2024年 12月5日 木曜日

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【124話】宝物庫での自慰 賢妃ローデリカの嗜み

NOVEL亡国の女王セラフィーナ【124話】宝物庫での自慰 賢妃ローデリカの嗜み

 

 セラフィーナが出産するまでの間、自由時間を与えられたベルゼフリートは、自身の所有物となった白月王城を探索していた。

「せっかく外遊してるんだ。面白いものが沢山ある。天空城にいるなんて損してるよ。ユイファンやネルティとかも降りてくればいいのに」

 己の妻であり、アルテナ王国の女王でもあるセラフィーナのお墨付きを得て、ベルゼフリートは宝物庫に踏み入った。

 山積みとなった金銀財宝をひっくり返し、興味を惹かれた品を手に取る。しばらくすると、すぐ別の品に目移りして、ふらふらと駆けていく。天真爛漫な少年の笑顔がそこにはあった。

「このあたりは空っぽ。もう運び出されちゃったか」

 アルテナ王家が溜め込んだ宝物のなかで、極めて重要な価値を持つ品は戦後直後に帝国軍が差し押さえた。現在、差押物の管理は財務女官が行っている。

 現在の宝物庫に残された品々は金銭的価値のある金銀や宝石、美術品だけだった。

 ベルゼフリートは巨像の前で足を止めた。

「すごい。黄金の彫像だ。これは蛇だよね? なんで角が生えてるんだろ? そういう蛇っているの?」

 幼き皇帝の純朴な疑問に答えたのは王妃ローデリカであった。

「陛下。これは龍です。覇龍ナーガラジャ。往古の昔、旧世界の大天を支配していたとされる伝説上の生物です」

 出産間近のセラフィーナを連れ回すわけにはいかず、高等弁務官として王都ムーンホワイトの占領統治を担ってきたローデリカが宝物庫の案内人に選ばれた。

「伝説って?」

「世界が開闢する以前の伝承です。ほとんど迷信のようなものですね」

「ふーん。じゃあ、実際にはいないの?」

「存在しないと言われています。化石が見つかったという噂を耳にしますが、本物かどうかは疑わしい品ばかりです。言い伝えによれば、半蛇娘ヒュギエイアは覇龍ナーガラジャの末裔と聞きます」

「そっか。アデライドの遠い祖先⋯⋯。通りで恐ろしい角が生えてるわけだ」

「かもしれませんね。天の龍が怒ると激しい雷雨になるそうです」

「この金ピカの彫像って値打ちものかな? 僕の城に飾ってもいい?」

「帝城ペンタグラムにですか? 女官の管轄ですので、私の口からはなんとも⋯⋯。安全な代物と確認できれば、陛下の私室に置けるかもしれません」

 ローデリカは薄らと笑みを浮かべた。

「ヘルガ・ケーデンバウアー王妃の魔術発明品であれば、確実に持ち込み不可ですが、これは普通の置物に見えます。勝手に動き出したりはしないでしょう。以前、騒動を起こしたマッサージ器と違って」

「⋯⋯触手型マッサージ器は危険なものじゃなかったよ。安全性に問題はなかった」

「女官総長をはじめ、警務女官の大多数はそう思われなかったようですよ」

「あの一件に関して、僕はヘルガの肩を持つよ」

 お気に入りの品だったが、警務女官は触手がベルゼフリートの首を絞めて、絞殺しかねないと廃棄してしまった。その際にちょっとした事故が起こり、宮廷で笑い話になったのだ。

「暴走した触手と警務女官の取っ組み合いはさぞかし笑えたでしょう」

「ハスキーに斬り伏されちゃったけどね。前立腺マッサージモードになってただけなのにさ」

「もしこの置物が動くのなら、龍と戦う警務女官を見てみたい気もしますね。さぞかし素晴らしい戦いぶりを見せてくれるはずです。なにせ現在の警務女官長は見世物で勇名を馳せた逸材ですし」

 背後にいる警務女官は、ローデリカの揶揄を無視した。

「本当に頼もしい限りです」

 ベルゼフリートが暮らす帝城ペンタグラムは女官達の牙城だった。正当な理由があれば、王妃の出入りを禁止する権限が女官に与えられていた。

 どの派閥に属する王妃であれ、女官とは対立混じりの緊張関係にあった。

「うーん。どうしようかなぁ。見た目は格好いいけど、ちょっと大きい」

 しばらく逡巡していたが、ベルゼフリートは黄金龍の置物を私室に置くのは、良いアイデアだと思わなくなった。

「やめておく。これはいいかな。ちょっと大きすぎる」

 何日かして見飽きたとき、無駄に細長い黄金龍は邪魔なオブジェになる気がした。

「そういえばローデリカの後任って決まったの? 僕達と帝国本土に帰るんでしょ? 赴任の期間、長かったね」

 アルテナ王国の戦後政策は、帝国元帥レオンハルトの軍政後、王妃ローデリカによる文官主導の統治に移管している。

「公表はされていない人事です。また口の軽い女官からお聞きになったのですか? 困ったものです」

「うん。朝にアデライドから聞いた。ローデリカはそろそろ天空城アースガルズに戻らなきゃいけないだろうって」

 ローデリカは優秀な為政者だったが、女仙の瘴気を宿しているため、アルテナ王国に長くは留まれない。そういった事情から、後任者の発表が間もなくなされるとベルゼフリートは聞かされていた。

 政務能力に秀でた宰相派の王妃が引き抜かれ、後任に据えられる。そうであろうとベルゼフリートは予想していた。

「後任にはグレイハンク伯爵が任命される予定です」

 ベルゼフリートはしばらく考え込み、首を傾げた。

「え? 誰それ? そんな貴族いた?」

 聞き慣れない名前だった。

 お飾りの皇帝とはいえ、有名な貴族家の名は頭に入っている。

 伯爵ともなれば、それなりの地位にある。少なくとも領地を持たぬ名ばかり貴族とは違うはずだ。しかし、ベルゼフリートはグレイハンク伯爵なる人物の名を耳にした覚えが全くなかった。

「陛下がご存知ないのも無理はありません。アルテナ王国の貴族です」

 ローデリカはグレイハンク伯爵の素性を軽く説明する。

「従順な手駒となった現地貴族を使って、代理統治する方向で進めております。実権は我々が握っていますので、いわゆる傀儡です。グレイハンク伯爵は賢すぎず、愚かすぎず、それでいて家畜犬のような凡夫です」

「そうなんだ。帝国の貴族じゃないなら知ってるはずがないや。どんな人? 綺麗?」

「グレイハンク伯爵は中年の男性です。四十代後半だったかと」

「⋯⋯ふーん」

 ベルゼフリートはすぐさまグレイハンク伯爵への関心を失った。

「当初はフォレスター辺境伯に打診しましたが、持病を理由に断られてしまいました」

「フォレスター辺境伯⋯⋯。んぅ? フォレスター? そっちはどこかで聞いたような⋯⋯?」

「ロレンシア・。陛下が可愛がっておられる赤毛の側女は、フォレスター辺境伯の令嬢です」

「女王や王妃に仕えてた女騎士だったもんね。良家の出身じゃないと務まらないか。すっかり忘れてた」

「フォレスター家はアルテナ王家に長年仕えてきた名家であり、指折りの大貴族です」

「ロレンシアの実家って、そんな立派な貴族なんだ。父親が今の当主?」

 フォレスター家は燃え上がる赤毛の一族に違いないとベルゼフリートは予想する。

 初対面時のロレンシアがそうであったように、勇猛果敢で誇り高い家柄であるはずだ。反帝国の眼差しを向ける赤毛の番犬。ベルゼフリートはそんな想像を浮かべた。

「はい。フォレスター辺境伯は、ロレンシアの実父です」

「そっちのほうが人選は良かったんじゃない? でも、病気の人を無理させちゃ駄目だもんね。ロレンシアは自分の父親が病気だって知ってるのかな? もうすぐ孫が産まれるのに。きっと初孫だよね?」

「そうだと記憶しております」

 フォレスター家はロレンシアの妊娠をどう受け取ったのかとベルゼフリートは考え込んだ。しかも、通常の妊娠ではなく、ショゴスの苗床胎となってしまった。

(ロレンシア⋯⋯。ちゃんと実家に連絡してたのかな?)

 ショゴス族に一定の理解があるメガラニカ帝国でさえ、借り腹で子を産ませる文化は忌避されがちだ。

 開明派の貴族として有名なケーデウバウアー侯爵領では、不可逆性の人体改造に指定し、禁止令が出されている。

「まさか病気の原因は心労? ロレンシア心配するあまりにとか? それだったら、なんか悪い気がしちゃうな」

「おそらく病気の件は任官を断る建前です」

「えー? 仕事が嫌だから仮病?」

「はい。フォレスター辺境伯は領地に引きこもり、出てこようとしません。病気療養と偽り、王都への召喚を拒否しています」

「ロレンシアとも会わないつもりなの? なんだか薄情だ。せっかく里帰りしてるのにさ」

「フォレスター辺境伯は、メガラニカ帝国に抵抗しないでしょう。しかしながら、恭順する意思も見せておりません」

「⋯⋯えっと、つまり?」

「我が国に取り込まれたロレンシアとも一定の距離を置き、様子見をしております」

「中立ってこと?」

「アルテナ王家を完全に見限ったわけではないでしょう。しかし、自身の領地を守る方向に切り替えたと判断しております。我々としても刺激をする気はありません。東側へ逃れた反帝国の勢力とも交流を絶っています」

「ロレンシアの実家だし、穏便に済ませておいてよ。今は僕の忠実な下僕だ。たくさん役に立ってくれた」

「宰相閣下には申し上げておきます」

 

 中立を貫こうとする貴族達に無用な干渉をするつもりはなかった。

 現当主のフォレスター辺境伯はいずれ老いて亡くなる。そのなったとき、フォレスター家を継ぐのはロレンシアが産んだベルゼフリートの子供達だ。あるいはロレンシア自身を当主に立ててしまってもいい。

 ベルゼフリートは再び宝探しに熱中し始めた。

 事前の下調べで危険物の確認は済ませていたが、何度か警務女官の制止が入った。

 好奇心に突き動かされるベルゼフリートは、気に入った財宝をユリアナの操る影に放り込んでいった。

 異能で影を操る異能持ちのユリアナは、暗器にも精通している。鑑定術式で判別し損なった危険物を見抜く知識を持っていた。

「⋯⋯⋯⋯」

「単なる万華鏡だと思うよ。ユリアナが覗いて確かめてみたら?」

 ユリアナはベルゼフリートが手に取ろうとした万華鏡らしき筒を差し押さえた。しばらく調べた後、問題ないと判断され、ベルゼフリートに手渡した。

「そういえばさ。ローデリカは昨日、夜遅くまでウィルヘルミナと話してたらしいね。何を話してたの?」

「それも女官からお聞きになったのですか?」

「聞いたのは帝国軍の兵士からだよ。寒い夜もずっと警備してくれてたんだ。だから、労いに行ったの。そのときに教えてもらった」

 メガラニカ帝国に安寧を齎す皇帝ベルゼフリートは崇拝対象だ。本来であれば一介の兵士と立ち話などしない。しかし、当の本人は気さくに話しかけ、そこらの兵士とも雑談してしまう。

「後任への引き継ぎですよ」

「本当かな?」

「⋯⋯⋯⋯本当ですとも」

 ローデリカは自分が指名された理由を悟った。ベルゼフリートは宝物庫で遊びたいと願ったが、警備面の問題を理由に警務女官は反対していた。

 本来なら三皇后も警務女官に同調する。ところが、ベルゼフリートの要望は、やけにすんなりと通った。

 裏の意図は透けて見える。真の支配者である三皇后が認めたからだ。

(三皇后が示し合わせたのですね。さて。どこまで陛下に話してよいものか⋯⋯)

 万華鏡を覗き込むベルゼフリートを眺める。

 この小さな少年に政治的な実権はない。しかし、性的な関係を持つ数百の女仙は、メガラニカ帝国の有力者達。皇帝に明かした話は宮廷で噂となる。

「宰相閣下を含め、私達は内政に注力すべきと考えております。陛下からお預かりしているメガラニカ帝国の繁栄を疎かにはできません」

「宰相府はよくやってると思うよ」

「我が国は急速に復興しております。それゆえに富の偏在など、いくつかの問題があります」

「商売は大切だもんね。⋯⋯そういえば、話は変わるけど、ドワーフ族と魔狩人からの陳情は聞いた?」

「ドワーフ族と魔狩人? いつもの旧帝都問題ですか?」

「うん、うん、それ。死恐帝時代の災禍で放棄を余儀なくされた廃都ヴィシュテルの復興問題。元冒険者の五人組がセラフィーナの側女になったのは聞いてる?」

「はい。一級冒険者ララノアが率いていた冒険者パーティーですね? 引退記事を帝都新聞で読みました」

「冒険者って魔狩人とも情報交換してるそうなんだ。直接ではないけど、ある意味での直訴かな。戦争が終わったなら、放置してる廃都ヴィシュテルを早いところ、どうにかしてほしい。そういう話を聞かされた。もちろん、非公式にね」

「帝国軍を動かすのなら、軍務省に一働きしてもらわねばなりませんね」

「またそんなことを言って。実質的にメガラニカ帝国を動かしてるのは宰相府だ。正確には帝国宰相ウィルヘルミナが決定権を握ってる」

「そのようなことはございませんよ。三皇后が束ねる評議会、民の代表者が集う国民議会。双方の議会によって我が国の政治は成り立っております」

「まあ、僕はお任せしてる立場でなんかできない。だから、自分の意見があるわけじゃないけどさ。そういう話を聞かされたってだけ」

 ベルゼフリートは婉曲に「命令されて喋っているよ」と述べている。

(軍務省ではなく、大神殿の意向⋯⋯? 陛下に命じているのは、神官長のカティア猊下かアストレティア王妃でしょうね。軍務省とは既に協議を進めている。このような牽制はしないはずです)

 旧帝都ヴィシュテルは廃都と呼ばれている。栄大帝の時代、繁栄を極めたメガラニカ帝国の中心地として発展したが、破壊帝から続く三代の災禍でついに滅びてしまった。

(帝都をアヴァタールに移して五〇〇年。今さらヴィシュテルを復興させての遷都は非現実的ですが⋯⋯)

 良からぬ噂は聞いていた。放棄したとはいえ、かつての帝都だ。災禍に見舞われた混乱期、持ち出せなかった宝物は数多くある。

 天空城が建造される以前、メガラニカ皇帝と女仙が暮らしていた帝嶺宮城ていれいきゅうじょうの宝物庫は封じられたままだ。

 英雄アレキサンダーによって死恐帝が鎮まった後も、廃都ヴィシュテルは危険地域のままだった。

 魔物が湧き、巣くっているのだ。そのせいで帝国元帥だった先代のケーデンバウアー侯爵が設置した機雷原は撤去されずに残されている。

「あとさ、これは別件のなんだけど、ヴィクトリカ王女が産む赤ちゃんはどうなるのかな?」

 次の質問は命令から段階が下がっていた。ローデリカの妃位は王妃。宰相派の上位王妃である。

(次は頼み事? ユイファン少将? いや、彼女は体調不良で離宮に伏せているはず。そうなるとセラフィーナの女王⋯⋯? ラヴァンドラ王妃の次は私ですか。節操のない人ですね)

 頼み事ならば下位者による働きかけを意味する。皇帝を介せば、上位の王妃とも手を組める。既に破約となったが、セラフィーナとラヴァンドラが取引を交わし、手を組んだのもベルゼフリートの仲立ちがあってこそだった。

「私も気に掛けております。産みの母親が誰であれ、陛下の御子であれば帝国で保護すべきと、昨夜も宰相閣下に進言いたしました」

「⋯⋯でも、却下されたでしょ?」

「ええ、まあ」

「嫌いだもんね。仕方ない」

「⋯⋯宰相閣下はアルテナ王家がお嫌いです。もちろん、私情で国益を損ねる方ではございませんが⋯⋯。私、個人の想いではありますが、子供だけでも助けたいと願っています」

「やさしいね」

「ケーデンバウアー侯爵のように無限大に慈悲深くはありません。無益な流血を避けたいだけです」

「僕だって父親なわけだし、心配はしてる。セラフィーナからすれば自分の孫だ。普通のお祖母ちゃんは、孫を可愛がるものなのにね。王家の定めかなぁ。ほんと、複雑だ。元凶の僕が言うのは筋違いかな?」

「⋯⋯セラフィーナ女王は、自分の娘が産む子供をどう思われているのです?」

「親子喧嘩しちゃったらしい。仲直りしてほしいけど、こういう状況だしね」

「ヴィクトリカ王女がメガラニカ帝国に屈しない限り、関係の改善は見込めないでしょう」

「それはどうだろうねえ」

「⋯⋯⋯⋯?」

「セラフィーナは孫が産まれるのを嫌がってるみたい。少なくとも自分の継承者とは認めない気だ。僕にはっきりとそう言った」

 女王セラフィーナは夫であり、アルテナ王国の共同統治者となった皇帝ベルゼフリートに断言した。

「為政者としての決断でもある。でも、女だから嫌なんだろうね。セラフィーナは自分よりも若い娘に僕が目移りするんじゃないかって心配してるみたい」

「嫉みですか⋯⋯。浅ましいですね」

「意外と嫉妬深いよ。セラフィーナ」

「畏れ多くも陛下を誑かし、帝国宰相ウィルヘルミナ・ナイトレイを陥れようと企んだ女です」

「でも、失敗した。僕がそう仕向けたんだけど」

「陛下は罪作りなことをされましたね」

「子持ちの人妻女王を寝取ったこと? この十ヶ月は随分と愉しませてもらったよ。初めは若い王女様に逃げられてげんなりしてたけど、今は女王様で満足してる。人妻の良さがセラフィーナで僕は分かったよ」

「⋯⋯七面倒な事態になりそうですが、セラフィーナ女王の忠愛は本物のようですね。陛下のためなら、孫さえ排除する。そういうおつもりなのならば」

「良かれと思って、ヴィクトリカ王女に子胤を仕込んだのに。逆の効果になってしまった。そこは大きな誤算だったよ」

「セラフィーナ女王は骨肉の争いをお望みですか⋯⋯。であれば、宰相閣下の望み通りに事が運びそうです」

「ヴィクトリカの動き次第かな。でも、いずれはそうなるよね。たぶん」

「今すぐに、という類いの話ではありません」

「何年先の話になるか分からないけどさ。僕はそうなって欲しくないかな。自分の子供は幸福になってほしい」

「陛下に強く同感します。非情な決断が必要なときもあるとはいえども⋯⋯」

「あ、えっとね。さっきのは僕からの。政治には口出しできない。でも、父親らしいことはしなきゃね」

「承知いたしました。皇帝陛下」

「ヴィクトリカが僕の子を愛してくれるとは思えない。母親が駄目ならせめて父親ぼくくらいはね」

「ヴィクトリカ王女が出産したら、赤児の引き渡しを交渉します」

「もしもだけど、セラフィーナは自分の孫でも邪魔なら、乱暴な手段で排除しちゃうかな? 僕の考えすぎだと思う?」

「アルテナ王国の女王は愛情深い方だったと聞いています。情がある人間だからこそ、非情かつ冷酷になれるのです。今のセラフィーナ女王は陛下に魅了された愛妾です。私を含めて、宮廷の女は陛下の寵愛を何よりも欲しています」

「⋯⋯ローデリカにお願いしていい? お礼はするよ」

 ベルゼフリートはベルトのバックルを外した。

「手は尽くします。ヴィクトリカ王女が産んだ赤児を引き取れれば、大神殿へ預けましょう。それで安全を確保できます」

 ローデリカは膝立ちになり、ベルゼフリートの股間に口元を近づけた。ベルトの締まりを緩め、礼服の下穿きズボンが太股の位置までずり下がる。

 無毛の男根が現われた。巨根に相応しい大きな陰嚢を舌先で弄んだ。睾丸と竿を丁寧に舐め回し、我慢汁で濡れた尿口に接吻する。

 ――ちゅっ♥︎

 ベルゼフリートの男根が硬くなった。上目遣いで微笑んでくるローデリカに興奮していた。すぐさま気持ちよくなりたい一心で、オチンポを突き出した。しかし、ローデリカは咥えようとしない。

「陛下の精子をください」

「え、でも⋯⋯」

「ご自分の手でお願いします♥︎ 陛下の自慰を私は見たいのです♥︎ 私の顔をオカズに抜いてください♥︎」

「せめてオッパイは⋯⋯。見せてくれないの?」

「顔だけで♥︎」

「ローデリカって⋯⋯。ちょっと変態だよね」

 ベルゼフリートは利き腕を逸物に添えてシコシコと扱き始めた。

 ローデリカは亀頭に唇を触れさせ、吐息を吹きかける。しいやらしく、ちょっと意地悪な目つきで見上げてくる。口内には挿れさせてくれなかった。

 奮闘すること数分、ベルゼフリートはオナニーで射精した。

「んっ⋯⋯! んくっ⋯⋯!!」

 吹き出た大量の精液がローデリカの顔面を覆った。顎先から胸元に精液が垂れ、白濁色の汁でドレスがべったりと汚れた。

「――素晴らしい。オナニーを続けてください。陛下」

「もう一回? まだやらせるの? 僕⋯⋯。皆にオナニー見られてるの恥ずかしくなってきた」

 周りには護衛の警務女官がいる。ハスキーやユリアナ、他にも大勢の女仙がオナニーするベルゼフリートを見ていた。

「赤くなってる♥︎ 可愛い⋯⋯♥︎ とっても可愛いです♥︎ 陛下♥︎」

「恥ずかしいんだってば⋯⋯」

「普段は自慰なんてされないのでしょう? でも、陛下くらいの年頃になった少年は、セックスの前にオナニーを覚えられるのです。だから、私との行為を妄想して、枯れるまでたっぷりとオナニーしてください♥︎」

 観念したベルゼフリートは再び手を動かし始めた。

 精液塗れの美女は、自慰に耽る少年の淫行を愛でる。顔を真っ赤にさせながら、二度目の射精に至る。当然のようにローデリカは三度目、四度目を求めた。

「ふふふふふっ♥︎ これでオナニーするとき、陛下は私だけを思い出してくれますね♥︎」

 五度目の射精を顔面で受け止めながら、ローデリカは歪んだ笑みを浮かべる。亀頭を頬に押し付け、泥々の精液をべったりと塗りたくった。


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