帝国宰相ウィルヘルミナと帝国元帥レオンハルトの協議はまとまった。
宰相派の妃達は週に二回ほど、ベルゼフリートを離宮に呼び寄せている。宰相派の内訳は皇后を除くと王妃四人、公妃十六人、合計は二十人である。夜伽の御役目はウィルヘルミナが定めた通り、公正なクジ引きで決められた。
八月の終わりが近づき、夏の暑さは慈雨で和らいできた。
その夜、ベルゼフリートは琥珀離宮に滞在していた。
牛族の美しい公妃は豊満なる美乳を差し出し、幼い皇帝に揉みしだかせている。乳輪を力強く掴み、滲み溢れた母乳が滴り流れる。発情した雌牛は巨根による種付けを熱望する。深々と突き刺さった男性器は、火照った胎に皇胤を注ぎ込む。
「へえ、家業が儲かってるんだ。旧帝都の復興事業で特需って話を僕も聞いたよ。商売繁盛で何より」
ベルゼフリートは指先に付着したミルクを舐める。セラフィーナやイシュチェルの母乳に比べ、旨味が一段と濃厚で、脂質のまろやかなコクが口に残る。
食生活の違いが味に差異を生じさせた。獣人族は自分と同類の獣を食べないとされる。だが、メガラニカ帝国の牛族は例外だ。牛肉を好んで食している。土地持ちの貴族は大規模な牧場を経営し、畜産業で巨万の富を築いていた。
富豪の牛族は金銀宝玉で角を着飾る。昨今の流行りは紅漆と銀箔の着彩。栄えある夜伽役を務めるとなれば角の化粧に余念はない。
「土地無しの新興貴族は、我らを牧畜貴族と見下しておりますが、食糧生産者こそ国家を支える土台ですわ。宰相閣下がアルテナ王国の併呑を強く望まれていたのも、現在の食料高騰を見越しておられたからでしょう」
「ああ、そっか。それで僕だけじゃなく、セラフィーナも呼んだの?」
琥珀離宮への訪問は女官だけでなく、セラフィーナも同伴している。公妃はわざわざセラフィーナを呼び寄せ、交渉役の側女と引き合わせた。目的は西アルテナ王国との貿易交渉である。
公妃は交渉を部下に一任し、自身は寝室のベッドで主君と愛し合う。膣道を押し広げ、脈打つオチンポを締め付ける。膣内射精の快楽を存分に味わっていた。
「家畜用の飼料を直接買い付けたいのです。⋯⋯ラヴァンドラ妃殿下の財閥に利益を掠め取られたくありません。セラフィーナさんとは良い取引ができるでしょう」
西アルテナ王国の経済的利権は、ラヴァンドラ伯爵家の財閥が握っている。これまで中央諸国やバルカサロ王国に売りつけていた商品は、メガラニカ帝国に流れ込んでいた。
「ははーん。なるほど。取引ね。ラヴァンドラみたいに僕とセラフィーナの子供を引き取るつもり?」
「さすがは陛下⋯⋯♥︎ ご推察の通りですわ」
「他にも狙ってる妃は多いよ。利権を手にしたラヴァンドラが大儲けしてるからさ。こういうのを『二匹目のドジョウ』って言うんだっけ? 根回しはちゃんとやっておいてね」
「宰相閣下にご相談はしております。⋯⋯ラヴァンドラ妃殿下だけが利益を得るのは不公平ですわ。西アルテナ王国は陛下とセラフィーナさんの共同統治。言うなればメガラニカ帝国の属領。国益は平等に分かち合うべきです」
「アルテナ王国でセラフィーナの評判は地に落ちてる。それでも利用価値はあるんだ」
「重要なのは血筋ですよ。背徳の売国女王であろうと王家の女。それに父君は陛下なのですから、尊き血統ですわ。アルテナ王国の商人は王家がどうなるかを気にしているようです」
女王は皇帝の子供を産んだ。
前夫ガイゼフの血筋を排除し、バルカサロ王家と袂を分かった。これからのアルテナ王家は、セラフィーナとベルゼフリートによる新王朝となるだろう。人々もその未来を現実として受け入れ始めていた。
「王子や王女を抱え込んじゃえば、アルテナ王国の商人と貿易がしやすくなるわけだ。頑張ってセラフィーナを孕ませた甲斐があったよ」
「あぁっ♥︎ 皇帝陛下♥︎ 妾胎だけでなく、私にも御子をいただきたいですわ。誠心誠意っ♥︎ ご奉仕いたします♥︎ だから、何とぞ♥︎」
「はいはーい♪ ご注文通り、オマンコに元気な精子を追加でたっぷりお届けするよ。赤ちゃんが出来たら教えてね」
膣穴に収まった男根が動き始める。
「ええっ♥︎ もちろんっ♥︎」
公妃は交差させた両足でベルゼフリートを挟み、小柄な体躯を強く抱きしめた。激しく揺れるデカパイが母乳を噴き散らかした。
「はぁはぁっ♥︎ んっ♥︎ 皇帝陛下っ♥︎ セラフィーナさんの子供について♥︎ ご助力をいただけませんか?」
「協力? どんな?」
「セラフィーナさんは陛下のオチンポに夢中だとお聞きしていますよ。ぜひ、次に生まれてくる御子を私の一門にお預けくださいませ♥︎ んぁっ♥︎ あっ♥︎ 大切にお育ていたします。だから、引き取らせていただきたいのですっ♥︎」
「養育権は母親の権利だよ。言うだけは言えるけどさ~」
「陛下が命令されれば、あの愛妾は言いなりでしょうにっ♥︎」
「どうかな? セラフィーナは後宮の色に染まった。後宮入ったばかりの頃とは違うよ。男子だったらセラフィーナは手元に置いておく気だろうね。男の子が欲しいんだってさ」
「ふふっ♥︎ 私も次は男子を産みたいですわ。私の故郷では元気な男子を孕めば、母親の乳房が大きくなると言われております。ぜひ私を再び母の身体にっ♥︎」
「今でも十分に大きいじゃん? もっと大きくしたいの?」
ベルゼフリートは公妃の爆乳に鼻先を埋める。
「宰相閣下には負けておりますわ。セラフィーナさんにも⋯⋯」
「気にしてたんだ。さっきの挨拶でずっとセラフィーナのオッパイを見てたのそういうことか」
ベルゼフリートは指先で爆乳を突っつく。丸々とした美しい曲線を描く母なる豊穣の証。牛族の女性は巨乳揃いであるが、極上サイズのウィルヘルミナやセラフィーナには及ばない。
「地元では負け知らずの一番でしたわ。⋯⋯かなりショックです」
「黄葉離宮の側女にもっと大きい超乳娘がいるよ? それにバストサイズだけなら体型を弄れるヴァネッサが理論上の一番じゃない?」
「豊胸手術で作った偽乳は如何なものかと⋯⋯。ショゴス族の肉体改造は評価外にしてください。あんな紛い物、一目で作り物と分かりまっ⋯⋯♥︎ んぁっ♥︎ あぁう♥︎ んうっ♥︎ くっ♥︎ んぅっ⋯⋯♥︎ はぁんぅっ♥︎ 陛下っ♥︎ 陛下ぁっ♥︎」
ベルゼフリートは公妃の膣内を精液で埋め尽くす。
(不味いなぁ。この妃⋯⋯。名前、何だっけ? 来る前に教えてもらったのに⋯⋯。どうしよ。んー。忘れちゃったなぁ。でも、仕方ないよね。宰相派の妃は数が多いんだもん。⋯⋯このまま誤魔化せるかな?)
名前を憶えていない美女との逢瀬。夜伽役を務める公妃について、ハスキーから聞かされていたがド忘れしてしまった。
(えーと⋯⋯。僕との娘が二人いるんだったかな? それは覚えてる。ウィルヘルミナみたいな由緒正しい大貴族には従順な人。ナイトレイ公爵家の社交パーティーで会った覚えがある)
膣内に放精しながらベルゼフリートは考え込む。
(それで、新興貴族のグループとの折り合いは悪い。いつだったか、ラヴァンドラが愚痴ってた。角を真っ赤に染めてるし、この公妃だよね⋯⋯。女官とも険悪っぽいから困っちゃうよ。宰相派の妃で女官と上手くやってる人は少ないけど)
ウィルヘルミナからの指示は与えられていない。夜伽の妃が望む通りに動けということだろう。レオンハルトは「宰相派が週二回の条件を破ったらすぐ戻ってくるように」と命じられた。カティアは大神殿の仕事で多忙で今回の件に関わろうとしていない。
(この調子だと何人かの妃は孕んじゃうだろうな。みんな揃って膣内射精ばっかりせがんでくるから⋯⋯。子作りもいいけど、ちょっとはセックスに遊び心がほしい)
皇帝に即位して間もない時期、親しくない相手とのセックスが苦手だった。けれど、人間はあらゆる環境に順応する。皇帝は妃を抱かなければならない。たとえ名前がうろ覚えの相手であろうとも。
(この公妃もオッパイを自慢するならパイズリしてくれないかな。あっ⋯⋯。押し倒されちゃった。次は僕が下側か。騎乗位でヤり続ける気? まあいいや。疲れてたし、されるがままだと楽ちんだ)
幼帝ベルゼフリートは上級淫魔ウィルヘルミナの薫陶の受けた娼年である。今では後宮の妃達を悦ばせる立派な男に成長した。
反り勃たせた男根で、振り下ろされた尻を受け止める。公妃は甲高く喘ぎ、腰の躍動が激しさを増していく。
(おぉっ。すごい。オマンコが吸い上げてくる。発情状態の雌牛って感じだ。これはもう満足するまで止まらないかな。⋯⋯皇帝の大切なお仕事だし、夜明けまでは付き合ってあげるよ)
亀頭が子宮口で包まれる。漏れ出る愛液で股間がずぶ濡れになった。騒々しい肉音を奏でながら、尻尾を振り回し、公妃はセックスの喜悦に酔い痴れる。
「陛下っ♥︎ 私の乳房をぉっ! 私の乳房を揉んでくださいィ♥︎」
公妃のお望み通りにベルゼフリートは乳房を両手で支えた。指先で乳首を抓り上げ、ミルクの溜まった乳腺を圧迫する。欲求不満の公妃を絶頂に導き、飢えた子宮に精液を捧げ続けた。
◆ ◆ ◆
翌日の昼前、ベルゼフリートは琥珀離宮からの帰路についていた。四つ足の石造獣に牽かれて、豪華な外見の儀装馬車がゆっくりと進む。
前後左右を取り囲む警務女官達は、徒歩で護衛にあたっている。
ベルゼフリートは大きな欠伸をしながら、丸めた人差し指で目蓋を擦る。背もたれに寄りかかり、にわか雨が降り注ぐ光景を眺めた。
すぐに止むだろうが、窓ガラスに打ち付ける雨粒の音は大きい。警務女官達はずぶ濡れで、メイド服のスカートから水滴が流れていた。雨傘をさしているのは、随伴の庶務女官達だけだ。
「ふあぁ⋯⋯。はぁ。あちらの招きではあったけど、セラフィーナまで付き合わせて悪かったね。交渉はどうだった? 色々と言われたでしょ」
外に向けていた目線をセラフィーナへ戻し、ベルゼフリートは昨晩の出来事を訊ねてみる。
自分の話をするつもりはなかった。公妃とどんなセックスをしたか聞かされたところで面白くはないだろう。話す側もそれは同じだ。ベルゼフリートは琥珀離宮で一晩を過ごしたセラフィーナの感想が気になった。
「私の一存では何ともお答えできない内容でした。グレイハンク伯爵に取り次ぐ件だけはお約束いたしましたわ。現在のアルテナ王国は穀物の輸出に制限をかけておりますが、家畜の飼料なら望みはあるでしょう」
セラフィーナは馬車の床に座り込んでいる。両膝と巨尻をぺたりと着地させ、床に敷かれた分厚い絨毯を沈ませる。
「くふふっ♥︎ 膣汁の匂いが染みついておりますわ。昨晩はさぞお愉しみだったようで」
「それなりにね。⋯⋯セラフィーナの爆乳に負けて悔しがってたよ」
「あらあら♥︎ だから、夜伽でパイズリをしてくださらなかったのかも♥︎ ベルゼフリート陛下のオチンポは、極上の爆乳でなければ務まりませんわ♥︎」
愛妾が皇帝の馬車に同乗する理由は一つ。ドレスの胸元から零れ出した爆乳は、朝勃ちの巨根を挟む。我慢汁で濡れた亀頭に口付けし、パイズリ奉仕を開始する。
セラフィーナは巧みな手付きで美乳を揺さぶった。極太長大の男性器を完璧に挟める女は、恵体揃いの後宮でも限られる。大陸随一の美貌を誇る女王は誇らしげに胸を張り、母性溢れる忠愛を尽くす。
「そうだ。セラフィーナと僕の子供を譲ってほしいとも言ってた。経済交渉は執政官のグレイハンク伯爵が処理するとしても、子供扱いは母親の専権だ。どうする? モテモテだよ?」
「引く手数多なのは嬉しいですわ。しかしながら、愛しい稚児を里子に出すのは母として悔しい⋯⋯。旧帝都ヴィシュテルの復興が進めば、私も帝国領内に地盤を持てますわ。利用されてばかりではいられません」
「冒険者組合の働き次第だね。復興計画は順調らしいじゃん。むしろ妃達の間で懸念されてる問題は⋯⋯」
「バルカサロ王国の難民問題でしょうか? ついに帝国議会の議題に上がったと新聞で目にしましたわ」
「そう、それ。食中毒とか、病気とか、とにかく大変みたい。大神殿が〈浄化の雨〉を流してるけど、バルカサロ王国まで届いてないのかも。イシュチェルの処女を散らしたのだって、どこまで効果があったかな? ヤるだけヤっちゃって、こういう台詞を吐いちゃう僕は無責任かも」
「ベルゼフリート陛下が責任を感じる必要はございませんわ。国は傾くべくして傾くのです。――私の生まれ故郷がそうであったように♥︎」
「悪い顔してる。そんなんだから祖国で売国女王って呼ばれちゃうんだよ」
「私は皇帝陛下を⋯⋯♥︎ いいえ、ベルゼを愛してしまった♥︎ 大切な祖国だろうと、かつての家族だろうと、この燃え上がる背徳的愛情は消せませんわ。ベルゼの愛母でいられるなら、私はどこまでも堕ちていく⋯⋯♥︎」
セラフィーナは愛に満ちた母親の顔で、ベルゼフリートの亀頭を咥えた。
「ママが大好きだよ。本物の家族を裏切ってまで、僕を選んでくれた。たとえそれが醜悪で唾棄に値する狂愛だとしても、人々が罵詈雑言を投げ付けようとも⋯⋯。どん底に堕ちた女王様を僕だけが愛しんであげる」
心ごと抱きしめるように黄金の美髪を撫でた。
「――このまま口に出すよ」
口内射精が行われている間、セラフィーナはごくんっと喉を鳴らし、紅潮した頬を窄めて精液を吸い上げる。
「んぅっうっ♥︎ んぢゅうう⋯⋯っ♥︎ んぅ♥︎」
双乳に添えた両手を押し上げ、挟んだオチンポへの圧迫を高めていく。濃厚な白濁ザーメンを舌で堪能し、セラフィーナの女陰は愛液で濡れた。分泌液は下着を貫通し、馬車の絨毯に染みを作った。
「そんなに美味しい? がっつきがすごいや。くすくすっ♪ やっぱりアルテナ王家の先祖にはサキュバス族がいるね。セラフィーナは淫魔の血を引いている。知ってた? サキュバス族は好きな人の精液が大好物になるんだ。⋯⋯聞きたくないだろうけど、ウィルヘルミナも僕のオチンポをしゃぶってる。朝勃ちが収まるまでずっとね」
「んぢゅっ♥︎ んぅっ♥︎ んぢゅっ♥︎ んぢゅぅんっ♥︎」
「その調子で性奉仕を続けて。ここ最近、僕の精力は強くなってる。夜だけじゃ鎮まらないんだ」
黄葉離宮の玄関口で馬車が停まる。しかし、ベルゼフリートとセラフィーナが馬車から降りるまでに時間がかかった。警務女官も気を利かせて、馬車の扉を閉めたまま待機した。
極太オチンポが萎びれるまで、セラフィーナはパイズリフェラを止めなかった。天空城アースガルズを覆っていた雨雲は消え去り、晴天の青空が広がっていた。
◆ ◆ ◆
ベルゼフリートとセラフィーナの外泊中、黄葉離宮の側女は普段以上に時間を持て余していた。だが、これから先は人手不足で忙しくなる。
その備えを進める必要があった。
ロレンシアは不自由な超乳巨胎の身体であるが、無理のない範囲で側女の仕事をこなしている。近衛騎士時代に鍛えた足腰のおかげだ。
「積極的に頼りたくはありませんけど、皇帝陛下の滞在中は女官の助けも借りられます。私達のことは気にせず、安心して胎孕廟堂で元気な御子を産んでください」
ララノアは申し訳なさそうに頭を下げる。
「負担をかけてすまない。私達五人は同じ日に妊娠したから、胎孕廟堂へ行くタイミングも重なってしまった」
「医務女官の指示には従わないといけませんよ。後宮は濃い瘴気が充満してます。臍の緒が繋がっている間は大丈夫という話ですけれど、産まれてしまったら⋯⋯」
「もちろん、分かってます。女仙は胎孕廟堂じゃないと赤子を無事に産めない」
「先に入ったリアは出産予定日がずれ込んで、帰ってくる時期は未定です。八月中には産まれるみたいですけどね。あちらでリアに会ったらよろしく伝えてください」
「分かった。ところで⋯⋯、その⋯⋯ロレンシアに聞きたいことがある⋯⋯。ちょっといいだろうか?」
「なんでしょう?」
「私はエルフです。冒険者としてのキャリアも長い。立場上、仲間からは頼られることが多かった。相談を受けることもあるのですが⋯⋯。出産はどれくらい痛い? 経験者のロレンシアなら知っているでしょう? 教えてほしい」
「私は多胎出産だったので経験豊富ではありますけれど⋯⋯。参考にならないかと。身体を弄っていますし、快感で出産の痛みが麻痺してました」
「悦びで痛みを感じない⋯⋯」
「私やセラフィーナ様はそうだったというだけです。たぶん個人差がありますよ。麻酔や帝王切開で、無痛分娩を選ぶ妃もいるそうです。不安なら医務女官にご相談しては?」
「いや、いや! 違う! 私が不安を抱えているわけじゃない。初めての出産で、私の仲間が⋯⋯な⋯⋯。あくまで私は相談を受けた側ですよ? はははは⋯⋯」
「あぁ、なるほど。そうでしたか。ふふふっ! ララノアさんも大変ですわね?」
ロレンシアは誰の相談を受けたのか聞き返さない。
ララノアの挙動不審な態度は分かりやすい。細長いエルフ耳は真っ赤になっていた。人生経験豊富なエルフ族にも弱々しい乙女な一面があるのだ。
「ごほんっ! ともかくロレンシアも無理はしないように。そのお腹はもっと大きくなるのでしょう?」
赤面を誤魔化すようにララノアはわざとらしく咳払いし、別の話題を持ち出した。
「はい。臨月には程遠いので、しばらくは大丈夫です」
「ふふっ。私より大きいお腹。元気な御子が宿っているでしょうね。身重のお体は大切にしなければなりませんよ」
「心配無用です。新入りの側女が二人もおりますわ」
「働き者の新人ではあるけれど⋯⋯。あの二人は大丈夫?」
「イシュチェルさんは精神的に弱っていますが、修道院育ちで労働に慣れてます。マリエールさんは図太い御方だから平気でしょう。さすが教皇候補だった聖女様ですわ。⋯⋯後宮に入内したばかりのセラフィーナ様や私に比べれば適応できてます」
ロレンシアは過去を懐かしむ。
メガラニカ皇帝に怨恨を向けていた愚かな小娘は、模範的な側女となった今の自分を見たらどう思うだろうか。醜く取り乱し、強く否定するに違いない。しかし、皇帝の愛奴になる道をロレンシアは選んだ。
(後宮の生活が私の当たり前になってきたわ。淫奔な暮らしの幸せ⋯⋯。あぁ、近衛騎士団だった頃の記憶が薄れ消えていく⋯⋯。剣を握っていた手から皮膚の厚みがなくったのはいつ? こんなにも柔らかくなった)
主君の女王が堕ちるよりも早く、女騎士は折れた。あらゆる不幸を撥ね退ける庇護に縋りつき、幼帝に忠愛を誓った。祖国の怨敵と罵った少年に股を開き、淫らな喘ぎ啼きを叫びながら「愛してほしい♥︎」「守ってほしい♥︎」「抱いてほしい♥︎」と懇願した。
(イシュチェルさんはいつまで矜持を保てるかしら⋯⋯。子宮に聖印がある限り、皇帝陛下の御子を宿さないと言っていたわ。けれど、セックスの味は知ってしまった。守護が消えて、私やセラフィーナ様のように孕めば⋯⋯。イシュチェルさんも私達と同じところまで堕ちてほしい)
ロレンシアは大きく突き出た自分のボテ腹に手を当てた。赤子達の胎動を感じ取る。
(小さくて可愛い皇帝陛下を好きになってしまったのだからしょうがない⋯⋯♥︎)
皇帝の寵姫になれたことが嬉しくて堪らない。祖国の青年騎士と初々しい夫婦になった幸福な日々は、すっかり色あせてしまった。我が事ながら、女の恋心はこんなにも残酷なのかと恐ろしくなる。
(貶されるのは当然だわ⋯⋯。ヴィクトリカ様やお父様、祖国のために死んでいったリュート様や近衛騎士団の仲間に蔑まれてもいい⋯⋯。私は不名誉を受け入れる。淫女にぴったりの評価ですもの⋯⋯。恨まれていい。私は大切だった人達の不幸を願ってるわけじゃないわ)
離婚を突き付けた幼馴染のレンソンがどこかで幸せになってほしい。本心からの願いだ。レンソンが魔物に利用され、悲惨な最期を迎えたとロレンシアは知らなかった。今後も知ることはない。
黄葉離宮の渡り廊下で佇むロレンシアとララノアは、物思いにふけりながら空を見上げる。
雨がちょうど止んだ。そろそろ昼食の準備に取り掛かるため、戻ろうとしたところで、テレーズが小走りで駆け寄ってきた。
「お二人ともこんなところにいらしたのですね。皇帝陛下とセラフィーナ様が琥珀離宮から帰ってこられました。昼食は霜降り牛肉ですよ。昨晩の夜伽役だったオーロック妃殿下が高級肉を送ってくださりました」
「宰相派の妃からの贈り物? 受け取ってよかったのかしら?」
ララノアはロレンシアに意見を求める。
「贈り物の受け取り拒否は無礼と見なされますし⋯⋯。オーロック妃殿下はどんな方でしょう? 返礼品を用意しなきゃいけないわ。こういう時、事情通のリアが不在だと困りますね。仕方ありません。恥を忍んで皇帝陛下に聞いてみますか⋯⋯。きっとよくご存知のはず」
ロレンシアの見込みは大外れであった。
昨晩の夜伽役を務めた公妃について訊ねてみたところ、ベルゼフリートから返ってきたのは「母乳は脂質が濃いめ。あと騎乗位の持久力がすごい!」という役に立たない答えだった。