アマンダは八年前の出来事を語り終えた。
ロレンシアとヴィクトリカは旅の目的を成し遂げた。だが、思わぬ形で秘密を知ってしまった護衛の冒険者達は困惑する。
(こんなの⋯⋯。一介の冒険者が知っていい秘密ではない⋯⋯)
冒険者ララノアは長命なエルフ族。死恐帝の時代から活躍している熟達の冒険者だ。しかし、今回ばかりは冷や汗が止まらない。
真相にいち早く辿り着いたカティア神官長が、真相を闇に葬り去った理由は明らかだ。
このまま忘れ去られるべき、忌まわしい出生の秘密。ベルゼフリートが知ったとき、どれほど傷つくかは想像できない。
(⋯⋯とてつもなく不味い⋯⋯気がする⋯⋯)
アマンダが付き添いの護衛である冒険者にまで話を聞かせた理由。中途半端に知られるくらいなら、全てを伝えた上で口封じする。そんな意図が働いている気がした。
宮廷の動き次第で、ララノア達は社会から抹殺される。そんな気配をひしひしと感じていた。
(といっても⋯⋯今さら聞かなかったことにはできない⋯⋯)
事態はララノアが想定する以上に深刻化している。
パーティーメンバーの一人、狐娘のエルフィンは軍務省に買収され、参謀本部の密偵となっていた。今夜、エルフィンは定時連絡で情報将校ユイファンに報告を行う。
隠されていた皇帝ベルゼフリートの過去を軍務省も認知する。
軍務省は帝国宰相ウィルヘルミナの権勢を削ぐために動いてきた。しかし、ベルゼフリートの精神に致命的な傷を与えてしまうとなれば、今までの策謀を潔く放棄するだろう。
帝国元帥レオンハルトと副官の主席宮廷魔術師ヘルガ王妃、両者ともに私利私欲では動かない。
「皆さん。今回の話は胸に納めておきましょう。陛下の秘密は守られるべきです」
皇帝崇拝者の女僧侶テレーズは仲間達に求めた。お互いがことの重大性を確認する。軽率に言い触らせば、とんでもない厄介事を招く。
脳筋のアマゾネス二人組は落ち着かない様子だ。
「分かってる。⋯⋯でっ、でも、どうすんだよ? これ陛下に伝えちゃうんだよな? 不味くない?」
アリスティーネの目線は泳いでいる。普段の豪快な言動が嘘のようだ。隣にいるルイナもアリスティーネに影響され、激しく動揺していた。
「陛下には伝えないほうがいいわ。だって、ねえ⋯⋯? カティア神官長は調べたうえで隠したわけなんでしょ? 自分のお生まれを知りたい陛下の気持ちは分かるけど⋯⋯こんな忌まわしい事実を知りたいわけじゃないはず」
アリスティーネとルイナの視線は、自然とロレンシアに向かった。
皇帝の密命で過去を探し当てた女仙は、天空城アースガルズに帰還する。そして、旅の成果を報告するはずだ。
「私達は単なる護衛。ロレンシア様が決める。部外者の私達が出しゃばる話じゃない」
きっぱりと言ったのはエルフィンだった。
仲間達は知らないが、エルフィンにはユイファンという保険があった。今日の夜には情報を伝えられる。
(おそらく宮廷の大問題に発展する⋯⋯。だけど、事前に知っていれば対処は可能。智謀の将と名高いユイファン少将なら、上手く収めてくれるはず。私達は余計な真似をしないほうがいい)
宮廷は女仙の戦場。冒険者の出る幕はない。ロレンシアの行動が新たな災禍を招くのであれば、間違いなく軍務省が制止してくれる。
(そもそも無用な心配かもしれない。ロレンシア様の表情を見れば分かる。この秘密をロレンシア様は陛下に伝えない)
エルフィンは人の感情を読むのが得意だ。ロレンシアの心中を見透かしていた。密偵のエルフィンは、ユイファンに事情を教えてもらっている。
(ロレンシア様はメガラニカ帝国への報復を望まれない⋯⋯)
メガラニカ帝国はロレンシアの祖国を征服し、結婚していた夫は不能に追いやられた。後宮に連れてこられた当初、ロレンシアは帝国の象徴的存在であるベルゼフリートを憎んでいた。
(⋯⋯だけど、それは過去。今のロレンシア様が愛しているのは陛下。この方はアルテナ王国の騎士ではなくなった)
女騎士の顔は消えた。ベルゼフリートの赤児を孕み、性奉仕を厭わぬ従順な情婦となった。
裏切りの女騎士は、皇帝に絶対の忠愛を誓った。
祖国を捨て去り、愛していた元夫レンソンへの気持ちも絶った。
アルテナ王家に捧げていた忠誠心を上回る愛情。傷つき、弱り切った自分を慰め、愛してくれたベルゼフリートに心を奪われた。
「――話してくれてありがとうございます。アマンダさん」
ロレンシアは悲しげな視線をヴィクトリカに向けた。皇帝と敵対する者が、知ってはならない秘密を知った。帝国の冒険者と違い、アルテナ王国の王女であるヴィクトリカは面倒な存在だ。
(ヴィクトリカ様⋯⋯。貴方様も皇帝陛下に仕える女仙となっていただければ⋯⋯。けれど、もし、刃を向けるのなら、貴方様は知ってはならない秘密を知った)
できる限りは避けたい選択肢だ。しかし、口封じでヴィクトリカを始末する必要性を感じた。もしヴィクトリカが敵対し続ける気なら、生かしてはおけない。
(皇帝陛下⋯⋯。ロレンシアは貴方様を愛しております。たとえどんな犠牲を払おうと⋯⋯ご奉仕いたします⋯⋯)
親友であり、かつては忠誠を誓っていた王女ヴィクトリカ。かつては憎悪していたが、心から愛している幼帝ベルゼフリート。
心中の天秤は傾いた。
ロレンシアは自身の孕み腹を抱きしめる。大切な赤児達が宿る子宮。ショゴス族の肉体改造で、遺伝子に混ざりモノがあろうと、胎で育っているのは、愛しの我が子だ。
(親は子供の幸せを願うもの⋯⋯。だから⋯⋯きっと⋯⋯、私は間違っていないわ)
ベルゼフリートの父親と母親。近親相姦の禁忌を犯した母親と息子は、産まれ出でた子供の幸福を望むはずだ。
◇ ◇ ◇
「――こちらへどうぞ。ご案内します」
昔話を語り終えたアマンダは「会わせたい人がいる」とロレンシア達を建物の奥に連れていく。
八年前の惨劇で関所は廃止された。新たな街道が整備され、跡地は犠牲者を埋葬する墓園となった。
事件の発端となったアマンダは司法神官を辞職。忌み地の番人として暮らしている。
アマンダは子供達を養育していた。教育費はナイトレイ公爵家が支給し、護衛の騎士も常駐している。手厚い保護を受ける理由は、育てている子供達の出自にある。
「リサレーナ。テナドール。お客人がいらしています。自分の部屋にお戻りなさい。まだ今日の勉強が済んでいないでしょう? 遊びの時間は終わりですよ」
「はーい。分かりました」
「行こう。お姉ちゃん!」
元気の良い姉弟が廊下を駆けていった。七歳くらいの幼児だ。言葉使いがたどたどしい。
「私はあの子達と暮らしています。陛下と面識のあるロレンシア様は分かったかもしれませんね。これから誰にお会いするのかを⋯⋯」
廊下で擦れ違った幼い姉弟。ロレンシアは唖然の表情だった。ヴィクトリカもまったく同じ反応だ。
――災禍の爪痕は、時間の流れで消え去らない。
「アマンダさん。あの子供達は⋯⋯?」
冒険者パーティ一行は気付かない。しかし、ロレンシアとヴィクトリカは擦れ違った姉弟の顔立ちに覚えがあった。
「孤児院ではないのですよね? じゃあ、さっきの姉弟は⋯⋯? ご両親はここにいるのですか?」
姉弟の年齢はいずれも十歳未満。何よりもその外見的特徴だ。髪は灰色。肌は浅黒い。特徴的なのは声変わりしていない声。宮廷で聞き慣れている幼帝とそっくりの声質だった。
アマンダはロレンシアの質問に答えなかった。しかし、口で語らずとも分かってしまった。
「⋯⋯私達がこれから会うのは⋯⋯まさか⋯⋯」
ロレンシアはごくりと唾を飲み込んだ。
「この先にある地下室は立ち入り禁止としています。関所で使っていた地下牢を改築しました。あの子達には両親がいると教えていません。子供達には見せられない状態なのです」
地下に続く階段を降りる。鍵を解錠し、アマンダは鉄扉の開く。
その先に木製の扉があった。合い言葉を唱え、厳重な封印術式が解かれた。
薄暗い石壁の地下室。光源は天窓が一つだけ。部屋の中央にベッドが安置してある。
静まりかえっている。だが、ヴィクトリカは人の気配を感じた。
「ベッドに誰か寝ているわ」
小さな声でつぶやいた。静寂な地下空間は声が大きく反響する。
仰向けで横たわる女性は眠っていた。呼吸はしている。しかし、目覚める気配はない。
魂の抜けた屍体は、黄金髪の美しい女性だった。年齢は三十代後半。ヴィクトリカは一瞬、母親のセラフィーナと姿を重ねてしまった。
(お母様⋯⋯? いえ、顔立ちが違うわ。でも⋯⋯優しげな印象がそっくり⋯⋯。お母様と雰囲気がよく似てる)
よくよく観察すればまったくの別人。しかし、雰囲気が似通っている女性だった。
この場にいる全員が皇帝の禁忌を知っている。
帝国宰相ウィルヘルミナが隠した秘密。過去を調べた神官長カティアが口を噤んだ理由。八年前から続く禍根の物証が目の前にいた。
「嘘でしょ⋯⋯! だって、こんなの⋯⋯!! ありえないわ! 絶対に! あっていいはずがない!!」
ヴィクトリカは耐えきれず、思わず叫んだ。
ベッドに仰向けで寝ている黄金髪の美女は孕んでいた。胎の膨らみは異常な大きさだ。通常の妊娠形態ではなかった。
(彼女は孕んでいる。生気をまったく感じないわ。呼吸が浅すぎる⋯⋯。なのに、強い生命力が伝わってくる矛盾。不気味だわ⋯⋯。それに、何なの!? この巨大なお胎は⋯⋯!)
ヴィクトリカは、同じ妊婦のロレンシアと見比べる。
ショゴス族に子宮改造された多胎のロレンシアを遙かに上回るボテ腹。二本足で歩き回るどころか、自力で寝返りが打てない膨よかな母胎。一般的な妊婦の肉体と乖離している。
異常発達で乳房と腹部が肥大化し、破裂寸前だった。
(普通じゃないわ。青白い顔は死んでいるように見える。だけど⋯⋯でも、彼女は⋯⋯! そうとしか考えられないわ⋯⋯!)
八年前の出来事を知っていれば、思い当たる人物が一人いる。だが、間違いであってほしかった。
青ざめたヴィクトリカは問いかけられなかった。
怖じ気づいた王女に代わり、覚悟を決めたロレンシアが震え声でアマンダに確かめる。
「アマンダさん。ベッドで寝ている女性は妊娠しているのですか? まさかこの方は⋯⋯?」
「お察しの通り、母后セラフィーナ様です。ベルゼフリート陛下の母君、血縁上は祖母でもあらせられます。八年前に亡くなられましたが、お体は存命なのです。破壊者ルティヤの穢れた瘴気で、生かされ続けています」
八年前に処刑され、実の息子に孕まされた哀れな母親の屍体。アマンダは毛布をめくり、母后セラフィーナの全貌をロレンシア達に見せる。
「破壊者ルティヤの膨大な力は、屍体に不死の生命力を与えました。神官長のカティア猊下ですらお鎮めできませんでした」
母后セラフィーナの股座が露わとなる。そこには虚ろな表情で抱きつく全裸の少年がいた。自我は消えている。だが、彼は生きていた。
「ベルゼフリート陛下の父君。血縁上は兄君でもあられます。メガラニカ帝国の皇帝となるべき御方でした」
「⋯⋯ベルゼフリート陛下の父君」
「うっ! あぁ⋯⋯嘘でしょ⋯⋯? さっきの話だと⋯⋯!」
ヴィクトリカは後退る。半覚醒状態の転生体を鎮めたと思い込んでいた。しかし、違った。八年前の災禍はまだ完全には終わっていない。
「破壊者ルティヤの荒魂は、再誕児のベルゼフリート陛下に移りました。ですが、全てではありません。陛下の父君は今もこうして生きています。家族への愛慕や未練。魂と記憶の一部分は転移しなかったようです」
「おかしいわ。こんなの⋯⋯。どうして? なんで貴方は止めないのよ!? 異常だわ。これを放置するなんて!」
「止められないのです。二人の営みを無理に止めれば、再びこの地で災禍が起こります。だから、この八年間、ずっと見守ってきました。これからも⋯⋯ずっと⋯⋯」
抜け殻となった少年は、息子のベルゼフリートに家族への想いを渡さなかった。記憶の継承がなされなかったせいで、ベルゼフリートは出生後の出来事しか知らない。
ベルゼフリートは記憶を失っているのではなく、そもそも過去が存在しない人間だった。父親である少年は、母親への愛心を独占している。
「彼女はずっと自分の息子に犯されているの? 八年間⋯⋯ずっと⋯⋯」
ロレンシアは問いにアマンダは頷いた。
母后セラフィーナは処刑時に死んだ。そして、破壊者ルティヤの転生体だった少年は、母親に自分を産み直させた。空っぽとなった母と息子の屍体は、呪物となって、永遠に情交を続けていた。
胎に抱きついて眠っていた少年が目覚める。地下室に入ってきた人間達はどうでも良い存在だった。少年にとって大事なのは母親だけだ。
実母のオマンコに挿入した男根を引き抜き、再び挿入した。
――パァッンッ!
静寂な室内にパンッと愛打の肉音が鳴った。ボテ腹の母親に正常位で腰を振る。両足首を掴んで、女陰に食い込ませる。
「アゥ⋯⋯ァ⋯⋯アァ⋯⋯!」
野生動物を思わせる激しいピストン運動でオマンコに打ち込む。
蒼白だった母親の頬が朱色に染まる。涎の垂れる口から嬌声が聞こえた。
「おっ⋯⋯ぁ⋯⋯♥︎ んあぁ♥︎ んっ♥︎ んあぁ⋯⋯♥︎ んぉ♥︎」
母親を悦ばせようと少年は動きを早める。ボテ腹が揺れ動き、ベッドが軋んだ。
「彼女は生きているのですか⋯⋯?」
ロレンシアは念のために再度確認する。
「肉体の反射です。母后様に自我はありません。皇帝陛下の抜け殻も、魂の残滓が残る屍体です。屍体同士の交わりですが、子供は生まれてきます。母君を犯し、孕ませ続けているのです」
「⋯⋯産まれてくる子供は⋯⋯さっきの姉弟と同じ⋯⋯」
「母后様がご出産された赤児は普通の人間です」
「両親の肉体に魂は存在せずとも子供は生まれてくる。そうなのですね?」
「はい。私が育てている子供達は、母后様と皇帝陛下の御子です。長女のリサベータ様。次男のテオドール様。二女のルフィシャ様。三女のリルカ様⋯⋯。四人いらっしゃいます」
「長男は現皇帝のベルゼフリート陛下⋯⋯。そうなるわけね」
「私の役目は、皇帝陛下の父君と母君を見守り、産まれた子供のお世話です」
「止める方法は? ⋯⋯産ませ続けるしかないの?」
「お二人は栄養の摂取をしておりません。睡眠と情交、そして出産を繰り返しておられます。もうじき五人目をご出産されるでしょう」
「⋯⋯⋯⋯」
「ロレンシア様。貴方様はこの陰惨な事実を皇帝陛下にお伝えする覚悟がございますか?」
「皇帝陛下は自分の過去を知りたがっているわ。でも、陛下の心を傷つけたいとも思っていません」
「カティア神官長は八年前の出来事を調べました。そして秘匿すると決めた。ナイトレイ公爵家は罰せられるべきかもしれません。しかし⋯⋯陛下の心はどうなります?」
「それくらい⋯⋯。私だって察してる⋯⋯。うっ⋯⋯あぅ⋯⋯!」
ロレンシアは子宮から込み上げてきた痛みでよろけた。
「ロレンシア様?」
床に座り込んでしまった。まだ出産までは猶予がある。そのはずだったのに、鋭い陣痛に襲われた。
(なんで? まさかもう⋯⋯産まれちゃうの⋯⋯!? まだ⋯⋯時間はあるはずだったのに!)
尻餅をついたロレンシアを心配して、周囲は駆け寄る。だが、女仙の体に触れられる者はいなかった。
「え?」
ロレンシアは驚く。自分のほかに、悶え苦しむ女がいた。直立しているが、両足が震えている。壁にもたれかかり、必死の形相で堪えている。
「⋯⋯くぅ⋯⋯あぁ⋯⋯!」
ヴィクトリカは下腹を押さえる。ロレンシアと同じで、胎から生じる陣痛に喘いでいた。子宮に宿った赤児の魂が荒ぶる。
すぐさまララノアが指示を飛ばす。
「テレーズ⋯⋯! 回復術式でロレンシア様を癒やして。早く!」
「ロレンシア様。失礼いたします。大丈夫。素肌には触れないようにいたしますわ」
テレーズは祈祷で神術を発動する。胎から込み上げる痛みを和らげ、ロレンシアの体に生命力を付与する。
大神殿の司法神官だったアマンダは、テレーズより格上の神術師だった。しかし、手を貸そうしたが、原因に気付いた。ロレンシアは産気づいているわけではなかった。
「⋯⋯もしかすると共鳴しているのかもしれません。母后様のご出産が近いのです。女仙のロレンシア様をご案内するべきではありませんでした。立ち上がれますか?」
ロレンシアは何とかよろよろと立ち上げる。額の汗を拭う。陣痛の原因はベッドに横たわる母后セラフィーナの御産だ。気付かれないように我慢しているが、ヴィクトリカも共鳴で苦しんでいた。
寝台に横たわる母后セラフィーナは嬌声を上げ始めた。
「あぁぁ⋯⋯♥︎ んぁ♥︎ んぁ~~♥︎」
出産は始まる。孕んだ胎が蠢く。男根を咥えた膣から羊水が吹き出た。膜が破れのだ。破水が起きている。子宮の堤が決壊し、ボテ腹を膨らませていた羊水が流れ出る。
「私は大丈夫です。それよりも⋯⋯」
ロレンシア達は御産の目撃者となる。両脚をバタつかせる母后セラフィーナは力み始めた。呼吸を荒げ、胎児を産み出そうとしている。だが、産道は息子のオチンポで塞がれていた。
「母后様のご出産に手出しはできません」
アマンダの言うとおりだった。母子の営みは何者だろうと阻めない。少年は母親の出産を祝福する。精嚢で拵えた、ありったけの精液を発射した。
開門状態の子宮口から、赤児の頭部が飛び出している。
浴びせかけられる白濁液。屍体であるはずの母后セラフィーナが、新たな子を生み出す生命力の根源。抜け殻といえど、少年は破壊者ルティヤの器だった。
皇胤の膣内射精で精気を補填し、母后セラフィーナは産む。
「んぁ⋯⋯♥︎ んんっ♥︎ あんんんぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁ♥︎」
膣穴に挿入されていた男根が外れる。少年は母親の胎を圧迫する。栓の外れた子壺から赤児の頭が露出する。
淫音が鳴る――じゅぶるんぅっ♥︎
薄らと黄金の頭髪が生えた赤児だった。母親似の髪色。肌は父親譲りの褐色。母后セラフィーナは出産した。
「あぁひぃっ♥︎ あふぅ⋯⋯♥︎ あぁ⋯⋯♥︎ はうぅうぅう⋯⋯♥︎」
破れた羊膜、二重螺旋の臍帯、赤黒い胎盤。赤児を育てていた胎内の臓器が排出される。出産を無事に終え、母后セラフィーナの表情は和らいだ。
「母后セラフィーナ様は女児をご出産されました。破壊者ルティヤの力を受け継いだのは、長男のベルゼフリート陛下だけでした。こうして産まれてきた子供は普通の人間です」
アマンダは慣れた手つきで、赤児を取り上げた。臍帯を切り、布で包む。父母の愛液で濡れた赤児を拭った。
「⋯⋯ベルゼフリート陛下の父君と母君は生きております。血の繋がった妹弟も⋯⋯こうして産まれています。ですが⋯⋯知らぬ方が絶対に良いのです。そうは思いませんか?」
少年は出産を終えたばかりの母親に甘えた。乳首を甘噛みする。優しく乳房を揉む。絞りたてのミルクを独り占めする。
母乳で空腹を満たすと、少年は再び実母のオマンコに挿入する。空っぽの子宮に精液を注ぐ。満たされた胎は見事に膨れ上がる。
永遠に母親を犯し、産ませ続ける呪胎。歪んだ愛は終わらない。
――ぢゅぷんっ♥︎
強引に排卵された卵子に精子が群がる。否応なしに息子の遺伝子と交配を強いられ、受精卵へと成長する。