好評な感想も多い中、あえて率直な辛口のレビューを書きます。タイトルで書いたように、素晴らしく上出来です。王道のストーリー! だからこそ……「プレデター」が主役な映画だと思えば駄作でした。しかし、この映画を絶賛する人もいます。それはそれで分かる……。『プレデター1』や『プレデター2』を期待するほうが悪いんです(´・ω・`)
ネタばれ盛りだくさんなので、ご注意を……! あと、すごく辛口です。
最高に不快な点
この映画の悪役は父親のプレデターです。「一族に弱者はいらねえ!」と息子のデクを始末しようとします。その一方、弟思いの兄者は「まずは狩りをさせてやるべき。それから判断してくれ!」と庇う。
百歩譲って、兄弟愛はいいんです。兄者の「狩りで強さを証明する! 弟を殺すのは待ってくれ!」ってのは理に適ってます。どころが、父親のプレデターはデクに狩りの機会すら与えず、兄に「弟を殺せ!」と命じます。……なんで?

掟との大きな矛盾
氏族が違うから文化も違う。それを言われたらそうなのですが、プレデターの価値観だと「弱者は悪」じゃないんですよね……。狩りの対象にならないってだけ。プレデターが重視するのは勇敢さ。
「名誉なき者は一族にあらず。そして名誉のために戦わぬ者に名誉はない」
デクが戦わずに逃げてるような奴なら、「臆病者は恥だから殺せ!」ってなるのは分かるんですが、戦おうとしている若者に機会を与えないのは掟に反してる。
色々とオカシイところが沢山あって、兄貴が弟に対して「カリスクを狩る? その獲物は強すぎるから死ぬぞ?」と心配する場面がある。ですが、プレデターの価値観は「狩りの成功は名誉。狩りで死ぬのはそれに次ぐ名誉」です。たとえ弟が死ぬとしても勇敢に戦ったのなら誉れなんですよ。
兄者が特別に弟デクを可愛がってた可能性もありますが、父親もおかしいのですよね。まずデクを殺そうとしたときも、決闘じゃなくて一方的にハイテク武器を使ってる。
弱者相手に武器……? せめてデク君にも対等の武装させてやるべきだし、不意打ちはアカンって……(´・ω・`)
兄貴がデクを庇って戦い始めたときも同じで、父親は光学迷彩を使うんですよね。名誉を懸けた戦いだと、プレデターは光学迷彩を解くし、武器だって捨てるはず……。この親父……なんかおかしくない……?
弟が無謀な狩りで死ぬのを心配する優しすぎる兄。不出来な息子が狩りに行って名誉を得ると宣言してるのに妨害する父親。冒頭の時点で「あぁ、これはプレデターじゃないな。ディズニー映画だ!」と思いました。
名誉挽回のカリスク狩り…?
兄貴は父親に殺されて死亡。デクは兄貴の死を無駄にしないため、父親を見返すためにバッドランドに棲む不死身の怪物カリスクを狩猟し、トロフィーを持ち帰ると誓う。カリスクの棲む惑星に不時着したものの、宇宙船からはじき出されてメイン武器をロスト(レーザーキャノンやマスクなどは終盤まで出てきません)。
カリスクを探す中、原生生物に襲われて窮地のデクを救ったのは、ウェイランド・ユタニ社の女性型アンドロイド! 上半身だけのティアはデクに協力を持ち掛け、彼女を道具として使うことに……。

――これも設定的に変なんですよね。
プレデターの狩りは基本的に単独。「戦場では仲間を助けない」「仲間に助けられるのは不名誉」とされてる。
ティアはアンドロイド! 道具だからOK……? その理屈は駄目だって……。ティアと出会ったとき、いきなりデクは助けられてるんですよね。あれは無理やりすぎるけれども……。
道中、猿のような生き物バドにも懐かれるのですが……ディズニー映画っぽくなってきましたね……。ベトナム戦争の米兵、ギャング相手に戦う警察官、そういうのと戦うプレデターはもう見れそうにない。
陽気で美人なアンドロイド、愛嬌たっぷりのお猿さんマスコット。仲間に恵まれて、丸くなったもんだよ……。はぁ( ゚Д゚)
カリスクの正体
今回の獲物、カリスクはウェイランド・ユタニ社も狙う不死身の怪物。尻尾や首を切っても死なない。色々ありながらもデクはカリスク相手に奮闘(戦いの最中にティアが銃で加勢したのも、プレデター的には駄目だよね……)。再生能力が強すぎて、決め手に欠けて絶体絶命のデク。しかし、カリスクは攻撃を止める。

実は道中で仲間になったお猿さんはカリスクの子供。生き別れた子供がつけた唾液の匂いで、母親のカリスクはデクへの攻撃を躊躇する。その隙を狙って、ウェイランド・ユタニ社のアンドロイド達がカリスクを捕縛。ちなみに捕縛に使われた武器は、デクが乗ってきた宇宙船から鹵獲された凍結武器です。
あちゃー! ハイテク武器が人間陣営に鹵獲されてるぅっ!?
今までのプレデターは自爆で戦利品を奪われないように苦心してたってのに! 宇宙船が不時着したから仕方ないとはいえ、プレデターの武器を人間製アンドロイドに盗まれるってどうなの( ゚Д゚)
ウェイランド・ユタニ社の勝ちでよくね?
少しはエイリアン(ゼノモーフ)を見習えと思いながら、映画は終盤へ。移動中のトラックで見せられるデクの情けないシーン。
🦀「信じてたのに!よくも裏切ったな!」
🤖「ちが…そんなつもりじゃ!」
こんなプレデターは見たくなかった。そもそもティアはウェイランド・ユタニ社のアンドロイドだから、デクに味方するほうが裏切りなんだよね……。ティアの姉貴分だったアンドロイドは、デクを標本にしようとする。だけど、色々あってデクだけ脱出する。
この後の流れは分かる通り、ティアを救うためにウェイランド・ユタニ社の拠点を襲撃。梱包されてたティアを救出。囚われたカリスクを救出、子供と引き合わせる。感動の母子再会……。だけど、ティアの姉貴分がカリスクを殺害してしまう。メタ的に考えるとデクとカリスクを戦わせないためのご都合展開……。
何のために兄貴に逃がしてもらって、この惑星に来たんだよ……。情に流されてカリスクを狩る気なくなってんじゃねえか⁉ 感動の再会後、正々堂々の勝負をしてカリスクをトロフィーにすれば、この映画の評価を真逆にしてましたが、そんなわけないです。ええ。プレデターバッドランドの主人公デクは、マーベルヒーローみたいな存在に絆されちまったのさ……。
ちなみに、カリスクを殺した姉貴分のアンドロイドを即破壊されました。本当にデクとカリスクを戦わせないための舞台装置でしたね。哀れなり……。
家族愛賛美の結末
最後は兄貴を殺した父親が宇宙船で飛来。決闘になるわけですが、やっぱりこのシーンも不満です。
まず戦いを挑まれたのに父親は手下に始末を命じる。戦いを挑まれたのに、部下に任せるとか……プレデターなのか? こいつは……? それと部下も二人でデクに襲い掛かる。一対一やろ……なんで二人なんや……。しかも瞬殺されるし……。プレデターの株が下がり続ける。
父親とは1対1でしたが、やっぱり光学迷彩を一方的に使うんですよ。プレデターの決闘じゃない(´・ω・`)
デクは砂埃を巻き上げて光学迷彩に対抗するのですが、このアイディアを使いたいがために光学迷彩を使った気がしてなりません。シーン優先で脚本がお粗末……。最後の決着もデクが正々堂々と買ったはずなのに、ハイテク武器で拘束とかしちゃうから、勝負って感じがしませんでした。
字幕の読み間違えかもしれませんが、父親が「一族としてお前を迎え入れる」なんて命乞いもおかしい。負けたなら、負けを認めて自爆するのがプレデターだよ……。なんで今さら、「一族の長となるべきはお前だった」とか言い出すの? 情けない。
もっとおかしかったのはデクが「俺には家族がいる!」と言い返すところ。え? はい。家族……ね。女性型アンドロイド……カリスクの子供。機械とペット…。それがお前の家族なんか……別に……まぁ……いいけどさぁ……。そんな家族愛のキャラだっけ? まるで人間じゃないか?
父親を殺し、兄貴の復讐を済ませたところで飛来する新たな宇宙船。その宇宙船に乗っているのはデクの母親らしい。どういう目的かは不明だけど、なんか父親よりも母親のほうが偉いっぽい……。
女性のプレデターもいるとは言われてたけど……なんかもにょる……終わり方でした。せめて女性プレデターを見せてくれ!
【総評】今のハリウッドが作れる限界
プレデターの兄弟愛、アンドロイドの姉妹愛、カリスクの親子愛……うん、これディズニーのファミリー映画だ! 主役をプレデターにする必要があったか否か。ないです。でも、プレデターじゃないと私は見に行かなかったので、必要な戦略だとは思います(‘ω’)ノ
ここから先は、さらに辛口な講評。ケチを付けてると思ってください。
プレデターの父親が徹底した悪役になってるのは「家父長制」に対するアンチテーゼだと思います。子供を虐待する父親ですね。年上の優しい兄が弱い弟を守る。しかし、兄は死んでしまう。弱かった弟は成長を決意する。……よくある王道です。
アンドロイドの姉妹愛やカリスクの親子愛もね……。ディズニーっぽいです。企業に魂を売り渡した姉アンドロイドが悪役にされたのも、なんだかなぁ……。恐ろしい怪物とされていたカリスクも、飼いならせるペットにできると分かってしまって残念です。本当に……。この映画に恐ろしい怪物は一人もいないのですよ……。
家族愛やフェミニズムのメッセージ性を込めるのは、昨今の流行りだから分からなくはないです。でも、もっと技巧を凝らしてほしかったかな。最後に母親の乗った宇宙船が威厳たっぷりに出てきたのも「父親の醜態を演出したから、次は母親を持ち上げる感じね。うん。だろうな」と頷きました。父母の両方を否定すると、親殺し肯定になるので、母親は絶対に持ち上げるんですよ。
昔だったら、エルダープレデター(長老)が登場して勝者を褒めてたかな。エイリアンvsプレデターも私は好きじゃないですが、まだプレデター文化にリスペクトがあったと思います。
プレデターという野蛮で崇高な異種族を、現代人の清廉でちっぽけな価値観で押し固める作風は大嫌いです。
それと、グロ表現を避けるためにアンドロイドを配置したろ! ストーリー上で人間が一人も出てこないから、変だなと思ったよ! アンドロイドがゲームで言うところのゾンビ枠になってる……。表現の幅が狭まるなぁ。
過去作とは全く別、SF映画としてみるのなら……かなり良いとは思います。しかし、映画「プレデター」シリーズの一つとして見るなら、駄作の評価は覆らない……。
【余談】狼の解釈がゴールデンカムイと真逆
漫画&アニメとハリウッドの差が如実に現れたのがオオカミに対する解釈でした。
プレデター:バッドランドで、ティアは地球の狼について「狼は群れを守る。仲間想いな生物」と説明します。しかし、ゴールデンカムイでは「狼は合理的な生き物。弱い狼は群れを追い出され、役割がなければ殺される。だから美しい」と表現されました。
どっちの解釈が狼の生態に照らして正しいかは分かりませんが、綺麗に正反対なんですよね。
ディズニーの思想は綺麗ですが、だからこそ傲慢に感じます。人間社会では弱者救済は当然ですが、自然界にそんなものはないです。弱肉強食が当然。弱ければ追い出されて、死んでいく。
プレデター:バッドランドの終盤では、武器を失ったデクが原生生物を利用して、ウェイランド・ユタニの基地を襲撃します。肩にひっついた酸を吐く触手が大活躍! でも、釈然とはしません。飼いならすの早すぎるし、自己犠牲でレーザーキャノンから守ってくれる野生動物なんていませんよ……。あれは都合が良すぎる。
キリスト教的な価値観が見え隠れしちゃうんですよね。自然生物は神が人類に与えた家畜みたいな……。支配して当然……! 動物と通じ合える! みたいなディズニーのお花畑思想……。原生生物の美しさが損なわれてます。生き残るためにプレデターを利用するならともかく、身を投げ打ってまで助けはしないでしょ……。キリスト教的な西洋価値観を批判してるわけじゃなくて、ちぐはぐなんですよ。中途半端っていうのかな。





