「見られてるのが気になるの? 雰囲気がちょっと悪いもんね」
ベルゼフリートは抽挿の速度を緩めて、小さな声で訊いてきた。まるで悪戯の共犯者に囁きかけるような口調だ。
「いえ、そういうわけでは⋯⋯。ただ、何と言いますか。ハスキーさんが居心地悪そうに見えますわ」
面の皮が厚いあの警務女官に似つかわしくない。普段のハスキーであれば、皇帝のセックスを無遠慮に視姦している。「少しは慎みを覚えるべきだ」と妃達に陰口を囁かれても気に止めない。セラフィーナはハスキーの態度が解せない。
「くすくす⋯⋯っ! あれはね」
帝国宰相ウィルヘルミナすら煽る度胸の持ち主が、曇った表情を顕わしている。ベルゼフリートはその理由を教えてくれた。
「一緒にいるのがシャーゼロットだからだよ」
「⋯⋯そうなのですか?」
「うん。誰にでも苦手な相手がいるってことだね」
シャーゼロットは椅子に腰掛けて、武具の手入れをしていた。七姉妹の長女は皇帝と愛妾の情交に、まったく興味がない様子だ。
「面白いよね。あんなハスキーは滅多に見られない。シャーゼロットほうもね。くすくすっ! ああ、でもね、仲が悪いわけじゃない。微妙な関係。そこが面白い」
(仲が悪くない⋯⋯? 陛下はそうおっしゃるけれど、あの距離感は⋯⋯。良好な関係とは思えませんわ)
幼帝の意地悪な皮肉かと勘ぐる。だが、そんな裏の意味は込められていそうにない。ちょっと面白がっている様子だ。
「なぜなのですか⋯⋯?」
「う~ん。なんでだろ? ねぇ?」
その理由を教えてほしいと頼んでみるが、ベルゼフリートは男根に再装填した精子を解き放つ体勢に入っていた。セックスのほうに意識が集中している。
(あぁ♥︎ 残念です♥︎ この様子だと陛下は教えてくれそうにないわ⋯⋯♥︎)
ある種の誤魔化しだと分かった。幼帝は口が軽い。後宮の女仙達はそう思っている。ベルゼフリートは妃や側女、女官に見聞きした噂話を伝える。だが、幼皇の忌まわしき過去を知るセラフィーナは、ベルゼフリートの性根を知っていた。
――警戒心が強く、内面は疑り深い。自分に対する裏切りと詐謀を毛嫌いする少年。
本来のベルゼフリートは、他人の秘密や裏事情を言い触らさない。後宮の暮らしで多少は頭が回るようになったセラフィーナは思い至る。
――三皇后の思惑で皇帝は働かされているに違いない。
命じられた情報を伝播する伝書鳩。派閥で分断された後宮であっても、皇帝だけは誰とでも会えるし、話せる。一方的に情報を送り付けるのに、これほど適した存在はない。
(今のような緊急時でなければ、後宮の人間関係はよく知っておきたかったわ。ハスキーさんの苦手な人⋯⋯ね。アレキサンダー公爵家との因縁があるからでしょうか⋯⋯?)
すっかり馴染んでしまったが、後宮に移り住んで一年の時間しか経っていない。セラフィーナの知らぬ帝国の事情は山ほどあった。
(あんっ♥︎ んっ♥︎ 陛下はそろそろかしら⋯⋯? んっ♥︎ ああ♥︎ 出したがっていますわ♥︎ やっぱりっ♥︎ もう我慢できないのですね♥︎)
射精の前兆は感じ取れるようになった。膣襞に絡め取った肉棒が膨らみを強めた。
「フェラチオのご褒美がほしいよね? セラフィーナのオマンコに子胤をあげるっ!」
「あんっ♥︎ んっ♥︎ んんっ~~♥︎ 陛下っ♥︎ ご褒美をォ♥︎ くださいっ♥︎ 欲しいですわ♥︎」
黄金髪の美女は喘いだ。豊かに実った二つの乳房を尊顔に押し当てる。
(デッカい♥︎ 極太オチンポ♥︎ 私の膣内で悶えているっ♥︎ 可愛いっ♥︎ 私はまだ堪えられますわ♥︎ 陛下を先に射精させてしまいましょうっ♥︎ あぁ♥︎ 困ってるっ♥︎ でも、きっと陛下は我慢の限界⋯⋯♥︎ 私の淫乱オマンコに負けちゃうわ♥︎)
興奮状態のベルゼフリートは呼吸が乱れ、突き上げの勢いがさらに強まる。セラフィーナは膣を締めて、皇帝の子胤を搾る準備を整えた。
「はぁはぁ⋯⋯! セラフィーナ⋯⋯っ! 先に出していい? もう出したいっ!」
「よろしいのですよ♥︎ くふっ♥︎ さぁ♥︎ さぁ♥︎ 肉欲を解き放ってくださいっ♥︎」
「我慢するのが辛くなってきた。次はちゃんとセラフィーナもイかせてあげるからっ⋯⋯! 出すっ! 出ちゃう!」
「遠慮なくお注ぎくださいませっ♥︎ 皇帝陛下の貴き胤を私の胎にっ♥︎ あぁっ♥︎ んぁっ♥︎ ああぁっ⋯⋯♥︎」
ベルゼフリートから聞き出したい話は沢山ある。けれど、セラフィーナは好奇心よりも膣内射精の快楽を優先した。下腹の奥底で白濁液が飛び散る。熟した子壺は、幼い雄の精子で火照った。
「んぁっ♥︎ あぅ♥︎ あっ♥︎ あっ♥︎ あっ♥︎ ああああああああぁぁぁ~~♥︎」
セラフィーナは大口を開けて啼いた。艶めかしい淫叫が室内に響く。主君の男心を満足させるための歌声だ。
「ふぅ⋯⋯。はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯。セラフィーナの膣内⋯⋯。すごく暖かい」
放精中のベルゼフリートは、甘える仕草で乳房に頬ずりしている。母猫から離れない仔猫。恥じらいなく、抱き付いていた。
セラフィーナが絶頂の余韻に浸り、淫媚な笑みを浮かべていたそのときだった。
「宿を貸し切って正解でした。声が廊下に響いています。帝国元帥は繊細な心をお持ちなのですから、多少の気遣いはしてください」
お愉しみの真っ最中だったセラフィーナは、部屋に入ってきた人物を見て、上がりに上がっていた興が削がれてしまう。先ほどまでセラフィーナだけを見ていたベルゼフリートが、嬉しそうに顔をほころばせていた。
「ウィルヘルミナ! 今日は早かったね。お仕事は一段落したの?」
「ええ。届けてもらった処理は仕分けが終わりました。そういう陛下も今日はお早いのですね。射精は二回目ですか?」
皇后は種付けされている愛妾を一瞥する。喘ぎ声を漏らさぬように口を閉じる。睨まれていないが、視線が皮膚に突き刺さる錯覚を感じた。
「大当たり。いつもなんで分かるの? ひょっとして匂い? 一回目は口で抜いてもらったんだ。これが二回目だよ。正常位で中出し。こんな状況だけど、セラフィーナを孕ませていいんでしょ?」
「カティア神官長の見立てによれば、もうセラフィーナは身籠もっているかもしれません」
ウィルヘルミナは淡々と告げる。確定ではなかったが、帝都アヴァタールを出立してから、その兆候は肉体に現れていた。初期の妊娠症状か、単に整理不純に陥っているか。診断したカティアは明言を避けた。
「そうなの?」
「はいっ♥︎ 妊娠しているかもしれないと⋯⋯♥︎ カティア神官長に告げられましたわ♥︎」
「男の子が欲しいんだっけ? まあ、女の子だったら、また孕ませてあげる」
今回の旅が無事に終わる前提で、ベルゼフリートは話していた。前向きなのは良い傾向である。だが、仕事を片付けてきた正妻の前で、妾に膣内射精をする夫は、最悪の部類だろう。
「ハスキーは休憩に入りなさい。レギンフォードが身辺警護を引き継ぎます」
ウィルヘルミナの背後には三女のレギンフォードが控えていた。軍服を舞台衣装のように着こなす麗人は幼い皇帝に一礼する。
レオンハルトやカティアは自分の身を自分で守れる。護衛は不要だ。しかし、ウィルヘルミナには護衛が必要だった。当主になる以前はナイトレイ公爵家の騎士団長に就いていたが、所詮は名誉職。剣の腕前は儀礼で必要とされる程度であった。ただし、寝台の上での戦いであれば話は別だ。
セラフィーナは内心で不満を抱きつつも、現れたウィルヘルミナに伽役を譲ろうとした。
「そのままで結構です。横取りしたりはしません」
正妃の余裕を見せつける。ウィルヘルミナは寝台に腰を下ろした。
媚尻の重みでマットレスが深く沈む。男を拐かすウィルヘルミナの肉付きは、美艶の極致と讃えられたセラフィーナに匹敵する。いや、凌駕しているからこそ、対抗心を抱いてしまうのだろう。