厳粛な修道院で生まれ育ったイシュチェルは還俗するまでの三十二年間、ただの一度も異性と触れた経験がなかった。
純潔の誓いを立てた修道女は、生涯未婚の人生を貫く。教皇庁の許可がなければ、国王チャドラックの求婚も通らなかったであろう。バルカサロ王国では教会の権威を尊重し、修道院は手厚く保護されていた。
前王妃エルシェベナが急死した直後に、国王チャドラックが再婚を急いだ理由は不明だ。既に五人の王子がおり、王の後継者は足りていた。
後妻が子供を産む必要はなかった。しかし、老齢の国王チャドラックは王妃となったイシュチェルに子供を産ませるため、あらゆる手段を尽くした。
結婚初夜、イシュチェルは三十二年歳で処女を散らし、男との交わりを知った。
純潔を失ったイシュチェルは子作りに専念させられたが、淫欲とは無縁であった。性交の快楽は人並みに感じた。しかし、国王チャドラックの子供を産まなければならない義務感が圧倒的に強かった。
国王と王妃の交わりは愛を育むというよりは、病の治療をするような厳かさがあった。イシュチェルも若い娘ではなく、二十代を過ぎて加齢の影響が目立ってくる年頃。苦労と苦難の夜が続き、教皇の聖印を授かって、やっと待望の第六王子アーロンを授かった。
王妃イシュチェルは夫たる国王チャドラックを愛していた。しかし、心中に大きな疑問を抱いていた。なぜ自分を王妃に娶ったのか? どうして子供を作りたがったのか?
その真意をいつかは確かめなければと思い悩んだ。
前王妃エルシェベナの旧臣達は、修道院から嫁いできた新王妃イシュチェルを疎み、王宮に大勢の政敵がいた。国王チャドラックや第一王子ドラミホールは醜い諍いをやめさせようと強権を振るったが、その後に起きた顛末を考えれば逆効果であった。
イシュチェルは自責の念を感じていた。
バルカサロ王国で起きた大惨事は、自分が王妃になったことで引き起こされた。国王チャドラックの求婚を拒絶していれば、こんな未来は訪れていなかった。
(痛いっ⋯⋯! 裂けてしまうっ⋯⋯!!)
グウィストン川で行方知れずとなった我が子の生存を信じて、母親は己の身体を売った。だが、取引は対等な者同士で成立する行為。イシュチェルはバルカサロ王国の王妃であったが、歴史の表舞台から退場させられていた。
イシュチェルがどんな扱いを受けても、存在しない死人は誰も助けてくれない。
(痛いっ⋯⋯! 痛いっ! 痛いっ! それ以上は⋯⋯!! らめぇっ! 無理ですわっ! 大きすぎるっ⋯⋯! そんなに拡がらないっ! もう入らないっ!)
焔が燻る松明を肛門に捩じ込まれたような激痛。悲涙の雫が滲み、食いしばった口から流涎が滴る。押し入ってくる巨根は、まだ半分ほどしか挿入されていない。常人とは異なる異形化したオチンポは、成人男性の常識的なサイズを遥かに凌駕し、見た目は馬の生殖器に似ている。
当然、老王チャドラックの逸物よりも大きい。極太極大の亀頭が未踏地のアナルを侵略し、皇帝ベルゼフリートは敵国の王妃イシュチェルを凌辱する。
「盛り上がりに欠けるね。ずっとだんまり? セラフィーナを強姦したときは、もっと激しい反応をしてたよ。催淫香だけじゃ感度不足? じゃあ、サキュバス特産の淫酒を飲ませてあげるね」
「な、なにを⋯⋯!? んぎゅっ!?」
イシュチェルを取り囲む側女達は、無理やり白濁色の淫酒を飲ませてくる。
「黄葉離宮の女仙は全員が妊娠してるから飲酒禁止なんだよね。このままだと無駄になっちゃうから、イシュチェルに全部あげる。このお酒を飲むとお喋りになるんだよ。もっと饒舌になってくれるよね? ああ、それと、眠ったらエッチな夢を見ちゃう副作用があるらしいよ。夢の中でアクメしないと目覚めないとか、なんとか⋯⋯。本当かな? くすくすっ!」
異物挿入の激痛で呻いていた肛門がヒクヒクと痙攣する。催淫香を吸い込み、淫酒を飲まされた影響が肉体に現れた。
背徳的な高揚感が全身を包み、背中と巨尻に覆いかぶさるベルゼフリートの体温が心地よい。アナルが収縮を繰り返し、突沸した快楽でとろけていった。
「あっ⋯⋯♥︎ んぁっ⋯⋯♥︎ ああぁあぁぁぁぁ~~っ♥︎」
酔い痴れたイシュチェルは我慢しきれず喘いだ。生涯不変の愛を誓った国王には、見せられぬ王妃の痴態。下腹部に刻まれた聖印はオマンコを護り続けるが、アナルは無防備だ。子宮の裏側から攻め立てられ、ついにイシュチェルは絶頂に達する。
アクメの衝撃が脊髄を駆け抜け、意識が真っ白に染まった。
「あぅぁ⋯⋯あぁんっ⋯⋯♥︎」
「やっと感じてくれるようになった。でも、夜はこれからだよ。イシュチェルのことを教えてよ。隠し事があるよね? 僕、分かるんだ。そういうの。ねえ、教えてよ。知りたいな。まだ話したくない? じゃあ、教会については? 修道女だったんでしょ。教皇候補だった元聖女とは話が合ったんじゃない? 仲良くできそう?」
亀頭で尻穴を穿り回しながら、ベルゼフリートは質問を浴びせかける。正常な思考が働かないイシュチェルは、夢見心地で話してしまう。ただし、絶対に話してはいけないアーロンの秘密だけは守り抜いた。
黄葉離宮で催された乱交の淫宴、新入りのイシュチェルは肛辱の歓迎を受けた。
ベルゼフリートは間隙を縫って処女膜を破ろうとしたが、後宮入内の初夜では成し遂げられなかった。その腹いせに乳首や臀部、アナルを徹底的に苛め抜いた。孕み腹の側女達も積極的に参加し、イシュチェルの身体は弄ばれた。
◆ ◆ ◆
「あぁぁっ! あっ!? あうっ! あっ、あぁあぁぁーーーーっ!!」
飛び起きたイシュチェルは、鼓膜をつんざく金切り声を叫ぶ。淫惨な記憶がフラッシュバックした。
(私は身体を売ってしまった⋯⋯。で、でも、あれは強引に⋯⋯! 仕方なかった⋯⋯。汚らわしい行為を⋯⋯! 罪を犯してしまった⋯⋯! 不義を⋯⋯! 国王陛下に対する裏切り⋯⋯! 背徳の大罪! 肉欲に負けてしまった⋯⋯!! もしも誰かに⋯⋯! バルカサロ王国の人々に知られたら⋯⋯! あぁっ⋯⋯あぁぁぁ⋯⋯!! 犯された⋯⋯犯されてしまった⋯⋯!! もう取り返しがつかない⋯⋯!)
我が子を守らんとする気高い母親の覚悟は踏み躙られた。
自己嫌悪で喉元を引っ掻き、首を絞めようとした。だが、自傷行為に及ぼうとするイシュチェルの両手を誰かが掴む。
「イシュチェルさん。落ち着いてください。この部屋には私しかいません。大丈夫です。誰も貴方を傷つけません」
「はぁはぁ⋯⋯。マリエールさん⋯⋯?」
「ここは私とイシュチェルさんに与えられた私室です。今は夕暮れですよ。ずっと寝ておられたのです」
「誰が私をここに⋯⋯?」
「女官達がイシュチェルさんを運んできました。失礼ながら私のほうで身体を拭かせていただきました。神力を封じられていますが、医療の心得はあります」
「そうだったのですね⋯⋯。ごめんなさい。ご迷惑をおかけいたしましたわ」
「とんでもない。お助けできず、申し訳なかったです。⋯⋯寝ている間、随分と魘されておりましたが、今はどうですか?」
「多少は⋯⋯良くなってきましたわ⋯⋯。昨晩、変なお酒を飲まされたせいです」
「お水をどうぞ。喉が渇いているはずです」
マリエールが差し出してくれたコップを受け取り、ゆっくりと水を飲み干した。汗を吸い込んだ肌着がぴったりと皮膚に張り付いていた。
(全身が汗でびっしょり⋯⋯。服を着替えたいですわ)
おぞましい淫夢に苦しめられている間、イシュチェルは大量の汗を流していた。
「お気遣いいただき、ありがとうございます。マリエールさん」
「困ったことがあったら相談してください。私はメガラニカ帝国側の人間じゃありません。秘密は厳守いたします。逆に私の相談事も聞いてくれたら嬉しいです」
「マリエールさんは⋯⋯その⋯⋯大丈夫⋯⋯?」
自分と同じような淫事を強要されたのではないかと心配する。だが、マリエールは首を横に振った。
「教会関係者の私は警戒されているらしく、遠ざけられてしまいました。仕方ありません。私は自分で売り込みを仕掛けた人間ですから。できれば、イシュチェルさんと役目を交代したかった」
「あの皇帝は⋯⋯」
「皇帝陛下。⋯⋯メガラニカ帝国の後宮ではそう呼ぶべきですよ。絶対に」
「は、はい」
イシュチェルの不用心をマリエールは咎めた。
「この部屋には私しかいません。しかし、会話を盗み聞きする人間はいるかもしれない。異能持ちの警務女官が大勢おります。お互いに気を付けましょうね」
「失礼しましたわ。気が緩んでいたようです。皇帝陛下は?」
「庭で警務女官達と馬蹄投げをしておられましたよ。無邪気に遊んでいる姿はごく普通の少年ですね」
馬蹄投げは馬の蹄鉄を投げる庶民的な遊戯である。参加者は輪投げと同じように得点を競う。
警務女官達は最下位の人間が服を一枚脱ぐ特殊ルールを採用し、下品な遊び方は生真面目な妃達からの顰蹙を買っていた。ベルゼフリートも脱がされる側で、警務女官は手加減をしない。白熱の脱衣ゲームなのである。
「夜になったら、私はまた寝室に呼ばれるのでしょうか⋯⋯。皇帝陛下は私に子供を産ませると言っていましたわ」
「やはりそうでしたか。皇帝陛下は『イシュチェルさんの聖印を解除しろ』と私に命じてきました」
「えっ⋯⋯!?」
「大丈夫。ご安心を。教皇猊下の祝福を私が消すなんて不可能です。その聖印はイシュチェルさんの子宮を護り続けます」
「あぁ、よかったわ。⋯⋯この聖印がある限り、私は妊娠せずに済みます」
「不思議ですね。何故イシュチェルさんを無理やり妊娠させて、子供を作りたがっているのでしょうか? メガラニカ帝国の狙いは何でしょう?」
「分かりませんわ。私自身はバルカサロ王家の血筋というわけじゃないのに⋯⋯」
「教会の修道院でお育ちになったと聞いておりますが、イシュチェルさんのご両親は?」
「よく知りません。物心がつく前から修道院に預けられていましたわ。育ての親は修道院の院長先生です」
イシュチェルは生まれ育った修道院について語ってくれた。それを聞いたマリエールは一つの可能性に気付いた。
(イシュチェルさんは特別な血筋かもしれない。状況証拠でしかないけれど、その説は濃厚⋯⋯。バルカサロ王国の国王もイシュチェルさんとの子供を欲しがった。あらゆる手を尽くし、アーロン殿下が生誕した。⋯⋯君主は劣情だけで女を抱かない)
大国を背負う国主に自由恋愛はない。
(――絶対に何かある)
バルカサロ王国の国王チャドラックとメガラニカ帝国の皇帝ベルゼフリート、二人の大君主がイシュチェルの血筋を重要視している。
(皇帝陛下は事情を伝えられていない様子だった。上からの命令でイシュチェルさんを抱いている⋯⋯。最高権力者の三皇后に接触すれば、真意を確かめられるかもしれない。そのためにも皇帝を口説き落とさないと⋯⋯)
そっけない態度で寝室から追い出されたことが、マリエールはショックだった。
(色仕掛けは専門外です。美女が大勢いる後宮では、私の顔も没個性ですし⋯⋯。困りましたね。相手は子供⋯⋯。まずは遊び相手からでしょうか? 馬蹄投げの練習をしておきますかね)
