【231話】赤毛の従者はひと足お先に(♡)

 ロレンシアはひと足早く禁中の控室に到着していた。

 汗ばんだ身体を湯殿で綺麗に洗い流し、膣穴と尻穴の洗浄も念入りに済ませた。ショゴス族の庶務女官が入浴を介助してくれた。

 次は赤髪に椿油をたっぷり馴染ませ、潤い豊かな艶髪を整えた。風呂上がりの皮膚に美容液を吸わせ、上質な乳液クリームで保湿する。光沢を帯びた生肌は瑞々みずみずしく、決壊寸前まで母乳を蓄えた超乳が膨れ上がっている。

(よし⋯⋯! 私の準備は大丈夫。いつでも皇帝陛下に性奉仕できるわ)

 女官達はロレンシアに化粧を施してくれた。仕上げは青薔薇を口に入れて何度も噛み、フルーティな香りを唾液に含ませる。

 控室で待機を命じられたロレンシアは、大きく育った胎を撫でながら、医務女官に告げられた小言を思い出していた。

 担当の専門医から「無計画に寄生卵子を植えつけないでください。お腹の重みが増せば、車椅子で生活することになりますよ」と強めのお叱りを受けてしまった。健康状態は母子ともに良好であったが「子宮を労るように」と警告を受けた。

 足腰が弱り、寝たきりになってもショゴス族が世話をしてくれる。だが、黄葉離宮の側女ではいられなくなるし、ベルゼフリートのお呼びがかかる機会も減る。

 帝城ペンタグラムには、女官総長ヴァネッサの卵子を植え付けられた代理母が何人も養われていると聞く。働けなくなったら、その一人にロレンシアも加えられる。それは望ましく思わない。

(自分の身体を大切に⋯⋯か⋯⋯。歩けなくなるのは困る。今も階段の上り下りはかなり辛いわ)

 己の浅慮を恥じるが、妊婦服で不自由しなくなったメリットは大きい。ランジェリー店を営む庶務女官と仲良くなれたおかげで、ロレンシアは帝国流のファッションを楽しんでいる。

(今日は王妃や公妃の馬車が多かったわ。セラフィーナ様が向かわれた妃専用の医療棟は混雑していそう⋯⋯。私も専属の医務女官がいなかったら、きっと待たされていたわ)

 不老不病の女仙であるが、老化や疾病が死因にならないというだけで、体調不良や怪我で治療を受けたりはする。しかし、ここ最近は妊娠で医療棟に通う女仙が急増している。

(足音⋯⋯。誰か来る。セラフィーナ様?)

 控室に扉が開く。セラフィーナが来たかと思ったが、入ってきたのは警務女官だった。名前は知らないが、何度も見かけたことがある。

(いつも皇帝陛下を護衛している警務女官だわ。どうして控えの部屋に? 何の用で?)

 その後ろに隠れていたベルゼフリートがひょっこりと顔を出した。

「えっ! 皇帝陛下⋯⋯!?」

 安楽椅子に座っていたロレンシアは慌てて立ち上がった。

「ロレンシア、もう準備はいいかな? あ、驚かせちゃった?」

「い、いえ。大丈夫です」

「めっちゃ驚いてるじゃん。服からオッパイがこぼれそうになってるよ」

 ベルゼフリートはロレンシアを茶化す。

「そのっ⋯⋯。セラフィーナ様がまだ来ておりません」

「みたいだね。妊娠してる妃が多いから遅れちゃったみたい。さっき医療棟から連絡がきたよ。工務女官ほどじゃないけど、医務女官も大忙しなんだってさ。セラフィーナが来る前に始めちゃおう。いいよね?」

「はいっ♥」

 ロレンシアの頬は赤く紅潮していた。年少の主君が優しく手を引き、荘厳なる寝所に導かれる。メガラニカ皇帝の主寝室に足を踏み入れた。

(セラフィーナ様⋯⋯。申し訳ございません。ですが、皇帝陛下にご命令には逆らえませんわ⋯⋯♥ あぁ⋯⋯♥  陛下も興奮なさっている。股間のオチンポがもうあんなに大きく膨らんでいるわ。ご期待にお応えいたさねば⋯⋯♥ 全身全霊で性奉仕いたします⋯⋯♥)

 ロレンシアは内心で詫びつつ、ベルゼフリートの小さな手を握り返した。これから寝室で行われる淫事を想像し、興奮で鼻息が荒くなった。

 たった一人で愛しの主君を独り占めできる。

(私よりも小さな御方⋯⋯。でも、抱かれているときは、この世の全てよりも大きいな存在に想える⋯⋯♥)

 並んで歩く二人の背丈は開きがある。姉と手を繋ぐ弟にも見える光景だ。この愛くるしい少年が後宮の主であり、メガラニカ帝国の命運を左右する。

 廊下で立哨していた警務女官達が両開きの扉を閉めた。ロレンシアはどうしようもない程、自分の下着がぐぢゅぐぢゅに濡れているのが分かった。

(これから陛下と一対一でセックスする⋯⋯♥ 今だけは私が陛下を独占しちゃう⋯⋯♥)

 大きな天蓋付きのベッドが目に入る。

(涼しい。空気が冷えている)

 真夏の昼下がりに窓は締め切られていた。それでも居心地がよい室温だ。女官が神術式で冷房を効かせていた。

 だだっ広い寝室で二人っきりだと勘違いしそうになるが、目立たぬ四隅に女官達が立哨している。

(ハスキーさんがいない⋯⋯。邪魔も入らないし、私やセラフィーナ様にとっては好都合だわ)

 警務女官長ハスキーは珍しく不在だったが、寡黙な警務女官ユリアナは影のように潜んでいた。

「ロレンシアはずっと髪を伸ばすつもり? それ、とっても似合ってると思う」

 ベルゼフリートの指先がロレンシアの赤毛を撫ぜる。後ろ髪は伸ばせるところまで伸ばすつもりだった。超乳巨胎の恵体になってからは、女らしくなるため、御髪の手入ればかりしている。

「ありがとうございます。お褒めの言葉を賜り、とても嬉しいです⋯⋯♥」

「ロレンシアの真っ赤な髪、触ってもいい?」

「もちろんでごさいますわ。欲するがままに、ご自由になさいませ。この身を全て、皇帝陛下にお捧げしているのですから⋯⋯♥」

「それもそうだね。ロレンシアは僕のモノだもんね」

「はい。皇帝陛下に愛でられることこそ、私の幸せです」

「短く切り揃えていた頃も良かったけど、綺麗な赤髪は見せつけなきゃ損だ。セラフィーナよりも長くしちゃうの?」

「同じくらいの長さにしたいです。私が今まで出会った女性の中で、一番綺麗な髪の毛をお持ちなのはセラフィーナ様でした。⋯⋯幼い頃から密かに憧れておりました」

「あー。確かに。セラフィーナは髪質がいいもんね。まさに艶髪って感じだ。あれって遺伝かな。この前に会ったギーゼラも絹みたいな髪だった。でもね、僕みたいにちょっとだけ癖毛なんだ。娘達は母親似の美女になりそうだ」

「アルテナ王家は美髪の女性が多いと聞いておりますわ」

「へえ。あれ⋯⋯? でも、ヴィクリカはそれほどでもなかった記憶。う~ん。あっちはバルカサロ王家の遺伝が勝ったのかな?」

「皇帝陛下は綺麗な髪がお好きなのですか?」

「いいや。実を言うとそこまで興味はないんだ。でも、女仙達が張り合ってるのは知ってるよ。手に汗握る! 後宮の熾烈な争い!」

「⋯⋯その渦中におられるのは皇帝陛下ですよ?」

「触り心地は楽しんでるよ。女仙が美容に大金を費やしてるから経済効果も凄い。トリートメントの売上でラヴァンドラは大儲けしてる。濡れ手に粟ってやつ」

「お値段は張りますが、帝城ペンタグラムに良品を取り寄せるなら、ラヴァンドラ妃殿下の商会が一番です」

「帝都近隣の経済網を牛耳ってるからねぇ。知ってた? 帝都ヴィシュテルはエルフ族の土地だから森林資源が豊富なんだ。特産の一つが植物油。料理だけじゃなく、美容品の原料にもなる。アルテナ王国への輸出も始めるって。商魂逞しい」

(アルテナ王国の主要な産業は農産業。人口増加で食料高に苦しむメガラニカ帝国を相手に大儲けをしている。だから、化粧品や美容品を輸出し、貿易の不均衡を正す。そのための売り込みでもあると耳しています⋯⋯)

 西アルテナ王国の存在は、メガラニカ帝国にも強い影響を与えていた。

「とはいえ、国内需要のほうがまだまだ高いけどね。ナイトレイ公爵領で暮らしてたとき、ウィルヘルミナがわざわざ取り寄せてたくらいだもん。受け売りだけど、質が段違いに良いらしいよ」

「宰相閣下も美容品は使われているのですね」

「意外に思った? サキュバス族は美容に強いこだわりがあるんだ。昔からウィルヘルミナは買い込んでる。それとは逆で、まったく興味を示さない種族もいるね。人それぞれってこと」

「メガラニカ帝国は多種多様な人々が暮らしておられますものね」

「うん。ロレンシアみたいな深紅の髪は珍しい。普通の赤髪よりも色が濃い。⋯⋯脱ぐのを手伝ってあげるね。ていうか、ロレンシアを脱がせたい!」

「ありがとうございます⋯⋯♥」

 衣服を脱ぎ捨て、全裸になった美少女と美少年は、互いの淫情を解き放つ。ベッドで寝そべりながら、肌を触れ合わせた。超乳で生成されているミルクの匂い、男根から香る雄臭さが混じる。

 遅刻したセラフィーナを差し置き、ロレンシアはベルゼフリートの寵愛を一身に受け止めた。

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