2025年 1月23日 木曜日

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【131話】侯爵の日誌

NOVEL亡国の女王セラフィーナ【131話】侯爵の日誌

「――違うって! 秘密にするつもりだったよ? でも、ヘルガが誰にも言わないって約束してくれたから! ちょっとだけ⋯⋯全部は話してないよ!」

「ヘルガは騒動の細部まで知っていたぞ」

「⋯⋯ひょっとしたら全部だったかも? えへへ」

 金緑后宮の廊下に騒がしい声が響く。幼い皇帝はご立腹の皇后を宥めようと必死だった。

 新年の帰省で起きたアレキサンダー公爵家の大騒動。醜聞を揉み消そうと奮闘したが、当事者の口が軽ければ全くの無意味である。

「――で、他には? 誰に言い触らした?」

「言い触らしてなんかいないよ! 教えたのはヘルガだけ! 僕を信じて! この目を見てよ! これが嘘をついている男の目だと思う?」

「陛下を信じた私が愚かだった⋯⋯。もう信じない」

「信じてよ~」

 凜々しく、精悍な顔立ち。胸と尻の女らしさが体躯に現われてなければ、眉目秀麗な美男子と見間違える容姿。戦場では無双の力を振るい、敵兵を恐怖させる帝国軍の最高戦力。英雄アレキサンダーの孫娘を知らぬ者は帝国に一人としていない。

 勇名轟く英傑は、頬を膨らませて拗ねていた。惚れ込んだ幼帝の前では、どれほどの力を持つ帝国軍人だろうと、年若い娘に過ぎなかった。

「⋯⋯あの日、母上とはのだな?」

「あれのこと? ちょっとした悪戯だよ」

 レオンハルトは自分の母親が、子供欲しさにベルゼフリートと密通したのではないかと疑っていた。女仙ではなかったヴィクトリカが皇胤で孕んだと聞いてから、レオンハルトの母親は態度がおかしかった。

「一緒に露天風呂入ったりしたけど、寝室では何もなかったよ。じゃれ合っただけ。まさかあんな騒ぎになるとは思わなくてさ」

「ハスキーが不在だったとはいえ、警務女官も弛んでいる」

「レオンハルトも偶には親孝行してあげたら? 娘達がいなくなって寂しがってたよ?」

「⋯⋯⋯⋯母上はそんな軟弱な女ではない。陛下を誘き寄せる方便だ」

 アレキサンダー公爵家の七姉妹は母親をまったく信用していない。娘の夫だろうと優秀な女戦士を産めるのなら、喜んで股を開いたはずだ。

「ねえ、レオンハルト。機嫌直して。ごめん! 本当に悪乗りだったんだってば⋯⋯!!」

「続きの言い訳は寝室で聞かせてもらう」

「はーい。今日って避妊あり? なし?」

「ゴムは用意してある」

「僕はオマンコは生がいいんだけど?」

「それは私の機嫌次第だ」

 レオンハルトはベルゼフリートをつまみ上げて、自分の寝所へと連行していった。仲睦まじい痴話喧嘩の様子を廊下の曲がり角から覗いている者達がいた。

 細長い兎耳がぴょこぴょこと動いている。もしベルゼフリートが気付いていれば、駆け寄ってきただろう。

「最低だな。あいつ⋯⋯。俺にもペラペラと喋ってたぞ」

「こらこら。ネルティ。口が悪いよ。あいつじゃなくてとお呼びすべきだ」

「なにがヘルガ妃殿下にしか喋っていないだ。どうせ宰相や神官長にも話してるぞ。可哀想な元帥、また騙されてる⋯⋯」

「恋は盲目。そういうことだと思うよ」

「はぁ。元帥はもうちょっと陛下を疑うべきだ。この先も苦労するだろうなぁ⋯⋯あれは⋯⋯」

 ネルティは重たい溜息を吐き出した。

 その昔、ナイトレイ公爵家で暮らしていた頃のベルゼフリートは、人見知りで寂しがり屋の幼児だった。皇帝に即位し、宮廷の妃や女官、側女と暮らすうちに良くない自信を付けてしまった。

 皇帝の心根を染め上げた悪女には大きな責任はある。しかし、生来の気質だったのかもしれない。

 メガラニカ帝国内では大人気のベルゼフリートだが、中央諸国での風評は最悪だ。アルテナ王国の女王を堕落させた色狂いの皇帝。どんな相手だろうと女なら犯す色情魔と噂されていた。

 その悪評をネルティは否定できなかった。軍務省の命令だったとはいえ、当時は清純だったセラフィーナを強姦している。さらにはヴィクトリカを善意と言い張って辱めた。

「昔は⋯⋯素直で可愛かったのに⋯⋯」

 幼少期からの友人であり、見守ってきた世話係のネルティは、ベルゼフリートがどんな大人になるのかと不安でならなかった。

「今でも陛下は十分に可愛いと私は思うけれどね」

「ユイファン少将も陛下を甘やかしすぎ」

「はっははは。そうかもしれないね。さて、そろそろ行こうか。ネルティ。警務女官がこっちを睨んでるよ。覗き見は体裁が悪い。私まで怒られそうだ」

 皇帝親衛の警務女官は顔を顰め、ネルティとユイファンにどこかへ行けと視線で語っていた。

「元帥閣下が陛下のお相手をされている間に、私達は仕事に取りかかろう。文字通り、山積みの仕事が待っている」

「運び入れるだけで三日はかかったんですよ。本気であの量を全て調べる気で?」

「効率よりも質さ。少数精鋭で読み進めた方がいい」

「少数精鋭って⋯⋯。ユイファン少将と俺の二人だけじゃないですか!?」

「そうとも言うね。二人で頑張ろう」

「参謀本部に分析官はいないんですか? 共通文字とエルフ文字の読み書きくらいはできますが、小難しい古文書は分かりませんよ?」

「私達が調べるのは重要な情報だ。信頼できる者だけで調べるべきなのさ。⋯⋯アレキサンダー公爵家の騒動とは違う。ペラペラと宮中で言い触らされては困る。秘密を知る人間は少ない方が好ましい」

「承知しました。内密に進める。そういうわけですね」

 ユイファンは側女のネルティを従えて、大量の書物が運び込まれた部屋に向かった。レオンハルトから与えられたユイファンとネルティの仕事部屋だった。

「私は資料を読み進める。ネルティには整理をお願いしたい。まずは資料を筆者で分けてくれるかな」

「分かりました。こういう資料って普通は年代順で整理するもんですけど、いいんですか?」

「死恐帝の五百年は混乱期だ。筆者によって記述の信頼性が大きく変わる。まずはケーデンバウアー侯爵家の記録から調べたい。間違いなくこの時代で最も正確な歴史が記されている」

「⋯⋯先代ケーデンバウアー侯爵の日記。これって現物ですか?」

「そうだ。死恐帝の時代、五百年にわたって帝国軍をまとめ上げた先代ケーデンバウアー侯爵。英雄アレキサンダーに次ぐ偉人――護国の英雄さ。廃都ヴィシュテルの解放戦で亡くなっていなければ、今ごろは元帥や宰相になっていたかもしれない」

 歴代のケーデンバウアー侯爵は不老の吸血鬼。世界に七人しかいない純血の真祖。日光以外では死なぬ真なる吸血鬼の不死性は、現当主のヘルガに継承された。

「先代ケーデンバウアー侯爵は皇后になろうとは思わなかった。だから、死恐帝の災禍が静まったのを見届けて、冥府に旅立たれたのだろうね。果たして報われた人生だったのだろうか⋯⋯」

 肘掛け椅子にもたれ掛かったユイファンは、尖塔の如く積み上げられた日誌の頂上を見上げる。

 死恐帝が殺された即位式から五百年もの間、たった一人でメガラニカ帝国を支え続けた功労者の記録。英雄アレキサンダーが現われ、国を救うと当時の人々は知らない。いつ終わるかも分からぬ災禍との戦いが始まった。

(覚めない悪夢か⋯⋯)

 死恐帝に仕えた神官長ロゼティアと女官総長アトラクは殉死した。共和主義者が台頭していた時代、信頼できる数少ない忠臣は皇帝の後を追ったのだ。だが、ケーデンバウアー侯爵はメガラニカ帝国の民を護り続けた。

 希望を捨てず、孤独な戦いに身を投じた。護国の英雄と呼ぶに相応しい英雄の一人であった。

 ユイファンは先代ケーデンバウアー侯爵が書き記した日誌を読み進める。

 ◇ ◇ ◇

 ――大陸歴七紀元年、十月二十一日。

 皇帝陛下の崩御から一ヶ月が経った。深い霧が立ちこめ、の熱病で死ぬ者が現れ始めた。いや、原因は分かりきっている。皇帝陛下の死――転生体の器が崩壊し、破壊者ルティヤの荒魂が解き放たれた。

 神官長ロゼティアの死によって、大神殿の神官長代理となったカティアは災禍が始まったと宣言した。

 先帝、哀帝の在位はわずか二十六年。気鬱で日に日に弱る皇帝陛下の御心を労らず、自死に追いやったナイトレイ公爵家の皇后を侮蔑し、災禍に耐えた百年⋯⋯。しかし、今の我々に先帝の三皇后を罵る資格はない。

 我らの帝は一日と保たなかった。

 不甲斐なさを恥じるばかりである。宰相と元帥の凶行に気付けず、幼少の陛下をお守りできなかった罪は大きい。門閥貴族を遠ざけた結果、共和主義者の暴走を止められなかった。

 大神殿は帝都ヴィシュテル全域に浄瘴結界を張った。しかし、カティアは長く保たない語った。ほんの数週間の時間稼ぎ。災禍の淀みが天地を歪めている。

 慈悲深き哀帝の災禍は百年余り。此度の災禍はメガラニカ帝国と大陸の人々をどれだけ間、苦しめるだろうか⋯⋯。百年か、二百年か、それとも三百年か。国を滅ぼさぬために、可能な限り手を尽くさねばならない。

 刻々と状況は悪化している。

 大神殿は帝都の廃棄を提言している。実際、帝都の神殿は伽藍堂となった。幼年の巫女達は女神アストレティアに率いられて暁森へ疎開したと聞く。

 女官総長アトラクが自殺した後、大神殿の神官は私との接触を避け始めた。

 大神殿が棄てようとしているのは帝都だけなのか、それともメガラニカ帝国そのものか⋯⋯。アレキサンダー公爵家の助力で帝国軍の実権は得ているが、大逆犯の処断すらままならない状況だ。

 罪人を裁くべき司法神官は、もはや弑逆した宰相や元帥に興味はなく、災禍を乗り越えた先、次代皇帝に備えているのだろうか? いや、メガラニカ帝国を見限った疑いがある。

 そもそも大神殿の歴史はメガラニカ帝国より古い。神官達が仕えているのは、破壊者ルティヤを封じる転生者であって、国家そのものではないのだ。

 国が滅ぼうとも大神殿は、破壊者ルティヤの転生体を守れれば、それでいいのだろう。しかし、帝国貴族の一員である私は帝国の民を見捨てられない。

 私は信頼できる味方を立て続けに失った。だが、手助けしてくれている者もいる。

 今まで距離を置いてきたナイトレイ公爵家から支援の申し出があった。皮肉なことだ。私は哀帝の時代に権勢を誇った旧家の大貴族を排斥してきた。それこそが国家の安寧に繋がると信じて⋯⋯。大きな過ちであった。

 ナイトレイ公爵家はメガラニカ帝国と心中する気でいるらしい。保守的な一族であるが忠義心は本物であった。哀帝の代に正しい形で忠義が果たされていれば、今日の事態にも至らなかったであろうに⋯⋯。

 ◇ ◇ ◇

 ――同年、十一月十三日。

 カティアの構築した浄瘴結界がついに崩壊した。

 灰色の濃霧は屍者を喚ぶ。太陽の光を奪われ、黄金の帝都と讃えられたヴィシュテルは暗闇が支配する死都と化した。帝国軍が民の避難を先導する中、私の元に恐ろしい凶報が届いた。

 最悪の知らせだった。

 帝嶺宮城ていれいきゅうじょうの封じ込めを任せていたアレキサンダー公爵が戦死した。遺体はすぐさま処理したため、亡者とならずに済んだ。アレキサンダー公爵家には有能な家臣団がいる。指揮官の戦死で一時的に混乱したが、なんとか立て直し、壊滅は免れた。しかし、私は無二の副官を失った。

 この先、どう災禍に抗うべきか⋯⋯。答えは出ない。

 大神殿のカティアから書状が届き、帝都ヴィシュテルの放棄を再び提案された。せめて陛下の御遺体を持ち出し、弔いたかったが、瘴気に阻まれ、棺にはもう近づけない。神官の援助が見込めぬ中、瘴気で汚染された帝嶺宮城ていれいきゅうじょうに近づける者はいない。

 栄大帝が残した聖遺物『闇祓いの玉石』が失われていなければ、方法はあったのだろうか⋯⋯? 

 かつての栄光は見る影もない。帝都ヴィシュテルの放棄。破壊帝と哀帝、二つの災禍を乗り切った栄大帝の偉大な都が失われようとしている。

 帝都の民は我らの陛下を死恐帝と呼びはじめた。灰色の濃霧に怯え、ひたすら赦しを求めて祈っている。だが、今さら遅い。何もかも手遅れなのだ。

 メガラニカ帝国の基礎は瓦解している。

 混乱に乗じて、大逆犯が牢から逃げた。熟々つくづく、愚かしい。救いようのない連中だ。もし自分達の末路を知っていれば、そのまま牢に残っていただろう。

 逆賊とはいえ、酷たらしい死に様だった。一度は三皇后に登り詰めた美女。しかし、切り刻まれては家畜の肉と大差はない。

 アレキサンダー公爵が死に、帝嶺宮城ていれいきゅうじょうの包囲網は破られた。魂を貪る屍者の群れが城下街に流れ込んだ。

 宮中の貴人が半狂乱で逃げ出す最中、共和主義者の一派は地下牢に捕らえていた大逆犯を連れ出したようだ。しかし、城壁の関門で避難民に見つかった。

 皇帝殺しの愚かな宰相は、を身に着けていた。

 衛兵に見咎められ、騒ぎが起こり、怒り狂った帝都の民に捕まった。民衆の掌返しも恐ろしい。皇帝の威信を侮り、非貴族の出身の宰相を持ち上げていた者達は、かつての立場をすっかり忘れて、皇帝を殺した大逆犯に恨みをぶつけていた。しかし、本物の怒りではない。

 つい半年前までは、皇帝を鼻で笑っていた連中は、恐怖に取り憑かれているだけだ。祟りから逃れるため⋯⋯。赦しを得るために怒っている。贖罪ではなく、醜悪な偽善だ。

 私が現場に到着したとき、牢から逃げ出した大逆犯は凌遅刑に処されていた。大逆犯を皆殺しにすれば皇帝の災禍が収まる。そんな流言を民衆は信じ、私刑を行った。

 酷たらしく、凄惨な有様だった。

 肉断ち法丁で切り刻まれた元帥は、頭部が半分ほど残っていた。後に居合わせた衛兵から聞いたところ、密通していた男に見限られ、怒り狂う民に差し出されたという。

 哀れな女だ。皇帝を殺してまで愛した男に棄てられた。一体何のために帝国元帥となりたかったのか⋯⋯。宰相に唆されたと最期まで喚いていたという。

 皇帝暗殺の主犯であった宰相は下半身を刻まれ、息絶え絶えだった。美しい女だったが、何度も殴られた顔は赤黒く膨らみ、死んだ魚のようだった。

 元帥と宰相は逆賊に相応しい罰を受けた。しかし、災禍は何者にも慈悲を与えなかった。

 帝嶺宮城ていれいきゅうじょうから溢れた屍者の軍勢が押し寄せ、泣き叫ぶ宰相を捕まえた。私刑を行った民衆は喝采を上げたが、彼らも愚かだ。破壊者ルティヤの災禍は無差別に人間を殺す。暗殺の下手人を殺した程度で赦されるはずがない。

 ――阿鼻叫喚の地獄だった。

 神官長代理のカティアが都を去り、盟友のアレキサンダー公爵が戦死した。帝嶺宮城ていれいきゅうじょうは屍者に占拠されたのだ。全ての終わりに思えた。濃霧は帝都から太陽を奪った。終わらない夜が始まった。

 私は城下街からの全軍撤退を命じた。

 この日、帝都ヴィシュテルは陥落したのだ。

 副都アヴァタールへの遷都を宣言し、避難民を各地に逃れさせている。私は災禍の発生源となっている帝都を封鎖すべく、あらゆる手段を尽くした。神官ですら諦めた災禍を封じ込める方法などない。しかし、誰かがやらねば、被害は拡大していく。

 私の抵抗を嘲笑うように、灰色の濃霧はメガラニカ帝国の全土で現われた。屍者を喚び起こし、甚大な被害を齎した。不可思議なことに隣国では、災禍の被害が起こっていないようだった。

 本来、破壊者ルティヤの災禍はメガラニカ帝国のみならず、大陸全土に被害を与える。しかし、死恐帝の災禍は例外であった。死に際、陛下は逆臣の国を呪われたのかもしれない。

 陛下は七歳の幼子だった。毒で苦しみ、陛下は死んだ。我々への恨みは深いだろう。⋯⋯メガラニカ帝国は滅ぶべきなのだ。今の私の立場では口が裂けても言えない。しかし、おそらく大神殿はメガラニカ帝国の滅亡を願っている。

 宰相と元帥の大逆。大神殿はメガラニカ帝国を完全に見放した。不信感は軍務省と近しい私にも向けられているようだ。

 私にはもう味方がいない。

 当主を失ったばかりのアレキサンダー公爵家は混乱している。帝都からの撤退時に殿しんがりを務め、多大な犠牲を払った。アレキサンダー公爵家の戦力ばかりを頼りにできない。

 災禍の犠牲者は十万を超えた。打つ手はない。数百万、数千万の命が失われる。これから先は人数ではなく、街の規模で犠牲者を数えることになるだろう。

 哀帝の災禍とは比較にならぬ規模であった。弱った者は霧を吸い込むだけで熱病に冒される。呪われた屍者は生者の魂を貪り喰う。

 帝都ヴィシュテルの周囲に空域機雷を布陣させた。私が死んだとしても地脈路に刻んだ魔術式が生きている限り、ゴーレムが機雷を発生させ続けるだろう。

 無駄とは分かりながらも三重の魔術防壁を築き、帝都の周囲を遮断した。やはり屍者の軍勢を完全に防ぐことはできなかった。灰色の濃霧はあらゆる防壁を突破する。

 唯一の例外は大神殿の浄瘴結界だ。神官は大神殿が疎開した暁森と、人口が密集する新帝都アヴァタールの二カ所に結界を張った。

 何度も救援を要請したが、大神殿は旧帝都ヴィシュテルの封じ込めは不可能と突き返してきた。大神殿は暁森と新帝都に戦力を集中させている。

 旧帝都ヴィシュテルは災禍の中心。封じ込めが不可能なのは、私だって分かっている。しかし、誰かがその不可能に挑まなければならない。

 己が不老の吸血鬼である不幸を嘆く。私はいつまで抗わなければならないのだろうか? 全てを投げ捨てたい。しかし、後継に責任を押し付け、逃げることは許されない。私には護るべき民がいる。

 いつの日か、悪夢が終わることを祈るばかりだ。

 ◇ ◇ ◇

 ユイファンが次の日誌を手に取ろうとする。だが、表紙に触れた指先が止まる。確かめるべきは死恐帝の亡骸がどう扱われたかだ。日誌の記述通りであれば、帝嶺宮城ていれいきゅうじょうの棺に納められたまま、帝都ヴィシュテルは棄てられた。

「⋯⋯⋯⋯」

 机の隅に寄せた日誌を凝視する。読み終えたばかりの日誌を再び開き、ページをめくる。

「――翡翠の首飾り?」

 皇帝殺しの宰相。歴史から名を消された大罪人。十一月十三日の記述によれば、宰相は怒り狂う民によって酷刑を受けた。帝嶺宮城ていれいきゅうじょうから溢れ出した屍者の群れに引きずられ、おそらく殺された。

「衛兵が翡翠の首飾りを見咎めた⋯⋯。奇妙だ。牢から脱獄した宰相がなぜ高価な宝石を⋯⋯」

 そんなものを首から提げていれば、気付かれて当然だ。雑兵に過ぎない衛兵が見咎めたのなら、翡翠の首飾りは宰相を象徴する装飾品だったに違いない。

 考え無しの愚かな女だった。その一言で納得しようとすればできる。しかし、ユイファンは強い違和感を覚えた。

(死恐帝の崩御後、ケーデンバウアー侯爵は軍事クーデターでメガラニカ帝国の実権を奪取した。大逆犯の共和主義者を捕らえ、牢に入れたとき、貴重品は没収したはず⋯⋯。高純度の宝石は術式触媒になる。取り上げて当然の物品だ)

 翡翠の首飾り。ユイファンはつい最近、まったく同じ言葉を耳にしていた。

「ネルティ! 夜遅くに申し訳ないが、光芒離宮へ行ってくれ。書斎の机にシーラッハ男爵殺害の裁判記録が置いてある。ここに持ってきてほしい」

「構いませんけど、なんで裁判記録を? 死恐帝の亡骸がどうなったかを調べてたんですよね?」

 約八年前に起きたシーラッハ男爵の殺害。森番の一家を破滅させる不幸の発端となった事件。狩猟中の領主を森番が誤って殺してしまった。当事者が全員死んでいるため、真相は闇の中だ。

 五百年以上前に殺された死恐帝とまったく無関係の事件に思えた。

(シーラッハ男爵の遺留品だ。司法神官アマンダの裁判記録によれば、男爵の死体は渓谷で見つかった。遺体から所持品が無くなっていた。が奪われた。憲兵に捕まった森番の男は翡翠の首飾りを持っていた。だが、裁判では⋯⋯)

 森番の男は主張した――翡翠の首飾りを盗んでいない。

 家族の助命を嘆願していた森番の男は領主殺しを認めた。しかし、盗みは否認した。盗んでいないと言い張った。しかし、持ち物からシーラッハ男爵の装飾品が見つかり、裁判で族滅の判決が言い渡された。

 翡翠の首飾りが有罪の決め手となった。

(翡翠の首飾り⋯⋯。偶然の一致? いや、徹底的に調べてみよう。現物がシーラッハ男爵家に残されているかもしれない。当事者で生きているのは司法神官アマンダだけか? 彼女からも聞き取り調査を⋯⋯)

 ユイファンはふと頭に思い浮かぶ。亡くなっている当事者は多い。だが、失われた記憶を垣間見た者がいる。

「待った! ネルティ! 光芒離宮で裁判記録を見つけたら、次は黄葉離宮に行ってセラフィーナ女王を連れてくるんだ」

「⋯⋯后宮にセラフィーナ女王を連れてきていいんですか? 元帥の許しも得ずに?」

「好きに使えと元帥から言質は取っている。セラフィーナ女王は記憶を追体験している。ああ、なんで気付かなかったのだろう! セラフィーナ女王の娘には異能がある。過去を読み解く力。妊娠中に娘の異能で、セラフィーナは陛下の肉親を見ている!」

 セラフィーナが産んだ三姉妹。過去を調べる希有な才能を持つ。言葉を話せぬ乳児でなければ、死恐帝の亡骸を探すユイファンの助けになってくれたことだろう。

「セラフィーナ女王は誰よりも当時の出来事を知る人物だ。寝ていようと叩き起こして、私のところに連れてきてくれ。確かめたいことがある」


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