昧ナンセンス。野心的権力者がこうなったら歯止めはきかない。歴史が証明している。兄上達は道を踏み外した。転げ落ちていくしかないのさ」

 葉巻に火を付け、陰鬱な表情で庭園を眺める。

「ロアフォード殿下⋯⋯。国王陛下を弑逆したのは王妃であったイシュチェル様でございます」

「くはっはははは。冗談がきついぞ。やめろよ。そんな戯言を信じるわけないだろう。信じてほしいのか?」

「⋯⋯バルカサロ王国ではそうなっております」

「信じる奴らはおめでたい阿呆だな。しかし、今のバルカサロ王国では阿呆のほうが幸せに生きれるかもしれないな」

「⋯⋯⋯⋯殿下はイシュチェル様を擁護なさるのですね」

「国王陛下が亡くなられて立場が危うくなるのはイシュチェル様だ。そして、得をするのは第一王子だったが、ドラミホール兄さんも一緒に殺されたとなれば、犯人は他の王子で決まりだ。私は王位簒奪なんて考えないし、ガイゼフは心の療養中だ。消去法で真犯人は絞られる」

「⋯⋯⋯⋯」

「だから、こうなる前に身の程知らずの次男と三男はさっさと国外に出しておくべきだった。父親と長兄の甘さが招いた大惨事。早めに処理しておけば、あんな事件も起こらなかった」

 反論の余地がない真実を言い当てた推論。観念した老人は口をつぐむ。

 小太りのロアフォードは外見で侮られがちであるが、幼少期から聡明な男であった。

「分からないのは⋯⋯軍部上層部の動きだ。国王陛下を殺されたのは大誤算だったろ。亡き母上の旧臣がここまでの悪事、いや、大虐殺を引き起こすとは思ってなかった。そこまでは私も理解が及ぶよ。だが、今の軍師団は何をやっているんだ? 祖国が傾いてるぞ」

「国軍は事態の収拾に努めております。しかし、メガラニカ帝国の動向にも警戒を向けておく必要があります」

「答えになっていない。メガラニカ帝国はすぐに戦争を仕掛けてこない。国境周辺の警戒は必要だが、国軍が動かない理由としては弱いな。これでは税金泥棒だ」

「⋯⋯⋯⋯」

「愛する祖国を存続させたいなら、さっさと次の国王を決めるべきだ。国軍にはそれだけの力がまだ残っている。なぜ決断しない? このままだと傷口が広がっていくぞ」

「こうして軍師団はロアフォード殿下に和平の仲介をお頼みしています。それが我らの答えです」

 バルカサロ王国軍の指揮権は軍師団が握っている。

 国軍は中立の立場で武力衝突を諌めているが、いずれかの勢力と組みすればすぐさま内紛を鎮圧できる。現在の大混乱は国軍の大本営がいかなる勢力にも与さず、中立を堅持しているために起きていた。

「仲裁は不可能だ。さっきの繰り返しをするつもりか。ボケたか?」

「ロアフォード殿下が帰国すれば、国軍はあらゆる手段を用いて仲裁を実現します」

「あらゆる手段? これまた物騒な言い回しだな」

「他に方法がないのなら、物騒であれ何であれ、やるしかありません」

「はぁ⋯⋯。まったく⋯⋯。見え透いている。国軍が担ぎ上げたいのは私か? つくづく⋯⋯見る目がない」

「理由はお分かりのはずです! ロアフォード殿下は先を見通す目を持っておられます。他の王子とは違って⋯⋯!」

 老人の言葉には力が込められていた。その意図をロアフォードは察する。

「王殺しに関与した者達を次の王にはできないか。ジルベール兄さんとザトリシオ兄さんも嫌われたものだ。まあ、かくいう私もあの二人のお近づきにはなりたくない。あの二人は恨みを買い過ぎた」

「第二王子ジルベールと第三王子ザトリシオ⋯⋯。彼らは軍権の奉還を要請しておりますが、国軍上層部は絶対に従いません。彼らの弑逆が明らかになれば、王統の正当性は崩れる⋯⋯。逆賊にバルカサロ王国の王冠を渡すわけにはまいりません!」

「王族を呼び捨てにするか。進退きわまって、ついに軍師団の重鎮も体裁をかなぐり捨てたな」

「王家の醜聞ゆえ、表沙汰にはできませぬが、第二王子ジルベールと第三王子ザトリシオの大罪はけして消えません」

 国王チャドラックに仕えていた軍師は、逆賊の王子達に敬称をつけなかった。

「王殺しの真相に気付いている者達はそれなりにいるだろう。濡れ衣を着せる相手が、虫も殺せぬ心優しいイシュチェル様では⋯⋯役者不足だ。しかし、バルカサロ王国も人材不足だな。王族は腐るほどいるのに、よりにもよって頼るのが王位を手放した放蕩者の私か?」

「王族は他にもおりますが、第二王子と第三王子を排除するには、それなりの血筋と地位が不可欠です。貴族勢力の増長も抑え込まねばなりません」

「それなり⋯⋯ね。武官もつらいな」

「国軍上層部はロアフォード殿下を支持いたします。どうか⋯⋯ご決断を⋯⋯!」

「くどいな。悪いが断るよ。王になる資格はない。⋯⋯殺された国王陛下やドラミホール兄さんの仇討ちをするほど勇ましくもないんだ。そこで名案を授けよう。イシュチェル様にかけられた嫌疑を晴らし、アーロンを王に祭り上げてはどうかな? それがまさしく王道だ。美しくもある」

「その可能性は潰えました」

「なに? どういうことだ? イシュチェル様とアーロンは教会の修道院で保護されていたはずだ。兵力はないが、修道院を焼き討ちすれば教会を敵に回す。王殺しの大逆犯だろうと教会の権威には歯向かえない」

「イシュチェル様とアーロン殿下は東アルテナ王国に亡命しようとして⋯⋯殺されたようです」

「馬鹿な」

「グウィストン川の東岸で乳母と男児の溺死体が見つかりました」

「アーロンが死んだというのか? 本当に?」

「軍部の諜報員が入手した確かな情報です」

「イシュチェル様はどうなった?」

「行方不明です。ご遺体が見つかっておりませんがおそらく⋯⋯。生存に見込みはありません⋯⋯」

「おいおい。⋯⋯おい。国軍は何をやっているんだ? 後手後手じゃないか」

 ロアフォードは強い怒りと落胆を表出させた。

「面目次第もございません」

「メガラニカ帝国に惨敗してからというもの、軍師団は失敗続きだ。長年にわたって友好国であったアルテナ王国とは関係が悪化し、皇帝に妻を奪われたガイゼフは哀れなことになった⋯⋯」

「ガイゼフ殿下は⋯⋯」

「引き続き療養中だ。今はゆっくり休ませたほうがいい⋯⋯。東アルテナ王国のヴィクトリカ女王からも許しはいただいている」

「帝国の軍事力を侮り、大敗を喫した責任は痛感しております。しかし、復讐の機会はあります」

「復讐? メガラニカ帝国にか? 国内がめちゃくちゃだから外に敵を作って一致団結か?」

「東アルテナ王国のヴィクトリカ女王は、祖国を裏切った母親に強い憎しみを向けておられる⋯⋯。必ずや復讐戦をしかけるはずです。バルカサロ王国も次の戦争に備えておりました」

「それは国王陛下やドラミホール兄さんが弑逆される前の話だろ。今の状況は大きく違う。軍の再建どころか、屋台骨の国家が崩壊しかけている。難民の話は私の耳にも届いているぞ。メガラニカ帝国に逃げ込む者達までいるそうじゃないか? こんな状況で復讐戦など馬鹿げている」

「⋯⋯⋯⋯」

「東アルテナ王国と手を組む前提も怪しい。ヴィクトリカ女王の憎悪はバルカサロ王国にも向いている。手を組んでくれるか? どうだかな。上手くはいかんさ。これに関しては国王陛下の責任が大きい」

「国王陛下を批判されているのですか」

「その通りだ。古くからの同盟国は無理をしてでも助けるべきであった。戦争に巻き込み、切り捨てた挙げ句、邪魔になったヴィクトリカを一時期は殺そうとした。一年前の出来事だ。⋯⋯アルテナ王国を治める東西のはどちらも恨みを忘れちゃいまい」

「セラフィーナがメガラニカ帝国に屈服し、売国奴となった時点で我々の選択肢は限られておりました」

「売国女王の呼び名はここでもよく耳にする⋯⋯。大陸の至宝とまで呼ばれた美貌の女王が、あのような変貌を遂げるとは思わなかった。人質として帝国本土に連れて行かれるまでは予想できたが、皇帝ベルゼフリートの子を産んでしまってはなぁ⋯⋯。妻を奪われたガイゼフは実に可愛そうだ」

「帝国はセラフィーナを言いなりの奴隷に調教し、アルテナ王国の全土を併呑しようとしていました。バルカサロ王国は手を打たねばならなかったのです。非情な手段であったとしても⋯⋯」

「アルテナ王家を滅ぼしてでも国土を保護する⋯⋯か? 都合のよい言葉を並べても民衆の支持は得られん」

「国王陛下としても苦渋の決断を下したのです。幸いにもアルテナ王国の東側は中立地帯にできましたが、最悪の場合はメガラニカ帝国が大陸中央に進出する橋頭堡きょうとうほが誕生するところだったのです」

「死んだ国王陛下に忠義立てとは殊勝だな。だが、王は亡くなった。お前達は王殺しを防げず、イシュチェル様とアーロンも守れなかった。この状況だ。それこそ選択肢は限られているのではないか?」

「言い訳をするつもりはございませんが、イシュチェル様とアーロン殿下を保護していた修道院は、我ら国軍を信頼してくださらなかった。もう一つの誤算は⋯⋯刺客を差し向けたのが第二王子と第三王子のいずれでもなかったことです」

「それは興味深い。第三勢力に出し抜かれたわけだ。⋯⋯いや、その言い振りから察するに身内か? 国軍の仕業だと?」

「調査を進めています。しかし、情報が漏れていたとしか⋯⋯。身内の犯行と我らは睨んでいます」

「軍師団といえど、国軍末端の将校までは動向を把握しきれていないわけだ」

「はい。上層部の指示ではありません。我々はイシュチェル様とアーロン殿下の国外逃亡を秘密裏に支援していました。中立地帯の東アルテナ王国ならば安全と考えておりましたが⋯⋯。国軍の誰かが情報を漏らし、襲撃の手引きをしたのでしょう」

「情報を漏らしたとするなら、誰に? 兄上達の仕業ではなく、下手人も国軍ではない。だったら、誰が襲撃の黒幕だ?」

「ロアフォード殿下がご存知でないのなら、我々も分かりません」

「おいおい⋯⋯。疑い深いな。私は争いごとが嫌いだ。犯人候補にしないでほしい」

「申し訳ございません」

「イシュチェル様とアーロンをルテオン聖教国に亡命させてくれれば、力になれたのだがな。⋯⋯俺も疑われていたわけだ。亡命先に東アルテナ王国を選んだ理由はそれしか考えられない」

「大変失礼いたしました。しかし、軍内部はロアフォード殿下を支持する声が大きく、帰国を望む者達が大勢おります。⋯⋯必然、イシュチェル様とアーロン殿下を疎む勢力があります」

「はぁ。見る目がない奴らばかりだ。なぜ一致団結してアーロンを支持しない? 国王陛下は後継者に第六王子を指名した。アーロンは正統な王位継承者だ」

「第六王子は⋯⋯。例の噂が⋯⋯」

「イシュチェル様とアーロンには不名誉な噂があったな。第六王子は国王陛下の子供でなく不義の子⋯⋯だったかな?」

「はい」

「くだらん。王統は維持できていたのだ」

「本当にそうでしょうか? 前王妃エルシェベナ様の急死を怪しむ者達は⋯⋯あの噂を信じ切っております。無理もありません⋯⋯」

「なんたることだ。軍師団まで貴族どもの流言に毒されたか」

「お言葉を返しますが、前王妃エルシェベナ様は他殺だったと軍上層部は考え、内部調査を進めていました。そんな渦中、国王陛下はイシュチェル様を王妃に迎え入れられた。疑ってしまいます」

「母上の死は王妃の座を虎視眈々こしたんたんと狙った悪女イシュチェルの仕業⋯⋯。そういう陰謀論だろ。国王陛下は軍師団に命じて調査を中止させた。そのせいで噂に拍車がかかった。なにもかも裏目だ」

「ロアフォード殿下は何か秘密を知っておられるのでは?」

「秘密?」

「バルカサロ王家は⋯⋯、国王陛下は軍師団にさえ明かしていない秘密があったように思えてなりません。失礼ながら申し上げます。王宮大逆事件の発端は、国王陛下が後継者に第六王子アーロン殿下を推挙したことです。なぜあんな宣言をなさったのでしょうか」

「確かに受け入れがたい決定だったろうな」

「ええ。事情を知らぬ者からすれば、意味が分からない。しかし、知っている方々は受け入れた。違いますか?」

「何が言いたい?」

「王位継承第一位の長子であったにもかかわらずドラミホール殿下は、異議を申し立てなかった。それどころか摂政になってアーロン殿下を支えると仰った」

「⋯⋯⋯⋯」

「貴方様もです。ロアフォード殿下は第四王子の地位を早々に捨てた⋯⋯。今も王冠に手を伸ばそうとしない。国軍と手を組めば王位は約束されているにもかかわらず⋯⋯!」

「私は王になる男じゃない。それだけだ。今の悠々自適な生活に満足している。聖教国の栄えある侯爵様だぞ。高望みはしない」

「本当にそれだけですか? イシュチェル様とアーロン殿下の死を伝えたとき、ロアフォード殿下は明らかに落胆しておられた。我々に深く失望した。それは国王陛下の異常極まる後継者指名を支持していたからではありませんか? ご事情を教えて下さい。どういう理由があれば末子の第六王子が後継者になるのですか?」

 王宮大逆事件を引き起こした国王チャドラックの後継者指名。前王妃エルシェベナの王子達を排除し、溺愛する新王妃イシュチェルの王子を次期国王に選んだ。

 軍師団は王殺しを肯定しないが、第二王子ジルベールと第三ザトリシオの激怒は理解できてしまう。

 下位の王子は継承権を捨て去り、政略結婚で諸外国に出される。ルテオン聖教国の侯爵家に送り出された第四王子ロアフォード、アルテナ王国の王婿であった第五王子ガイゼフ。従前と続いてきた王家の習わしだった。

「国王陛下は⋯⋯バルカサロの王統を維持したかったのだろうな。父上らしい決定ではあるが⋯⋯我らの母上は認めなかった。偶然にも私は真相を知ったが、二度と祖国には戻るなと命じられた」

「その真相とは?」

「我らの母上は⋯⋯。前王妃エルシェベナは殺されたのだ。軍師団の見立ては正しい。他殺だ」

「やはりそうでしたか。誰がエルシェベナ様を亡き者にしたのですか?」

「殺したのは国王陛下だ。修道女だったイシュチェルを娶るには、母上は邪魔な存在だった。消えてもらうしかなかったんだ」

「なっ⋯⋯? なんですと⋯⋯国王陛下が⋯⋯? エルシェベナ様を殺めた⋯⋯!?」

 老人は驚愕で後ずさる。前王妃の死は不自然な点が多く、他殺の可能性が高かった。しかし、謀殺を仕組んだ黒幕が国王チャドラックだったのは予想外であった。

「もう一つ。第六王子アーロンの出生だが⋯⋯国王陛下の実子ではないかもしれない。そこは私も確証が持てない。しかし、国王陛下は高齢であったし、イシュチェル様も若くはなかった。懐妊までに相当な苦労があって、私を介して教皇庁に助力を求めた。子宮に施された聖印でイシュチェル様は妊娠したが⋯⋯」

「まっ、まさか⋯⋯! 王宮で囁かれていた噂通りだというのですか!? アーロン殿下の父親は第一王子ドラミホール殿下であったと⋯⋯!?」

「噂の大筋は間違っている。この場合、不義の子ではない。国王陛下の意向でドラミホール兄さんは協力した。どんな手段を使ったかは知らないが、身籠ったイシュチェル様は気付いていないようだった。アーロンを国王陛下の子供と信じ切っていた」

「もしそれが本当だとすれば⋯⋯」

「イシュチェル様とアーロンが亡くなられたのなら、真相を明らかにする必要はない。私は母上が殺されるところを目撃しただけで、その背景までは知らされていない」

「なぜ前王妃であられたエルシェベナ様を殺す必要があったのです」

「⋯⋯真実を知っていた人間は一人残らず、愚かな兄上達が殺してしまったよ」

 短くなった葉巻を灰皿に押し付ける。

 ロアフォードも陰謀の全てを知っているわけではなかった。だが、前王妃エルシェベナの胎から産まれた五人の王子達は、真の血統を受け継いでいない。その事実は知っていた。

(――私の口からは言えない)

 王家の正当性は既に失われている。軍師団が頼りにしている王統の血筋は穢されていた。

「ガイゼフ殿下の精神状態を考えれば、やはりロアフォード殿下に復位いただくほか、王統を紡ぐ道はございません。どうか⋯⋯ご決断ください⋯⋯! 祖国に戻り、簒奪者に裁きを⋯⋯!!」

「まだ道は残されているぞ。⋯⋯ヴィクトリカ女王に連絡を取るべきだ」

「東アルテナ王国に助力を求めろと?」

「その通り。頭を下げてでもアーロンの遺留品を確認したほうがいい。まずはそこからだ」

「遺留品を?」

「私の口からは言えない。これ以上は無理だ。国を出るとき、国王陛下に誓ってしまった。だが、東アルテナ王国はバルカサロ王家の秘密を知ったかもしれない。乳母と男児の溺死体を回収したなら⋯⋯。ともかく、確かめておいて損はないぞ」

【FANZA】美少女ノベル・官能小説 週間ランキング(2025/7/19)

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