【134話】母親となったロレンシア

 

 二月五日――胎孕たいよう廟堂びょうどうでロレンシアは初産を遂げた。

 大きく実り、垂れ下がった巨胎から生まれ落ちた乳飲み子は十二人。ショゴス族の寄生卵子に犯されたロレンシアの子壺は、半透明の赤児を吐き出した。

 胎孕たいよう廟堂びょうどうの助産巫女にとっては、久々の大仕事となった。ロレンシアはショゴス族の肉体改造で多胎の子産みに特化した子宮となっているが、初産で十二胎は母胎への負担が大きい。

 しかし、ほんの一年前までロレンシアはアルテナ王家に仕えた近衛騎士団の精鋭。メガラニカ帝国との戦争では、王都ムーンホワイトでの籠城戦も経験している。

 祖国を蹂躙する帝国に抗うため、近衛騎士団の美しき女騎士は剣技を磨き、肉体の鍛錬に励んだ。ところが、ロレンシアは国讐の怨敵であるベルゼフリートに従属し、皇胤の御子を産む宮廷の端女に堕落した。若くして女仙となり、精気溢れる壮健な母胎は、皇帝の瘴気をたっぷりと吸い込んだ。

 ――子宮に力を注ぐ。産みの苦しみに耐えた後、赤毛の美少女は母親となる。

「んぉおおぉっ♥︎ んんぉおっ♥︎ おおおぉおぉぉっ~~♥︎」

 分娩台に座るロレンシアは淫声を叫ぶ。己の胎で育った新たな命。ほんの一年前までレンソンの子を育てていた生命の揺り籠は、ベルゼフリートのオチンポに寝取られた。

(胎内で動いてるっ♥︎ 陣痛しゅごいぃっ♥︎ これが出産っ♥︎ おぉ♥︎ 羊水をお漏らししちゃった♥︎ もうすぐ赤ちゃんが出てくるっ♥︎ 出ちゃう~~♥︎)

 幼馴染みの弱々しい遺伝子を放逐し、強大な力を宿す幼帝の遺伝子に卵子が恋してしまった。

「産まれるっ♥︎ 産まれぢゃぅぅぅぅううっ♥︎ 陛下の赤ちゃん⋯⋯! おぉぉっ♥︎ 出てくるっ♥︎ オマンコの奧からぁあぁ♥︎ くるっ! くるぅ! ぐるぅぅぅぅう゛ぅぅ~~っ♥︎」

 最初に生まれた赤児は女官総長ヴァネッサの子に違いなかった。

「はぁはぁはぁ♥︎ んっ♥︎ んぅぅぅ~~っ♥︎ まだ⋯⋯くるぅぅぅっ~~♥︎」

 ロレンシアの真紅髪を受け継いでいるが、不定形の肉体は紫の色素。ベルゼフリートとヴァネッサの子だが、母胎であるロレンシアの遺伝子も組み込まれた合いの子。

「んぁっ♥︎ おおぉっ♥︎ 出産アクメ♥︎ 止まらないっ♥︎ しゅごぃぃぃぃいのぉぉぉ♥︎ んぉぉぉぉおぉおおおぉぉおっ⋯⋯♥︎ ん゛おお゛ぉぉっ~~♥︎」

 力みが暴発し、尿道のせきが決壊する。小便を吹き散らしながら、淫らに失禁を晒す。その最中も出産は続く。体色の異なるショゴス族の胎児が次々に産まれた。

 胎に残る胎盤と繋がった色鮮やかな臍帯。母子の血縁を示す螺旋状のひもが並んでいる。彩色豊かな臍帯は雨上がりの空に描かれる虹の色に見えた。

 ショゴス族に遺伝子汚染された子壺の卵子。借り腹のロレンシアは呼吸を整え、最後の子を産んだ。

「んぅ♥︎ んぁ⋯⋯♥︎ はぅっ⋯⋯♥︎」

 陰裂の穴から伸びる色鮮やかな臍帯は、助産巫女が抱える十二人の赤児達の腹と繋がっている。フォレスター家の赤髪は遺伝性が強い。兄弟姉妹は全員が真紅の赤毛だった。

「その子⋯⋯赤ちゃんの顔を見せて⋯⋯♥︎」

 最後に産まれた赤児は、体表が透き通っていない。ショゴス族の寄生卵子で宿った子供であれば、透き通る粘性の表皮であるはず。ロレンシアの胎が十二番目に産んだ赤児は、ベルゼフリートと同じ褐色肌の男子だった。

(間違いないわ。この子は、私と陛下だけの赤ちゃん⋯⋯♥︎ あぁ⋯⋯私は母親になった⋯⋯♥︎ メガラニカ帝国の女なってしまった⋯⋯♥︎)

 ロレンシアの膨れ上がったボテ腹と超乳は二度と元に戻らない。アルテナ王家に仕える女騎士ではなく、メガラニカ皇帝の性奴隷となる人生を選んだ。

(もう私は故郷に帰れない。裏切り者となった。セラフィーナ様をお守りすると誓って⋯⋯祖国を攻めた帝国に抗うと息巻いていたのに⋯⋯)

 王家への忠義、貴族の誇り、磨いてきた騎士の剣技。これまでの人生で積み上げた全てを投げ捨てた。

 ロレンシアはベルゼフリートが慰めてくれた夜の思い出を反芻はんすうする。肉体改造手術で心身が弱っていたとき、幼い皇帝に優しく抱かれた。

 夫であったレンソンよりも太く立派な巨根に貫かれ、女の悦びを知ってしまった。清廉な女王だったセラフィーナがセックス中毒に陥ったように、ロレンシアも肉棒の美味に魅了された。

 もはやベルゼフリート以外の男と子作りするなど、考えられなくなった。心と身体、どちらも昔の男を忘れてしまった。

「貴方は母親わたしのようにならないでね⋯⋯」

 大きな産声をあげる愛息にロレンシアは母親として語りかける。前夫への罪悪感はある。流産してしまったレンソンの赤児に愛情も抱いていた。

(過去に戻っても⋯⋯きっと私はベルゼフリート陛下を選んでしまう⋯⋯。⋯⋯本当の恋心を知ってしまったら、何があろうと⋯⋯止められないわ⋯⋯)

 メガラニカ帝国の支配に屈したセラフィーナは、売国女王と罵られている。ロレンシアへの評価も同じだ。故国へ戻ったとき、従者であったロレンシアも同様の蔑みを向けられた。

 アルテナ王国にセラフィーナとロレンシアの居場所はなかった。

(⋯⋯陛下の赤ちゃんを産めた。微塵も後悔はない。たくさんのモノを失った。薄汚い裏切り者になってでも⋯⋯私は愛する男の子供が欲しかった⋯⋯。私は卑しい女だ。せめて、私の子は善良な未来を⋯⋯、どうか正しい道を進んでほしい)

 丸々と突き出た孕み腹、上半身を覆うほどの超乳、柔らかな贅肉が実った巨尻と太腿。乳牛と見間違える肥えた淫体。

 アルテナ王国の貴族令嬢から崇敬の眼差しを集めていた近衛騎士団の美少女騎士は、皇帝に付き従う淫乱な情婦へと変貌した。

(出産を終えても身体が重たい。乳房の重さに上半身が押し潰されそう。セラフィーナ様よりも大きなオッパイ。自分のモノとは思えない乳房⋯⋯。フォレスター辺境伯家の娘にはちっとも相応しくない)

 たとえどれだけ軽蔑され、貶められようと、最後は自分自身で決めた生き方だ。しかし、息子には自分が成し遂げられなかった騎士の生き方をしてほしいと願ってしまう。

(私は不忠者の家来。信じてくれた人々を裏切って、愛する御方に全て捧げてしまった卑しい女。だけど、貴方はセラフィーナ様のご息女に忠義を尽くしなさい⋯⋯)

 臍帯が切断されるまでの短い間、ロレンシアは我が子達と触れ合った。

 瘴気を宿した女仙が、己の子供を愛せる僅かな一刻ひととき。黒ずんだ乳輪の中心で大きく勃った乳首から、大量の母乳が湧き出す。乳房はずぶ濡れとなった。

 出産を終えてもロレンシアの体型は変わらない。ショゴス族の肉体改造は不可逆。剣を振るう逞しい女騎士の身体には治せない。一生涯をボテ腹の孕み女として過ごすのだ。

 ロレンシアの超乳は出産でさらに質量を増し、ウィルヘルミナとセラフィーナを完全に凌駕した。肉付きが不定のショゴス族を除けば、宮中で最も大きな乳房の女に登り詰めた。

(レンソンと結婚したときは、こんな私になるなんて思ってもいなかった。メガラニカ帝国が憎かった⋯⋯)

 在りし日の追憶。白月王城での幸福な生活。祖国を守るためなら、命だって惜しくはなかった。だが、そんな覚悟は、人生経験の希薄な若娘の軟弱な未練に過ぎなかった。

(幼い頃から慕っていたリュート王子とヴィクトリカ王女。セラフィーナ女王を守る⋯⋯忠義を尽くす騎士になるはずだった⋯⋯。でも、今の私はそんなことより⋯⋯陛下が好き。愛してる♥︎ 愛してしまった♥︎ ベルゼフリートという少年に心を奪われた⋯⋯♥︎)

 止めどなく、溢れ出す涙のように、黄色味を帯びた乳汁の雫が滴り、乳房の球面を流れていく。初産を遂げて肉体は完成した。ロレンシアはうら若き娘から経産婦の母親へと成熟した。

「あぁ、早くお会いしたい♥︎ 愛しの皇帝陛下⋯⋯♥︎」


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