「――こんにちは。イマノルさん」
ルキディスは鍛冶職人イマノルの自宅を訪問していた。目的はサピナ小王国への職人招致である。
現在のサピナ小王国は職人が不足しており、工業力が乏しい。これは先代の国王が遊び呆けて、民力への投資を疎かにしたせいである。国内で製品を作れないとなると、外国からの輸入に頼らざるを得ない。
そういった状況を打破するためには国内の人材を育成しなければならない。ところが、サピナ小王国には教育制度すらなく、職人や学者などの知識層がいなかった。
革命が起こったときに、上流階級は国を捨てて国外へ逃げていったからだ。ルキディスの仕事は逃げた人材を連れ戻すこと。そして外国の職人をサピナ小王国へ移住させることであった。
高待遇を提示し、人材を引き抜こうとしている上手くいっていない。革命が起こったばかりの小国に移住するのはリスクが高いからだ。自国で地位を確立している成功者は誘いに応じてくれない
「ルキディス君か……」
イマノルはラドフィリア王国の王都に工房を持っている鍛冶屋だ。確かな腕を持つ鍛冶職人であり、サピナ小王国にとっては喉から手が出るほど欲しい人材だ。しかし、イマノルは引き抜ける見込みの薄い職人であった。
イマノルはラドフィリア王国での暮らしに困っていない。サピナ小王国に義理立てするような縁がある人物でもなかった。
――ついこの前まで、とりつくしまもなく誘いを断られていたが今は違う。
「例の話、考えてもらえたでしょうか……? 即断を求めているわけではありません。ですが、我が国としてはイマノルさんのような優秀な職人を一刻も早く招き、国力を回復させたいのです。イマノルさんは熟練の鍛冶職人であり、その技術を我が国も高く評価しています。ぜひともサピナ小王国に移住して、我が国を支える人材を育成してもらいたい」
「確認したい。治安の方はどうなんだ? 息子を危険な場所で生活させることはできない。ルキディス君が提示した条件は悪くない。土地と建物を無償で譲渡してくれるというのだからね。まさに破格だ。しかし、治安が悪いのなら移住は難しい。6歳の息子を置いていくわけにはいかない」
「王都の治安は安定しています。地方の農村では、まだ少し問題が残っていますが、それは獣人に対する迫害なのでヒュマ族純種であるイマノルさん達とは無縁だと思われます。荒れていると思われがちですが、王都の治安はラドフィリア王国と同水準です。イマノルさんに譲渡される予定の土地と物件は、過去に貴族が所有していた不動産です。建物の造りは保障します。ただし、20年はサピナ小王国に留まっていただきたい。これは譲れない条件です」
「それは分かっている。ただで土地と建物を貰えるなんて思っていないさ。おそらく競合相手がいないから大稼ぎできるだろう。ルキディス君が持ってきてくれた話はとても魅力的だよ。幼い息子がいなければ、私は迷うことなく新天地に行っていたさ」
「イマノルさんの心配はよく分かります。それなら、サピナ小王国の兵士を護衛として側に置くというのはどうですか? 王国兵がイマノルさんと家族をお守りします」
「……そんなことができるのか? 私は単なる鍛冶職人でしかないんだぞ?」
「我が国では、その単なる鍛冶職人が貴族よりも希少です。金脈に等しい価値があります。技術者を養育できる人材が、我が国にはいないのです。護衛を付けるくらいは当然です。今後の業績次第で貴族になることだって可能ですよ。我が国の発展に貢献していただけるのなら、実りある生活と未来を保障します」
ルキディスの提案に、イマノルは心を動かされた。
至れり尽くせりの待遇である。しかし、以前のイマノルなら招致の話に耳を傾けたりはしなかっただろう。イマノルが乗る気になっているかといえば、彼自身が今の生活をリセットしたかったからだ。
――つい数日前まで、イマノルにはカトリーナという美しい妻がいた。
カトリーナと結婚し、6年前に息子ができてからは、家族のために無我夢中で働いた。だが、それがいけなかったのかもしれない。愛していた妻カトリーナは、夫と子供を捨てて駆け落ちしてしまった。
しかも、妻を掻っ攫っていったのは、イマノルが可愛がっていた弟子のサムである。イマノルは愛妻と愛弟子に裏切られて失意の真っ只中であった。
妻と弟子が駆け落ちしたことは周知の事実となっている。気を使って声をかけてくれる同業者もいたが、酒場で笑い者にされていることをイマノルは知っていた。
事あるごとに妻の美しさを自慢して、愛妻家を自負していたイマノルである。妻と弟子の駆け落ちは、人生の全てを狂わせる出来事だった。
息子のジェイクがいなければ、自殺してしまっていたかもしれない。そんなときに、サピナ小王国への移住を持ちかけてきたのが、ルキディスという青年だった。
イマノルは、ここで暮らしていく自信がなかった。全ての人間関係をリセットしたいと思っているときに、ルキディスは魅力溢れる話を持ちかけてきたのだ。
「分かった。それなら荷物をまとめるよ。サピナ小王国で再スタートをするのは悪くない」
「ありがとうございます。感謝します」
「いや、私の方こそルキディス君に感謝しないといけない。君が話を持ち込んでくれなかったら、私は酒浸りになって、生きることを諦めていたかもしれない。ルキディス君は私に機会をくれた。感謝するよ」
「正式な手続きはサピナ小王国の大使館で行われます。俺の名前を出せばすぐに話が通ります。アルベルト大使とは、会ったことがありますよね? 職人組合の集まりで、俺のとなりに居た白ヒゲの男性がサピナ小王国の大使です」
イマノルは、職人組合の集まりでルキディスと何度か顔を会わせていた。
サピナ小王国からやってきたルキディスとアルベルト大使は、組合の集まりによく参加しており、その際に片っ端から勧誘をかけていたので、職人達の間で有名だった。
待遇には惹かれるものの、今の生活を捨てるのは難しいと断る職人が大半であったが、よく話題にあがっていた。
最初に話を持ちかけられたとき、イマノルも他の職人と同じように断った。家族がいるから、今の生活環境を一変させるのは難しいと首を横に振った。
一度誘いを蹴ったイマノルに、ルキディスが再び誘いをかけてきたのは、どこかで妻に逃げられた話を聞いたからだろう。気を使ってイマノルの妻が弟子と駆け落ちしたことに触れこそしないが、知らないなんてことはありえない。
「アルベルト大使なら知っているよ。ルキディス君と一緒に招致活動をしていた人だからね。職人の間では君たちは有名だ。しかし、ルキディス君はどういう立場なんだい? 外交官というわけではないんだろう……?」
「国費で留学している学徒ということになっています。実際は単なる使いっ走りですよ。放浪学徒という名目で、サピナ小王国が求める人材を集めているだけです」
「使い走りというが、君はアベルト大使と親しそうにしていたが……?」
「アベルト大使は革命の同士です。1年前に力を合わせて、愚王の圧政から国を開放しました。心から信頼できる仲間です。なにせ革命が失敗していれば、一緒に処刑されていた仲ですからね」
説明を聞いたイマノルは納得する。
革命によってサピナ小王国の秩序は崩れた。階級は崩壊して、年齢や身分に関係無く優秀な人間が国の中枢に入り込んでいる。放浪学徒を名乗る青年が大使の代理を務め、交渉にあたれるのもそのおかげだ。
役職すら持たない民間人が、国家に属する兵士を自由に差配する権利などありえない。けれど、革命後の混乱期であれば、そういうこともありえる。イマノルは勝手にそう解釈した。
――実際のところ、ルキディスは裏でサピナ小王国の全てを支配している魔物だ。
サピナ小王国の兵士を護衛として付けるなんてことは、簡単にできる。その気になれば、大使の首をすげ替えることも可能であった。
「それでは、失礼させていただきます。次は旅立ちのときに会いましょう」
ルキディスが去った後、イマノルは引越しの準備に取り掛かる。自分や子供の荷物はすぐにまとめることができた。しかし、妻が置いていった荷物は扱いに困った。
――不可思議なことに妻は全ての私物を置いて出ていった。
何もかも捨て去って、弟子と一緒にどこかへ消えてしまった。気に入っていた服だとか、高価な装飾品すら家に置いていった。普通なら持っていくような気もするが、妻に逃げられたイマノルは深く考えなかった。
考えたところで、カトリーナが夫と子供を捨てた事実は変わらないからだ。
「パパ……? ママは一緒じゃないの? どうしてママは家に帰ってこないの……?」
状況を理解しきていない幼い息子が父親に訊ねる。イマノルは複雑な心境で答えた。
「ママとパパは別々に暮らすことになったんだ。これからはパパとサピナ小王国で暮らそう。引っ越した先の家は、今の家よりも大きくて立派だぞ。なんせ、元々は貴族が住んでいた御屋敷らしいからな」
妻と最後に会話したのは息子だ。
カトリーナはイマノルには何も告げずに出ていってしまった。6歳の息子に対して、家庭を捨てて新しい人生を歩むと言い放って、母親であることを放棄した。夫に対しては1枚の手紙だけを残していった。
『息子はママがおかしかった』と言っていたが、そう思うのも無理はない。今まで自分を愛してくれていたはずの母親がいきなり、絶縁を突きつけたのだ。
夫宛ての手紙には、カトリーナの本音が書かれていた。それを読んだときのイマノルは、本気で自殺を考えた。自分を裏切った妻への怒りであるとか、家庭を崩壊させた弟子への復讐心よりも、絶望のほうが深かった。
思い止まったのは、息子ジェイクのおかげだ。
「――これからは2人で生きていくぞ」
まだ喪失感は埋められない。しかし、息子のために奮起しなければならなかった。瞳を潤めたイマノルは、たった1人の家族を強く抱きしめた。
父親に抱擁された息子は、6歳児ながら二度と母親に会えないのだと理解した。
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ジュリエッタは狐の耳と尻尾を持つフォクス族の獣人だ。
彼女は幼いころにサピナ小王国から売られてラドフィリア王国に移住した。子供の頃は酒場の下女となり、厨房で働いていた。そして16歳になったとき、買い主はジュリエッタを初物の娼婦として売りに出した。
ラドフィリア王国は国法で16歳未満の売春が固く禁じられている。そのため女奴隷は16歳になってから娼館や貴族に売られることが多い。
ジュリエッタをはいずれ娼婦に身を落とすと知っていた。人生を悲観してはいない。もっと酷い目に遭った同族達を知っていたからだ。それでも、せめて格好いい貴族の男に処女を買ってほしいと祈っていた。
その願いを創造主が聞き入れてくれたのか、競りにかけられたジュリエッタを落札したのは黒髪の美しい青年だった。その青年はジュリエッタの身柄そのものを丸ごと買った。
どこかの貴族か、裕福な商人の息子だとジュリエッタは思った。おそらく愛人として飼われることになるが、娼館で働くよりは待遇がいいに決まってる。
ジュリエッタに不満はなかった。むしろ大喜びした。しかし、彼女の幸運はそれで終わらなかった。
「君の奴隷籍を抜いておいた。今日から君は自由民だ。おめでとう。ジュリエッタ」
「え? あの……どういう? それと、ここはどこなのですか?」
いきなりの奴隷解放宣告にジュリエッタは戸惑った。そもそも自分がどこに連れてこられたのかさえ、理解が及んでいない。
「ここはサピナ小王国の大使館だ。別館だから外交官達はあまり使っていない。王族が遊びに来たときの別荘だ。小さな国だというのに、見栄っ張りだから無駄に豪奢だろう。言うなれば、愚かな先王の遺産だよ」
黒髪の青年はルキディスと名乗った。
「君の経歴を調べた。ジュリエッタは幼い頃にサピナ小王国から売られた奴隷だった。だから、買い戻したんだ。今日から君は自由だ。望むのなら、ラドフィリア王国で暮らすこともできるし、祖国に戻ることもできる。できればサピナ小王国に戻ってほしいが強要はしない」
「状況がよく分かりません……」
「ははははは! 失礼、君が混乱するのも無理はない。1年前にサピナ小王国で革命が起こったのは知っているかな? 愚劣な先王が倒され、新王の下で新たな国造りが始まっている。慈悲深い新王は売り飛ばされた国民を買い戻し、祖国に連れ戻している。ジュリエッタを買った資金の出所は国庫だ。俺に感謝する必要はない。これは帰国事業の一環だ。しかし、国に感謝する必要もない。これは罪滅ぼしだ。国民を売り飛ばした国の罪は重い。せめてもの償いだと思ってくれ」
「そう……なんですか……」
自由を手に入れたのは嬉しい。嬉しいのだが、なんだか少し残念だった。美青年の貴族に飼われて、爛れた愛人生活を妄想してしまっていた。
「ニャハハハハは! もしかして、ルキディスと『にゃんにゃん』出来るかもって期待しちゃったのニャ?」
猫耳のフェリス族はジュリエッタの内心を見抜いていた。
「失礼だぞ。冷やかしはやめろ。ユファ」
ルキディスはユファの頭部から生えている猫耳を引っ張った。
内心を指摘されたジュリエッタは赤面している。競りでルキディスに買われてから、とんでもない妄想を膨らませていたのは事実であった。心優しい貴族が売られていた少女に一目惚れした。そんなことを考えてしまっていたのだ。
「いきなり自由と言われても困惑するだろうな。どうしていいか分からないなら、まずはサピナ小王国に帰国するといい。帰国者向けに仕事を用意してある。まともな仕事だから安心してくれ。だが、どうしても娼婦をやりたいというのなら、できなくはない。国の審査が必要だがな。サピナ小王国では政府の許可がないと売春ができないようになった。無許可で売春をしていると逮捕される。その点だけは気を付けてくれ。何か質問はあるか?」
「なんだか夢みたいです。奴隷から解放されるなんて、ありえないと思ってました……」
「僕もよく分かるニャ。解放奴隷は辛いのニャ。命令された通りに生きてればよかったのに、これからはそうはいかないニャ」
「帰国するまでの間、この別館に滞在してくれ。ラドフィリア王国で鍛冶屋をしている親子がサピナ小王国へ移住する。彼が引越しの準備を終えたら、一緒の馬車でサピナ小王国に行ってもらう予定だ。それとも君はラドフィリア王国に残るか?」
「いいえ。そういうことなら、故郷に帰ります。ひょっとしたら生き別れた母親と再会できるかもしれませんし……」
「そうか。祖国で母親と会えることを祈っているよ」
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――時は少し遡る。
これから明かされる話は、ルキディスが狐の獣人ジュリエッタを奴隷競売で競り落とす前、鍛冶職人イマノルの妻カトリーナが家族を捨てて駆け落ちする以前の出来事である。
その日、ルキディスの住んでいる家では、身重のシルヴィアが口を使って奉仕に励んでいた。
慣れない舌使いで口内の肉棒に舌を絡ませる。彼女の口元は唾液で濡れていた。シルヴィアの口に肉棒が入る度に、ジュポッ、ジュポッ!と卑猥な淫音を奏でられる。
フェラをしている最中に射精をされるとシルヴィアの喉に熱い精液があたり、そのまま胃の中に落ちていく。冥王の精液は高濃度の魔素が含まれており、眷族にとって最高のご馳走だ。
ルキディスの股間に頭を沈め、シルヴィアは一心不乱にしゃぶり続ける。眷族化したシルヴィアは冥王の精液に夢中となっていた。
「職人不足はなんとかしたい。今までは国民を奴隷として外国に売り払い、国外から製品を買っていた。だが、これからは自国内で経済を回したい」
悩みの種は両手で数え切れないほどあった。その一つが外貨の獲得手段だ。サピナ小王国には輸出できる品が奴隷以外になかった。国内産業を育成しようにも、工業力の基礎となる職人が不足している。育成を助援しているが、師弟制度が機能していなかった。
「職人というのは農民に次いで保守的な生き物だ。郷土から離れない農民と同じく、職人も自分の工房から離れたいとは思わない。引き抜きは難航しそうだ……。ラドフィリア王国と職人組合から許可をもらったが、誘いに応じる職人が少ないのを見越しているからに違いない。革命が起こったばかりの国にやってくる物好きはいないか……」
大使館から送られてきた資料に目を通しながら、ルキディスは真面目な話をしていた。
身重の美女が口を使って陰茎を扱いているというのに、気にせずに仕事のことで頭を悩ませている。今のシルヴィアは冥王の眷族だ。
女としての矜持に火が付いて、冥王の意識を自分に向けさせようとするが、悲しいことに経験値が足りなすぎた。
シルヴィアの技量では淫事の主導権を奪えない。ルキディスは飢えているシルヴィアを満足させてるため、口内に射精してやった。シルヴィアは放たれた精液を喉を鳴らしながら飲み干す。
「高待遇だけじゃ難しいニャ~。今の生活を捨てるのは勇気がいるニャ。だとするにゃらばぁ! 面白い方法が一つあるニャ!!」
「今の生活が壊れれば、新天地にきてくれる、か?」
「ニャ~。僕が言う前に言われちゃったニャ……!高待遇でも来ない人間は今の生活を失うのを恐れてるニャ。それなら守る生活ぶっ壊してしまえばいいのニャ! 自暴自棄になってくれれば、こっちの意のままに動いてくれるはずニャ!!」
「火事を起こして職人たちの仕事場を破壊するのですか? 事故死に見せかけて親類縁者を皆殺しにするということならお任せください」
「まてまて! シェリオン! なぜ、そんな物騒な発想が出てくる? そんなことはしない。火事を起こすのは危険すぎる。下手をすると沢山の人間が死んでしまうじゃないか」
「んにゃ? 僕らは人間を滅ぼす魔物のはずニャ。魔物の王様が人間の心配なんておかしな話なのニャ〜」
「人類は必ず滅ぼす。だが、物事には順序がある。ユファは分かってて言っているだろ?」
「放火だとか皆殺しだとか、そういう大きな事件になったら憲兵団が入念な捜査をするニャ。そこから僕達の存在が気付かれちゃったら、これまでの苦労が水の泡ニャ。それは避けたいところ」
「まったくだ。そもそも仕事場を失った職人がサピナ小王国に来てくれるとも思わない。重要なのは動機だ。ラドフィリア王国にいる意味をなくさせたい。そうだな、たとえば――」
ルキディスは、シルヴィアの動きが止まっているのに気づき、視線を下ろした。
ペニスを咥えたシルヴィアが小動物のような瞳で見上げていた。もう我慢できないと訴えかけている。気丈だった女警備兵シルヴィアは、もうこの世にいない。媚びる雌の顔だった。
ルキディスは考えるのに夢中で射精を疎かにしていたことを思い出す。見上げてくるシルヴィアが可愛かったので、望みどおりに口内に精子をぶちまける。
(あっ、あっぁん♥ 熱くて美味しいのがきたぁぁっ♥)
放たれた精液は、シルヴィアの口内を汚し、胃の中に流れ落ちる。シルヴィアは、一滴も逃さないように喉を震わせ、ごっくん♪と飲み込んだ。
(かすかに甘くてドロっとしてる……♥︎ これが冥王の子種……♥ 病み付きになっちゃう……♥ 今までに飲んだどんな飲み物より美味しいんだものっ♥)
シルヴィアがペニスを咥えてからもう1時間以上が経っている。射精の回数はこれで4回目だが、まだまだ飲み足りなかった。
注がれた精液は、シルヴィアの中で吸収されて、シルヴィアの眷族化を促進させている。冥王の雌となったシルヴィアは主への性奉仕で至上の喜びを感じていた。
絶頂に達しているシルヴィアをよそに、ルキディスは資料と睨み合いを続ける。
「イマノル・アーケン。王都で評判の鍛冶職人、愛妻家として有名、妻のカトリーナは年下の美人、6年前に息子のジェイクが誕生してからも仕事にのめり込んでいる。最近サムという弟子を取ったので、招致に応じる見込みは無し……。だが、ぜひとも引き抜きたい。この鍛冶職人はサピナ小王国が求めている人材だ」
ルキディスは鍛冶職人イマノル・アーケンの資料を握り締める。つい先日も職人組合で誘いをかけた。しかし、イマノルは弟子を取ったことや、王都での生活を妻が気に入っていると理由を並べ断ってきた。
そうであるならば、妻や弟子がいなくなれば、この男はどう動くであろうか?
「一石二鳥だな。眷族作りと職人招致を一度にできる」
――冥王は標的を定めた。
娼婦で眷族は作れなかったが、警備兵は眷族となった。ならば、人妻は眷族となり得るだろうか。試してみれば分かることだ。
今のところ眷族となった5人は全員が処女だ。多種多様な雌で試さなければ、眷族化の条件を見つけることはできない。
「娼婦の次は子持ちの人妻ですか?」
「にゃはっ! にゃはははっ! 面白くなりそうなのニャ! 人妻を寝取って家庭を大崩壊させるのニャ! 心が躍るのニャ〜♥︎」
カトリーナが眷族化すれば、ユファの提唱する巨乳処女説は否定される。
サピナ小王国の統治を任せているサロメに5人目の眷族が出来たことを手紙で報告していた。その手紙で巨乳処女説についても一応書いておいた。しかし、返ってきた手紙でユファに毒されていると遠回しに批判されてしまった。
非処女を眷族化できなければ、巨乳処女説が定説化してしまう。
「――美人な若妻と聞いているが、さてどんな女かな?」
ルキディスは、新たに眷族となったシルヴィアの頬を撫でてやった。
シルヴィアの子宮は魔物を産めるように変化を終えた。今は胎内で冥王の子を育ている最中だ。反抗的な態度を装っているが、セックスのときは本心を隠せない。
「シルヴィアのように眷族となってくれればいいが、はたしてどうなるか。とても楽しみだ」
シルヴィアは従順な眷族となり、冥王の子を孕んだ雌の魔物に生まれ変わった。
冥王の使命は、人間の雌を犯して魔物化させ、人類を滅亡に追いやることだ。人類の天敵であり続けることこそ、創造主が冥王に与えた役割である。