真っ裸のベルゼフリートは、広々としたキングサイズのベッドに座り込んだ。
「えっと。どこだっけ? ここ?」
寝具の肌触りや匂い、豪華絢爛な装飾に見覚えのあった。しかし、すぐには思い出せない。自分の不確かな記憶がもどかしい。
「うわぁ。悪趣味な絵ばっかり飾ってる⋯⋯! 誰の部屋ってわけでもないんだろうけどさ。これはちょっと感性を疑うよ」
寝室の壁には額縁入りの大きな絵画が飾られている。金髪の少年が城門で首を吊っていた。青年と子供の間くらいの年頃。ベルゼフリートより年上だろう。絞首刑で死体が晒されている光景が描かれている。
「あぁ。これって⋯⋯」
睨みつけられた気がして、ベルゼフリートは押し黙った。
他の絵画に視線を移す。怒り狂った黄金髪の美少女が玉座を破壊している。腹部はぽっこりと膨らみ、望まぬ妊娠を遂げた少女の激昂が伝わってきた。
「ってことは、こっちの人は⋯⋯」
もう一枚の絵画は、壮年の男が頭を抱えて叫んでいる。泣いているのか、怒っているのか、狂っているのか、判断はつかなかった。心身の疲労困憊が滲み出ている。王冠を投げ捨てていた。
ベルゼフリートに向けられた凝視は、罪人を咎める目付きだった。
「君は僕が憎い? だろうね」
なぜか恐怖よりも対抗心が勝った。三枚の絵画は同情に値する。しかし、敗者の嫉みは見苦しい。人生の選択を誤った結果、与えられた幸福を失った王家の人間だ。
恨めしげに睨めつけてくる壮年の男には思うところがあった。
戦争の結果は国力差だ。メガラニカ帝国の勝利だとしても、それはベルゼフリート自身の力ではない。戦場で命を賭けて戦った将兵の功績だ。しかし、隣国の女王を奪ったのはベルゼフリートが誇れる個人的な勝利である。
「悔しければ奪い返せばいいじゃん。僕を選んだのはセラフィーナだ」
子供を産めばセラフィーナは用済みだった。子供を産まずとも、娘のヴィクトリカに役割を明け渡し、舞台から退場する選択肢はあった。売国女王と罵られたくなければ、辱めを受けた女王として死ぬ結末を選べばよかった。
「セラフィーナは僕を愛したんだ。僕の女にした」
セラフィーナはメガラニカ皇帝の愛妾となる道を進んだ。生まれ育った祖国への愛国心、民衆から敬愛、二十年を共に過ごした愛夫、腹を痛めて産んだ愛する娘と息子。女王セラフィーナが今までの人生で築き上げた愛情は、ほんの一年で幼帝ベルゼフリートが負かしてしまった。
「ああ。なるほどね。また、白月王城ってわけだ。やっと分かった。ここはセラフィーナの寝室だ」
アルテナ王国の白月王城にある寝室だと思い出す。国王夫妻の閨でベルゼフリートはセラフィーナを孕ませた。女を無理やり犯したのは初めてだった。普段はどちらかといえば、襲われる側だった。
求めれば女仙は悦んでくれる。だが、初対面のセラフィーナはベルゼフリートを拒絶した。
「私を娶ってくださった今はベルゼフリート陛下の寝室ですわ。国王と女王が番う愛の巣。私が愛する唯一の殿方になられたのですから⋯⋯♥︎」
漆黒の喪服姿に身を包んだセラフィーナが現われる。ベルゼフリートを背後からギュッと抱きしめた。柔らかな爆乳が背中で弾む。金色に輝く絹髪が垂れかかった。
「セラフィーナはいつからいたの? っていうか本物?」
「仮に偽物だったら、そう言うでしょうか?」
「だよね。まあいいや。本物ってことにしよう。分かるなら教えて。ここは僕の精神が創りだした心象世界? 前にレヴェチェリナの妖術で迷い込んだ変な世界。あれと同じ気がするんだ」
「〈反魂妖胎の祭礼〉の反対術式ですわ。宝物庫には先帝ミーシャ陛下が残した〈反魂聖胎の祭礼〉の儀式場があったのです。私とウィルヘルミナ閣下で、奪われた破壊者ルティヤの荒魂を取り返しておりますわ」
「じゃあ、ウィルヘルミナは? さっき助けてくれたんだけど、どこかに行ってしまった」
「楔役の役割分担ですわ」
「分担?」
「宰相閣下には過去を担当していただきました。私は現在を引き継いでおりますわ」
「過去⋯⋯。それで、あんなのを見せられたわけか」
過去との決別。成長を与えてくれたのはウィルヘルミナだ。淫魔の黒翼でここまで運ばれた理由がよく分かった。ベルゼフリートをメガラニカ帝国の皇帝に即位させたのは帝国宰相ウィルヘルミナなのだ。
「過去を抜け出し、現在を乗り越えれば、未来に辿り着ける。楔役の私達はベルゼフリート陛下をお導きいたしますわ」
「目の前にある光景が僕の現在? セラフィーナの元家族に囲まれてるよ。すごく落ち着かないね」
三枚の絵画はベルゼフリートだけでなく、セラフィーナにも憎悪を放っていった。
「息子のリュート、娘のヴィクトリカ、元夫のガイゼフ⋯⋯。かつての私であったなら動揺し、取り乱していましたことでしょう。私には陛下のお気持ちが分かりますわ」
「自分がどんな気持ちなんか分からない。セラフィーナには僕が何を感じているか分かるの?」
「陛下は罪悪感に苛まれているのではございませんか?」
「罪悪感? あっはははははは。面白い。善良な良い子ちゃんだと思う? この僕がさ」
ベルゼフリートは悪人顔の笑みをつくった。セラフィーナの喪服ドレスを開けさせる。豊満な乳房を露出させ、乱暴に揉みしだく。誰にも文句は言わせない。女王の肉体は自分の所有物だと誇示した。
「露悪的な振る舞いは良心の呵責ですわ。けれど、陛下は普通の御方とは違う。大国の頂点に君臨する大帝は、常人と同じ道徳では生きていけませんわ」
セラフィーナは身体を密着させる。ベルゼフリートの細くて小さい身体を抱きしめた。爆乳の谷間に誘う。優しい舌使いの愛撫で乳房を愛でてもらう。
「セラフィーナは僕の女。そうだよね?」
桃色の乳首をベルゼフリートが咥える。蜜のように甘い母乳を吸う。セラフィーナの淫裂は愛液でビショ濡れだった。
「はい。もちろんですわ♥︎ 私をこの場で抱いてくださいませ♥︎ 身も心も皇帝陛下にィ♥︎ 御捧げいたしましたわ♥︎ さぁ、陛下♥︎」
「レヴェチェリナにやられたのと真逆なんだね。じゃあ、セラフィーナとここでセックスすればいいわけ?」
ベルゼフリートとセラフィーナは、絵画に描かれた者達の怒号を無視する。背徳が幼帝と女王を燃え上がらせる薪となった。
「はい♥︎ 破壊者の荒ぶる魂を正しき器にお導きいたしますわ♥︎」
薄布のパンティを脱がせる。愛液が染みた下着をベルゼフリートはガイゼフの絵画に投げ捨てた。
心象世界はベルゼフリートの精神を反映している。様々な感情が入り乱れる。セラフィーナが指摘した罪悪感や良心の呵責、そしてガイゼフに向けた敵意と対抗心だった。
ロングスカートを捲り上げた。幼帝の猛る巨根は、女王に淫穴に潜り込む。挿入までの流れに淀みはない。巧みな腰使いだった。
「あぁっ♥︎ あぁっ♥︎ んぁっ⋯⋯♥︎」
「セラフィーナはもう僕じゃないと満足できないんだよね?」
「はいっ♥︎ 陛下のオチンポだけぇ⋯⋯♥︎ 私を幸せにしてくれるのはメガラニカ帝国の皇帝陛下だけですわぁ♥︎」
額縁に囚われたガイセフに見せつける。極太オチンポで拡張された女王オマンコは、もはや粗チンの逸物で悦ばない。皇帝専用の性奴隷オマンコ。馬並の巨大な亀頭でガバガバにされた膣道をゴリゴリと突き進む。
「あぁっ♥︎ んぁっ♥︎ んひぃっ♥︎ おっ♥︎ んんおぉ~♥︎」
幼帝の逸物は貞淑な人妻を淫女に堕とす。後宮の女仙を悦ばせるために仕込まれた性技で、セラフィーナは悶え喘ぐ。自ら股間を突き上げて、オチンポの根元まで膣道に収めた。
力が漲ってくる。大妖女レヴェチェリナに引き抜かれた破壊者ルティヤの荒魂を手繰り寄せた。しかし、まだ足りない。深い昏睡状態のベルゼフリートを引っ張り上げるためにセラフィーナは囁いた。
「皇帝陛下⋯⋯♥︎ いいえ、私の愛しいご主人様♥︎ 私の可愛い子♥︎ ベルゼ♥︎ 私と共に未来を歩みましょう♥︎ まだまだ欲しがっているわ。我慢せず、もっと奪ってしまいましょう?」
「もっと奪う? 誰から?」
ベルゼフリートはセラフィーナに問う。
「帝国と中央諸国の争いはいつか再び起こるわ。バルカサロ王国やルテオン聖教国を滅ぼさねばならない。たとえ三皇后が戦争を望まずとも、強大化する帝国を看過できない」
「また戦争? 僕は嫌かな」
「ベルゼは優しい子ね。でも、避けられない戦いは受けて立つしかないわ。勝者は敗者から奪う。今回の出来事も同じ。大妖女レヴェチェリナは敗北した。だから、奪い返された」
「セラフィーナは僕に奪って欲しいの?」
「はい。私にはベルゼが飢えていると分かるのです」
「本当に欲しがっていいのかな?」
「満ち足りるまでお望みください♥︎ 私やロレンシアを簒奪したように、バルカサロ王国の王妃やルテオン聖教国の女教皇を支配すれば、陛下の飢えはきっと満たされますわ」
「面白いかもね。でもさ、それなら最初の攻略対象は、東アルテナ王国の女王ヴィクトリカじゃない?」
「あれは廃位した娘ですわ。女王を僭称している不届き者に過ぎません。陛下がガイゼフの娘を望まれるのは妬いてしまいますわ」
不機嫌になったセラフィーナは唇を尖らせた。
「半分はセラフィーナの血を引いているよ。アルテナ王家の母娘に性奉仕してもらう日が楽しみだ」
ベルゼフリートはセラフィーナの子宮にありったけの精子を解き放った。腰を押しつけて、妊娠済みの孕みオマンコに注ぎ込む。互いが肉悦を共有する。絶頂の共鳴が荒魂を鎮める。
「あぁっ♥︎ はぅっ♥︎ あぁぁ~♥︎ 穢れを禊ぎ祓いますわ♥︎」
溢れた穢れはセラフィーナの血肉に吸い取られ、身に宿す瘴気はより濃くなった。極楽の境地に昇ったベルゼフリートは、心象世界がゆっくり崩れていく様子を眺めていた。
五感が現実世界に引き戻される。金銀財宝が積み上がった宝物庫の照り返しに視界が眩む。〈反魂聖胎〉の術式陣が刻まれた床のうえで、ベルゼフリートはセラフィーナと交合していた。
昏睡状態にあったベルゼフリートは目覚めた。肉体に封じられた破壊者ルティヤの荒魂は以前よりも一段と強大になった。魔帝になっていた記憶が引き継がれていた。レヴェチェリナの胎内に宿っていた破壊帝の依代だった記憶も残っている。
(形は歪なのに器としての僕は強くなった。そもそも僕は歴代の皇帝と違う。必要であれば奪える。偉大な皇帝と讃えられた聖大帝や栄大帝のようにはなれない。きっと彼らが嫌悪する行為を僕はやれる。でも、破壊帝のように道を誤ったりはしない)
皇気の噴流を自在に操れる。大気が光り輝いた。女仙でなくとも一目でベルゼフリートが皇帝だと分かるだろう。
「皇帝陛下。愛妾ごときに誑かされてはなりません」
絶好調の皇帝を戒める者がいた。とても不機嫌な本妻が尻尾を絡ませてきた。
「あ⋯⋯えっと⋯⋯」
ベルゼフリートの視線が泳ぎ、射精の勢いが弱まる。セラフィーナは庇ってはくれなかった。確信犯であった。
「この耳で聞いていました」
心象世界での会話はウィルヘルミナに筒抜けだった。
「いや、その⋯⋯さ⋯⋯。バルカサロ王国の王妃やルテオン聖教国の女教皇は⋯⋯ダメだよね。でも、ヴィクトリカまでは可能性ある⋯⋯じゃん⋯⋯? 母娘⋯⋯と⋯⋯セックスは⋯⋯」
ウィルヘルミナは目を細める。
「外にいるレオンハルト元帥やカティア神官長とご相談いたしますか?」
「やめとく。⋯⋯お家に帰りたい。今ってどんな状況? 敵は倒した? 皆は大丈夫だよね?」
「終わりました。全員無事です。天空城アースガルズに帰りましょう」
「終わったんだ。⋯⋯あれ? 僕、寝てただけじゃん」
「こちらでは色々とありました。あとでご説明いたしますが、先帝の御力を借りるとは⋯⋯」
「先帝って?」
ベルゼフリートは意味が分からず首を傾げる。
「射精が一段落したら宝物庫から出ましょう。人工精霊によれば外で帝国元帥が暴れているそうです」
「え~。暴れてるってどういうこと? レオンハルトが乱心してるなら、ちょっと時間を空けようよ。ウィルヘルミナも抱いてあげるからさ。なんかさ、発散したい気分なんだ」
「はあ。そこまで言うのなら仕方がありません。六回だけですよ?」
「六回なんだ⋯⋯」
「私は皇后。本妻です」
性豪のウィルヘルミナは、しれっと五本指と尻尾の一本で六回を示す。
愛妾に良いところを奪われたのが、帝国宰相は気に入らなかったようだ。本妻の意地を存分に発揮し、ウィルヘルミナはベルゼフリートから精液を搾り尽くした。