「んぅっ♥︎ あぁっ♥︎ あっ……んぃ……っ♥︎」
セラフィーナが帝城ペンタグラムに連れてこられてから3日が経つ。黄葉離宮にロレンシアを残し、後宮の女として、ベルゼフリートとの性行為を重ねていた。
「朝はこれくらいにしよっか……。疲れちゃった……。朝の運動にしては十分だよね……?」
ベルゼフリートはセラフィーナに2回の膣内射精を行った。本気の子作りセックスで、朝勃ちを鎮めた。
「はぁ……はぁ……はぁ……ぅ……♥︎」
正常位で犯されていたセラフィーナは、乱れた呼吸を落ち着ける。股を大きく開き、天井を見上げながら、ベルゼフリートの射精を受け入れていた。
「ふぅ。いっぱい出ちゃった」
挿入された極太の陰茎をゆっくりと引き抜く。膨れた亀頭が膣道の襞を刺激し、反り返ったカリが愛液を掻き出す。
「セラフィーナのオマンコ……、もう僕のオチンポに馴染んできたね。旦那さんのオチンポじゃ満足できない身体になってるんじゃない? ほら、まだ物欲しそうに膣穴がきゅんきゅんしてる。僕との浮気セックスはそんなに気持ち良かった?」
ベルゼフリートとのセックスを知ってしまうと、ガイゼフと行っていた夫婦の営みは子供の遊びと思えた。
「次は僕のママになってみる? すっごく変態的だと思うけど……あっちのほうが気持ちよくなれるよね」
快楽と愛情は別物。皇帝に身体を許し、背徳の女になろうと、セラフィーナの心は変わらない。当人はそうだと信じ込んでいた。
「公文書館での収穫はなかったみたいだね。これからどうする……?」
乳房の谷間に顔を沈め、ベルゼフリートは囁いた。女官に内容を聞かれないように、秘密の話は、事後のピロートークに紛れて、小声で行うようにしている。
「神官長のカティア猊下から、お話を聞くことはできないかしら……?」
「僕は無理……。ちょっと前なら大丈夫だったけど、カティアが女官と揉め事を起こしたの。だから、大神殿への訪問が難しくなった。それに神官は口が固いよ。話さないと決めたら、絶対に何も教えてくれない。特にカティアはそうだ」
セラフィーナは考えを巡らせる。神官長カティアが、墓所まで秘密を抱えるつもりなら、聞き出すことはまず不可能だ。
(けれど、どうしてなのかしら? 秘密を掴んだのなら、それは帝国宰相ウィルヘルミナの弱味。皇帝がナイトレイ公爵家の血縁者であれば失脚は免れない。宰相派は分裂し、長老派の権勢が増すはずなのに……)
帝国憲法は大宰相ガルネットが制定した不磨の聖典。皇帝の血縁者が妃となるのを禁じた条項が明記されている。
(もしかすると噂は事実無根で、カティアは何も掴めなかったのかしら……? でも、そうだとするなら、そんな噂をどうしてウィルヘルミナは放置しているの……? 否定すればいいだけなのに。やっぱり出生を秘匿しなければならない理由があるんだわ。それは一体何なのかしら……?)
セラフィーナと同じ結論に達した者は数多くいる。しかし、その先に辿り着いた者は皆無だ。
分かっているのはウィルヘルミナとカティアの2人が、皇帝の出生について沈黙を守っている。それだけであった。
「陛下ご自身は何か覚えておられないのですか? 過去について⋯⋯」
「家族に関しては全くない。小さかった僕はナイトレイ公爵家の屋敷でウィルヘルミナに抱き付いてた。それが一番古い記憶。公爵家で下働きをしてたネルティと友達になったのも、それくらいの時期だったかな……」
「側女のネルティさんは、軍閥派のユイファンさんにお仕えしているのでは? 昔はナイトレイ公爵家の使用人だったのですか?」
「ネルティは二重スパイだったんだよ。ケーデンバウアー侯爵家はナイトレイ公爵家にネルティを潜り込ませてた。でも、ネルティの一族はケーデンバウアー侯爵家を裏切ってた」
「ええっと……、つまり、ネルティさんは宰相派の人間?」
「それが複雑でさ。ネルティ本人はケーデンバウアー侯爵家に恩義を感じてたんだよね。どっちに付けばいいか分からなくなって、最後は蝙蝠みたいな立ち位置になった。悪ぶってるけど、スパイに向いてなかったんだよ。性格が良いからさ」
「ネルティさんなら、何か知っているのでは? 彼女に協力していただけるのなら、とても助かるわ」
「それはダメ。知らないと思うし、面倒ごとにネルティは巻き込まないよ。友達に迷惑はかけたくないもん」
強い口調でベルゼフリートは断言した。皇帝の出生に関する秘密を探るのはリスクが高い。
「そう……。それはとても残念ですわ……」
帝国宰相ウィルヘルミナを敵に回すだけでなく、神官長カティアだって、どんな行動に出てくるか分からない。
諡号文書の内容は、宮廷の不祥事。
メガラニカ帝国にとって絶対に知られたくない秘密の中の機密。
女仙の処断権を持つ司法神殿の長から、睨まれたい者などいない。
(だから……捨て駒にできる私なのでしょうね……。もちろん。覚悟はしていますわ。私の目的は祖国を守ること。宮廷での地位なんて欲してはいませんし、この命だって惜しくはないわ……!)
アルテナ王国の状況は悪化している。何もしなければ全てを失うのだ。
「——困ります! ウィルヘルミナ閣下! いくら宰相閣下といえども、許しを得ずに皇帝陛下の寝所に足を踏み入れるなど、あまりにも非礼ではありませんか!?」
扉を隔てた廊下から聞こえる喧騒。女官総長ヴァネッサの制止を物ともせず、ウィルヘルミナはきっぱりと言い放つ。
「私は皇帝陛下の正妃です。女官総長である貴女が皇后特権を知らないはずはないでしょう?」
「皇后特権の制度は存じております。しかしながら、帝城ペンタグラムには守るべき慎みと礼節がございます。皇帝陛下は夜伽の最中。せめて、終わるまでお待ちになられても……」
「皇后を阻めるのは、私と同格のレオンハルト元帥とカティア神官長だけです」
寝室の扉が勢いよく開かれた。
まるで浮気現場を押さえられたかのような緊迫した雰囲気となる。
ベッドには全裸のベルゼフリートがおり、傍らにはセックスを終えたばかりのセラフィーナがいるのだ。
「おはよう。ウィルヘルミナ。どうしたの……? いきなり?」
ベルゼフリートは和やかな挨拶を述べる。対照的にセラフィーナは、毛布を引き寄せ、精液塗れの恥部を隠して身構えた。
セラフィーナは初めて、帝国宰相ウィルヘルミナ・ナイトレイの美貌を見た。
——山羊の捻れ角、蝙蝠の羽、そして特徴的な尻尾。
セラフィーナの豊満な乳房すらも凌駕する完璧なサキュバスの身体。桃色の美髪を靡かせ、相手を魅了する魔眼を持つ妖艶の美女。
「おはようございます、皇帝陛下」
ウィルヘルミナは上品に挨拶を返す。セラフィーナを完全に無視し、ベルゼフリートに歩み寄った。愛しの幼帝しか眼中になかった。そのまま顔を近づけ、二人は唇を重ねた。
「んぁ、んっ……。んゅっ、んぢゅる……♥︎ んゅぅ……♥︎」
ウィルヘルミナは周囲に濃厚なキスを見せつける。数分に及んだ熱烈な接吻をやっと終えると、ウィルヘルミナはベルゼフリートを抱えた。
「陛下の唇はとても美味しい……。ああ、ここではダメです。もう少しだけ辛抱してください。ここは邪魔者が多くいます。続きは、私の離宮でしましょう。外に馬車を用意しています」
ウィルヘルミナはセラフィーナを徹底的にいないものとして扱う。ベルゼフリートも同じように、つい先ほどまで抱いていたセラフィーナを忘れ去っていた。
サキュバスのキスには魅了の効果がある。もちろん、強い意志があれば拒絶できる。けれども、元から愛しているのなら、受け入れてしまう。
「うん。どこでも付いていく。はやくウィルヘルミナと愛し合いたい……!」
サキュバスに接吻され、蕩けた表情を作る幼き幼帝。
ウィルヘルミナに惚れ込んでいるベルゼフリートは、魅了を素直に受け入れていた。先ほどまでセックスをしていたセラフィーナに未練の欠片もない。美しい淫魔に魂を委ねてしまう。
「……あっ、あの……っ!」
「無礼者。皇后の許しなく、口を挟まないでください。貴女は地位も職位もない妾。宮廷では弁えた振る舞いをしなさい」
「…………っ!」
ウィルヘルミナは威圧する。蛇の睨みを向けられ、セラフィーナは口を噤む。名乗りすらセラフィーナには許されなかった。しかし、一番心に堪えたのはベルゼフリートから擁護の言葉が一言も発せられなかったことだ。
わずかながらもセラフィーナは期待していた。けれど、ベルゼフリートは軽んじられる愛妾ごときに目を向けず、ウィルヘルミナの乳房に頬擦りをしている。
(このサキュバスが帝国宰相……。メガラニカ帝国の最高権力者……!)
セラフィーナはこの時、レオンハルトとは比較にならない冷たい敵愾心をウィルヘルミナの視線から感じ取った。
幾人もの政敵を排除してきた支配者の風格。それに加え、愛している男に付きまとう害虫を追い払おうとする明確な敵意があった。
「ヴァネッサ。この情婦がアルテナ王国の女王なのですか?」
「はい。現在は夜伽の最中でした」
「彼女が陛下の夜伽を……? 軍閥派の妃達は、もう少し人選を考えるべきですね。陛下に純潔を捧げていない穢れた女を差し出すなど……。そんなに人材が不足しているのでしょうか……?」
世界広しといえども、ここまで徹底的に処女に拘るサキュバスは、この世に一人しかいないかもしれない。
(嘲られているのは分かる。だけど、ここで言い返してはいけないわ。警戒心を抱かれるよりは、むしろ侮られているほうが好都合……)
ウィルヘルミナが常人であったのなら、セラフィーナの機微を見過ごしただろう。しかし、政略の天才たる帝国宰相は素人の感情を容易に見抜く。
「その顔は何ですか? とても気に食わない反応です。感情を偽りましたね?」
「……?」
「貴女は帝国に対して憎悪を抱いていますね。つまり、皇帝陛下や私に対しても、強い怒りを向けていなければならないはず。なぜ先ほど反感を隠そうとしたのです?」
「……私は何も……っ……!」
「貴女が愛しているのは夫のガイゼフだけのはず。なぜ私の言葉で苛立っているのでしょうか? とても不思議な反応です。まさか貴女は望んで陛下とセックスを行っていたのですか?」
セラフィーナの全身から冷や汗が溢れ出す。心を読み取られいるような錯覚に陥る。反論の言葉を口にすることすら恐ろしくなってしまった。
「良いことを教えてあげましょう。サキュバスは匂いに敏感です。だから、私には貴女の身体に起こっている事態がよく分かります。畑の土壌が悪くとも、撒かれる種が優れていれば芽吹く。そういうことなのでしょうね」
「……え?」
「貴女の身体からは、身籠もっている雌の匂いがします。喜びなさい。セラフィーナ・アルテナ。貴女は皇帝陛下の御子を宿しています」
ウィルヘルミナの宣告は事実だ。
既に軍務省は妊娠検査でセラフィーナの懐胎を把握している。しかし、ベルゼフリートとセラフィーナを近付かせるためにその事実を隠していた。
「ん? そうなの? セラフィーナは僕の子を妊娠してるんだ。へえ、嬉しいな。もっとかかると思ったのに早かったね。最初の夜が危険日だったから、その時に孕んじゃったのかな」
ベルゼフリートは笑みを浮かべて、無邪気に喜んでいる。しかし、セラフィーナはどんな顔をすればいいのか分からない。
覚悟は決めたつもりだった。しかし、実際に子宮に赤子が宿ったと告げられ、精神は大きく動揺した。
(……子供を……私が? メガラニカ皇帝の赤子を……産むというの……?)
これまでに感じてきた肉体の変調。それらが妊娠の前兆であったと気付いた。セラフィーナの生理は遅れているのではなく、妊娠によって止まっていたのだ。
「レオンハルト元帥もこれで満足するでしょう。アルテナ王家の赤子を手に入れました。皇帝陛下、この女の相手をしないでください。孕み腹の女に種付けしても子供は増えませんよ」
セラフィーナはベルゼフリートに近付く大義名分を奪われてしまった。
子供を身籠もってしまったら、ベルゼフリートの協力が難しくなってしまう。
(……こんなのは不味いわ……。こんなに早く……皇帝との子供ができてしまうなんて……! ベルゼフリートから引き離されたら、私にできることは殆どないわ! 隠された秘密を解き明かすなんて……絶対にできなくなってしまう!)
焦燥に駆られるも、もはやセラフィーナに残された手段がなかった。
ウィルヘルミナは今後、セラフィーナに夜伽役をさせない腹積もりだった。しかし、ここで誤算が生じる。それはセラフィーナにとっても予想外だった。
「妊娠祝いにアナル処女を散らしてあげるから、楽しみにしててね。セラフィーナ」
ベルゼフリートは微笑みを向ける。
「陛下……? 夜遊びの相手なら私が見繕って差し上げます。わざわざ、このような女を相手にされずとも……」
「もうセラフィーナと約束しちゃった。妊娠したらアナルの処女をもらうの。余暇の時間は、好きな子と遊ぶ。それだって皇帝の権利だよね?」
「⋯⋯⋯⋯」
ウィルヘルミナは何も話さなかった。やや不満そうな顔を作り、ベルゼフリートを抱きかかえ、そのまま連れて行こうとした。
「じゃあね。セラフィーナ。次に会うときはママって呼んであげるから」
ベッドに一人取り残されたセラフィーナに対し、ベルゼフリートはお互いの間でだけ通じる「ママ」という言葉を使った。
セラフィーナの潤んだ瞳から大粒の涙が流れる。望まぬ妊娠をしてしまった嘆きの涙だとセラフィーナは思い込みたかった。
妊娠を知ってショックを受けているのは真実だ。しかし、同時に薄汚れた野心の発芽も自覚していた。
(私から愛する家族を奪った……。それなら……私にだって……私だって……。メガラニカ皇帝の子供を産んでしまうのなら……!)
メガラニカ帝国の妃達がもっとも愛し、恋い焦がれている少年の心を奪い、その身体を独占する。
——それこそが最高の復讐なのではないか?
セラフィーナは静かにウィルヘルミナの後ろ姿を睨みつけていた。我が子を連れ攫われた母親のような形相であった。