2024年 2月22日 木曜日

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【6話】メガラニカ帝国の三皇后

NOVEL亡国の女王セラフィーナ【6話】メガラニカ帝国の三皇后

 皇帝ベルゼフリートと女王セラフィーナが淫夜を共に過ごし、淫事の疲労で深い眠りに落ちていた明朝。帝国元帥レオンハルトは総督府の会議室で、三頭会議に臨もうとしていた。

「やれやれ。朝から気が重たくなる。敗北が決まった戦に出陣する気分だ。しかし、今回ばかりは勝てる算段がある。とはいえ、やはり気分は優れない。あの2人との舌戦は苦手だ」

 レオンハルトは独り言をぼやいてから魔術宝具を起動する。それは一流の魔術師が作り上げた結晶石であった。

 高度な投影魔術式が刻まれた結晶石は、遠隔地にいる人間の立体映像を構築していく。

 こうした遠隔通信の術式は、精度を高めれば高めるほど、傍受の危険性が高まる。覗き見や盗聴の観点から重要な会議では、利用されていない。

 軍事を統括するレオンハルトは、通信術式の危うさを熟知している。けれど、同格である2人の皇后が、三頭会議を強く要請した。レオンハルトは受け入れるほかなかった。

「手紙でも再三述べたように、会話の内容は傍受される可能性がある。聡明な宰相閣下と神官長猊下には言うまでもないことかもしれぬが、機密情報は口に出さぬように用心してほしい」

 メガラニカ帝国の皇后は3人いる。

 三皇后は帝国の要職を兼任すると憲法で定められていた。しかし、皇后だから要職を預かるのではなかった。3人の皇后は要職を得たから、正妻の座を握っているのだ。

 レオンハルト・アレキサンダーは軍務省を統括する元帥である。しかし、もしも彼女が帝国軍元帥の座を追われ、その職位を失えば同時に皇后から王妃に降格される。

 それは宰相や神官長も同様である。

 三頭会議は3人の皇后による会議体であり、皇帝がお飾りのメガラニカ帝国において、行政・軍事・司法のトップが集う最高意思決定機関だ。

「通信が必ず傍受されているわけではないでしょう。此度の一件、先走る軍務省が勝手に物事を進め、事後承諾という形は受け入れられない。私が何の問題を指摘しているか、レオンハルト元帥はお分かりのはずですね?」

 議論の口を切ったのは、帝国の行政を統括する宰相ウィルヘルミナ・ウォン・ナイトレイであった。

 ウィルヘルミナは帝国の内政を司る2つの議会、国民議会と評議会の議長を兼任し、三皇后で最も大きな権力を握る。

「はっきり言えば良いだろう。今回の議題は何なのだろうか? 帝国兵を労うため、宰相閣下の親類を慰安所にお招きした件か?」

「いいえ。違います。夢魔族は自由に使ってください。そもそも私は同族からは裏切り者扱いされています。私を支持するサキュバスやインキュバスが、帝国内にいるとは思えません」

 宰相は元帥の口撃程度では物怖じしない。

 ウィルヘルミナの出身種族はサキュバス、つまり性に開放的な夢魔族であった。しかし、彼女の性格は、一般的な夢魔族と正反対の堅物だ。

 宰相に就任したウィルヘルミナは、国内で運営する娼館に免許制を導入し、厳格な公娼制度が整備された。

 それにともない風俗税を導入した。その件で同族から酷く嫌われ、種族の裏切り者と非難されていた。

「私が指摘しているのは、セラフィーナ女王の件です。ヴィクトリカ王女がバルカサロ王国に亡命したこと、そして調印式での出来事は、本国も承知しております」

「承知していると言うのなら、納得していただきたいものだな」

「講和条約を成立させるため、略奪婚でセラフィーナ女王を皇帝の端女とする。そこまでは承諾できます。しかし、王妃として迎え入れるのは、軍務省の越権行為です」

 山羊の捻れ角、蝙蝠の羽、そして特徴的な尻尾。男を誘惑する美貌と視線を惹き付ける蠱惑的な身体。見た目こそ非の打ち所のない完璧なサキュバスだ。

「帝国の内政を預かる宰相として、強い懸念を抱きます」

 ウィルヘルミナの表情は常に峻厳で、サキュバス特有の柔和な愛想が欠落していた。悪魔と見間違えるほど、親しみを感じさせない。冷たい気配を漂わせる美女であった。

「ほう。つまりセラフィーナ女王を王妃とする計画に、宰相閣下は不満があると?」

「大いに不満です。王妃の地位を与えるべきではありません」

「文句があるのなら、まず理由を言うのが筋ではないか?」

「セラフィーナ女王は、昨日まで敵国の国主であった人物、皇帝陛下への愛情は希薄。叡智に優れるわけでもなく、強いて言うなら容姿だけが取り柄の女です。美しいだけの女は宮廷に掃いて捨てるほどいる。セラフィーナ女王を特別扱いする必要はないでしょう」

「賢臣と名高い宰相閣下らしくもない短慮だ。セラフィーナ女王はアルテナ王家の血筋。皇帝陛下との間に世継ぎが産まれれば、何かと帝国の利に繋がると考えないのか?」

 レオンハルトは反撃する。だが、舌戦は不得意の分野だ。宮廷で苦手な女がいるとしたら、それは間違いなくウィルヘルミナだと断言できる。

「嫡出子のヴィクトリカ王女がいる以上、セラフィーナ女王に子供を産ませても弱い道具にしかならないでしょう。アルテナ王国の民がどちらに忠誠を誓うかは自明です」

 言い返しようのない正論で殴り返し、ウィルヘルミナはレオンハルトの反撃をはね除けた。

「今はそうかもしれない。しかし、時間が経てば国外に逃げたヴィクトリカ王女は国民から忘れ去られる。時間をかければ良いだけの話だ」

「ニワトリじゃあるまいし、アルテナ王国の人々はそう簡単に心変わりしません。元帥閣下」

「その判断は短慮と言わざるをない」

 レオンハルトの台詞は苦し紛れの言い訳に近かった。論議を静観していたもう1人の皇后がやっと口を挟んだ。

「議論は今日も平行線じゃのう。セラフィーナ女王に皇帝の御子を産ませる計画、儂は悪くないと思うぞ。宰相閣下とて、完全否定しているわけではないのじゃろう。使い勝手が悪いとしても、道具は多く持つべきじゃ」

 神官長カティアは三皇后の最年長だが、見た目は幼い少女だ。ハイエルフのカティアは不老であるため、若い容姿のまま悠久の時を生き続けていた。

 豊富な知見を持つカティアは、帝国の司法権を統括する神官長であり、最高裁判長の職を預かっている。幼いの面貌に反し、内面相応の古風な口調を使うのは、司法の威厳を意識してのことだった。

「宮廷内で波紋を広げておるのは、王妃の座を与える点じゃ。そこを問題視する者が多い。儂や宰相だけが言ってることではないぞ? それこそ其方の配下、軍閥派の妃達も内心は快く思っておらぬはずじゃろうて」

 レオンハルトの派閥に属する妃達も不満を抱いていると言及した。少女の姿をした耳長の熟女は不敵に笑う。さらに、カティアは指摘を続ける。

「ここにいる皇后3人。そして宮中には王妃9人、公妃29人、妾1人が暮らしておる。使用人である女官や側女を除けば、宮廷に住む皇帝陛下の伴侶は40人を越える。しかし、皇帝陛下の御身はたった1つ」

 皇帝一人に対して妃は数多くいる。

 たとえベルゼフリートが限界まで男気を発揮しても、全員の相手をするのは物理的に不可能だ。

「そこに異国の女王が、王妃待遇で押し入ってきたらどうなる? 9人の王妃と29人の公妃はどう感じる? その内心は容易に想像が付くじゃろう? 特に序列をすっ飛ばされた公妃からの不満と嫉妬は、相当なものになるだろうよ」

 その後を引き継ぐように、ウィルヘルミナが苦言を上積みしてくる。

「参政権の問題も表面化します。セラフィーナ女王がメガラニカ帝国の王妃に即位した場合、評議会での表決権を与えなければなりません」

「さして問題はないと私は思うが?」

「脳天気ですね。今さら元帥閣下に説明するまでもないとは思いますが、帝国の政治は、選挙で選ばれた国民議会、三皇后を筆頭とした王妃と公妃からなる評議会で動いています。評議会の一議席を外国の女王が得たら、国民議会は強い懸念を表明するでしょう」

「セラフィーナは王家の女だぞ。講和条約の手前、粗略に扱えない。端女とししてみろ。アルテナ王国の民から反感を買って、占領政策に支障が生じる。評議会の議席を与えたところで、帝国に害を与えられるか? たかだか議席は一つだ。受け入れる余地はある。それとも寛容の精神に欠けると笑いものになるか?」

「儂の率いる長老派は王妃4人、公妃5人」

「⋯⋯。クドいな。神官長猊下。はっきり言えばよい。私に何を言いたい?」

「其方が上に立つ軍閥派は王妃1人、公妃8人。つまり、どちらも妃が9人おる。しかし、其方の派閥に王妃が1人増えてしまうと天秤が傾いてしまうのう」

 宮廷で暮らす妃たちは、出身種族や家柄などで3つの派閥を作っていた。

 宰相ウィルヘルミナが率いる宰相派。

 神官長カティアが率いる長老派。

 元帥レオンハルトが率いる軍閥派。

 派閥の中でもっとも数が多いのは、王妃4人と公妃16人を抱え込む宰相派である。宰相派が一枚岩というわけでもなく、最大派閥ゆえの利害対立もある。だが、ウィルヘルミナの地位を揺るがす亀裂とはなっていない。

 その一方で長老派と軍閥派は、どちらも妃が9人と同数だ。しかし、王妃の人数は長老派が上回っており、軍閥派は評議会の少数派だった。

「政略に疎い元帥閣下にも理解いただけるよう、私から単刀直入に申し上げましょう。セラフィーナ女王が皇帝陛下の王妃となれば、国民議会で大きな不和が生じます。内政の火種となるのは目に見えております。宮廷外に飛び火してしまう」

 この場でウィルヘルミナは口にしなかったが、平民出身の妃は1人もいない。それについては国民議会から批判の声が上がっていた。

 宮廷に住む妃達は、全員が帝国貴族の血縁者だ。皇帝に仕える女官や下働きの側女にしても、大多数は貴族出身者で占められていた。

 数少ない例外は、コロシアムの決闘王だった女官長ハスキーだ。女官長で平民出身者は彼女1人である。

 コロシアムの花形だったハスキーは、民衆からの人気が非常に高い。しかも、皇帝の寵姫であるという事実も知れ渡っている。ハスキーが妃ではなく、女官に身に甘んじているのは、貴族出身の妃達による圧力であるとの論争が燻っていた。

「内政の安定が肝要じゃ。国民議会と評議会は共同歩調をとらねばならぬ」

 平民から妃を選出すべきだという世論の高まりを受け、国民議会は動き出しつつあった。そのような時期に、皇帝の王妃に敵国の女王を即位させたとなればどうなるか。国民議会との政争に発展しかねない。

(こちらにも言い分はある。ここまでの流れは目論見通り。宰相と神官長の横槍は分かりきったことだ)

 レオンハルトはウィルヘルミナとカティアの内心を考察する。

(ウィルヘルミナは国政上の懸念。カティアも同調を示しているが、本音は違う。実のところを言えば、長老派の妃数を軍閥派に越えられたくないのだ⋯⋯)

 宰相派と長老派が常に協力関係にあるわけではない。今回に限って利害が完全に一致しているだけだ。

(長老派の大半はエルフ族や神族などの長命種族。生殖能力が低いせいで、派閥の妃は子を産むのに苦労しているらしい。新参者のセラフィーナが皇帝の御子を産むとなれば、妬みは隠しきれないだろうな。女々しい老人どもめ)

 アガンタ大陸の北方に位置するメガラニカ帝国は、多種多様な種族が暮らす多民族国家であった。それぞれの種族が支え合って生きている反面、種族同士の対立や不和も抱えていた。

 帝国の縮図である宮廷でも同様だ。エルフ族などの長命種は、寿命の長さに反比例して生殖能力が低い。ハイエルフのカティアを含む長老派にとって、克服困難な障害であった。

 特に彼女らのコンプレックスを刺激したのが、最大派閥の宰相ウィルヘルミナがサキュバス族出身だったことだ。

 ウィルヘルミナの振る舞いは、性欲に奔放なサキュバス族とかけ離れている。言うなれば、突然変異の堅物であった。しかし、種族特有の高い生殖能力を活かし、短期間で皇帝の子を産んでいる。

 軍閥派を率いる元帥レオンハルトも、ヒュマ族亜種に分類されるアマゾネス族の血筋。アマゾネス族は女児しか産まないが、生殖能力と成長速度に優れ、健康で頑強な子供を作ることができた。

「民衆に対しても、他の妃に対しても、配慮が必要とされておる時期じゃ。『粗略に扱えば、民の反感を招く』と其方は主張したが、リュート王子を処刑し、セラフィーナ女王を辱めたのなら、帝国への恨み辛みは最高潮じゃろう。今さら民心を懸念しても遅かろう」

「セラフィーナ女王は妾として、宮廷に住まわせればよろしい。女仙化したのなら、年老いて女の価値を失うことはない。ほとぼりが冷めるまで、放置しておくのが良いと思います」

「うむうむ。落とし所はそれがよいと思うぞ。妾と地位を与えてやれ。それで万事解決じゃ」

 カティアとウィルヘルミナは手を取り合って、レオンハルトを追い込む。殺し合いにおいて無敵の女武人でも、この劣勢は覆しがたい。

 本来であれば要求を飲むほかなかった。しかし、レオンハルトはまだ切り札を隠していた。

「貴公らの言にも一理ある。しかし、セラフィーナを王妃として迎え入れるのは、皇帝陛下の強い意向なのだ。講和条約の調印式で陛下はセラフィーナ女王に惚れ込んでしまって、王妃として帝国に招くと公言してしまった」

「調印式での出来事は知っていますよ。しかし、王妃として迎え入れる意図が皇帝陛下にあったのでしょうか? ありえないでしょう。一言一句に意思を込めたとは考えられません」

「セラフィーナ女王に惚れ込んだというのは怪しい。元帥閣下の決めつけではないのか?」

 カティアの援護にウィルヘルミナは強い賛同を示し、頷こうとしたときだった。その後に続いた言葉が、ウィルヘルミナの表情を硬直させた。

「奇乳をぶら下げた頭が空っぽの金髪女に惚れ込むはずがなかろう。皇帝陛下の趣向から大きく外れておる。皇帝陛下の好みは、儂のように小柄で愛らしい美少女じゃ」

「⋯⋯⋯⋯」

「⋯⋯⋯⋯」

「ぬぬ⋯⋯? どうしたのじゃ? 宰相と元帥が二人そろって顰め面とは? もしや儂の愛々しい容姿に嫉妬でもしておるのか? そうはいってもしょうがなかろう? 真実は隠し立てできるものではないのだからな」

 神官長のカティアは大きく膨れた孕み腹を見せつける。

「近ごろは胎が重たくて困ったものじゃ」

 体躯が小柄なため、衣服の上からでも、胎児を宿して丸みを帯びた腹は際立っていた。

「⋯⋯⋯⋯」

「⋯⋯⋯⋯」

 ウィルヘルミナとレオンハルトは双方とも無言。カティアの妊娠自慢は日常茶飯事で、飽き飽きしていたのだ。

「宰相閣下と元帥閣下が激務の中、儂だけが陛下の子を授かってしまった、それを不服に思う気持ちは察しておる。儂も抜け駆けするようで心苦しかったのじゃがな⋯⋯。しかし、愛しの皇帝陛下に強く求められてしまってはのう」

 宰相と元帥が戦争関連の仕事で忙殺されている間、神官長を筆頭とする長老派の妃たちが皇帝を独占し、目論み通りに数人が子を授かっていた。

 妊娠が難しい長命種の妃が多いだけに、長老派の喜びは大きかった。

 妊活を扇動した皇后のカティア自身も、第二子を身籠もることに成功した。

 少女にしか見えないカティアの妊婦姿は、少し危険な香りを漂わせている。あまりにも幼すぎる母親に見えてしまうのだ。

 ただし、長命なハイエルフの外見と実年齢の乖離は凄まじい。公然の場でカティアに年齢を聞いた勇者は、後にも先にも皇帝ベルゼフリートのみであろう。

「ごほんっ! 神官長猊下の妄言に対しては、色々と言いたいことがあります。しかし、些事を論じている時間はありません。兎にも角にも、皇帝陛下の発言は無かった。そうするべきです。メガラニカ帝国の皇帝は、政治決断に関わらないのですから」

 最高裁判長を言い負かしたい。その欲求をウィルヘルミナは我慢し、心の奥底に押さえ込み、会議の流れを元に戻した。

 ちなみにカティアは少女に相応しい普乳。妊婦となってから少し胸が膨らんだが、巨乳といえるサイズではない。

 小さな舌打ちをするウィルヘルミナと青筋を立てたレオンハルトは、両者とも爆乳の持ち主である。胸部に実った乳房のサイズは、西瓜よりも大きい。

「その場にいた帝国軍の諸将はもちろん、アルテナ王国の要人も耳にしているのだぞ。それでも陛下の言葉を無かったことにしろというのか?」

「帝国軍の諸将を黙らせばよいでしょう。アルテナ王国は既に滅ぼしたも同然の敗戦国。歯向かう者がいれば、リュート王子の隣に吊せばよいのです。口を封じてしまえば、文句など言えません」

「そうではない⋯⋯。宰相閣下、貴公は皇帝陛下のご意向を蔑ろにするのか?」

「元帥。貴方は皇帝陛下の発言を利用し、帝国憲法の精神を否定するつもりか? 罷り通りませんよ。これ以上は時間の浪費。三頭会議の決議をとります。私は宰相を預かる皇后の1人として、セラフィーナ女王の王妃即位を拒絶します」

「儂も同意見じゃな。神官長を預かる皇后として、拒否権を発動する。三頭会議の決議で皇后2人が拒否権を使った。その意味は分かっておるじゃろうな」

 皇后はそれぞれ拒否権を持つ。拒否権の適用範囲は広い。3人のうち2人が拒否権を発動すれば、議会で成立した法案や決定すら無効にできる。

「宰相閣下と神官長猊下に聞こう。帝国憲法によれば拒否権の発動対象とならないものが1つだけある。たとえば私がこんなものを持っていたら、三頭会議の決議はどうなる?」

 レオンハルトは一枚の羊皮紙を見せつける。それは皇帝の勅令が記された勅書だった。メガラニカ帝国の皇帝に実権はない。しかし、何事にも例外はある。

「皇帝陛下の勅書⋯⋯。其方らしくもない小細工じゃのう。女官総長と手を組んで大権を悪用するとは⋯⋯。似合わぬ。作戦参謀の入れ知恵じゃな」

 帝国法を熟知しているカティアは、もはや手出しができなくなったと理解し、レオンハルトに恨み言を吐きつける。

「帝国の法治に従っているつもりだが?」

「ふん。可愛げがないのう」

 その後は苦虫を噛んだような表情を作って顔を背け、何も喋らなかった。

「皇帝陛下からの勅命が下っているのだ。見るがいい。この勅書は女官総長ヴァネッサが作成した。皇帝陛下の御名御璽も印されている。セラフィーナ女王に王妃の地位を与える。これは決定事項だ。誰にも文句は言わせん」

 メガラニカ帝国の皇帝は、政治上の権限を行使できない。しかし、唯一の例外が勅命だ。

 議会や法律、帝国憲法が規定する全ての法体系を超越して、最優先で執行される超法規的処置。皇后による三頭会議を打ち負かす唯一無二の手段が、皇帝大権に基づく勅令であった。

 勅令は皇帝の自由裁量によって下されるものではない。皇帝を無能力者とするため、大権発動には3つの条件がある。

 一つ、皇帝が勅令の内容を公言すること。

 二つ、御名御璽を管理する女官総長が勅書を作成すること。

 三つ、皇后1人もしくは王妃の過半数が勅命を行使すること。

 調印式の場で、皇帝ベルゼフリートはセラフィーナ女王を王妃に迎え入れると公言した。そして、レオンハルトは女官総長ヴァネッサと結託し、勅書を作成していた。

 皇后であるレオンハルトが勅書を手にしたとき、政争の勝敗は決した。

「セラフィーナ・アルテナをメガラニカ帝国の王妃とする。これは皇帝陛下の勅命だ。貴公らの立場は尊重するが、勅命には従ってもらう」

 セラフィーナの王妃即位を邪魔立てしてきたウィルヘルミナとカティアに対し、レオンハルトは高らかに宣言した。

 清々しい完全勝利であった。

 ——この時点においては。


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