純白のカーテンが垂れた天蓋付き寝台に、裸体の男女が眠っていた。
暗褐色の肌と真っ白な癖毛が特徴的な少年は、メガラニカ帝国に君臨する幼き皇帝。巨大な乳房と絹の如き美しい黄金髪の美女は、アルテナ王国の女王である。
激しい情交を遂げた皇帝と女王は疲労困憊し、深い眠りに落ちていた。
——調印式の夜、女王セラフィーナは皇帝ベルゼフリートに陵辱された。
太陽が昇り、朝となっても、夜戦の痕跡はベッドシーツに色濃く残されている。全裸で重なり合う2人の姿を見れば、どんな行為が行われていたかは一目瞭然だ。
大き過ぎて左右に垂れた爆乳には、噛み傷がいくつもついていた。特に両乳首は、ベルゼフリートに強く吸われたせいで内出血を起こし、赤く腫れていた。
「この狼藉が帝国の流儀なのですか⋯⋯?」
唇を噛み締めるのは、幼い頃からセラフィーナを見守ってきたアルテナ王国の上級女官リンジーだった。彼女をこの惨状に連れてきたのは、メガラニカ帝国の女官長ハスキーである。
「セックスのヤり方? 淫事に上品も下品もないでしょう。男女の欲望をぶつけ合うだけなのですから。生娘の初夜でもあるまいし⋯⋯」
ハスキーとリンジーは両者とも国主の側仕えであり、高位の女官という共通の職責を負う者であった。
2人の女官には年齢差がある。上級女官であるリンジーは、若かりしセラフィーナの家庭教師を務めた才女で、年齢は60歳を超える老女だ。
その一方でハスキーは妙齢の若い女性。容姿が美しく、煽情的なメイド服を着ているせいで、実務を担う女官ではなく、皇帝の愛妾なのだと勘違いする者が多くいる。
(なんとお労しい。いっそ、女王陛下はこのまま目覚めないほうが幸せなのかもしれません。こんな辱めを受けると分かっていれば⋯⋯)
聡明なリンジーはメガラニカ帝国の狙いをすぐさま理解した。帝国軍は人質の価値があるリュート王子を公開処刑しておきながら、セラフィーナ女王は殺さなかった。
(帝国は王家を滅ぼすつもりがない。狙いはバルカサロ王国の影響力を絶つこと。バルカサロ王国出身のガイゼフ陛下とセラフィーナ陛下の仲を引き裂くため、2人の子供であるリュート殿下を亡き者とした⋯⋯)
リンジーは女王の穢された身体を観察する。苦悶の寝顔を作るセラフィーナの股座にベットリと付着する固形化した精液。幼き皇帝は女王の子宮にたっぷりと子胤を注ぎ込んでいる。
(皇帝は女王陛下を孕ませようとしている⋯⋯。一夜の関係では終わらない。もはや女王陛下が懐妊されてしまうのは時間の問題⋯⋯。そうなると⋯⋯)
ガイゼフが愛する妻セラフィーナの身に起きた災禍を知ったとき、どのような行動をとるだろうか。おそらく夫婦が望もうとも、従来通りの関係は維持できない。
(ガイゼフ王の敗戦責任を指摘する貴族は多くいる)
国軍を指揮していたガイゼフは、帝国軍の侵攻を防げず、王都と女王を守れなかった。その責任が間違いなくガイゼフにはある。そして、セラフィーナは息子を処刑した帝国の皇帝に、不本意といえども身体を許してしまった。負い目をセラフィーナは感じ続けるはずだ。
(王都ムーンホワイトの陥落が決定的となった日、私は女王陛下に自決を勧めるべきだったのかもしれません⋯⋯)
セラフィーナ女王とリュート王子が自決し、王都を逃れていたヴィクトリカ王女に祖国の命運を託していたのなら、歴史は大きく変わっていただろう。けれど、現実はそうなっていない。
「ハスキー様。なぜ私をこの場に?」
「リンジーさんをお呼びした理由は、証人となってもらうためです。本来であれば他の高級官僚もお呼びしたかった。とても残念です。女王様の素肌を見るのは、不敬にあたるとか何とか⋯⋯。言い訳を並べて逃げられてしまいました」
嘲笑が込められたハスキーの言葉を、リンジーは黙って聞いていた。
女王が辱められた事実の生き証人として、リンジーは寝室に連れてこられたのである。
「メガラニカ帝国では衆人環視の下、淫事に耽る卑しい文化があると聞きます。このような不埒かつ野蛮な文化とは、今日まで疎遠でいられました。正しき道徳と礼節を重んじるアルテナ王国においては⋯⋯」
「帝国は広いのですよ。地域や種族で風習は異なります。けれど、私の生まれ故郷はそういう文化が根付いていました。私が皇帝陛下に処女を捧げたときは、闘技場に5万人の観客を呼び込み、盛大なパレードを執り行いました。高名な絵師や彫刻家を呼びつけ、いろいろな体位の作品を作らせたりもしましたね」
せめてもの意趣返しにとリンジーは帝国の文化を野蛮と挑発した。そのつもりだった。けれども、ハスキーはまったく気にしていなかった。
「私の感覚からすれば、初夜は見せびらかすもの。むしろ隠れてこそこそと終えてしまうのは一族の不名誉です。まるで不義密通のようではありませんか」
唖然とするリンジーは、質問せずにはいられなかった。
「⋯⋯ハスキー様はどういう経緯で女官になられたのですか?」
「私はコロシアムの剣闘士です。メガラニカ帝国において最大の闘技場エスパシナ。4年前に開かれた最大バトルトーナメントの優勝賞品は、メガラニカ皇帝に処女を捧げる権利でした。私はバトルトーナメントで優勝し、皇帝陛下とセックスする権利を得たのです」
ハスキーの父親は剣闘士だった。複数いる兄達も同じく全員が剣闘士となった。末娘のハスキーは、父親譲りの剣技と母譲りの美貌を受け継ぎ、兄達から闘いの英才教育を受け、若干15歳でコロシアムの頂点に駆け上がり、決闘王の称号を得た。
「兄上や母上だけでなく、あの厳しい父上すらも、皇帝陛下に抱かれる私を見て、涙を流して喜んでいました。大満員のコロシアムで、堂々と処女を散らせたのは一族の誇りです」
異文化に触れたリンジーは言葉に詰まる。誇らしげに語るハスキーの姿を見て、価値観が根本から異なると悟った。
余談であるが、決闘王ハスキーはコロシアムで自分に勝てたら、その相手に処女を捧げる宣誓していた。血気盛んな女剣闘士にありがちな誓いだったが、ハスキーの父母や兄達は懸念していた。
娘の敗北が想像できなかったのである。
決闘王ハスキーは、彼女を育てた父や兄達の実力を凌駕し、手が付けられない絶対強者となっていた。
ハスキーをコロシアムで負かす者が現れない限り、処女であり続ける。不敗の決闘王として殿堂入りしてしまったら、ハスキーは未婚のまま生涯を終えてしまう。
最大バトルトーナメントでハスキーが優勝しなければ、そうなっていた可能性は高い。
皇帝に抱かれるハスキーを見て、家族が大喜びした本当の理由は、それだったりする。
余談の余談となるが、5万人の観客が押し寄せた闘技場で、決闘王ハスキーの処女を散らした皇帝ベルゼフリートは、羞恥心で顔を真っ赤になっていたという。
現在も幼帝と呼ばれるベルゼフリートだが、その当時はもっと幼く、今ほど場慣れもしていなかった。
「セラフィーナ女王は幸運な女性です。私が女官長の地位を得るために、数百の勝利を積み重ねる必要があったのですから⋯⋯。敗北で陛下の子胤を授かるなど、とてつもない幸運です」
「ハスキー様。お言葉ですが、女王陛下は此度ことをけして幸運と思われないでしょう。それはアルテナ王国の民も同じです」
「アルテナ王国の人々が、そういう考え方をしてしまうのは重々承知していますとも。しかし、それならそれで構いません。賢しい妃は必要です。しかし、多くいすぎても困るのですよ。宮廷に波乱を呼びますから」
「我が国の女王陛下を皇帝の妃に? ⋯⋯既婚者であるセラフィーナ女王を寝取るというのですか?」
「講和条約の内容を履行しているだけです。非難される謂れはありません」
ハスキーは穏やかな寝息を立てているベルゼフリートを撫でる。数多くいる女官の中で、こうして無防備な皇帝を愛でられるのは警務担当の特権だ。
「女王陛下を帝国領に移送すると聞きました。それは事実ですか?」
「皇帝陛下と共に天空城アースガルズに来ていただきます。皇帝の妃は後宮に住むのが決まりですから」
「セラフィーナ女王の臣下として、私も同行をお願いできるでしょうか」
「無理な相談です。天空城アースガルズは皇帝陛下の後宮。容姿端麗であることが第一条件です。失礼ながら老齢の貴方を受け入れる余地はありません」
「それならば、女官や貴族の中から若く美しい娘を選びます。セラフィーナ女王陛下の世話をする者が必要となるのではありませんか?」
リンジーは即座に適切な代案を提示してきた。ハスキーは素直に感心する。
「柔軟ですね。もう少しごねるかと思いました。しかし、その要求は受け入れられません。セラフィーナ女王には単身で後宮に来ていただきます」
「入れ知恵をする者がいては困るからでしょうか?」
「ご明察の通りです。むしろ後宮においては、無垢であったほうがよろしい。野心を持たなければ、世界でもっとも安全な場所です」
リンジーは深く考え込む。ハスキーが嘘を言っているように思えなかったからだ。
セラフィーナは祖国を蹂躙され、身を穢された哀れな女王だ。このまま皇帝の後宮で静かに余生を送る選択肢もある。そうすれば、煩わしい国政や戦争について悩まずに済む。
(何もかも投げ出したほうが、女王陛下にとっては幸いなのかもしれない。この方のお優しい人柄を思えば⋯⋯)
アルテナ王国はメガラニカ帝国に滅ぼされる運命にある。ならば、安全な後宮で不自由のない暮らしをするのが、セラフィーナにとっての最良かもしれない。
(セラフィーナ陛下は国主の⋯⋯支配者の資質に欠けている⋯⋯。皇帝の玩具となるのは一時のこと。皇帝の赤子を産んでしまえば、後宮で贅沢な暮らしをさせてもらえるはず⋯⋯)
リンジーは懸念していた。アルテナ王国の保守派には女王の死を願う者が少なからずいる。というのも、この瞬間にセラフィーナが死去すれば、国主の地位は娘のヴィクトリカが継承する。
(皇帝と女王が一夜を共に、肉体関係を結んだ事実は必ず噂となる。未だに徹底抗戦を掲げる保守派なら、王統と誇りを守るため、女王に自決を求める。それは十分に考えられる)
女王のセラフィーナが死ねば、王婿であるガイゼフは妻の仇討ちという最高の大義名分を得る。母から王冠を受け継いだ王女のヴィクトリカを旗印に掲げ、メガラニカ帝国に再戦を挑める。
(バルカサロ王国はどうでしょうか。きっと内心ではセラフィーナ女王の死を望んでいるはず。愛妻家のガイゼフ王が妻の死を望まないとしても、本国の命令には逆らえない⋯⋯)
セラフィーナ女王に自決を促すとすれば、メガラニカ皇帝の子を産む前でなければならない。さらに言うのなら、反帝国の機運が盛り下がる前が望ましい。
(愛する国民に死を願われて死ぬ気高き道。もう一つは憎き皇帝の情婦となって生き延びる汚辱の道。家族と祖国を大切にするセラフィーナ陛下なら、前者の道を歩もうとするでしょう)
息子のリュート王子を殺され、セラフィーナ女王は酷く傷ついた。その追い討ちで、メガラニカ皇帝の陵辱を受け、敵国の子を仕込まれようとしている。きっと自害の選択肢を選ぶだろう。
「ハスキー様。セラフィーナ陛下に仕える従者を一人だけでも付けさせてはいただけないでしょうか?」
「食い下がるのですか? 奇異なことです。リンジーさんは物分かりの良い方だと思っていたのですが、なぜ今さらそのような無理を通そうとされるのです? 先ほど難しいとお答えしたのですが?」
「メガラニカ帝国にとって有益な情報があります。お渡しする情報の対価として、ハスキー様のお力をお借りしたい。メガラニカ帝国の宮廷事情を熟知しておりませんが、女官長にはそれだけの権限があるのでしょう?」
「有益な情報とは? 価値によります」
「私は王家直属の上級女官であり、女王陛下の相談役です。アルテナ王国の政治事情に精通しております。私の握る全情報をハスキー様に提供しましょう」
「魅力的な提案です。しかし、軍務省の調べによれば、リンジーさんは疑いようのない立派な愛国者でいらっしゃる。そのような売国行為とは縁遠い高潔な女性だと聞いています。本心からの提案とはとても思えません」
「その通り。私は愛国者です。祖国を売るつもりはありません。私は愛する自分の国を守るため、『女王セラフィーナ・アルテナ』を帝国に売るのです」
リンジーの告白を聞いて、余裕満々だったハスキーの表情が硬くなった。油断ならない女だとハスキーは警戒心を抱いた。
視線をベッドに向けるが、ベルゼフリートとセラフィーナはぐっすり眠っている。
「先ほどの物言い。セラフィーナ女王が聞いたら、ショックのあまり身を投げてしまいかねない爆弾発言ですね。女王に長年仕えた上級女官の内心をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「私が仕えているのは国家です。個人ではありません。仮に個人に仕えているとしても、その忠誠心は私を拾ってくれたセラフィーナ陛下の母君に向けられています」
「なるほど、それで?」
「アルテナ王国は存亡の危機に瀕しています。我が国にはバルカサロ王国と手を組み、国土からメガラニカ帝国を追い払おうとする勢力が主流です。しかし、王都ムーンホワイトが陥落した今、戦争継続は滅亡に至るリスクだと考えます」
「仮にそうだとしても、女王を売る判断が速すぎます。王婿ガイゼフはバルカサロ王国に逃れ、愛する妻を取り戻し、息子の仇を取ろうと刃を研いでいる。希望は残されているのに諦めると?」
「バルカサロ王国の助力を得て、帝国軍を追い払ったとしましょう。しかし、その後に起きるのは、バルカサロ王国によるアルテナ王国の占領、そして併呑です」
現在のところ、アルテナ王国とバルカサロ王国は対等な同盟関係にある。セラフィーナ女王の婿にバルカサロ王国の王子ガイゼフを迎え入れたのは、同盟関係の強固が狙いだった。
「メガラニカ帝国に勝利したバルカサロ王国は、合法的にアルテナ王国を飲み込むと私は見ています。我が国の主権を維持しようと考えるのなら、私はバルカサロ王国と手を切り、メガラニカ帝国と真の和平を結ぶべきだと思うのです」
「祖国を守るために、乗る船を変えるということですか」
「⋯⋯戦争の勝敗は決しました。女王陛下の幸せを考えるのなら、自害を促すべきなのでしょう。復讐心に燃え、メガラニカ帝国に戦いを挑むのであれば、なおさらセラフィーナ陛下は死ぬべきです」
主君の死を口にしたリンジーに、ハスキーは嫌悪感を露わにした。天地神明に誓って、ハスキーが言えない台詞だった。
「リンジーさんは、不敬罪を恐れておられないようですね。眠っているとはいえ、女王の御前で死ぬべきと仰るとは⋯⋯。同じ女官としては、肝が据わりすぎていて尊敬してしまう。私にはとてもできない」
皮肉を込めた言葉だった。尊敬の念など微塵も抱いていない。
豪胆な戦いぶりで名を馳せた決闘王ハスキーですら、主君の死を口にする度胸はなかった。メガラニカ帝国において、皇帝の死を願うのはもっとも重い罪だ。
大逆の疑いがかけられれば、いかに女官長ハスキーだろうと極刑は免れない。
「女王は国主の才覚に欠けた女性です。しかし、王家の女として生まれたからには、国家の存続に尽くす義務があります。求められている義務は死ではありません。汚辱に塗れようとも、国家のために生きることです」
上級女官リンジーは、国家に忠誠を誓っていた。一人の女としては、セラフィーナに憐れみの心は向けている。けれど、アルテナ王国を守るためには、セラフィーナを生け贄に捧げる必要があった。
「アルテナ王国の女王とメガラニカ帝国の皇帝、両陛下の間に子供が産まれれば、ヴィクトリカ王女を廃嫡し、バルカサロ王国と縁切りができます。その見返りにメガラニカ帝国は、アルテナ王国の主権と自治を保障する。それが落とし所です。いかがですか?」
「女官の私からは何とも言えません。しかし、その通りにことが進めば、軍務省は大喜びするでしょう。元帥閣下を含め、帝国軍は厭戦の機運です。隠すまでもなく、帝国兵は望郷の念が強い」
「それなら利害は一致しています。女王セラフィーナと皇帝ベルゼフリートの子作りを滞りなく進めたいのなら、心から信頼できる従者をお側に置くべきです」
「協力してくれるのですか?」
「はい。協力いたします。セラフィーナ女王には孕んでもらいます」
「よろしい。分かりました女官の権限を使えば、一人くらいなら従者を捻じ込めるでしょう。ただし、見返りとしてリンジーさんは帝国への協力を惜しまないこと。それ従者と選別はさせてもらいます」
「選別とは? 具体的にはどのような⋯⋯?」
「天空城アースガルズに入るには、女仙とならなくてはいけません。血酒の仙薬を飲み干し、不老の女仙となった美女だけが、皇帝陛下の後宮に住むことを許されるのです」
天空城アースガルズは男子禁制の宮殿であり、皇帝の妃や妾のほかには女官と側女しか入れない。宮廷の美女達は血酒の仙薬を飲み、不老の仙人となっていた。
メガラニカ皇帝に仕える女たちは、天女とも呼ばれる。後宮入りした後、美貌が衰えたり、病に罹ったりしなくなる。
不老不病だけでなく、外傷にも強い。女仙は仙毒を塗った刃で首を切断するか、身体が灰となるまで燃やさない限り、絶命しない。
「昨日行われた講和条約の調印式で、セラフィーナ女王は仙薬を飲み、女仙となりました。血酒による選別は、皇帝陛下の夜伽役となれるかを判断する試験でした」
女仙となったセラフィーナ女王は容姿が衰えない。背後から輪郭が見える爆乳、熟れた媚尻の肉付き、艶やかな外見を維持した36歳の肉体年齢で、セラフィーナは悠久の歳月を過ごすのだ。
「女仙となれなかったら、どうなるのですか?」
「男や醜女は血を吐いて死にます。そこまで心配する必要はありません。容姿の整った妙齢の女性なら大丈夫です。帝国では血酒の杯を授かるまでに、幾度の審査が設けられているため、選別で死んだ者はいません」
ハスキーはリンジーに忠告する。
年齢と容姿。女仙となるための条件が満たせなければ、セラフィーナの従者として、天空城アースガルズに連れて行くことはできない。
「今日中に推薦する方を連れてきてください」
「⋯⋯私の提案を受けてもらえるのですね」
「ええ。もちろんです。リンジーさんがメガラニカ帝国に協力してくれるのなら、取引をする価値があります。しかし、その後については責任を持てませんよ。あくまで従者の枠を一つ作るだけです。その点をお忘れ無きようお願いいたしますね」
「ありがとうございます」
「ああ、それとですが、メガラニカ帝国において最も罪深い行為は裏切りです。慈愛の心で旧敵を許すことはありますよ。しかし、裏切り者はけして許さない。それもお忘れ無きよう」
「無用な心配です。私は国益を考えて動いております。国家の誇りに誓って、約束は守ります」