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【13話】ニアミスの母娘、木陰に隠れて密姦 

 荘園に到着したカレンティアは、さっそく聞き込みを始めた。

 まずは四年前にレーヴェ村を訪問したはずの母親について訊ねる。すると、あっけないほど簡単に目撃者に辿り着いた。行商人に寝泊まりの部屋を貸している村長が知っていた。カレンティアは村長から情報を聞きだした。

 ――四年前にレーヴェ家の使用人を訪ねてきた夫人でしょ。前年の大火事を知らなかったみたいで、とても驚いていたね。だから、本邸があった場所と、ヴォルフ坊ちゃんが暮らしてる闇樹館について教えた。特徴がある夫人だったからよく覚えてるよ。もしかして嬢ちゃんは娘さん? 白金色の髪といい、そっくりの美人だね。発育が良くて羨ましいよ。

 発育の良さ。要するに爆乳で母娘関係を見破られてしまった。ちょっと複雑な気持ちだったが、言っている村長に嫌味はない。レーヴェ家の荘園を任されている村長は女性だった。

 本心で称賛している。素直に誉め言葉を受け入れた。

 カレンティアは次に母親の結婚指輪を見せて訊ねてみた。

 ――あの夫人はそれと似たような銀の指輪を嵌めてたね。高そうな代物だったし、外しておくか、手袋で隠すのを勧めたよ。物騒な世の中だからね。四年前は隣町から自警団とやらが入り込んでいたし、変な聖職者も無断で黒森に入り込んでたんだ。ここでの掟は行商人から聞いてる? 絶対に守らなきゃいけないルールだよ。破ったら死ぬ。冗談抜きで。町の連中は死んだ。

 無断で闇森を出入りしていた隣町の司祭が自殺した。その話を行商人から聞かされたと答えた。

 ――いいね。上出来だ。あの胡散臭い聖職者はやばい死に方したんだろ。おかげで町の馬鹿どもが近寄らなくなって大助かりさね。行商人達も聞き分けがよくなった。良いこと尽くめさ。

 荘園の人間からすれば、教会の司祭は怪しげな宣教師に見えるのだ。帝都から離れるほど、教会の力は弱まっていく。レーヴェ家の荘園は異教徒の牙城であった。

 帝国では信仰の自由が認められている。大昔と違って教会に恭順しないからといって罰せられたりはしない。

 ――じゃあ、嬢ちゃんも墓参り? 本邸に犠牲者の共同墓地がある。大火事で焼けちまってね。どれが誰の骨か分からなかったんだ。私達は弔いすら満足にできなかった。

 カレンティアは「ダミエーラ」の名前を出してみる。

 母親を手紙で呼び出した旧友。しかし、五年前の火事で死んでいるなら、誰かが成りすまして手紙を送ってきたことになる。

 ――ダミエーラさんか。よく知ってる。いい家庭教師だったよ。ヴォルフ坊ちゃんに剣術と馬術を教えてた。最期まで……とても立派な女性だった。

 やはりダミエーラは五年前の火事で死んでいた。

 ――レーヴェ家が野盗に襲撃されたとき、ダミエーラさんは反撃したんだ。卑怯な賊は油を巻いて放火した。私らが助けに向かったときには、火の勢いが強くてどうしようもなかった。

 火が屋敷を燃やし尽くし、焼け跡から遺体を探しているとき、古井戸に逃げ込んだヴォルフガングが救助された。真冬の井戸水に一日浸かっていたせいで、手足を失う重度の凍傷を負った。

 ――生き残ったのは奇跡だ。黒森の守り神がレーヴェ家の跡取りを守った。あんな痛々しいお姿になっても、ヴォルフ坊ちゃんは頑張ってる。だから、私らも荘園を発展させるために頑張るんだ。

 町の人間からすれば悪霊。しかし、荘園の人間からすれば守り神。共通点は超常の存在であること。

 ――ヴォルフ坊ちゃんが暮らしてる闇樹館に行きたい? 嬢ちゃんは冒険者なんだって? 冒険譚を披露してくれるなら、歓迎されるかもしれないね。口添えはできないよ。レーヴェ家のメイドが入れてくれなきゃ、素直に諦めて戻ってきな。

 カレンティアはレーヴェ家のメイドについて聞いてみる。

 ――メイドは一人だけ。リリトゥナさんだ。レーヴェ家の火事で生き残ったけれど、顔に大火傷を負った。いつも素顔を隠してる。見られたくないんだろうね。だから、私らも顔を知らないんだ。

 五年前の大火事でレーヴェ家の使用人は全員亡くなったと聞いていた。カレンティアは問いかけてみる。

 ――五年前はまだ使用人じゃなかった。働き口を探して、レーヴェ家で面接を受けてた。家督を継いだヴォルフ坊ちゃんが、メイドとして正式に雇った。闇樹館を仕切っているのはリリトゥナさんだ。あの人の機嫌を損ねないようにすることだね。町の人間を私ら以上に嫌ってる。

 村長の話を聞き終えたカレンティアは、まずレーヴェ家の本邸跡地に向かった。大火事が起きた現場を自分の目で確かめようとした。村の人間達は慰霊以外で近づかないという。

 生活圏と黒森の境界が曖昧な場所だからだ。禁域に踏み込めば呪われる。荘園に住む人間達は、黒森の神を信仰している。レーヴェ家の当主は宗教的指導者でもあった。

「母さんに手紙を出したのは誰なのかしら……」

 カレンティアは石積みの共同墓地に祈りを捧げる。

 ダミエーラが眠っているであろう場所。きっと四年前に母親のベロニカもここを訪れていたはずだ。

「……? これ……。足跡がある。真新しいわ。それと車輪の跡……」

 板石が積まれた共同墓地には先客の痕跡が残されていた。

(これって二輪の荷車かしら……)

 車輪のわだちは黒森に続いている。

(もしかして車椅子? 両手両足を失ったレーヴェ家の当主がメイドと来ていたのかも……。両親が眠っているお墓だもの。通っていても不思議じゃないわ)

 カレンティアは車椅子の跡を追う。だが、足を止めた。

「ここから先は黒森の領域……。立ち入り禁止だわ」

 足元に赤黒い石があった。真っ赤なペンキで警戒色を塗りたくっている。

(どうしよう。調べたい。でも、危険な気がするわ。……誰かに見られている? 視線を感じるわ。どこから……? 気配を隠すのが上手い)

 この先に進めば禁域に足を踏み入れてしまう。行商人や村長から言いつけられた絶対遵守の掟。レーヴェ家の許しを得ず、無断で入れば悪霊に呪い殺される。

(私には聖剣がある。黒森の悪霊は恐ろしくない。でも……やっと母さんの手がかりを掴めた。焦って揉め事を起こすのは良くないわ。レーヴェ家の当主には明日、会いに行けばいいわ)

 カレンティアは黒森に背を向けた。身を翻し、引き返していく。車輪の行方を追いたい気持ちはあった。しかし、自制心が働いた。郷に入っては郷に従えだ。

(私の目的は母さんを探すこと。それを第一に考えなきゃ……。レーヴェ家と町の揉め事にだって、首を突っ込むべきじゃないわ。もっと情報を集めよう)

 カレンティアは空を見上げる。粉雪が降り始めていた。地面に落ちた雪はすぐに溶けていく。まだ積もりそうにはない。だが時間の問題だ。

(今年の冬はここで過ごすことになるわね。クロヴィスに手紙を書こう。行商人に預けて、紹介経由で帝都に届けてもらえばいいわ。クロヴィスは心配してるかな。でも、行方不明の母さんをやっと見つけられそうな気がするの……)

 この時、カレンティアは夢にも思っていなかった。

 四年もの間、探し続けていた母親はすぐ近くに潜んでいた。どこから感じていた気配の正体は、木陰で淫行中のベロニカの視線だった。

 ◆ ◆ ◆

 真っ赤な境界石を越えて十数歩、歴史を感じさせる大樹の裏で、ベロニカは安堵していた。

「……どこかに行った?」

 車椅子に座ったヴォルフガングからは何も見えない。視界のほとんどがベロニカの爆乳で遮られている。

「引き返していきました。荘園がある村に帰っていきますわ」

「よかったよ。こんなところ、見られたくないもんね。僕も……なんて言えばいいか分からないし……」

 ヴォルフガングは苦笑いする。極度の緊張で萎えると思いきや、オチンポはいきり勃ってしまった。ベロニカのオマンコも敏感になっている。

「驚きで腰が抜けそうですわ……。どうして娘が……カレンティアがレーヴェ家の本邸跡地に……」

「ベロニカの娘さんで間違いなさそう?」

「はい。娘の顔を忘れはしませんわ。それに、あれは伯爵家の聖剣……。私が冒険者だったころ、使っていた愛剣ですわ」

「駆け落ちしたとき、実家から盗んだっていう剣?」

「恥ずかしながらその通りですわ」

「破天荒でいいと思うけどね。でも、どうしよう? ベロニカを探しに来たんじゃない?」

「見つかるわけにはいきませんわ。私はもう……あの子とは会えない……。母親失格ですもの……。この姿を見せたらカレンティアの心を傷つけてしまう」

「話し合えば分かってくれないかな。僕も真摯に話すよ。ベロニカは浮気してるわけじゃない。未亡人の再婚は教会でも禁じられてはいないんでしょ? こうなった責任は僕にある。結婚すれば、娘さんも認めてくれないかな?」

 ベロニカの孕み腹は隠しようがない。大きく膨らみ、遠目からでも妊婦と分かる。

「子供を産んだことや妊娠は……時間をかけて話せば分かってくれるかもしれませんわ。カレンティアも大人だから……。けれど、頭部を失っているのは……」

「そうだった。不味いよね。かおがないのは……」

「はい。誤魔化せませんわ。カレンティアは中級ランクの冒険者ですの。四年前から上級に昇格しているかも」

 ベロニカは頭部を失った異形者だ。討伐対象にされる恐れがあった。

「ベロニカ……。娘さんを早く逃がしたほうがいいよ。リリトゥナに知られたら……。僕とベロニカは子供をもう産まないつもりだけど、リリトゥナは違う考えを持ってる」

 ヴォルフガングはベロニカのボテ腹を抱きしめる。

「…………」

「ベロニカ? 聞いてる? リリトゥナが知ったら娘さんを……贄に……し……」

 ヴォルフガングは唾を呑み込む。喪失した両手両足が熱を宿した。存在しないはずの手足が燃えている。リリトゥナが顕現する前兆だった。

 ベロニカは両手で騎士兜を掴み、荒々しく一回転させる。

「――ヴォルフ坊ちゃんはお優しいですね。でも、私に隠し事はいけませんわ」

 声が違う。別人の声。大きく異なるが、大人びた色っぽさはベロニカと同じだった。

「村長が報告に来ました。行商人が不審な冒険者を連れてきたと……。ベロニカの娘だとか……。実に好都合♥︎ お喜びください。ヴォルフ坊ちゃん……♥︎ これで三人目が産めますわ」

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