七面倒な工作をいくつも講じた末、マリエールはベルゼフリートとの会話に辿り着けた。ここまでは目論見通りの成功。けれど、その先へは進ませてもらえない。結局のところ、マリエールの本懐は果たされなかった。
(私の恋路は前途多難⋯⋯。障害が多い。警務女官達にこれ以上、警戒心を持たれても厄介です。近づいたり、話しかければ、強引な手段で排除されかねません。まあいいでしょう⋯⋯。この辺で自重しますか⋯⋯)
ベルゼフリートは多少の興味をマリエールにも向けてくれた。しかしながら、それは性的な欲求と異なる。自分のハーレムに混ざった異物に対する好奇心だ。
(教会の聖職者は異性を口説く方法を習っていません。巷の本に書かれている恋愛学とやらも、どこまで役に立つものなのでしょう? 教会圏とメガラニカ帝国では文化や価値観が大きく異なる。後宮での生き方をもっと学ばねば⋯⋯)
ベルゼフリートはもはやマリエールを見ていない。
関心はベッドで仰臥する美女のデカ乳に移っていた。
「んあぁっ♥︎ はぅっ♥︎ あんぅっ⋯⋯♥︎」
執拗に母乳を吸い取る。指先で乳房を丹念に揉み上げ、引っ張った乳首を頬張る。飢えた乳児のように母性を貪り、硬く勃起した巨根で子宮を突く。
性欲の捌け口は、イシュチェルが一身に受け止めていた。ベルゼフリートはマリエールの計算高さに感心するだけで、ベッドの上に招いてはくれない。教皇候補の元聖女よりも、バルカサロ王国の未亡人王妃に夢中であった。
「あん! はぅっ♥︎ あんぁっ♥︎ んんっ~~♥︎」
豊満なる恵体を捩り、全身を震わせる美熟女は少年に抱かれている。正常位セックスの交わりで、ベッドマッドのバネが大きく弾む。オチンポの抜き差しは力強く、抽挿の快楽に悶えるイシュチェルはシーツを掴む。
「もっと腰を上げて。股も開いてよ。今の体勢だと挿れにくい。ねえ、イシュチェル? 聞こえてる?」
巨根は膣道の深層へと潜り進む。母から女に戻すため、皇子が通った産道を亀頭で穿り返す。ベルゼフリートは上目遣いで、イシュチェルに囁き続けた。
「はぁはぁっ⋯⋯♥︎ んっ⋯⋯♥︎ まってぇ⋯⋯! ちょっと! らめぇっ! 休憩⋯⋯っ! 疲れちゃぁっ⋯⋯♥︎ んぁっ♥︎」
「嘘付き。まだまだ大丈夫でしょ。ミルクだって搾りきれてない。マリエールに見られてるのが恥ずかしい? くすくすっ♪ あんな真面目な顔で観察されちゃうと僕もちょっと恥ずかしいや」
「あぁ……♥︎ んぁっ♥︎」
「でもさ、皇帝のセックスは誰かに見られるものだからさ。民衆の前でやる公開セックスに比べれば断然ましかな。知り合い程度ならね。こういうのは慣れだよ、慣れ」
「んぁふぁっ♥︎ んひぃぎぃっ♥︎ あぁうぅっ♥︎」
根本まで挿入された状態で、ピタリと動きが静止した。肉音が鳴り止み、二人の乱れた吐息だけが聞こえる。
「オマンコでちゃんと奉仕できるよね。イシュチェルならもっと僕を気持ちよくできるはずだよ。こんなに馴染んでるんだもん」
「はぁっ♥︎ はあっ♥︎ はぅっ♥︎」
高鳴る心臓の鼓動が重なる。心は通じ合っていない。だというのに、肉体的に結ばれたイシュチェルとベルゼフリートの感情は溶け合う。性悦を媒介に繋がりが太くなっていった。
男女交合の様子をマリエールは子細に観察している。
(――そろそろ射精するのでしょうか?)
少しでも収穫を得るために、ベルゼフリートの男根を凝視する。血管が浮き出た巨根は容赦なく未亡人のオマンコを穿ち貫いている。子宮を支配する男性器は精悍に脈打つ。
(生殖器がとても大きい。亀頭部は一般的なサイズを凌駕し、その形状は奇形に見えます。生まれつきだとすれば、先天的な肉体変異でしょうか?)
幼げな少年が豊満媚体の大人びた熟女を征服する淫景。マリエールは無遠慮に視姦を続けた。
(あんな大きい男性器をイシュチェルさんは受け入れているのですね。膣口が裂けそうです。⋯⋯小柄な女仙はどうしているのでしょう?)
黄葉離宮の日常となっている性宴は、背徳的な儀式を連想させる。
(性奉仕は後宮でもっとも重要な儀礼。メガラニカ皇帝には支配地を富ませる権能がある。帝国の急速な復興がその力を物語っています。⋯⋯けれど、イシュチェルさんの労苦が報われるかは微妙ですね。バルカサロ王国の内乱は人災。現在のところ、解決策が見つからない)
祖国で飢餓に苦しむ人々を救うため、イシュチェルは不義姦通を受け入れている。意欲的な性奉仕に臨み、ベルゼフリートを押し倒す場面もあった。バルカサロ王国に恩寵が届くことを祈り、淫らに股を開き、極太の巨根を受け挿れている。
(それはそれとして、セックスは気持ちよさそうです。あのイシュチェルさんですら、性悦を享受している。後宮では極上の娯楽なのでしょう。⋯⋯興味深い。自分の処女喪失が楽しみになってきました)
しばらくの間、マリエールはベッド上で繰り広げられるセックスを見学していたが、警務女官達の圧が高まり続けたので、頃合いを見計らって寝室から撤退した。
◆ ◆ ◆
(私は諦めの悪い女です。さて、次のプランを練らなくてはなりません。皇帝陛下に有益な情報を提供したつもりでしたが⋯⋯。好感度を稼げている気がしない。むしろ恩を売るなら、三皇后や妃達にでしょうか?)
入内後のマリエールは幾度もアプローチしている。だが、歯牙にもかけられていない。
(ハニートラップの良案が浮かばない。もしや⋯⋯私は皇帝陛下の好みに合ってない?)
一抹の不安がよぎる。容姿には自信があった。けれど、美醜の格付けは相対的なものである。帝国全土から選りすぐりの美女が集められた後宮において、マリエールの美貌は没個性的だ。
(私を抱いてくれないのは顔が地味だから⋯⋯? いっそセラフィーナ様のように日焼けでもしてみましょうか?)
美しく整った理想的な顔立ちは、印象が薄くなる。美女がひしめく後宮では、ありふれた美少女でしかないからだ。
(それとも、胸の大きさが原因?)
マリエールは廊下の真ん中で立ち止まり、窓ガラスに反射した自分を眺める。
(小さくはないはず⋯⋯。けれど、もっと大きなオッパイであれば、あるいは?)
膨らんだ乳房に両手を当てる。必要十分のバストサイズであり、平均以上の大きさだ。形状も悪くないはずである。適度な弾力を誇り、揉み心地も保証できる。
(セラフィーナ様やイシュチェルさんに遠く及ばない。ロレンシアさんは凄まじく大きい。私の乳房では貧相? どうなのでしょう⋯⋯? 皇帝陛下のお気に入りとされるネルティさんよりは大きい。バストサイズの問題ではない気がします)
すれ違った二人組の警務女官はマリエールに怪訝な視線を向けた。棒立ちの側女が乳房を揉みながら、神妙な顔つきで悩んでいる。不審に思われるのは当然だ。
(旅立ったとき、私はもっと楽観的で自惚れていました。皇帝陛下を見くびっていたのかもしれません。股を開けば飛び込んできてくれる。そんな安直な考えを抱いていました⋯⋯)
教会圏でメガラニカ帝国の幼帝は好色家と言われている。
後宮で酒池肉林の淫奔に明け暮れる救いようのない暗君。他人の妻を奪い取り、孕ませる暴虐の征服者。散々な評判であるが、風評の一部は当てはまっており、その他の大半が的外れだった。
(教会が説く道徳規範からの逸脱は著しい。淫奔な御方でありますが、そのように躾けられたのでしょう。育ての親は帝国宰相ウィルヘルミナ。淫魔が教育者なら、ああもなるでしょう)
マリエールはメガラニカの幼帝を高く評価している。アルテナ王国の女王と女騎士を篭絡した少年だ。遊び呆けていても、国を傾ける暴君とは違う。良妻賢母の心を奪い取る特殊なカリスマを備えているのだ。任された役割と期待に応えている。
(侮ってはならない。命取りになる。教会的な価値観では推し量れない御方です)
ベルゼフリートは賢君と暗君、そのいずれにも属さない。メガラニカ帝国の皇帝は実権が与えられていないお飾りの君臨者。教会圏の基準で言うところの君主とは別物だ。政治権限が皆無なのだから、賢君とも暗君とも断じれられない。
実質的な最高権力者は三人の皇后だ。ベルゼフリートが熱心にイシュチェルを抱いているのも三皇后の意向があるからだ。
仮に三皇后が「マリエールを抱け」と命じてくれるのなら、マリエールの願いは即日で叶うだろう。
(三皇后は「私を抱くな」と命じている? それなら私を黄葉離宮に配置するわけがない。もっと私を遠ざける。おそらく具体的な方針は示されていない。だから、皇帝陛下は躊躇している。どうすればいいか分からないから、あちらも迷っているのでしょうね)
ベルゼフリートは忠実な皇帝だ。三皇后の命令に逆らわない。
メガラニカ帝国は主君と家臣の主従が逆転している。これを不可思議で滑稽と笑う者もいるだろう。しかし、歴史を紐解けばよくある現象だった。
教皇より強大な権限を握っていた枢機卿は過去に存在した。絶対君主制を標榜しておきながら、聖職者や貴族の顔色を伺う国王は少なからずいる。
(皇帝は大帝国の民心を繋ぎとめる象徴。帝国内の共和主義者が根絶された現代において、皇帝の権威は絶対的なものとなっています)
公文書館で長ったらしい歴史資料を読み漁った成果だ。マリエールはメガラニカ帝国の骨格を把握した。
(大帝国の統治システムは、皇帝と女仙を前提として組み立てられている。その基礎が築かれたのは栄大帝の時代⋯⋯。大陸全土を平定した絶頂期。この仕組みが再び機能すれば、敵無しの軍事大国。永遠の繁栄を享受できる理想国家となる)
破壊帝、哀帝、死恐帝と三代連続の災禍で衰亡した大帝国は、新帝を迎えて復活した。棄て去った旧帝都が復興すれば完全に息を吹き返す。
(趨勢が決する前に、教会と帝国の間で不戦条約を締結させる⋯⋯。密約でもいい。帝国軍が厭戦病に罹っている今でなければ、教会有利の平和条約は成立しない。軍閥派を率いるレオンハルト元帥は私に利用価値を見い出しているはず。この数年で何とか状況を好転させたい)
大陸全土を平定した超大国は、再び目覚めようとしている。滅びの危機に瀕していたメガラニカ帝国は必ず復活を遂げる。
(バルカサロ王国の内乱に乗じて、メガラニカ帝国は何らかの行動を起こすかもしれない。私が三皇后の一人なら⋯⋯、帝国宰相ウィルヘルミナであったなら、どうするか? 決まっています。この好機を逃さない)
眉間にしわを寄せたマリエールは、渋い顔で懊悩する。
(北方の危うい情勢を鑑みるに、悠長に構えている余裕はなさそうです。逆算で考えてみましょう。三皇后はイシュチェルさんを孕ませようとしている。これには必ず理由があります)
ベルゼフリートとイシュチェルの子供。その利用価値とは何であろうか。
(イシュチェルさんの血統に意味があるのなら、メガラニカ皇帝の権能を使って何かを企んでいる。そこまでは間違いありません)
幾度も考えた疑問。その答えをマリエールは追い求める。
(豊作豊漁を約束し、疫病を遠ざける恩寵⋯⋯。メガラニカ皇帝の権能は国土を富ませる。その地で生まれた女が子供を孕むことが発動条件? いっそ私も孕んでしまえば、手っ取り早く状況を把握できるかもしれない。そのためにも、皇帝陛下とお近づきに⋯⋯。はぁ⋯⋯。問題が堂々巡りですね。それだと肉体関係を築かなければ始まらない)
マリエールは苦戦の真っ只中だ。手詰まり感すらある。しかし、諦めはしない。
(そういえば⋯⋯。以前、教徒から恋の悩み相談を受けたことはありましたね。しかし、他人の悩みと我が事は大違いです。我が身の悩みとなれば、とても辛い。望み薄の片想いですから⋯⋯。いっそ⋯⋯こういう時は私も誰かに恋愛相談すべきでしょうか?)
教皇候補だった同輩が還俗してしまった出来事を思い出す。
特に親しい間柄でもなかったが、なぜか彼女はマリエールに相談してきた。相談してきた彼女は若い商人と結婚し、幸せな家庭を築いている。両親とは絶縁状態になったが、孫娘の誕生を契機に良好な関係へ戻ったと耳にした。
マリエールは感謝が綴られた手紙を何度も受け取っている。孫娘にはマリエールが以前使っていた名前を付けたという。
正直なところ、マリエールは特別なことをしていない。なぜこんなにも感謝されるのか分からなかった。しかし、思い悩んでいた彼女にとって、マリエールが与えた一般論的アドバイスは人生の転機になったらしい。
(当時の私がしてあげたのは当たり障りのない助言⋯⋯。それが彼女の人生では役に立った。今回ばかりは私も他人を頼ってみますか。一人で思い悩んでいたら、独りよがりな考えばかりになる)
時間的な猶予はない。
(――タイムリミットは迫っている。これは私の勘。けれど、外れてはいない気がします)
マリエールの抱く危惧は、イシュチェルの子宮を守る聖印の効力だ。教皇庁が直々に授けた祝福を掻き消すのは困難である。王妃の胎はバルカサロ王家の子種しか受け付けない。
ベルゼフリートの膣内射精は無駄撃ちに終わるはずだ。しかし、三皇后は勝算ありと考えている。
(手段、目的、どちらも分からない。けれど、遠からぬ未来、イシュチェルさんは皇帝陛下の子を孕む)
マリエールは合理的思考に基づき判断する。
(皇帝陛下に勝算がある。イシュチェルさんの子宮は負ける。この前提で行動するべきです)
イシュチェルの負け筋を組み込む。アルテナ王国の女王という敗北者の先例をこの目で見ていた。イメージは付きやすい。
(人の心はどうなるか分からない。はて、さて、イシュチェルさんはどちらの人間でしょうか?)
この世には変わらない人間がいる。だが、変わってしまう人間もいるのだ。バルカサロ王国の王妃イシュチェルがどちらの人間であるかは、最後まで分からない。
「――あぁっ♥︎ あぅっ♥︎ んぅっ♥︎ もっとやさぢぃくぅっ♥︎ んはぁぁっ♥︎ んぅんううぅっ♥︎ らめぇっ♥︎ そこぐりぐりぃ押されたらぁ♥︎ んひぃ♥︎ あぁっ♥︎ はぁぅんゆぅっ♥︎ んぁっ♥︎ んいっ♥︎ んぎぃっ♥︎ いっぎゅっ♥︎ いいぃっ♥︎ くうぅっ♥︎ いぐっ♥︎ いぐっいぐぅいぐぅうぅ♥︎ んああぁああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁっ♥︎」
淫獣の叫びが廊下に響く。警務女官が寝室の扉を開けたタイミングで、イシュチェルが絶頂したのだ。
交代の警務女官は顔色一つ変えず、廊下で仕事の引き継ぎをしている。ベッドで母乳を噴き散らす痴女の嬌態など、気に留めることでもない。メガラニカ皇帝のハーレムでは普遍的な日常の出来事だった。
(おや、まぁ⋯⋯。すごい喘ぎ声⋯⋯。やっぱり、私が部屋で見ていたとき、イシュチェルさんは声量を我慢していたのですね。悪いことをしました)
一度だけ振り返りはしたが、すぐさま視線を前方に戻した。
(女官に頼んで厨房を譲ってもらいましょう。お役目を終えたイシュチェルさんは体力を使い果たし、きっと疲労困憊しています。きっと夜にもお呼びが掛かるのだから、しっかり栄養を補給させてあげないと⋯⋯)
同情心と親切心は人一倍ある。これでもマリエールは教皇候補になっていた心優しい聖女だ。
「何を作りましょうか? 帝国は食材が豊富だから料理が楽しいです」
美味しい料理をイシュチェルに食べさせてあげたかった。幸いにして食材は使い放題だ。後宮の暮らしは清貧と無縁。奢侈で淫猥な花園。ここでの生活をマリエールは愉しんでいた。



