――世界が憎い。
――死に際の少年は世を呪う。
――幸せな人間が妬ましかった。
小学校で隣の席になった男の子と友達になった。いや、女の子だっただろうか? 名前は思い出せない。顔も忘れてしまった。
きっと相手も忘れたはずだ。
たったの一カ月だけ、地元の小学校に通った。学校を楽しみにしていた。だが、奇妙な発熱が続き、小児医療クリニックで診察を受けた。
深刻な面持ちの町医者から「珍しい病気かもしれない」と告げられた。もっと大きな病院で検査入院する必要があると紹介状を書いてもらった。
大学病院に入院して精密検査を受けた。その結果、家にも帰れなくなった。医師や看護師のざわつきは覚えている。症状が落ち着けば自宅療養に移れると、気休めの言葉をかけてもらった。
当時、幼い子供ながらに「ああ、この大人達は気遣いで嘘をついている」と感じ取っていた。
病状は悪化の一途を辿った。薬の副作用に蝕まれた身体は、枯れ木のように細くなった。けれど、この薬のおかげで少年の寿命は伸びた。
小学校に通えないまま、中学生の年齢になった。二足歩行どころか、四つ足で這うことも難しくなり、日に日に身体は衰弱した。院内学級にも通えなくなった。両親のお見舞いも減った。少年の話し相手は、主治医の先生が多くなった。
先生はとても傲慢な性格で気難しい人だ。
周囲から疎まれていた。でも、とても尊敬されている名医だ。
患者の人命を救う。その一点に関しては誰よりも本気の人だった。誰がどう考えても死ぬ運命にある患者でさえ、救おうと全力を尽くしてくれる。奇病を発症した少年が十五歳まで生き永らえたのは先生のおかげだ。
両親は既に希望を捨てた。新しく生まれた弟に夢中で、衰弱していく最初の子供を見ようとしなかった。責められはしない。人並の愛情はあった。だけど、並外れた愛情はなかったのだ。
衰弱しながらも、生き続ける息子を直視できなかったのかもしれない。あるいは恐怖していたのか。
――あの子はいつ死ぬんですか。
――あんな姿になるくらいなら。
――なぜ生かす必要があるのですか。
――ずっと苦しみ続けるのなら。
いっそ死なせたほうが幸せだ。ある時、そんな口調で両親は先生に質問した。聞かれていないと思ったのだろう。先生は頭がいいから、病室では答えなかった。指先すら動かせなくなっても、バイタルサインで患者の意識があると分かっていたのだ。
実際、周囲の会話を少年は認識し続けている。
――安らかな死を望まれても、少年は死に抗い続けた。
生への執着は恐怖心からではない。自分を見ようとしてくれない肉親へのささやかな復讐。そして、自分を生かしてくれている名医への返礼だった。
――けれど、その抵抗の日々もついに終わる。
「来週、生命維持装置を止めることになった。君のご両親は尊厳死を希望した」
その予想はついていた。ベッドの上から動けず、指先すら動かせなくなった息子。この半年は生きているだけの状態だった。
「患者本人の同意がなければ、安楽死はできないのだが……。君は意思表示ができない。でも、意識はあるんだろう? だから、私は反対した。だが、担当医を外されてしまってね」
一方的に先生は語りかけてくる。十年の付き合いがある。少年が視力を失ってからは、ライトノベルを音読してくれた。
誠心誠意、患者に尽くす。先生の気高き美徳には感服してしまう。なにせ、不服そうに異世界ファンタジーの低俗な文章を読み聞かせてくれたのだ。
「珍しい症例だから、君の治療費は病院と政府が負担している。だが、人道的な見地から君を安らかに眠らせるべきだという意見がある。世論やメディア曰く、私は子供を実験体にしている税金泥棒のマッドサイエンティストだそうだ。……低能の相手は本当に疲れる」
先生の悪い癖は未だに直らない。
頭は良く、口が悪い。いつも人を見下す。だから、いつも悪者にされる。誤解とはちょっと違う。
子供にだって分かる明らかな悪癖。
ある種の自業自得だ。あからさまな態度を偽る性格であれば、きっと順風満帆な人生だったに違いない。でも、自覚している当人はまったく直す気がなさそうだ。
付き合いの長い患者や同僚、看護師達だけは先生の本気を知っているから、尊敬が嫌悪を凌駕する。疎みながらも敬服の念を抱く。
「君と私の付き合いも十年に及ぶ。君は六歳で発病し、十二歳で余命一年の宣告を受けた。だが、十六歳まで生き延びた。……凄いことだ。よく頑張った」
十年の闘病生活。まさに死闘だった。少年は人生のほとんどを病室で過ごした。
「私は天国だとか、地獄だとか。あの世を信じちゃいない。だが、君は違ったな。……死後の世界では好きにすればいい。自由を謳歌したまえ。魔法や奇跡はあるのだとしたら、君は確認できるはずだ」
先生の非科学的な言動に驚いた。こんなことを口にする人ではなかった。
手足が動いた頃、異世界転生の小説を読んでいたら、小馬鹿にされたのを思い出す。死後の世界を先生は否定していた。神だとか幽霊だとか、宗教やオカルトを嘲り笑う嫌な人だった。気遣いだって下手だ。子供相手の配慮にも欠けている。
――だから、確信する。もうすぐ死ぬのだ。死神の足音が聞こえる。
「力及ばず申し訳ございませんでした……」
先生は深々と頭を下げて謝罪する。
死ぬのは嫌だ。しかし、もはや死ぬしかない。
今日まで自分を生かしてくれた名医はいなくなる。来週には生命維持装置を外れて、家族に看取られてこの世を去る。
(そんな惨めな末路は嫌だ。自分で生き方を決められなかった。死に方まで奪われて堪るか……!!)
己の意思で死に手を伸ばした。今まで押し退けてきた死を引きずり込む。病魔に肉体を食い散らかされても、その魂だけは強靭であり続けた。
――如月神夢威はこの世を去った。十六歳の少年だった。
◆ ◆ ◆
清らかな光の中に意識が沈む。天上の頂を深淵の光が覆った。絶命は一瞬であったように思えたし、永劫の時間を過ごした気もした。永眠から目覚めるとキサラギは霧深い森を彷徨っていた。
「……?」
両足で地面を踏んでいる。指先に力が入る。ずっと開かなかった瞼を見開いて、原生林の風景を眺めた。まだ現実感が乏しい。まるで夢を見ているようだった。
「ここは? あの世か……? はははっ……! 何だよ。やっぱり、あるんじゃないか。先生は間違ってたな。自信満々だったくせに……。科学と医学ばっかりで、オカルトを貶してたけど、死後にも世界はあったぜ」
寒さは感じない。
身にまとっているのは純白の襤褸布だけだ。
「さて、問題はここが地獄と天国のどちらかってことだ。初期装備は真っ白な襤褸布だけかよ。病院服は嫌だけど、まともな服を着させてくれ。死に装束をケチりすぎだろ」
自分の肉体を確認してみる。痩せ細っているが、健康体だった。
「おぉっ、髪の毛が復活してるじゃん。いいね。白髪のままだけど、まあいいか。十四歳のとき、総白髪も抜け落ちちゃったからな。あっ! ひょっとして……! これって十三歳の身体か!? そんな気がするぜ」
カムイは十二歳で余命一年を宣告された。本来ならば十三歳で死ぬ運命になった。それを気力で生き永らえ、十六歳まで粘った。死後の世界では十三歳の身体に戻っていた。
「なるほどな。この痩せ具合。三年前の感じだ。幸先がいい。身体の自由が利く。あの世でも寝たきりじゃ詰まらない」
周囲を見渡すが、濃い霧が辺り一面を覆っている森だ。
「……てか、案内人とかいないの? あの世ってセルフ式?」
文句を言いながら、自分の両足で歩き回れる喜びを味わう。誰の助けも借りずに動ける。当たり前の幸せが心を充足させる。
カムイが迷い込んだ森は人の手が入っていない原生林だった。見たことのない樹木が天高く伸び、大空を枝葉で覆っていた。日光が地表に届かないせいで、低木は淘汰されている。
「あの世って生態系が豊かだな」
樹液に群がる昆虫を見つけた。不思議な形の甲虫はカムイが近づいても逃げない。試しに指先で触れてみようとしたら、すり抜けてしまった。
「触れられない?」
甲虫を掴もうとしたが駄目だった。それどころか伸ばした手が樹木を貫通した。
「俺って幽霊……? 足はあるぞ? 地面には立ってる」
地面を踏みつける。足の裏で平面を踏んでいる固い感覚がある。
「生物に触れられない感じ?」
足元に落ちていた枯れ枝を掴む。だが、持ち上げられなかった。
「……すり抜ける。どんな原理だよ」
考えたところで答えは出ない。
「石ころも駄目か……。裸足で踏んづけても痛くないからいいけど……。霊体? 魂だけになっているのか? 意味わからん。おもしろ。ファンタジーじゃん」
さらに進んでみようと前方を見た瞬間、白い霧の中で揺らめく人影を視界に捉えた。
「お? 誰かいる……!」
カムイは小走りで森を駆ける。呼吸が乱れる。酸欠の感覚とは何かが決定的に違った。細胞に疲労は溜まらず、魂そのものが弱まる。霊体にも体力があるのだと実感した。
(外国人……? ん? いや、人間じゃない?)
森で出会った人物は長身の女性だった。派手な民族衣装を着ている。
遠目からだと真っ黒なウエディングドレスの花嫁衣裳。近くで観察すると淑女の喪服だ。細部に施された金糸の刺繍は、何やら儀式的なものを感じさせる。爆乳を圧迫するドレスの胸部は、破裂寸前で窮屈に思えた。
(すげえ長身の美女……。乳房や尻が馬鹿デカい。ん? そもそも全身のサイズスケールが大きい)
端正な顔立ち、日本人離れした長身のスタイルを誇る。しかし、映画で見た外国人女優とも違った雰囲気の美女。天女のような気高き美顔だ。生涯で一度も訪れたことはないが、美術館で飾られている美女の彫像はきっとこんな要望なのだろう。
「あの……。言葉、分かる? あの頭から生えてる角って……本物……? トカゲの尻尾もあるし……。人間じゃない? もしもーし? ハロー? グーテンターク? ボンジュール? オラ? ブエノスディアス? ズドラーストヴィチェ? ニーハオ?」
カムイの問い掛けに美女は無反応だった。
思いつく限りの外国語で話しかけてみる。けれど、美女はカムイの存在に気付く素振りを見せない。
「これ……。俺の声が聞こえてねえな……」
美女の周囲を歩き回ってみる。こちらの動きには無反応。やはりカムイの姿を認識できていなかった。
「ガン無視じゃん。バグまみれのゲームをプレイしてる気分だ。NPCが無反応だとこんな気持ちになるんだな」
カムイは間近で角と尻尾が生えた美女を観察する。コスプレイヤーの作り物ではない。リアルな角の質感、左右に動く尻尾、本物の亜人種だ。
「まあ、でも、いくつか分かった。ここは日本じゃない。別の世界だ。角と尻尾が生えた人間は、俺の生きてた世界にいなかった。この美貌も人間離れしている。すごい完成度の美女だ。ハリウッド映画の女優よりレベル高いぜ」
人間で例えるなら二十代後半くらいに見える。容姿は若々しいが、幼さは残っていない。表情は暗く、苦労が滲んでいた。
とんでもない闇を抱えていそうな薄幸の美女であった。
「竜人かな? 翼はないけど、トカゲよりはドラゴンって雰囲気だ。それにしても、オッパイと尻がデカい。グラビアアイドルとかセクシー女優すら比較にならないような肉体……。俺の顔よりオッパイがデカいぞ……。重そう……。ここまでデカいと邪魔なんじゃ? JカップとかKカップ? もっと大きいかも?」
漫画雑誌の表紙を飾っていた巨乳グラビアアイドルよりも遥かに肉感的なスタイルだった。
カムイの主治医は「そのグラビア女優は豊胸手術と画像修正で乳房を大きくしているだけだ。美容整形もしている。医者だから分かる。高望みするな」と、少年の夢を冷酷に破壊していた。
余命宣告を受けた翌日の出来事だったので、カムイは鮮明に覚えている。
「見えてないから、好きなだけエッチな悪戯できそうだ。ああ、でも触れないのか」
指先で乳首を突っついてみるが、通り抜けてしまった。物理的接触は不可能だった。
「このデカ乳女……。一人で何やってんだ? お散歩か? 何にも喋らない……。いや、待てよ。俺みたいに独り言をベラベラ喋っているほうが変か?」
思い悩んだ表情で美女は歩き続ける。
(うげ……! この思い詰めた絶望顔……! 病院で何度か見たな)
しばらく観察していたカムイは気付いてしまった。
「――お前、死ぬつもりだな」
末期患者として病院で十年近く暮らしていた経験で分かった。案の定、美女は手提げから縄を取り出した。
太い高枝に縄を括り付ける。美女は体重を支えられる首吊り用の木を探していたのだ。しかも、根本には苔の生えた大岩がある。足場にはぴったりだ。
「ここ。天国や地獄じゃなさそうだ。別の世界……。異世界か? はぁ……。なんでもいいや。ほんと、詰まらねえ。なんで自殺を見守らなきゃいけないんだ」
カムイの推測は正しかった。死を決意した美女は首吊り自殺の準備を着々と進める。
「お前さァ。健康な体で五体満足じゃん……。そんで、すげえ美女。生まれながらに勝ち組だろ。なんで死ぬ?」
「…………」
「あー。胸糞悪い。俺の声なんざ、聞こえちゃいねえか」
大きな石の上に立った美女は、首縄に頭を通した。静かに呼吸を整える。そして、一度だけ空を睨みつけると、足場の大岩から飛び降りた。
――美女の両足が宙に浮かぶ。臀部から生えた尻尾が苦しそうに荒ぶる。
カムイは美女の首吊り自殺を妨害したくなった。
善意からの行動ではない。嫌がらせだ。せっかく気分良く、異界の森を散策していたのに、不愉快な思いをさせられた。だが、カムイは生物に触れられなかった。物を動かしたり、破壊することもできない。
腹を立てながら美女の首吊り自殺を眺めていた。
「――くだらん」
主治医の口癖だった言葉を呟く。カムイは魂魄だけの自由な身体となって異世界に降り立った。異世界降臨、直後に見たのが美女の首吊り自殺である。
「――本当にくらだない」
唾を吐き捨てたくなるくらい不愉快だった。
人生から逃げた自殺者に背を向け、立ち去ろうとした。その時だった。纏っていた純白の襤褸布が絡みついて、カムイの歩みを阻んだ。
「そこの貴方? 何方? 幽世の森に住まう聖霊様……?」
呼び止められたカムイは振り返った。
美女の首吊り死体が喋っていた。
「今は俺が見えるのか? ひょっとして……死者になったから俺を認識できるようになった? なるほどね。ああ、なぜか分かるぜ。――俺はそういう存在みたいだ」
襤褸布の糸が解れていく。白い糸が空中を漂い始めた。
「あぁ……。ありがとうございます。幽世の聖霊様。私の罪深い魂を清めていただけるのですね……!?」
「おいおい。待てよ。勘違いすんな。感激してるところ悪いが、そんな尊い存在になった覚えはないぜ。俺は■様じゃない」
カムイの言葉が一部だけ掻き消された。
異世界に存在しない概念を口にしてしまったのだ。自分や美女が日本語を話していないことに気付いた。
「聖霊様? 何を仰っているのでしょう? 私には理解できない言葉が……」
「はぁ? マジぃ? この世界に■はいない? くそ! 説明が七面倒だな。都合よく翻訳とかできないもんなのか?」
「え……。あの……。申し訳ありません……!」
「いや、いい。謝るな。怒ってない。てかさ、お前、自分が悪いとは欠片も思っちゃいないだろ。謝るのが癖になってる奴の謝罪ほど、無価値なものはないぜ」
「……ぁ……はぃ……」
「この世界の人間じゃ、きっと理解できない。■の説明はこちらの言語だと不可能らしい。まあいいさ。とりあえず自己紹介。俺の名はカムイだ。お前の名前は?」
「私はミレイユと申します。幽世の聖霊カムイ様……。お会いできて光栄でございます」
「違う。俺は……。くそっ……。なんだ……。この知識は……? 知らないのに、全てを知っていることになる。あー。気味悪い」
カムイの脳内に不可思議な記憶が流れ込む。誰かに教えてもらったわけではない。己の能力は最初から知っていたのだ。
(この世界に降臨した俺は人間じゃない。超常の存在だ。俺には特別な能力がある。契約を交わすことで発動する奇跡……! 能力に関する記憶を刷り込まれた。知らない間に知っている知識に置き換わった……! ゲームのチュートリアルかよ……! 薄気味悪いな)
カムイの裸体に纏わりついた襤褸布が千切れ、白い細糸が浮かび上がった。空中を漂う糸は文章を紡いだ。それは死者と交わす契約の全文であった。
「ミレイユはこの文字が読めるか? この世界で使われてる言語だろ」
「はい。読めますわ。これは契約……なのですか?」
「俺にはさっぱりだ。この文字は読めない。異世界の知識が皆無だからな。だが、示された契約文の内容は分かっている。よく聞けよ。そして驚け! これは死者復活の契約だ。すげえだろ? 俺は超常的な存在で、死んだ奴を蘇らせる能力がある!」
「死者を蘇らせる力……!?」
「そうだ。お前は自殺した。愚かにも死んじまった。死者になったお前は俺と契約できる状態になった。だから、こうして仲良くお喋りしているわけだ」
カムイは契約の第一条を指差した。そして、内容を読み上げる。
「第一条〈加護〉本契約の効力が及ぶ限り、巫女は蘇り、不死の加護を享受するものとする」
その瞬間、美女は慌てた様子で叫んだ。
「待って! お待ちください! カムイ様! 蘇りたいわけではありません! 不死も欲してはおりませんわ!! 私は死にたかったのです!!」
「生憎だったな。俺の能力は蘇りだ。生き返りが嫌なら契約を断れ。そんで永眠しろ。続けるぞ。――第二条[手続]本契約は、全文を明示した上で倶生と巫女の交合をもって締結される」
「…………」
ミレイユは糸で紡がれた契約文を見詰めていた。
「ん? 交合ってなんだ……? まあいいや。とにかく契約の全文を読み上げるぞ」
契約における倶生とは、異世界降臨したカムイ。巫女は契約を持ち掛けられた死者、すなわちミレイユを示している。人生経験の浅いカムイは交合の意味を理解していない。しかし、竜人の巫女であるミレイユは知っている。
交合とは男女の契り。儀式的な性行為を遂げることで、カムイとミレイユの契約は結ばれるのだ。
そうとも知らずにカムイは、全ての契約条件を律義に読み上げる。契約の全文を開示しなければ、契約締結の手続きは始まらないからだ。
―――――――――――――――――
第一条「加護」
本契約の効力が及ぶ限り、巫女は蘇り、不死の加護を享受するものとする。
第二条「手続」
本契約は、全文を明示した上で倶生と巫女の交合をもって締結される。
第三条[義務]
倶生は契りを交わした巫女に奉仕する。
第四条[権利]
倶生は貢がれた贄物を所有する。
第五条[受肉]
倶生の肉体は巫女の愛妄を象り、顕現する。
第六条[契約の記録]
本契約の全文は指輪に刻印され、永劫の誓いとする。
―――――――――――――――――
契約は全六条で構成される。
倶生の化身と契りを交わした死者は蘇り、不死の巫女となる。巫女は加護を得る代わりに、倶生に貢がなければならない。
契約条件は対等だ。倶生は巫女に奉仕する義務を負っている。お互いが契約で拘束され、契約を破棄する条項は設けられていない。
「お前って死にたかったんだろ。じゃあ、余計なお世話だな。まだ誰とも契約してないから分からんけど、蘇ったら二度と死ねなくなる感じだぞ。これ」
「そうみたいですわね……」
「ミレイユだっけ? なんで自殺した? 病気? 借金? それとも犯罪者?」
「違います。……私は自分の人生が嫌になったのですわ」
「人生?」
「嫌な男と結婚して、生きているのが辛くなりました」
「えっ? お前……。離婚すればいいじゃん。そんな理由で死んじまったの?」
挑発的な態度で問い返した。
竜人族の美女は瞳孔を見開き、口から火花が散った。逆鱗に触れたのだ。感情を抑えていたミレイユの冷めた表情から、溶岩のごとき怒気が一気に漏れ出した。だが、美女の激昂で怯むカムイではなかった。
十年以上も闘病生活を耐え忍び、モルヒネですらも緩和できない激痛に抗って生き永らえた。生に対する執着と誇りは誰よりも強い。自殺を選んだ人間の感情も弱くはなかった。
「私にとっては十分な理由ですわ! 私は竜人族の里で生まれ、古い掟に縛られて生きていました。竜郷ドラカ=ヴェルグの結界を維持する巫女……! 霊媒の才能があったせいで、私は辺境の地で一生を終えなければならない……!! 好きでもない男と結婚して、愛したくもない娘を産んで……!!」
(変わった服装だと思ったけど、竜人族の巫女か。聖職者かな? そんで夫と娘がいると……。言われてみれば、人妻の雰囲気がある……。実はかなり歳上? そこそこ若く見える)
「私はこの世に生まれてからずっと我慢してきたわ……!! 自分の幸せを諦めて、一族のために尽くしてきたのにっ……!!」
(首吊り死体が愚痴を吐き散らかす姿はシュールだ。しかも、喋る、喋る……。ストレスを貯めてたんだな。俺はこの愚痴をずっと聞かなきゃならんのか?)
「私は夫が嫌い! 大嫌い!! 昔からあの気取った男が嫌だったわ。族長の家系だから結婚させられた。嫌だったのに!! あんな粗暴な男! 時間が経てば……夫婦になれば変わると思ったわ……。でも、何も変わらなかったの……。娘が産まれた後も……。私は家族を愛せなかったわ。こんなの……私が望んだ幸せじゃないのっ……!!」
「不幸な結婚と役目を負わされたのは同情するが……。そんなに嫌なら離婚とかすればいいじゃねえの?」
「ええ。そうね……。男ならそう言うわよね? 正しいわ」
美女は怒った顔より、笑った顔が恐ろしい。カムイは新たな経験を味わった。
(なんだろう。ヤバい地雷を踏んだ気がする)
「夫から離婚を申し込まれたわ。あの男……! 私の妹と浮気してたのよ! あぁ……! あああぁあ!! あぁああああああああああああぁぁああ!! 双子の妹……! 私と違って巫女の素質がないから自由な生き方を許された妹! 掟に縛られず、あちらこちらを旅して、自由を謳歌している妹! 私が堪えてきたとも! 我慢も知らずに!! あの女!!」
(え? なに? 急に発狂した。こいつ、こわ……)
「私の夫は妹をずっと愛してたんですって……!! ふざけないで! だったら! だったらっ……! 結婚する前に駆け落ちすればいいじゃない……!! 今さら? 私の人生を踏み躙って男が『古い掟から脱却して、お互いのために生きよう』と言ってきたの!! 私の幸せを壊してきた奴が!!」
(しばらく黙っておこう。口を挟むと矛先がこっちに向きそうだ)
「私は我慢したのに! 掟のために! 里のために! 同胞のために! 自分の幸せを棄てたのに……!! 嫌いな男の子供を産んで……!! 憎らしい娘に愛情を注いで……!! ずっと! ずっと耐え忍んで!! 本心を殺し続けた! その結果が……!! 許せない! 許せない! 許せない! 許せない! 許せない! 許せない! 許せない! 許せない! 許せない! 許せない! 許せない! 許せない! 許せない! 許せない! 許せない! 許せない! 許せない! 許せない! 許せないぃッ! 私を不幸にした奴らの幸せを見るくらいなら死ぬわ! それが責められること……!?」
「…………。どんな理由であれ、俺は自殺する奴に共感できねえよ。俺は生きたくてしょうがなかった。でも、死ぬしかなかった。不幸や理不尽から逃げるために死ぬ。そんな考えは理解したくもない」
「じゃあ、やっぱり……私が悪いっていうの!? 聖霊の貴方まで私を責めるの!」
凄まじい形相で睨まれ、怒鳴りつけられた。
「そうは言ってねえだろ。俺がミレイユだったら、気に入らねえ奴らに復讐するけどなァ。恩師からも『自由に生きろ』って言われたし……。お前、この世が憎くないのか? 理不尽や不合理を受け入れちまう気か? 情けねえな」
「…………」
「まぁ、人生は千差万別、人それぞれだ。責めはしねえさ」
「…………」
「さっきの愚痴で自殺した理由はよ~く分かったぜ。俺との契約でミレイユは蘇りたくないだろ? いいさ。他を探す。だけどなァ、返事を聞かなきゃ、この場を離れられない。だから、言っとく。――死者の魂に問う。汝、我と契りを交わすか?」
ミレイユの返答は拒絶。
そうに決まっているとカムイは油断していた。
「――契約をお受けいたしますわ」
死者の魂は答えた。その瞬間、仮契約が結ばれ、ミレイユの死体が息を吹き返す。首に巻き付いた縄が解けた。
「はい、はい。それじゃ、さような――。え? なん言った? は? 俺と契約すんの?」
「はい」
「死にたかったんじゃなかったのか? 俺の話をちゃんと聞いてた? 不死になるんだぞ? 死ねないからな? 契約したら蘇るんだ」
「カムイ様と出会う前だったら、自殺で人生を終わらせていましたわ。けれど、天恵を与えてくださった……!」
「へ? 俺……なんか言っちゃった?」
「私を不幸にした奴らの幸せを見たくないなら……!! そうですわっ! ふふふっ! 復讐すればいい!! 何もかもメチャクチャにすればいいのよっ……!」
(俺の余計な一言で変なスイッチが入った。狂気に取り憑かれるってのは、このこと……?)
「私の人生に犠牲を強いた連中を不幸の底に沈めてやるわ……! 里を滅ぼすことだって、私ならできる……!!」
「は!? 里を滅ぼすだって? え? え? 滅ぼす? マジで言ってんの?」
「ええ、私を掟で縛り付けた忌まわしき竜人族の里……竜郷ドラカ=ヴェルグを滅ぼす……! それが私の願いですわ」
(うわー。こいつ……。マジもんじゃん。トチ狂ってるなぁー。……案外、おもしれー女かも。せっかく異世界に降臨したんだ。ミレイユの復讐劇を見守るのも悪くないか? このデカ乳女は頭がおかしくなってるし、退屈はしなさそうだ)
「カムイ様。契りを交わし、貴方様だけの巫女となりましょう! 契約締結の手続きをお願い申し上げますわ!」
蘇ったミレイユは美麗な土下座を披露する。両脚を折り畳んだ座位は巨尻と腰の括れが際立つ。豊満な爆乳は、球形の輪郭が背中越しからも視認できた。
「ちょい待ち。契約の手続きね。え~と……第二条の……、ミレイユって交合のやり方を知ってる? 意味がよく分からん。辞書もスマホもないからな。どーすっかな。手を合わせりゃいいのか? 指を交差する? まさか? キスじゃないよな?」
「ご存知ないのですか?」
「知らねえ。そりゃ、契約を交わすのはミレイユが初めてだ。誰にだって初めてはあるだろ?」
「…………」
「急になんだよ。値踏みするように見て……」
飢えた獣が美味しい獲物を見詰める。そんな視線だった。
「握手でも、接吻でもありませんわ。カムイ様。交合とは男女の性行為。すなわち、性儀式ですわ」
「へ? それって子作りする的な……?」
「あら。本当にご経験がないのですね」
優し気な笑みを向けられる。
「なっ! なんだよ! 経験者ぶりやがって!」
「あらあら。ふふっ。私、これでも経産婦ですわよ」
「そうだった……。経験者か! とっ、ともかくさ。俺があるような年齢に見える? あ! え? ん!? てかさ、いいのか!? 夫婦以外でのセックスは浮気じゃん?」
「夫に捨てられた妻ですわ。今さら私だけが貞操を気にする必要がどこに?」
妖艶な人妻は少年との間合いを詰める。
にじり寄り、手の届く範囲に距離を縮められた。
「娘がいるんじゃねえの? 本当に俺とヤっちゃう気?」
カムイは半歩ほど後ろに下がる。すると、ミレイユは半歩、前に進む。
「産み落としたときから、私はあの娘を愛していません。嫌悪すべき男の血が混じった子供……! 今日までは母親として振舞ってきたけれど、もう限界ですわ。母親を辞めるためにも……。どうか……!」
血走った眼で竜人族の巫女が縋りついてくる。
(え? なにこの展開……? こんなとこで、初対面の女とセックスしなきゃならんのか?)
この世ならざる少年は困惑した。
仮契約中の死者が蘇るための契約は、交合が成された瞬間に結ばれる。
「お願いですわ。私を抱いてくださいませ……。カムイ様」
巫女装束の肩紐を外し、規格外の超乳を露出させた。巨峰に相応しい巨大な乳輪は、焦げ茶色の染みが円形に広がっている。望まぬ婚姻で子を産んだ哀れな人妻の熟体。艶めかしい大人の色気に少年は圧倒される。
「ちょ、ちょっと……まっ……! まじ!?」
大質量の乳房に顔面を包まれ、カムイは枯れ葉が敷かれた山林の大地に押し倒された。痩せ細った矮躯を覆っていた純白の襤褸布が開ける。
覆いかぶさってきた人妻が下着の腰巻を解き、恥毛の茂った女陰を男根に擦りつける。素っ裸にひん剥かれた少年は困惑の渦中にありながらも、女体の色香に魅了されていた。
男の本能が熱り勃つ。生前は排尿でしか用いられなかった男性器は、死後になって本来の役割を果たす。鼻息を荒くした女は、股から愛涎を滴り垂らしていた。オマンコは直下に聳えるオチンポが欲しくて堪らないのだ。
今まさに交合を遂げんとするミレイユは生唾を飲み込み、喉を大きく鳴らした。幽世の森は静寂に包まれていた。
「…………」
ミレイユは動きを止めて感情を巡らせている。
掟に縛られた窮屈な人生。鬱屈した生活で心は疲弊していった。愛していない男に抱かれて、子供を産んでしまった。
夫を愛せないのなら、せめて娘を愛そうと努力した。しかし、腹を痛めた我が子に愛情は湧かなかった。ひたすらに苦痛だった。理想の母親を演じ、因習に固執する竜郷ドラカ=ヴェルグの生活が素晴らしいものだと教育する。
「カムイ様……。オチンポの先端がオマンコに密着しているのがお分かりになりますか?」
「股がぬめぬめしてるのは分かる……けど……」
「どうされました?」
「……なんか……変なの。ミレイユって上品そうな見た目なのに、オチンポとかオマンコって言う人なんだ」
「上品……? カムイ様。私は下劣な卑女で構いませんわ。これは復讐の第一歩……! 私は不義を犯す……。私を裏切った夫を私も裏切る。カムイ様に抱かれて、生き返りの契約を交わす……!!」
昂ぶりで竜人族の美女は炎を吐き漏らす。
ミレイユの瞳孔は開き、唇から噴煙が溢れていた。悦びで流麗な竜尾を靡かせる。
「……俺とミレイユが繋がったら契約完了。自分の力は分かっているつもりだ。契約は永劫の誓い。六条で規定されている。それでも蘇る覚悟はある? さっきは迷っているように見えるけど?」
「捨て去る家族への名残惜しさで、迷ったりはいたしませんわ。私は全てを捧げ、契約を交わしたいと望んでおります……。けれど、カムイ様にもお気持ちはあるでしょう?」
「……まさか俺への配慮で?」
「望まぬ相手に抱かれる苦痛は知っておりますから……。どうしても嫌だというのなら……」
「別にミレイユが好みじゃないとか、嫌いってわけじゃないぜ。ただ……まぁ……初恋の人はいたかな。小馬鹿にされるだろうし、恥ずかしかったから秘密にしてたけど……。今だから素直になれるけど……。言えるうちに言っておけばよかったかな」
「やはり……。想いを寄せている娘がいたのですね」
ミレイユは妬ましく思った。
誰かを愛し、愛されること。渇望しながらも、満たされぬ愛情の飢え。
ミレイユには大切な人がいなかった。
竜郷ドラカ=ヴェルグの巫女は誰も愛せなかった。嫌いな者ばかりが増えていき、何者も愛せぬまま生きてきた。自分自身すらも嫌悪し、自死の道を選ぶほどに。
「好きだったのは娘じゃないよ。すごく年上の女性。たぶんミレイユと同じくらい? 普通だったら結婚してる年齢なのに、性格が悪くて貰い手がいなかった。だから、俺が貰ってあげてもよかったのに……って考えたりしてた。俺が成人まで生きていたら望みもあったのかなぁ……」
カムイはミレイユの腰に両手を添えた。くびれを撫で回し、ひとしきり揉んでから、臀部に指先をおろしていった。優しい手付きで巨尻を鷲掴むと、媚肉に指が沈み込んでいった。
「会ったばかりだからミレイユのことはよく分からない。初対面の印象は最悪だったけど、俺が好きになった人も最初は『絶対に仲良くなれないし、仲良くしたくないな』って感じてた。最期まで付き合ってみないと分からないもんだぜ」
陰毛で埋もれた経産婦の熟れたオマンコに亀頭を押し込む。あともう一押しで陰唇が開口する。
「初めてが私のような賤しい女でも……よろしいのですか……?」
ミレイユの鼓動が高鳴る。
相手は死者を復活させる超常の存在。契約を結べば後戻りはできない。竜郷を守護する巫女の重責。族長の妻としての貞節。腹を痛めて産んだ娘への慈愛。積み上げてきた清らかな道徳を踏み躙り、背徳の交合を成し遂げる。契約は永劫の誓い。
「俺って年上が好きみたい。まさか異世界で脱童貞するとは夢にも思ってなかったな。しかも、相手が竜人族の人妻なんだから面白い。――いいぜ。抱いてやるよ」
異世界で〈倶生の化身〉に転成した少年は、竜人族の巫女に導かれて、猛り荒ぶる男根を突き挿した。
(熱っ! これが交合……! 女の股穴にオチンポを突っ込んでる……!! 奥に進むほど肉の熱が強くなる。女の身体って、こんなに重たいんだ。デカ尻や太腿の重量で圧迫される……!)
カムイはミレイユの鬱憤と悲嘆を全身全霊で受け止め、猛った男根で慰める。
(オッパイが顔面に伸し掛かってくる。竜人族のくせに、牛みたいなデカ乳だ……! 雑誌のグラビアで見た巨乳なんかとは比較にならない大質量……! そんな巨女を俺は抱いてるんだ。繋がって……子宮に精を注ごうと……している……!!)
死人の肉体は再び命を宿す。
生気の温もりを欲し、人妻は淫らに股を広げて交合を深める。
「倶生の化身……♥︎ この世ならざる尊き御方……♥︎ カムイさまぁ……っ♥︎ 私はここに我が愛を捧げ、永劫の誓いをぉ……♥︎」
濃霧があたり一面を覆い尽くす幽世の森。
竜郷ドラカ=ヴェルグから離れた山峡で、巫女のミレイユは姦通の愉悦に身を委ねた。
(おぉっ、さすが人妻……! セックスの主導権を奪われそうだ……! でも、やられっぱなしは、なんか……! すげぇ、むかつくぞ……!!)
幼げで小生意気な少年は、力任せに抱きしめてくる。剥き出しの性欲を暴れさせ、荒々しく攻め立てた。童貞の拙いセックスを美熟妻の包容力で受け止める。
(もっとだ! みっともなく喘がせてやる! こうすると気持ちいいんだろ? 思いっきり! 押し挿れれば……!)
オチンポは絡みついてくる膣道の肉襞を退けて進む。
熟れたオマンコの最深部に到達した瞬間、左手の薬指に真っ白な糸が巻き付いた。
倶生の化身が纏っていた襤褸布から解れた細糸は、純白の指輪を形成した。交合のさながら、光り輝く契約の証に見惚れてしまう。
終わらせるために、幽世の森で首を吊った。人生に絶望していた。だが、希望は与えられた。同族への復讐。それがミレイユの生き続ける目的だ。
「――あぁ♥︎ 浮気してる♥︎ 私も♥︎ やっと裏切り者になれたわっ♥︎」
心から憎悪する夫にこの光景を見せつけてやりたかった。
「あんっ♥︎ んんぅっ♥︎ んぉっ♥︎」
少年と淫らに番う嬌態。竜郷ドラカ=ヴェルグの聖なる巫女が竜人族ではない幼童に抱かれている。
人生を縛り上げてきた古の掟を辱め、粉々に破壊する爽快感。何物にも勝る愉悦だった。
(尻肉の柔らかさがすげぇ……! 張りが強めなくせに、めっちゃ柔らかい! マシュマロのクッションみたいだ! 指先が沈む!)
(可愛い手付きでお尻を揉んでくれているわ♥︎ あぁ♥︎ オチンポをもっと奥にっ♥︎ 導いてあげますわ♥︎ 深いところで……つながるぅ……! あぁっ……! 私達の魂が結ばれているのが分かるっ……♥︎ 惹かれてしまう♥︎ カムイ様だけの巫女になっていくうっ♥︎)
尻を鷲掴みにされながら、濡れた膣穴を男根で掻き混ぜてもらう。
娘が生み落とした人妻の産道は、貪欲な淫乱オマンコに生まれ変わった。
「オマンコの膣内ってこんなに熱いんだ。すごく火照ってる。それに……気持ちいい……! セックスが好きになるかも……! もちろん、ミレイユのことも……!」
「あぁっ♥︎ あうぅっ……♥︎ カムイ様っ……♥︎ 私も……♥︎ 心が燃え上がっていきますわ……♥︎ まだ出会って間もないのに……♥︎」
「契りは結ばれた。指輪を介して伝わってるよな? 『第三条[義務]倶生は契りを交わした巫女に奉仕する』つまり、ミレイユに奉仕する義務を負うのは俺だ。どうしてほしい? なにがしたい? 欲しいものは? 不死の加護を得たんだ。欲望のままに、どんなことでもできるぞ」
「だ……っ♥︎ 出してぇ……♥︎」
「出す?」
「私を孕ませて……♥︎ 私の胎に子種を注いでっ♥︎ お願いっ! カムイ様……♥︎ あの夫に見せつけてやりたいのぉっ! 私にだって……! 私だって……!! 愛する人がいるっ……!!」
「復讐で妊娠すんの? おぉ、こわー。契約に従って奉仕するぜ。面白そうだから付き合ってやるよ。俺の精子で妊娠したいんだよな?」
「はいっ♥︎ あいつの全てを破壊するためにぃっ! ふひぃいぃっ♥︎ ひっ♥︎ ふひっ♥︎ 何もかもぶち壊してあげるんだからぁっ……♥︎ 私のオマンコをカムイ様のオチンポで寝取ってっ♥︎」
「えっと……精子を膣内で出せばいいの?」
射精の経験がカムイにはなかった。
「はいっ♥︎ オマンコの奥にっ♥︎ 種付けしてくださいっ♥︎ あんぅぅううぅ♥︎ ふぅぅふぅっ♥︎ ふぅっ♥︎ そうっ♥︎ それでいいですわ♥︎ そのまま膣内で撒き散らしてっ♥︎ んんぅっ♥︎ あんっ♥︎ あんっ♥︎ あっ♥︎ あっ♥︎ あっ♥︎ あっ♥︎ ああぁんっ♥︎ ふひぃっ♥︎ んんぅっ♥︎ いっ♥︎ いくっ♥︎ いっきゅぅうぅう……♥︎ んぅっ♥︎ あぁぁぁっ♥︎ ああぁっ♥︎ んっ♥︎ おぉっ……♥︎」
「んっ……くっ……。っ……!! はぁはぁ……。ふぅっ……! 初めて射精した……! 本当におしっこみたいに出るんだ。変な感じ!」
「あぅうっ……♥︎ あふぅっ♥︎ あんっ♥︎ 初めてなのですね。可愛いわ。カムイ様……♥︎」
(え? 可愛い? かっこいいじゃなくて……? またガキ扱い。それはムカつく。でも、射精って気持ちいいから、今はそれでもいいか……!)
ミレイユのオマンコでカムイは精通した。
「孕めっ! 孕んじまえ!」
爆乳人妻の膣内に精子を注ぐ。復讐心に取り憑かれた竜人族の巫女は、不貞セックスで懐妊することを望んだ。胎を夫以外の男に差し出し、凝り固まった傲慢な矜持を傷つける。
これは虐げられてきたミレイユの復讐であった。
「はぁはぁ……はふぅ……。ちょっと疲れた。……次はどうするんだ?」
膣内射精を終えたカムイは問う。すると、妖しく微笑んだミレイユは答える。
「次……? あらあら♥︎ カムイ様……♥︎ まだ続けますわよ♥︎」
「ふぇ?」
「お互いの精根が尽き果てるまで……♥︎ 私を抱いてくださいませ♥︎」
「え? マジぃ……?」
「契約の義務は果たしていただきますわ♥︎ きっちりご奉仕してくださるのでしょう。ふふっ♥︎ こんなに愉しいのはいつ以来かしら? 一滴残らず、搾り取ってさしあげますわ」
「ひょっとして……ミレイユはセックス好きなの? それとも年下好きの変態だったのか?」
「カムイ様とのセックスは大好きになりそうですわ。だって、とっても小さくて可愛い……♥︎ んふ♥︎ おんんっ♥︎ んっ♥︎ んぅうっ♥︎ あっ♥︎ あっ♥︎ あっ♥︎ あっ♥︎ あっ♥︎ あっ♥︎ あぁっ♥︎ んぅう! あん~~~~っ!!」
覆いかぶさったミレイユは、組み敷いたカムイを逃がさない。大柄な体格を存分に活かし、飢えたオマンコは捕食するようにオチンポを貪る。
(うぉっ!? なんつう、締め付け! 勢いでオチンポが引き抜かれそうだ……!)
「あはっ♥︎ ははははははっ! あっはっははははっははははははははははっ♥︎ んぁっ♥︎ 幸せ♥︎ これこそが私の幸福ううぅううっ~~♥︎ はぅあぁんっ……♥︎」
この世ならざる者に転成したとはいえ、カムイの身体能力は貧弱な少年。それに比べ、ミレイユは屈強な竜人族の成人女性。ぶるりと震えた巨尻が勢い激しく振り下ろされた。
「大丈夫ですわ♥︎ 私が動いてさしあげますからぁっ♥︎ 子種を注ぐだけでいいのですぅっ♥︎ だからっ♥︎ もっとぉっ♥︎ もっとぉおぉっ……♥︎ 抱いてぇ……♥︎ おっ♥︎」
美女の大柄な体躯は少年を体格差で圧倒する。騎乗位は逆レイプの体勢であった。ミレイユは背徳に酔い痴れる。夫以外のオチンポで味わう性悦は至高の幸福だった。
「お、おい? ミレイユ……!? やっぱり、そろそろ離れっ……! ちょっ……ぉお……? ぐわぉっ……!」
「駄目♥︎ まだお願いします……。寂しいのは……嫌……♥︎」
(くっ、暑苦しい……! いくら家族が嫌いだ嫌いだからって、出会って一時間と経ってない俺にここまで……!?)
「カムイ様はずっと……ずっと……永劫に奉仕してくださる……♥︎ 愛して♥︎ 欲しい♥︎ ずっと欲しかった……♥︎」
娘持ちの人妻は初めて愛を自覚し、恋する淫女に変貌した。頭部に生えた美麗な竜角が燃え盛る。発情した竜人族の角は火を宿し、吐息に炎が混じる。
「あぁっ♥︎ あぁっん……♥︎」
背を大きく仰け反らせる。ミレイユの豊満な爆乳も大きく隆起した。艶やかに盛り上がり、高々と極大化した巨峰の谷間で、カムイの顔面が覆い挟まれた。
(何もかもデカい……。オッパイと尻、それに太腿……! 幸薄でかなり頭が狂ってるけど、めっちゃ美女な人妻……!! くそ! こうなったら、とことん! お望みどおりにっ! してやるよぉ!)
カムイはミレイユの子宮口を突き上げる。
渾身の力で男根を捻じ込み、熟れた媚肉の女体に子種を刷り込む。
「あぁ♥︎ ふぅ♥︎ ふぅっ♥︎ あぁっ♥︎ そうっ♥︎ きてっ♥︎ 胎の奥底にぶちまけてぇっ♥︎」
「孕ませてやる……っ! 孕めっ! 浮気女っ!」
「はい♥︎ 私を寝取ってぇ……! 忌まわしき竜人族の柵から私を解き放ち、カムイ様の孕女にしてください……♥︎ この世の全てを生贄に捧げますわ♥︎ んっ♥︎ んぅ……♥︎ あぁっ♥︎ んゅ♥︎ んぅっ~~~~っ♥︎」
望まぬ結婚で娘を産んだミレイユは、心の底から世界を憎んでいた。
人妻と少年は惹かれ合う。互いの憎悪が繋がった。苦痛からの逃避で自死を望んだ竜人族の死者。死に抗い続けた異世界の死者。二人の契約はここに成就し、禁忌が破られる。
――屍は蘇り、不死に成り果てた。
◆ ◆ ◆
ドス黒い厭悪を滲ませながら、ミレイユは竜人族の風習について語ってくれた。竜郷の巫女は結界を維持する人柱だという。竜人結界の効力により、竜血を引かない人間は聖地に立ち入れない。
竜郷ドラカ=ヴェルグは絶対不可侵の聖域。他種族は当然として、深淵の勢力も竜人族の里に手出しはできない。歴代の巫女は聖廟で祈祷を捧げ、一生涯を尽くし、生まれ故郷を守護し続けてきた。
竜郷を巫女の祈りが守護し、巫女は戦士達に護られている。
「姉さん! ちょっと待って! 私とラウルは……!! 姉さんを傷つけるつもりなんて……!」
「話は終わり……。自分の持ち場に帰りなさい。アシェラ」
ミレイユは冷淡に告げて、双子の妹アシェラに背を向ける。
姉妹の顔立ちは瓜二つであるが、見分け方は簡単だ。巫女のミレイユは肉付きが良く、色っぽい豊満な身体である。その一方で、戦士のアシェラは鍛え上げられた凛々しい細身。髪も邪魔にならないように短く切り揃えている。
「お願い! 姉さん……! 私は……!! 私の話を聞いて!」
「何を聞けと? 話し合いで解決できる問題かしら? 夫からも聞いているわ。貴方、妊娠したんでしょう? その子を産みたいから私に許しを求めている……。勝手な話だわ」
「我儘なのは分かっているわ。でも、私は姉さんからラウルを奪いたかったわけじゃな――」
妹の言葉は、姉の逆鱗に触れた。夫は愛していない。むしろ憎み続けた。しかし、だからこそ、妹の醜い弁明が耳障りだった。
「――ラウルは私と離婚したがっているわよ。私の娘はもう成人しているし、私よりも貴方に懐いている。離婚したってもう問題無い。そう思っているんでしょうね」
「……姉さん!」
「お願いだから、私の前から消えてくれる? 聖廟で祈りを捧げなければいけないわ。これ以上、引き留められると困るのだけど? 結界の外に魔軍の斥候が潜んでいるわ。私達の個人的な諍いで結界が綻んだら、同胞達はどう思う? 考えが及ばない?」
「姉さん……。ごめんなさい……。ごめんなさい」
アシェラは頭を下げる。
本心からの謝意だった。けれども、謝罪がミレイユの感情を逆撫でしていると気付かなかった。
(あぁ……。腹立たしいわ。謝れば私が何でも許すと思っているのかしら……。早く帰りなさいよ。私はカムイ様とお話ししたいの。貴方と無駄話なんかしたくないわ。あぁ、可愛いカムイ様。私にだけ見える。私だけに仕えてくれる御方♥︎)
姉妹の生々しい口論をカムイは間近で見物している。
倶生の化身は契約者以外に知覚されず、認識もされない透明人間だった。
「顔立ちはミレイユにそっくり。さすが双子姉妹だ。ふーん。あれが姉の夫と浮気で孕んじゃった淫乱な妹ちゃんか」
カムイの侮蔑と嘲笑は、契約を交わしたミレイユ以外に届かない。
「堅物真面目そうな振る舞いをしているくせに、えげつないことをするじゃん。これで戦士なんだ」
思い詰めた表情でアシェラは立ち去る。不義の子を孕んだ賤しい泥棒女。しかも、よりにもよって胎児の父親は姉の夫だ。竜郷ドラカ=ヴェルグの族長ラウルが起こした不名誉。表沙汰となれば、里中で艶聞が囁かれるだろう。
不祥事の露見を恐れたラウルは、ミレイユに離婚を迫った。
妻のミレイユと穏便に別れてアシェラを娶る。子宮に宿した胎児を忌子にさせたくないのだ。
「行ったみたいだぜ。……ミレイユ、機嫌が悪そうだ。そんなに妹が嫌いなのか?」
「アシェラは昔から自分勝手な妹でしたわ。まるで自分が被害者のように……! ラウルと一緒になって嘲り笑っていたくせに……。私が知らないとでも思っているのかしら?」
(静かに怒る美女ってメチャクチャ怖い……。口から噴煙があがってる……。おぉ、こわ……)
「カムイ様は私の妹をどう思いますか?」
(え? これなんて言うのが正解?)
幽世の森で契りを結び、聖廟に帰ってきたところでミレイユはアシェラに呼びかけられた。巫女が急に姿を消したので、警護の戦士達がずっと探し回っていたそうだ。
カムイはまだミレイユやアシェラのことをよく知らない。姉妹喧嘩の元凶である浮気夫、族長の名前がラウルというのも、先ほどの会話で初めて耳にした。
「よく知らないけど、酷い奴だなと思ったぜ!」
「カムイ様。遠慮なさらずに……♥︎ あの生意気な妹を嬲ってみたいと思われませんか?」
「え? どういう意味?」
「あの奔放な妹……。アシェラはずっと私の夫ラウルに想いを寄せていましたわ。あんな男に恋する気持ちは全く分からないけれど、昔からの念願が叶っての懐妊。だから、その幸せを台無しにしてさしあげますわ」
「おぉー、悪巧み? 何する気なんだ?」
「胎児を中絶し、望まぬ男の子種で孕ませる……。ふふっ……! 私と同じように……♥︎ 最高の復讐と思いませんか?」
「望まぬ男って……。まさか俺?」
「はい♥︎ あの妹を生贄にいたしますわ。カムイ様が私の奉仕くださるお礼に、我が愚妹を捧げましょう♥︎」
「俺はミレイユだけで満足してるんだけどな~」
「そう仰らずに……♥︎」
ミレイユはカムイを引き寄せる。純白の襤褸布を纏った貧相な少年は軽々と抱き上げられた。
「すげぇ悪い顔してるぜ。ミレイユ」
「竜郷ドラカ=ヴェルグを滅亡に導く腹案がありますわ。計画通りに進めば、この地に暮らす竜人族を皆殺しにできる。けれど、アシェラだけは殺しませんわ。あの妹は簡単には死なせない。永遠に苦しめる……♥︎ カムイ様にご協力いただきたく♥︎」
「共犯になれってわけか」
「ふふっ♥︎ 夫の前で私を犯し、アシェラを強姦してください♥︎ 竜郷滅亡のフィナーレに相応しい演出ですわ♥︎」
「契約上、俺はミレイユに奉仕しなきゃいけない。それが望みなら叶えてやるよ。でも、どうやってお仲間を殺すんだ? 井戸に毒でも入れるのか?」
カムイは懐疑的だった。ミレイユ契約で不死の加護を得た。だが、竜郷ドラカ=ヴェルグの住民を一人で皆殺しにするのは難しい。
「魔軍を竜郷ドラカ=ヴェルグに引き込みます。当初の予定では私の自殺で竜人結界を消滅させるつもりでしたわ。聖廟を基点とする結界が消えれば魔物達が侵入できるようになる……。しかし、もっと念入りに殲滅計画を立てますわ」
「魔物を手引きするんだな。外患誘致をやらかしたら、もう後には引けないぜ。くっくくくく。悪に染まってるなぁ」
「構いませんわ。私を苦しめた全て滅ぼす。同胞なんて一匹残らず死んでしまえばいいわ。カムイ様がいれば私はそれで幸せなのです。私にずっと奉仕してくださるのでしょう?」
「契約でミレイユは俺の主人だからな。生贄を貢いで、養ってもらっているし、ちゃんと奉仕はするぜ。浮気人妻の性欲処理係だろうとな」
「意地悪な言い方をなさらないで。――これは純愛なのですから」
下腹部が火照っている。子宮のある胎はカムイの精子で満ちていた。
ミレイユはカムイを子猫のように抱き上げたまま、聖廟の祭祀殿に向かう。祠が安置された祭祀殿に巫女以外の者は近付いてはならない。古竜と祖霊を奉る祠には結界の核がある。霊験あらたかな聖巫女が祈りを捧げる浄域に穢れを持ち込んではならない。
「カムイ様。愚かで卑しい私を愛してください」
幽世の森で自死を遂げ、この世ならざる者に魅入られたミレイユは、己の人生を犠牲にして保ってきた聖地を貶める。異界の死者と姦通に耽り、淫楽に酔い痴れ、祠に集った信仰を冒涜する。
「いいぜ。俺、性格の悪い年増女が好みだから」
竜郷ドラカ=ヴェルグが滅ぶ四十九日前の出来事であった。



