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第34回「フランス書院文庫 官能大賞」 大賞は該当作品なし、新人賞は『古都に散る薄墨桜』

 フランス書院は5月13日、第34回「フランス書院文庫官能大賞」の選考結果を発表した。大賞は該当作品なし、新人賞は『古都に散る薄墨桜』が選ばれた。

 eブックス賞は『辛辣で可愛げのないクール系後輩彼女は性行為中だけデレる』(B.Tさん)。e-ノワール賞は『失くした時と、愛執の行方』(イチニN)、『竜の王子様が番(つがい)だと迫ってきますが、もう騙されません!どうせ私は番ではありませんから』(せいかな)、『私の好きな人は神様に愛されている』(文村 月)が選ばれた。

 特別賞とノンフィクション部門は該当作品なし。


受賞作講評

新人賞『古都に散る薄墨桜』(R.Kさん)

 古き良き凌辱小説の淫靡な雰囲気が、全体を通して漂っている作品。視点やセリフもしっかりと書けていて、著者の完成度の高さを感じさせる。ねちっこく濡れ場を描ききる持続力も、読み応えがあった。

 現状でも確かな力量の持ち主と言えるが、濡れ場の濃度を高め、キャラクター、舞台設定の精度をバージョンアップさせれば、本格派の官能小説家になり得る逸材だ。

 フランス書院文庫流凌辱文学の継承者として、大いに期待している。

eブックス賞『辛辣で可愛げのないクール系後輩彼女は性行為中だけデレる』(B.Tさん)

 童貞いじりをしてくる生意気な彼女と、放課後に初めてエッチするお話。

「いっそのこと、私で童貞卒業しときますか? 先輩」

 素晴らしいフレーズだ。書き出しから心をグッと掴まれる。ヒロインがどんな性格の後輩なのかがすぐ伝わってきた。

 また、「性行為中だけデレる」という設定が非常に活きていて、普段は決して言葉にしない「好き」を連呼しながら彼女が絶頂するシーンは圧巻だった。冒頭の台詞や、辛辣でクールな彼女というキャラは、ここの盛り上がりのためにあったのかと、その構成力に唸らされるばかりだ。

 この辛辣な後輩の可愛さを、一刻も早くeブックス読者にお届けしたい。


受賞を逃した作品の講評

『その女、有希恵。』(M.Kさん)

 駆け落ちしていなくなった叔母が、未亡人となりお隣に引っ越してきて奇跡の再会を果たす物語。

 冒頭の叔母に惚れ直す再会シーンが劇的で、そこから初挿入までの盛り上がり方に作者の熱量を感じた。今まで溜め続けた情欲をすべてぶつける解放感のある濡れ場を描けている。一人の女性と向き合い続けたこの小説でこそ出せる魅力があった。

 文章も読みやすく、匂いの描写などの五感を刺激する地の文も巧みだ。

 惜しいところは、本作がどっちつかずになっていることだ。凌辱とも誘惑とも異なる独特の雰囲気で、憧れの叔母を堕としていく、もしくは手ほどきしてもらうという筋からは逸れていた。またヒロインの属性過多で焦点が絞り切れてない印象である。叔母、女教師、未亡人、隣人……と要素を多く詰め込んであるが、一番書きたかったテーマに寄せるとよかっただろう。

『カッコウの家』(M.Aさん)

 恋い慕った女中を父に奪われた少年が、大人になって家に戻り、父と結婚して義母となっていた元女中を犯す物語。少年の復讐譚とでもいおうか。少年の寝取られ視点から始まって、大人になった少年が今度は父から憧れの女性を寝取り返すという、あまりないパターンの構成になっている。

 冒頭の一行目「畳の上に、白い素足がのたうつように踊っていた。」が美しい。地の文の情景描写が非常に巧みで比喩のセンスもいい。著者の文才を感じる。ポルノ小説という視点から見ると、若い女中を襲う少年の父親(中年男)のねちっこい攻めが素晴らしかった。

 惜しむらくは、ストーリーが父と息子の二重構造になっているので、フランス書院文庫換算で100ページだと物足りなさを感じたことだ。中年の凌辱者を描けるのは著者の才能なので、少年視点(寝取られ視点)はあえてなくし、主人公を父親にして改めて読んでみたい気はした。

『性隷の祝宴 美しき継母と義姉妹』(T.Nさん)

 継母と義姉妹と暮らす少年が、秘めていた淫欲を剥き出しにし、密かに三人とも性奴隷へと堕としていく物語。

 まず、文庫換算で約400ページ近い濃厚な相姦劇を書き上げていることを評価したい。三人との淫靡な関係から人となりまで丁寧に描けていた。

 ただ残念だったのは、全員があまりに従順すぎたことだ。それぞれの秘密の関係を明かすシーンで盛り上げるべきであるが、三人とも主張が弱いためか、落差が小さい印象を受けた。一人は従順でない女性がいてもよかったのではないだろうか。奉仕性奴隷以上の個性も見えるとさらに奥深い濡れ場になるであろう。

『美母堕とし-母が女に変わるまで-』(T.Aさん)

 息子が自宅で専業主婦の母を犯すという非常にシンプルなストーリーである。登場人物は母と息子の二人だけで、凌辱場所も自宅のみ。読み手の期待を裏切らない、タイトル通りの100%エロ小説だ。息子が母を犯す理由も「ママを僕だけのものにしたかった」という悪魔少年らしいわかりやすい動機。フランス書院文庫換算で80ページほどで、始まって数ページですぐ凌辱シーンに入り、あとは全編を通してほぼ濡れ場。この作家はエロ小説とは何かをよくわかっている。

 惜しむらくは、まだ文章に荒っぽさがあるところだ。たまに三人称の視点の混在なども見受けられた。暴走系らしい勢いのある筆致をより洗練させれば、作品としての完成度が増すように感じられた。


e-ノワール部門受賞作の講評

『竜の王子様が番(つがい)だと迫ってきますが、もう騙されません!どうせ私は番ではありませんから』(せいかな)

 番(つがい)だと思ったけれど勘違いだった──そんな番詐欺に遭い、「もう二度と騙されない」と誓ったエーファが、女嫌いで有名な王子ジュリアスから突然「番だ!」と迫られてしまう、という展開から始まる物語です。

 ある事情でエーファは兄のフリをしているため、番だと感じたのは間違いだったという流れになり、ジュリアスも納得します。

 しかし、相手は男だと思いつつも、エーファにときめいたり周りの男性に嫉妬してしまったりとジュリアスがどんどん暴走していく様子が面白かったです。

 サブキャラやお話の展開がとにかく魅力的で、楽しく読み切れる作品でしたがドタバタラブコメ展開が多かったので、ぜひ書籍版ではくっついた先の二人のお話ももっと楽しませて頂きたいです。

『私の好きな人は神様に愛されている』(文村 月)

 別れたあとも友人として仲良くしていた社会人2人がちょっとしたトラブルから『相手に恋人がいる』と勘違いし、すれ違いが加速していく作品。

 読み手側にはお互いにまだ好意があることが伝わるので、自宅へ向かうまでのじれったいやり取りがとても良かったです。

 学生時代に別れた理由や、それぞれの視点が丁寧に描かれていることで、物語に深く入り込むことができました。

 ヒーローの悠真はいわゆるヤンデレ、しかもかなり突き抜けたストーカー気質なキャラクターですが、ヒロインの美結が明るく前向きな性格なため最終的にハッピーエンドへと着地する展開も心地よかったです。

『失くした時と、愛執の行方』(イチニN)

 仲睦まじい関係だったマリオンとその婚約者レオンス。

 しかし、ある日レオンスが事故により記憶を失ったことで、マリオンの妹アリスが彼に近づき……。

 ヒロイン、ヒーローともに寝取られ、しかもその場面の描写もありかなり過激かつ残酷な内容が含まれる作品です。

 『妹に婚約者を奪われる』という展開そのものは王道ではありますが、ここまで理不尽で絶望させてくれるお話はなかなかないかと思います。

 双方の視点が描かれることで互いの苦しみが胸に迫り、情緒がぐちゃぐちゃになりながらも結末が気になって読み進めてしまいました。

 引き離され、望まぬ相手との結婚を強いられてもなお、婚約者を忘れられない二人の行き着く先を、ぜひ多くの方に読んでいただきたい作品です。

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