第33回「フランス書院文庫 官能大賞」の結果が10月18日に発表され、大賞は該当作品なしとなった。各賞の選考結果は次の通り。
▼大賞 |
該当作品なし |
▼新人賞 |
おべんとう屋さんの、ある母娘(A.Tさん) |
▼特別賞 |
母奴隷 哀愁の調教日記(H.Mさん) |
▼eブックス賞 |
我が社の爆乳CEOは孕みたがりのマゾメスでした~バリキャリマンコ完全調教~(Sさん) |
完璧超人、超絶美少女の敬語妹は俺といちゃらぶしないともう頑張れないらしい。(Mさん) |
▼ノンフィクション部門 |
該当作品なし |
▼e-ノワール賞 |
ド変人皇子の捕虜になってめちゃくちゃにされると覚悟したけれど、もふもふ猫耳のおかげで溺愛されて困惑しています(那須のじか) |
【受賞作の講評】
【新人賞】
おべんとう屋さんの、ある母娘(A.Tさん)
社会人三年目のサラリーマンが足繁く通っているお弁当屋。お店を切り盛りするのは美人な母娘。未亡人の店主と、ある日一線を越え……
お弁当屋という物語の舞台を選択したことが素晴らしかった。リアルな切り口で物語が綴られており、地の文の端々から日常の柔らかな空気感が漂い、温かみのある母と娘の人柄が巧みに描かれ、作品全体を一段階上質なものに引き上げている。
濡れ場も非常にレベルが高い。女性視点を用いて、単に誘惑しているだけでなく、羞恥を覚えつつも相手に求められて悦びを覚えるまでの心の機微がしっかり描かれていた点を高く評価した。
男主人公の童貞喪失、お弁当屋さんの娘の破瓜といった、男女両サイドの初体験を楽しめる構成にも、作者のサービス精神が溢れている。
毎日立ち寄るお弁当屋さんでの癒やし、こんな生活があったらなと思わせる素晴らしい誘惑小説だった。
【特別賞】
母奴隷 哀愁の調教日記(H.Mさん)
(決めたよ。母さんを調教する。ぼくだけの、奴隷にするんだ……)主人公の少年のこのセリフに痺れた。王道の近親相姦モノで、熱量のまま一気に15万字を書き切っている。著者は他にもネットに作品を投稿しているが、多くが母モノで、本当に母子相姦モノが好きな気持ちが伝わってきた。他人の評価ではなく、これを書きたいんだ! という著者の情熱は高く評価したい。
母の視点、息子の視点、どちらもしっかりと描け、キャラの心理の過程を丁寧に追っている。最初は和姦っぽい雰囲気から始まったが、息子に調教されるうちに母がマゾっぽさを開花させていく展開もすばらしい。今の時代でもフランス書院文庫では濃厚な相姦モノが売れる。このような作品の応募先として官能大賞を選んでくれたことに感謝したい。
【eブックス賞】
我が社の爆乳CEOは孕みたがりのマゾメスでした~バリキャリマンコ完全調教~(Sさん)
社長室での自慰行為を盗撮された女CEOが、脅迫してきた部下に凌辱されメス堕ちしていく作品。
オフィスでの強烈な責めを受けるうちに悦びに目覚めてしまう強気な美女。そんな彼女が抵抗し、あえなく敗北する姿が巧みに描かれている。調教の果てに、己を解き放つように絶頂する様は読み応え抜群だった。
濡れ場から始まるプロローグのつかみから、クライマックスまでの構成力があり、またプライドが高い爆乳の女社長のキャラが立っていて、一気に読み進めてしまう魅力があった。
今ある三万文字に加筆の上、軽妙な文章とキャッチーなタイトルの雰囲気を持ち味に、eブックスで活躍していただきたい。
【eブックス賞】
完璧超人、超絶美少女の敬語妹は俺といちゃらぶしないともう頑張れないらしい。(Mさん)
才色兼備で性格が良く友人も多くて勉強も運動もトップレベル、「完璧超人」と思われている俺の妹だが、その裏では血の滲むような努力を続けていた。その努力の結果「壊れて」しまった妹。そんな妹の望みは兄である俺に「私を甘やかしてくれること」だった。
妹との禁じられた愛というテーマに真正面に取り組んだ至高の純愛小説。主人公と妹という1対1のシンプルな構成を、圧倒的な筆力で紡ぎきった力量に感動すら覚えた。
投稿者は、本作以外にも複数の作品の投稿をしていたが、どの作品も大変面白くで、たぐいまれなる才能を感じた。受賞作は現在のeブックスの方向性を変える作品になる可能性を秘めている。今後のさらなる飛躍を期待できる才能であることに間違いはない。
【受賞を逃した作品の講評】
加奈子の秘密(M.Uさん)
痴漢の被害に遭い、その強烈な体験から、自分の本当の正体を感じていく加奈子。様々な責めを受け、異常な興奮を覚えながら、秘められた性癖が呼び起こされる。その姿が、リアルな心情とともに、生々しく描かれている。単に犯されていることを記すだけではなく、女視点の文章量が多いのが特徴的だ。
また、加奈子の快感に抗えずに堕ちてゆく流れを、複数の男との絡みや独特のストーリー性で描いており、読者に次への期待を持たせていく構成も目に付いた。そういう意味で、全体的に好内容と言える。
ただ、その複数の男キャラやストーリー性に、必要以上に力が入っている点も否めない。それゆえ、官能小説としての売りがストレートに伝わりにくかった。文章力や物語の創造力を駆使して、濃厚な官能小説を目指して欲しい。
囚われの性淑女 由利(K.Hさん)
帰宅途中に拉致された女銀行員が、八年もの長期間監禁された、その赤裸々な暴虐を中心に描かれている。エロ描写の持続力、筆力のパワーは、理屈抜きに感じられる。主語や文末の言い回しがワンパターンになるなど、表現の単調さが目立つものの、物量面の押し出しは、見るべきところがある。
八年後の世界で由利が直面した現実は、リアリティを感じさせ、彼女の動揺ぶりも重々しく伝わってくる。一方で、長期間囚われたヒロインがどのように堕ちていくのか、エロの稠密さにいまいち乏しい感もあった。長期間という設定を、エロに沿った内容に反映させられれば、もっと読み応えのある官能小説に昇華できたのではないか。
大家さん、ヤリすぎです!(M.Mさん)
アパートの美人大家さんと店子の青年という官能小説の人気テーマを扱った作品。メインヒロインである25歳の大家さんがすばらしい。優しくて甘い雰囲気――と言葉で言うのは簡単だが、実際にキャラ造形に落とし込むには作者の腕が必要だ。情景描写でここが見せ所というのをわかっていて、女性の胸の柔らかさを描くとき、地の文をたっぷりと使って描写している。かつ、それをイメージ豊かに描く筆力もある。
惜しむらくはストーリー展開の性急さだろうか。一つ一つの濡れ場も短く、やや物足りなさを感じた。長編のダイジェスト版のようなイメージを受けた。歴代の受賞作は、すぐに出版できるレベルまで仕上げてくる作品が多いので、完成度の点で一歩及ばなかった。
【e-ノワール部門受賞作の講評】
ド変人皇子の捕虜になってめちゃくちゃにされると覚悟したけれど、もふもふ猫耳のおかげで溺愛されて困惑しています(那須のじか)
敵国の皇子ルイに夜襲を仕掛けた結果、捕虜となったフェリセット。猫の獣人であることを気に入られルイの戦利品として皇国で過ごすことになり……からはじまる物語。
無鉄砲なところがありつつも大事な場面では周りの状況を察せられるフェリセットがかわいらしく、まさに拾われた猫が飼い主を警戒しながらも新しい家で過ごしていくような空気感が微笑ましかったです。
(性的な意味も含め)意地悪しつつも甘やかしてくるルイに絆されながらも、本心が見えないことにやきもきする姿に共感しました。
中盤以降のじれじれとしたすれ違いが長い分、ややあっさりと終わった印象を受けるので是非書籍版では幸せとなった二人も読ませていただきたいです。