変貌したセラフィーナを前にして、ガイゼフが抱いたのは憐憫の情だった。怒りや憎しみ、不義に対する負の感情は不思議と湧いてこなかった。
「セラフィーナ⋯⋯」
記憶の中にだけ存在する清廉な愛妻セラフィーナ。
猥らな淫母に墜ちた眼前の淫母セラフィーナ。
過去と現在、ほんの一年にも満たぬ時間で起こった伴侶の変貌。妻の裏切りに夫は激昂すべきだ。しかし、セラフィーナと対面してもガイゼフの心は荒立たず、冷静であり続けた。
自分の愛した女性と今のセラフィーナはかけ離れている。同一人物だと到底思えなかった。まるで他人と会話している気分だった。ガイゼフの心は冷め切っていた。
「セラフィーナ……。君は俺の知る女性ではなくなった⋯⋯。自分の目で実際に見て、やっと……よくうやく受け止められたよ。今の君は見苦しく⋯⋯醜悪で⋯⋯穢らわしい⋯⋯。帝国に媚び、尻尾を振る罪深い雌犬だ⋯⋯⋯⋯!」
セラフィーナの後ろから抱き付くベルゼフリートは目を細めて睨みつけた。ガイゼフの台詞は、捨てられた前夫の負け惜しみにしか聞こえなかった。
奪われた妻を貶す、負け犬の不様な遠吠え。ベルゼフリートは鼻で笑い飛ばした。だが、ガイゼフの本心は違うところにある。皮肉にもガイゼフの真意は元妻のセラフィーナに伝わっていた。
「ええ。そうですわ。私は陛下に飼われていますの♥︎ とっても幸せ♥︎ 今の私を見れば分かるでしょ。けれど、私だって最初は抗いましたわ。王都ムーンホワイトが陥落した後⋯⋯、私達の身に何が起きたか、貴方の耳にも届いていたはず⋯⋯。王城に入ってきた帝国軍はリュートを処刑して⋯⋯私は寝室で陛下に強姦されてしまったわ。初めて会った日に私は辱められましたの⋯⋯♥︎」
セラフィーナはベルゼフリートと陰部を硬く結合させた淫夜の記憶を呼び覚ました。ベッドに押さえつけられ、亡くしたばかりの息子よりも年下の少年と交わった。
香炉から溢れる妖しげな匂いは、セラフィーナの純情な精神を乱し、性的快楽を覚えたばかりの無垢な乙女のように喘いだ。
女王の熟れたオマンコを押し拡げる極太オチンポは、ガイゼフの逸物と比較にならぬほど雄偉で壮烈だった。
子壺の最奥にベットリと皇胤を吹き付けられ、若々しい壮健な精子が膣内を泳ぎ回った。性悦に酔い痴れた子宮はあっけなく陥落し、昇っていた精子のために新鮮な卵子を排出した。
その瞬間から敗国の女王セラフィーナの心は、不義の子を孕む淫母にゆっくりと変貌していった。
「陛下の逞しい男根が私の子宮を支配した♥︎ 創造主様に懇願したわ。どうか子を授けないでくださいと⋯⋯。けれど、捧げた祈りは届きませんでしたわ。陛下の子胤は私の深奥に辿り着き、新たな命が宿った。もう孕まないと思っていましたわ。貴方と夫婦だったときは、まったく三人目ができなかったのに⋯⋯」
セラフィーナは非難めいた自嘲を浮かべ、ガイゼフの表情がほの暗く曇った。三人目の子供を儲けようと妊活に励んだ時期があった。まだお互いが二十代の頃、臣下に請われて、毎夜のように寝室で愛し合った。しかし、妊娠できなかった。
淡泊な気質のガイゼフは積極的な男性ではなく、人並み程度の精力しか持っていなかった。しかも、当時のセラフィーナは自分の本性を解き放てずにいた。夜の営みで絶頂の快楽をまったく味わえなかった。
「陛下と激しく交わった私は少しずつ染められていったのよ。抵抗したけれど、女の性を抑えきれませんでしたわ。陛下とのセックスを知ってしまったら、もう戻れなくないの。貴方と過ごした時間、リュートとヴィクトリカを愛したが想いが、どうでもよくなるくらい⋯⋯自分が幸福だと分かってしまったわ⋯⋯♥︎」
興奮気味のセラフィーナは甘い吐息をゆっくりと吹きかけた。下半身に抱きつくベルゼフリートは口元をつり上げ、勝ち誇った顔でガイゼフを挑発した。
「最初の夜。初めて出会った日。辱められたあの時。私の運命は決まってしまったのですわ⋯⋯♥︎ メガラニカ帝国に連れて行かれて、私は多くを学んだ。そして、本心から愛するように⋯⋯♥︎ 本気で⋯⋯恋してしまったの⋯⋯♥︎ ごめんなさい。謝るしかないわ。私は自分の意思で貴方を捨てたのよ。私はこの小さな男の子が好き♥︎ 貴方よりも大好きなの♥︎ この世の誰よりも、我が子よりも深く愛しているのぉ♥︎」
セラフィーナは妖艶な笑みを浮かべ、突き出たボテ腹を持ち上げ直した。
「皇帝陛下は⋯⋯! ベルゼフリート様は⋯⋯!! すごいのぉ⋯⋯♥︎ だって、私っ! 自分がこんなに猥らで淫奔な女だとは知りませんでしたわ⋯⋯! 貴方だって信じられないでしょう!? 自分の妻がこんな女だったなんて! きっとリンジーや他の臣下だって、こんな未来は予想できなかったはずですわ! 今の私はメガラニカ皇帝の愛妾⋯⋯! 我が身の全てを陛下に捧げましたわ!! あぁ⋯⋯悦びで心が躍る⋯⋯! 陛下を愛し、愛されるのが私の願い⋯⋯!! 魂の望みなのです⋯⋯!!」
艶尻の割れ目に男根が食い込む。布越しだが、脈動の熱を感じていた。
(あぁん♥︎ 腰の押しが強くなっていますわぁ♥︎ 勃起オチンポの亀頭が執拗に、ねっとりと、激しくっ♥︎ お尻を愛撫してきますわ⋯⋯♥︎)
隆起したオチンポの形状が手に取るように分かった。
(もっと激しくっ♥︎ 突いてくださいっ♥︎ ガイゼフに見せつけてぇ♥︎ いっそ、極太オチンポをアナルに押し込んでほしいですわ♥︎)
セラフィーナは溢れかけた口内の涎を飲み込んだ。蛇のように舌で唇を舐める。
「んっ⋯⋯ぁ⋯⋯♥︎ ねえ、よく見てくださる? 私の着ている純白のウェディングドレス♥︎ とっても卑猥でしょう? オッパイとオマンコを見せびらかす淫靡な花嫁衣装⋯⋯♥︎ 陛下に命じられれば、私は何でもしますわ。だって、私の肉体は陛下の所有物♥︎ 陛下の悦びは、私の幸せなのですわ⋯⋯♥︎」
幼帝の細く短い両指が、オマンコの裂け目に食い込む。くぱぁっと開かれた膣道に淫涎で塗れた肉襞が丸見えとなった。
(陛下⋯⋯♥︎ んっ♥︎ あぁ♥︎ あら? そういうこと? んっふふふ♥︎ 可愛い子。男の子ですわね♥︎ ガイゼフに妬いているのだわ。だから、私に意地悪して、困らせようとしているのかしらっ♥︎ あんっ♥︎ んぁはぁ~んっ♥︎)
極太の肉棒で貫かれ、徹底的に開発されたガバガバの女王オマンコ。もはや前夫の祖チンでは満足できない。その事実を誇示するかのように、膣穴を剥き出しにさせた。
「もう昔の私には戻りたくないっ⋯⋯! 皇帝陛下に、愛する殿方と一生涯を共にしたいわ。嘘偽りのない本心の告白よ。陛下が愛おしい。ねえ⋯⋯ガイゼフさん。もう分かってくれたかしら? ⋯⋯かつての私は貴方を愛した。でも、もはや過ぎ去った昔の出来事。今の私が愛しているのはたった一人、メガラニカ帝国の偉大なる皇帝! ベルゼフリート陛下だけですわ♥︎」
「っ⋯⋯!! そうか⋯⋯っ!! だが、一つだけ教えてくれ。セラフィーナ⋯⋯! 俺達の子供は⋯⋯!! 殺されたリュートやヴィクトリカへの気持ちさえ⋯⋯母親の心まで失ってしまったのか!?」
「可哀想なリュートは死んでしまったわ。ヴィクトリカは私を母とはもう呼ばないでしょうね。仕方がないわ。女王の嫡子はこれから産まれる皇帝陛下との子供。私は皇帝ベルゼフリート・メガラニカの妻。そして、再び母親となるのだから⋯⋯。私は愛する人との間に生まれる我が子だけを慈しむわ♥︎」
「皇帝の子をアルテナ王国の跡継ぎにしたいのか⋯⋯! だから、ヴィクトリカを帝国に売ったのか? ヴィクトリカは血の繋がった実の娘だぞ⋯⋯!!」
「大きな誤解していますわ。私やロレンシアが差し伸べた手をあの子は無視したのよ」
「ふざけるな! ヴィクトリカはその小僧に妊娠させられたんだ! 強引にっ⋯⋯!」
「無礼な物言いはやめてほしいわ。ヴィクトリカが身籠もったのは陛下のお心遣いですわ。だから、あの子は殺されずに済んだのですから。そうですよね。陛下?」
「うん。僕の子を孕んでなければ、帝国軍に捕まった瞬間、処刑されちゃってたよ。リュート王子みたいにね」
「お優しいですわ。陛下は本当に慈悲深い御方です。だというのに! ヴィクトリカは帝国と共存する道を拒みましたわ。今や私とヴィクトリカは政敵。アルテナ王国を奪う合う敵同士ですわ。これから産まれる我が子の将来を憂うなら、ヴィクトリカには陛下の子を孕んで欲しくなったわ」
セラフィーナは初めて苛立ちの表情を作った。宮廷で愛妾の地位を確保し、皇帝の寵愛も得た。しかし、娘のヴィクトリカは目障りだった。
状況次第でヴィクトリカはセラフィーナの代用品となる。なにせバルカサロ王家の血を引くオマケまでついている。
三皇后が再びヴィクトリカに有用性を見いだせば、愛妾と女王の立場が危うくなる。
(陛下はおそらくヴィクトリカも気に入っていますわ。女仙でもない者を孕ませるのは異例中の異例。陛下は移り気はちょっと怖いですわ⋯⋯。ずっと私を見てくださるとは限りませんもの。あぁ、私は醜いわ。心がぎらぎらと燃える。娘に嫉妬してしまっているのね⋯⋯)
母親であるセラフィーナが気にしていたのは、娘の若さだった。自分と似た黄金髪の美少女が厄介な恋敵に思えてならなかった。
ヴィクトリカはメガラニカ帝国と敵対している。しかし、万が一にも和解してしまったら、娘は母親の地位を脅かす存在となる。
セラフィーナはアルテナ王国の民心が離れている懸念を抱いていた。母親と娘。三皇后は再び冷酷な天秤でセラフィーナとヴィクトリカの価値を比べるはずだ。
「セラフィーナ⋯⋯。君は⋯⋯家族を捨てたんだ! 国を裏切り、民の信頼を踏みにじった⋯⋯!」
「あら? そうかしら? アルテナ王国を守れきれず、王都ムーンホワイトが包囲される渦中に、バルカサロ王国へ逃げ出した貴方がそれを言えるの? 責任の押し付け合いをする気はないけれど、私は国の安寧もちゃんと考えております。陛下のもとでアルテナ王国は繁栄するわ。⋯⋯私達の道は分かれたのよ。完全に⋯⋯!」
「どうやらそのようだ。俺の知っているセラフィーナは死んだ。この世から消え去ってしまった⋯⋯」
「⋯⋯あら? 私、貴方を見くびっていました。もっと諦めの良い人だと思っていたけれど、執拗い人ですわね。死んだのではありません。その両眼で見えていないのかしら? 私はここにおりますわ。生まれ変わったの。女としても。君主としても。アルテナ王国の女王はメガラニカ皇帝と共に歩む。それが私の決めた君主の決断ですわ」
セラフィーナに決別の言葉を吐きつけられたガイセフは、黄金のロザリオを首から外した。夫婦愛の証を投げ捨てるように押し付けた。
黄金のロザリオは、セラフィーナの爆乳の上に落ちた。乳房の上辺を滑り、谷間に挟み込んだ。
「ガイゼフ・バルカサロ。君は僕に負けたんだ。未練がましく僕のセラフィーナに関わらないでね。セラフィーナは僕と一緒に生きていく。彼女自身がそう決めたんだ。だから、僕もセラフィーナの気持ちに応える。たくさん種付けして、いっぱい子供を産ませる。たっぷり可愛がってあげるんだ。愛し合う夫婦としてね♪」
「あぁんっ⋯⋯♥︎ 嬉しいですわぁ♥︎」
「僕は嫉妬深い。だから、セラフィーナの過去を塗りつぶす。昔の幸せなんて絶対に忘れさせる。僕への愛だけでいい。そうだよね。僕に愛されるのが一番の幸福。セラフィーナは僕の家族になるんだ。そうだよね? セラフィーナ?」
「はいっ♥︎ もちろんですわぁっ♥︎ 陛下♥︎ 私の心を塗りつぶしてくださいっ♥︎」
セラフィーナの淫尻にベルゼフリートの巨根が食い込む。服越しに高鳴る脈動が伝わる。挿入されていないにも関わらず、臀部の突き上げだけで絶頂に至ってしまった。
(幸せ過ぎてっ⋯⋯! イくぅうっ! イっちゃう!! ガイゼフの前でっ! 抑えきれないっ! 会場の方々が私を見ているっ! でもっ、らめっぇえっ♥︎ お尻をオチンポで撫でられてるだけなのにっ! 果ててしまうっ♥︎ アクメしちゃううぅうっ♥︎)
セラフィーナの硬く勃った乳首から母乳が滴る。十六年前にヴィクトリカを産んで以来、閉じていた乳腺が開孔し、淡い黄白色の汁が湧き出た。
「くすくすっ! 母乳を出したのは初めてだね。こんなに幸せなセラフィーナを見たことある? 僕がセラフィーナの本性を解き放ったんだ。君が一生かかっても出来なかっただろうね。本当の悦びを僕がセラフィーナに教えてあげたんだ」
母胎の悦びに共鳴し、子宮に宿る三つ子の胎児が蠢いた。
「孕んだお腹の大きさが、愛と幸せの証明だよ。元気な赤ちゃんを産んでもらう」
ラフィーナとベルゼフリートが愛し合った証。女王と皇帝の遺伝子を受け継ぐ高貴な赤児が産声を上げる日は近い。
「背徳者は必ず創造主が罰を下す。開闢者が裁きを与えるぞ。罰と裁きから逃れられると思うな。メガラニカ帝国の愚帝⋯⋯!」
「くすくすっ! あはっはははは! みっともない台詞! 生憎だね。僕は教会の信者じゃないよ。セラフィーナも棄教させる。創造主や開闢者より僕が好きだよね? オマンコからお汁が出てる。素直だ。ほらぁ♪ ね? 教会の教えなんかより、僕を選んでく――んぎゅっ!? んぎゅぎゅぅ!?」
ベルゼフリートの発言を塞いだのは、会場の隅で成り行きを見守っていたウィルヘルミナだった。静観していたが、雲行きが怪しさを察し、背後からひっそり近づいてきたのだ。
無論、警務女官は気付いていた。止めるのは容易だが、皇帝に対する無礼千万な振る舞いは、皇后の帝国宰相であれば許される。
「たしか貴方は帝国宰相の⋯⋯」
ガイゼフは美しすぎるサキュバスに魅了され、心を奪われかけた。絶世の美女と名高いセラフィーナに匹敵する美貌は、男の意識を一瞬で吸い取ってしまう。
「帝国宰相ウィルヘルミナ・ナイトレイと申します。私の夫がご機嫌だったもので、失礼がなかったかと心配になりまして。なにせまだ陛下は幼く、経験が少ないのです。そうは思いませんか。セラフィーナ?」
「は、はい。宰相閣下⋯⋯」
性的な魅力と賢さを兼ね揃えるサキュバスは、凍てついた眼差しでガイゼフとセラフィーナの双方を黙らせた。
ベルゼフリートは物理的に口を塞がれた。幼い皇帝の矮躯を抱き上げ、自慢の爆乳を押し付け、顔面を谷間に封じ込める。
苦しそうにもがくベルゼフリートは宙に浮いた両脚をバタつかせていた。
「んっ! んぷぁっ! ウィルヘルミナ! 何するの!?」
「皇帝陛下。お戯れが過ぎますよ。議定書の調印は終わりました。見たところ、お疲れのご様子。本日はお休みになられたほうがよろしい」
ウィルヘルミナの口調が物語っていた。問題行動を起こしかけたとき、皇后や高位の王妃は皇帝を遠回しに注意する。休むように進言するのだ。
「向こうでレオンハルト元帥も心配しておられましたよ」
「⋯⋯う、うん」
威勢の良さは消え失せた。セラフィーナの前夫を挑発していたベルゼフリートは、正妻に叱りつけられ、従順な子犬となった。セラフィーナから離れ、ウィルヘルミナに尻尾を振り、ご機嫌を伺っている。仕出かした悪さを隠そうとする飼い犬だった。
「何を突っ立っているのですか? セラフィーナ。下がりなさい。故郷に戻って、自身が愛妾の立場にいると忘れてしまいましたか? アルテナ王国の女王であろうと、後宮の序列には従ってもらいます」
サキュバスの尻尾で太股を叩かれた。慌ててセラフィーナは身を半歩ほど退かせる。
「失礼いたしました。宰相閣下⋯⋯」
愛妾は皇帝の愛人に過ぎず、正妻に場所を譲らねばならない。
(わざわざ割って入ってきましたわ。嫉妬⋯⋯? いいえ、違うわ。教会絡みの発言を陛下がしたから⋯⋯?)
当初、ウィルヘルミナが邪魔立てしにきた理由を察せなかった。妬みで動くような軽い女性ではない。
「ガイゼフ・バルカサロ。貴方はこの地を早々に去るべきです。アルテナ王国に屈辱的な敗北を与えた貴方は、双方の陣営から疎まれております。ルテオン聖教国の教皇を拝み倒す程度のことでしか役立たなかった。よくもこの場に来たと笑ってさし上げましょうか?」
「⋯⋯⋯⋯俺は自分の娘を引き取りに来ただけだ」
「そうですか。お望み通り、ヴィクトリカ・アルテナの身柄を引き渡します。そして、メガラニカ帝国の支配領域に近づかないでいただきたい。今さら、未練があるとは思えませんが⋯⋯。元夫婦の男女、どちらにしても、恥を知っているのならば⋯⋯」
呆れた様子でウィルヘルミナは、セラフィーナとガイゼフを交互に見た。
「評判が地の底に落ちようと、王族の外聞を鑑みるべきでしょうね」
妻を寝取られた哀れな男。もう片方は自分の夫に懸想する節操なしの女。居心地悪そうに幼帝は苦笑いを浮かべている。股間の巨根はすっかり萎えていた。
「言われずとも出ていく⋯⋯! ただし、ヴィクトリカと一緒にだ!! ⋯⋯俺の娘はどこにいる!?」
「白月王城にはいません。王都ムーンホワイトの城壁外に設けた帝国軍の駐屯地。そこで養生してもらっています。悪阻が酷く、寝込んでいるようです」
ウィルヘルミナはベルゼフリートの頬を撫でる。話し相手のガイゼフをまったく見向きしていなかった。
「陛下の悪戯好きにも困ったものです。女仙以外の女を孕ませるのは異例中の異例。⋯⋯しばらくの間、白月王城に滞在しますが、言いつけは覚えておりますね?」
「もちろん⋯⋯。覚えてる。可愛い子がいても手は出さない。ちゃんと分かってるよ⋯⋯うん⋯⋯。女官にも見張られてるし⋯⋯」
「よろしい。陛下は素直な良い子です」
ヴィクトリカの懐妊で、ベルゼフリートは重めのお説教をくらっていた。事情を知らされていたカティアは庇ってくれたが、ウィルヘルミナとレオンハルトにはこってり絞られた。
「さてと⋯⋯。将軍。ウィリバルト将軍! ガイゼフ殿を駐屯地まで案内してさし上げなさい」
ウィリバルト将軍と警備の帝国兵を呼びつけ、半ば強引にガイゼフとセラフィーナの引き離しに取りかかった。
「セラフィーナ。寝所で陛下の伽役を任せます」
「よろしいのですか? 私に⋯⋯?」
「愛妾の仕事をさせてあげます。光栄でしょう。不満がありますか?」
「い、いいえ! ご配慮に感謝いたします。宰相閣下。え⋯⋯? あぁんっ⋯⋯あぁ⋯⋯♥︎」
ウィルヘルミナは自身に匹敵するセラフィーナの爆乳に手を突っ込み、ガイゼフが置いていったロザリオを取り出した。そして、押し殺した声で言い放った。
「公の場で宗教絡みの発言は控えなさい。教会の総本山、ルテオン聖教国の関係者が会場にいるのです。メガラニカ帝国の一員となったのなら、自覚ある振る舞いを心がけなさい」
ウィルヘルミナが忌避したのは、セラフィーナとベルゼフリートが棄教に言及したからだ。
宗教問題はアルテナ王国の統治に大きな問題を及ぼす。ここでの失言が教会に利用されるのを懸念した。
「陛下を連れて早く行きなさい。⋯⋯白月王城の一廓を禁裏としました。女仙以外の出入りを制限し、帝国軍の精鋭に周囲を警備させています。安全面では天空城アースガルズにお戻り戴くのが最善ですが、公開出産すると決めています。しばらくは地上で過ごさねばなりません」
ウィルヘルミナはベルゼフリートにロザリオの首飾りを与えた。ガイゼフから奪い取った夫の地位が正式に受け継がれた。
「ありがと。ウィルヘルミナ。いいんだよね? 許してくれるの?」
「ええ。今の陛下はアルテナ王国の君主を兼ねられています。セラフィーナは愛妾であり、女王でもあるのですから。アルテナ王国の象徴を屈服させ、メガラニカ帝国の威信をお示しください」
「うん。僕、頑張る」
「セラフィーナ。公開出産は玉座の間で行います。城内に集めた諸侯が隣席する場で、皇帝陛下の御子を産みなさい。陣痛を感じたら医務女官を頼りなさい」
「はい。承知しておりますわ。宰相閣下」
約十六年ぶり、ヴィクトリカを出産したとき以来の出産となる。出生を証明するため、公開の場でセラフィーナは三つ子を産み落とす。胎児を取り上げるのは、ベルゼフリートが行う予定となっていた。
「もう行こう。セラフィーナ。ロレンシアも。赤ちゃんのために産道を拡げてあげなきゃね」
ウィルヘルミナに離してもらったベルゼフリートは、孕み腹の花嫁二人を両脇に抱き寄せた。
「――あぁんっ♥︎」
「――んっぁん♥︎」
花嫁達は淫らに身を震わせ、乳首から乳汁を撒き散らした。ベルゼフリートに連れ添われて、セラフィーナとロレンシアは白月王城の寝殿へと姿を消した。
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