2024年 12月5日 木曜日

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【180話】船旅の渦中にて

NOVEL亡国の女王セラフィーナ【180話】船旅の渦中にて

 その頃、皇帝一行を乗せた船は、ケーデンバウアー侯爵領の山越え運河をゆっくりと北上していた。

 移動手段を陸路の馬車から船に乗り換えた日、ベルゼフリートは昏睡状態に陥り、楽しみにしていた船旅のほとんどを眠って過ごすことになった。

 三皇后は手を尽くしたが、魔帝の器に意識が移っている間、本体であるベルゼフリートは抜け殻の屍体だった。手の施しようがない状態であった。

 焦燥と危機感は強まった。当初の想定よりも魂抜けの症状が早く進んでいるように思えたからだ。

 ベルゼフリートが快復したのは、意識を失ってから七日目の朝だった。前触れなく、普段と変わらぬ様子で目を覚ました。

「ほんと? 七日も寝てたの? 信じられないや。不思議なものだね。僕からしたら、眠って起きたら何日も過ぎてたって感じで⋯⋯う~ん。ん~、損した気分だ」

 帝嶺宮城で何が起きていたのか、当人のベルゼフリートや三皇后には分かりようがない。魔帝がキュレイという新しい夜伽役の魔孕女メスに執心していたとは知るよしもなかった。

「お腹はたっぷり空いてるから、寝起きの食は進むね。昼食に出された仔牛のソテーは美味しかったよ。焼き魚派だけど、たまには牛肉も悪くない」

 牛に妙な愛着を抱いてしまったのは、潜在意識の反映だった。魔帝の器に入っているとき、ベルゼフリートの人格は塗り潰されているが、魂魄そのものは同一である。

「食事の最中、皆が眠っている間のことをあれこれと聞かれて疲れちゃったよ。なーにも覚えてないから、説明なんかできないのにさ。寝てるときの記憶なんかあるはずないじゃん」

「お疲れ様でした。心ゆくまでお休みくださいませ」

 セラフィーナはベルゼフリートの頭を撫でる。遥か年下の幼帝に身心を捧げた女王は微笑む。愛する少年に身を寄せられる。淫乱な陰裂は愛液で濡れ始めた。

「旅の目的地はともかく、せっかくの船旅だもん。愉しまなきゃ。のんびりするのもいいよね。はぷっ♪」

 じゃくベルゼフリートは、セラフィーナの乳房を吸い始める。飢えた乳飲み子よりも貪欲に母乳を求めてくる。

「んぁっ♥︎ あっ♥︎ あぁんっ⋯⋯♥︎」

 セラフィーナは下唇を淫靡にみながらさえずった。

「食後に味わうセラフィーナの母乳は格別に美味しい。僕の赤ちゃんを産んでから母乳の湧きが良くなった。普段は大変でしょ?」

「はい。乳房が張ってしまって⋯⋯♥︎ だから、陛下に毎日、搾っていただきたいですわ♥︎」

 三皇后からの質問攻めから解放され、ベルゼフリートは羽を伸ばしていた。

「じゃあ、次は両方のオッパイを飲ませてよ。明日も目覚められるように」

 船内とは感じさせない広々とした主寝室で、幼帝は伽役の愛妾をはべらせる。

 全裸になったセラフィーナは、重力に抗う豊満な乳房を両手で揉みあげて、搾り上げたミルクをベルゼフリートの口に注いだ。

「んっ♥︎ はぅっ♥︎ 無事にお目覚めになられて良かったですわぁ♥︎ んぁっ♥︎ あぁ♥︎」

 ベルゼフリートに不安感を抱かせてはならない。三皇后からの命令だった。家臣がどれほど心配していたかは本人に伝えなかった。セラフィーナは明るく振る舞った。

(三皇后は旅程を早めるための会議の真っ最中⋯⋯。魂の楔役である私は、自分の役目に集中いたしますわ)

 皇帝が乗船していると知られては大事になる。だが、運河を進む船の順番を素っ飛ばさなければ、旅程を早められない。

 表向きは大貴族が乗っている旅船だ。ある程度の融通は押し通せる。しかし、最優先は軍事物資や医療品などを運ぶ輸送船団だ。帝都アヴァタールへの魔物襲来で、物流が大きく乱れていればなおさらだった。

「そうだ。セラフィーナ。あの手紙、もう一度よく見せて」

「どうぞ」

「ふ~ん♪ ふ~ん~♪」

 上機嫌でベルゼフリートは手紙を広げる。思わず釣られてセラフィーナも微笑を浮かべた。

 吉報はアルテナ王国の王都ムーンホワイトから送られてきた。送り主は白月王城に滞在中のユイファンであった。

「ユイファンはアルテナ王国に出張中なんだ。あっちもあっちで大変だね。身籠もってる間くらい休みたいだろうにさ」

 参謀本部付きの情報将校ユイファンがアルテナ王国から送ってきた手紙。重要事項が記された文書は三皇后の手に渡っている。

 わざわざ宛名がセラフィーナになっている手紙には、私的な内容がつづられていた。

「初めての寝返りは生後四ヶ月だってさ。これって何かの暗号や暗喩あんゆだったりするかな?」

 ベルゼフリートはおどけてみせる。母親の関心を惹こうとする幼い息子の振る舞いだった。

「いえ、そのままの意味だと思いますわ。我が娘は⋯⋯。アルテナ王国の女王となる王女は元気にしているようです」

 セラフィーナは実娘に向ける愛情で身を震わせた。

 当然ながらヴィクトリカのことではない。不義と背徳の末に孕んだ三姉妹、その長女として産まれたセラフリート。皇帝の胤で身籠もったとき、セラフィーナは引き返せぬ道を歩み始めた。

「新しい弟妹が産まれるから、もうお姉ちゃんになるんだよねぇ」

 乳房を甘噛みするベルゼフリートはニヤリと笑う。夫一筋だった貞淑な人妻を簒奪した優越感は、言葉で表せぬ快感だった。熟れきった美女の想いを塗り潰し、過去を捨てさせるほどの魅了させた。

「嬉しいの? セラフィーナ?」

「はい♥︎ とても喜ばしく思いますわ。陛下の血統をアルテナ王家に刻めたのですから⋯⋯♥︎ 産まれた子供は陛下と私が愛し合った証明。誰にも否定はできませんわ⋯⋯♥︎」

「かつての夫でもね。今やセラフィーナの全ては僕のもの。絶対に返してやらない」

「ご安心ください。未来永劫、私はメガラニカ皇帝の愛妾おんなですわ」

 四人目の御子は既に宿っている。セラフィーナは胎が育っていくのが楽しみでならなかった。

「セラフリートはメガラニカ帝国の皇女だけど、アルテナ王国では第一王女って扱いになるんだっけ?」

 昨年の末、セラフィーナは三つ子の姉妹を白月王城で公開出産した。

 敗戦国の女王が辱めで孕まされた不義の子供。だが、セラフィーナの心がベルゼフリートに奪われてからは、愛する幼帝の血を引く愛娘達になった。

「陛下の貴き胤をいただいて授かった御子ですわ。アルテナ王国の女王である私は、第一子の娘セラフリートを王位継承の第一位に指名しております」

「ふーん。第一子ねぇ。くすくすっ♪ いいの? その言い方で?」

「もちろんですわ。私が認める実子は、皇帝陛下との子供だけ⋯⋯。最低最悪の母親だと罵られようとも⋯⋯過去に未練はございません」

「ほんとに?」

「ベルゼフリート陛下と同じですわ。過去は過ぎ去った出来事。忘れ去るべきことあります。そうではございませんか?」

 ベルゼフリートも過去を捨てていた。血の繋がった家族が死んだ原因を辿れば、愛する大切な人を傷つけてしまう。

「まあね。でもさ、アルテナ王国じゃセラフリートの評判は酷いもんだろうね。憎き皇帝と売国女王の子供。前途多難だ」

「いずれ風向きは変わりますわ。アルテナ王国の人々は現実を受け入れねばなりませんもの。私のように⋯⋯」

 手紙には長女セラフリートの成長が事細かく記されている。寝返りをしただとか、玩具の人形に反応したなど、他愛のない情報をユイファンは送ってくれたのだ。

「う~ん。わざわざ城下街にビラを配ってるらしいよ。そりゃ自分の子供は可愛いけども、親馬鹿だって笑われそう」

「民への喧伝と刷り込みですわね。ちょっと気恥ずかしくはありますが、知らしめておくのは大切ですわ」

 ベルゼフリートとセラフィーナの血を引く長女セラフリート。三皇后側の思惑としても、いずれはアルテナ王国の王位を受け継がせる予定の傀儡。

 ビラを撒いてセラフリートの成長を喧伝するのは、王位継承の正統性を示しつつ、帝国の支配が浸透している現実を痛感させるためだった。

 セラフリートの血統は証明されている。家臣団の前で女王のセラフィーナは公開出産した。女王が皇帝の子供を産んだ事実は誰にも否定できない。

(皮肉だわ。私が女として選択した道が、アルテナ王国が存続する道にもなっているのだから⋯⋯)

 懸念はたった一つ。対抗馬のヴィクトリカがいる限りは、正統性に不安が残る。

(反帝国の旗を掲げ、東部の分離勢力を率いるようになったヴィクトリカ⋯⋯。あの子を支持する民は多いわ。皇帝の娘であるセラフリートは支配と征服の象徴⋯⋯。でも、分かっているのかしら? 再びメガラニカ帝国と戦争なんかしていられないわ)

 皇帝は破壊者を封じる器。破壊者の災禍は大陸全土に影響を及ぼすかもしれない。

(協力できずとも、せめて周辺の国々が邪魔をしなければよいのだけど⋯⋯。ちゃんと事情を説明できれば⋯⋯)

 現状は楽観視できない。ベルゼフリートの死で引き起こされる災禍の被害が、メガラニカ帝国を滅ぼすだけで済むとは思えなかった。

 アルテナ王国で黒蠅の被害が確認されているとウィルヘルミナから聞かされていた。

(冒険者組合や魔狩人は、異変に気付いているというわ。大きな被害は出ていないけれど⋯⋯万が一にも⋯⋯)

 大陸有数の肥沃な穀物地帯を抱えているアルテナ王国は飢饉とは無縁の地。戦争で疲弊し、東西で啀み合う分断国家となっている今、大凶作はまず間違いなくアルテナ王国を衰亡に追い込む。

 メガラニカ帝国が滅び、東西のアルテナ王国が破綻すれば、なし崩し的に影響は大陸中央諸国に及ぶ。滅びの連鎖がどこで止まるかは誰にも分からない。

「ウィルヘルミナはしばらく戻ってこなさそう。会議が長引いているのかな⋯⋯?」

 我慢が限界に達したらしく、ベルゼフリートは勃起したオチンポをセラフィーナにこすりつけ始めた。亀頭で金毛の茂みを掻き分ける。

「んっ⋯⋯♥︎ んふぅ⋯⋯♥︎ 挿れてくださいっ♥︎ 陛下の極太オチンポが欲しいですわぁ♥︎」

 向かい合ったセラフィーナとベルゼフリートは対面座位で交わる。互いの恥部を重ならせて、一つに合体する。

 護衛のハスキーはいつも通りに皇帝のセックスをガン見している。だが、無遠慮な警務女官長の態度にルアシュタインは辟易していた。警戒は怠らぬものの、両目を閉じて気を使う。

 普段から女仙との逢瀬を覗かれているベルゼフリートは気に留めない。セラフィーナも同様だった。求められているのなら、その想いに全力で応じる。男根を包み込み、肉厚な膣襞で優しく締め付けた。

「やっぱりこっちのほうが気持ち良いや⋯⋯」

 何気なく口走った一言。ベルゼフリートは無意識に本音を吐露した。マシュマロ質な柔らかさの爆乳を揉みながら、亀頭を突き上げる。

「ふふっ♥︎ 陛下ったら⋯⋯♥︎ 誰と比べられていたのですか?」

「⋯⋯えっと⋯⋯その⋯⋯。つい口にしちゃっただけで⋯⋯。誰かと比べたわけじゃ⋯⋯!」

「まさかとは思いますが宰相閣下と私を?」

「違うってば⋯⋯! とっ、ともかく秘密だからね⋯⋯!」

 ベルゼフリートは慌てた様子で口止めする。同時刻、遠く離れた魔都ヴィシュテルの帝嶺宮城ていれいきゅうじょうでキュレイの乳首を抓る魔帝は「固い⋯⋯」と不満げに寝言をつぶやいていた。

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