2024年 6月16日 日曜日

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【101話】災禍の目覚め

NOVEL亡国の女王セラフィーナ【101話】災禍の目覚め

 ――ロレンシア達はナイトレイ公爵領の関所跡を訪れ、大神殿の巫女アマンダから皇帝の過去を聞き出す。

 ――同刻、セラフィーナは夢の世界でベルゼフリートの記憶を追体験していた。胎内に宿る赤児の異能で、隠された幼帝の過去が曝かれる。

「最期に遺す言葉はありますか?」

 ウィルヘルミナは問いかけた。死刑囚の首は縄で括られてる。

 明朝に起きた騎士団員の不審死。原因はまだ分かっていなかった。不吉な気配をひしひしと感じていた。その発端が死刑執行を待つ母子だと気づいていれば、別の結末もあったはずだ。

 記憶を覗き見るセラフィーナは確信する。ウィルヘルミナが隠し続ける皇帝の過去。真実を目撃しようとしているのだ。

(皇帝の家族を殺したのはナイトレイ公爵家。間違いありませんわ。これこそ、ウィルヘルミナが隠したかった忌まわしい秘密!)

 手足を縛られた母親は絞首台に立たされた。

 セラフィーナは死刑直前の母親と精神が同調している。生々しい死の恐怖に襲われていた。

(ウィルヘルミナ⋯⋯。彼女の容姿は今とさほど変わってない。まだあの少年が皇帝だとは気付いていないのですね)

 セラフィーナは息子の様子を覗う。ナイトレイ公爵家の騎士に姉を惨殺されてから、顔面蒼白で口を閉ざしていた。

 母親が吊された後、自分も殺されると分かっている。絶望の表情だった。

「お願いします! 息子だけは⋯⋯あの子は助けてください!! 何とぞ、どうか! 御慈悲をお願い申し上げます! まだ、何も知らない小さな子供なのです! どうか⋯⋯! お願いします! あの子だけは見逃してください⋯⋯ッ!!」

「こうなると分かっていたのなら、なぜ領主を殺したのですか?」

「事故だったのです! 狩猟のお供をしていたとき、シーラッハ男爵様が私の娘を襲って⋯⋯それで夫は⋯⋯。けして、男爵様を殺すつもりはな——」

 副団長は母親の口に猿轡を嵌める。話の続きを聞こうとしていたウィルヘルミナは不快感を示した。

「爺や⋯⋯。いや、副団長。やめてください。私は罪人の話を聞いている途中です。猿轡を外してあげなさい」

「ウィルヘルミナ様。死刑囚の言い訳に耳を貸す必要はありません。この女はシーラッハ男爵家の名誉を穢そうとしました」

「万が一、罪人の言葉が真実なら? 冤罪だったらどうする気ですか? 正当防衛だったかもしれないわ」

「司法神官が裁判で判決を下しています。罪刑を決定するのは大神殿の役目。領地を治める貴族は法の執行者。統治者の義務を全うしなければなりません。領民はウィルヘルミナ様の振る舞いを見ておりますぞ」

 死刑執行は見世物でもあった。関所の広場には商人だけでなく、騒ぎを聞きつけた近隣の住民まで押しかけている。

 目を引く奇妙な集団がいた。関所を素通りできる魔狩人の一団が見学している。

「なぜ魔狩人まで来ているのです?」

「罪人の子供を引き取りたいと持ちかけてきました。よくある話です」

「子供を引き取る? 魔狩人は人買いの新規事業を始めたのかしら?」

「魔狩人となった罪人を免罪する慣例があります。魔狩人は身寄りのない孤児を引き取り、魔物狩りの技を教え、狩猟者に仕立て上げるのです。魔物狩りの贖罪は、古くから認められております。しかし、被害者や遺族の許しが必要です」

「そういうこと。⋯⋯悪くない提案だと思うわ」

「ウィルヘルミナ様⋯⋯!? 今回の罪人は領主殺し! 大罪です! シーラッハ男爵家はナイトレイ公爵家の縁者。公爵閣下は魔狩人の申し出を拒否されています!」

「そうですか。しかし、幼児を殺すのは無慈悲な所業です。私は哀れみの感情を偽れません。決めました」

「ウィルヘルミナ様⋯⋯!」

「決めたのです。爺や」

 厳格なナイトレイ公爵家では、魔狩人による贖罪を認めていない。だが、ウィルヘルミナは幼い子供を殺す気になれなかった。

「処刑の見届け人は私です。執行者の裁量権を行使します」

 猿轡で口を封じられた母親の前に立つ。

「聞きなさい。罪人。貴方に下された死罪は司法神官の判決。私では覆せません。しかし、族滅は苛酷な刑罰だと考えます。魔物の狩猟者に身をやつし、領民のために一生涯を尽くすのなら、ナイトレイ公爵家は罪を赦します。――貴方の息子を放免します」

 死刑執行の間際、ウィルヘルミナの告げた言葉は母親を安堵させた。

 幼い息子だけでも助かる。慈悲をかけてくれた美しい貴族令嬢に頭を下げた。

「ウィルヘルミナ様⋯⋯! ご当主様のお許しも得ずにそのような勝手は⋯⋯!」

「文句がありますか? 私は次期当主です。公爵には私から報告しておきます」

 領主殺しは大罪。反逆はメガラニカ帝国で忌み嫌われる犯罪だ。だが、苛酷な罰を下す律法に異を唱える者はいた。

 ケーデンバウアー侯爵家などの革新派は、国民議会に厳しすぎる法定罰の減刑を働きかけている。ところが、強く反対する勢力がいる。

 伝統的な法を重んじる保守派閥のナイトレイ公爵家がそうだった。

「噂となれば疎まれますぞ」

 法改正を拒んできた重鎮の大貴族。その次期当主が哀れみで帝国法を曲げたと知られれば、後ろ指を指す者が現われるだろう。

「裁量の範囲内です。少年の身柄は魔狩人に委ねます」

 ウィルヘルミナは覆面姿の死刑執行人に合図を送る。

「――死刑を執行しなさい」

 執行の許可は下された。絞首台の立たされた母親は、残された息子に微笑みかけた。我が子に向けた最期の贈り物だった。

 魔狩人の生活は辛く厳しい。だが、それでも生きてほしかった。

 絞首台に吊され、左右に揺れる母親の屍体を少年は見ていた。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 茹だる猛暑の炎天下。関所で執行される処刑の見物にきていた者達は、激しい悪寒で体を震わせた。死を恐れる人間の生存本能が、生命の危難を告げていた。

 最初に動いたのは魔狩人達だった。

 百戦錬磨の魔物狩りは、常に命がけの戦いに身を投じている。だが、これから彼らが対峙するのは、魔物とは比較にならぬ世界災厄であった。

「――何だ? この禍々しい気配? 破魔石の結界内だぞ」

 即座に抜剣した魔狩人は、おぞましい気配を放つ少年を睨みつけた。関所には魔物除けの退魔結界が展開されている。いかなる魔物をも近づけないはずだった。

「あの子供か?」

「あれが人の気配か? ⋯⋯だが、魔物でもないぞ」

 死刑となるはずだった子供を引き取る。それだけの用事だった。だが、事態は急変した。

「凄まじい殺気だ。仕掛けてくるぞ」

 少年が漂わせる死の気配。魔狩人達は臨戦態勢に入る。

 騎士達は異常な雰囲気に気づいてはいる。しかし、反応が遅れていた。

 少年の瞳が異形化する。昆虫類に見られる複眼。眼球に生じた蜂の巣状のレンズ。深淵の暗闇で塗りつぶした瞳は、近くの騎士を視線に捕らえた。

「おい! そこの騎士! 子供から離れろ! 死ぬぞ!!」

 野次馬を押しのけ、魔狩人は声を張り上げ、騎士に警告した。だが、手遅れだった。

「は? いったいな⋯⋯うゥ、ギヂィウ! アアァァァァァ⋯⋯アァアァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアバァァッッ!」

 白目を剥いた騎士が人間とは思えぬ声で絶叫した。身体の節々が膨れ上がり、血肉が弾け飛んだ。屍肉から不快な羽音が聞こえる。

「ちっ! とろい奴め!」

「あれは妖術⋯⋯なのか⋯⋯? 呪眼の一種?」

「そんな安っぽい代物には見えない。距離を取るぞ。陣形を組む。不用意に接近するな。近づくか、視線を合わせると、即死の攻撃が飛んでくると推定する」

「狩猟長。戦う前に住民の避難が先では⋯⋯?」

「野次馬の避難誘導は騎士どもにやらせろ。怒り狂うあれが素直に逃がしてくれるとは思わん。足止めを優先する」

 魔狩人の小隊は困惑する。原因は間違いなく罪人の少年だ。しかし、攻撃術式の発動とは考えにくい。呪文スペルの宣告がなされていない。

「眷属召喚術式?」

「いいや、術式は発動していない」

 腐乱した屍体から黒蝿の大軍が湧く。群体を成した人喰いの蝿は飛翔する。

 狙いは分かりきっていた。母親を殺した者達。少年の自我は薄れている。だが、憎悪は具現化した。

 蝿の王と化した少年は、複眼の呪瞳で肉親の仇を睨んだ。

「爺や⋯⋯? あの少年は何を⋯⋯」

「お下がりください!! ウィルヘルミナ様!」

 副騎士団長は老齢だ。しかし、その実力は錆び付いていない。白刃の剣を抜き放ち、ウィルヘルミナを守護する。

「貴様! 何者だ⋯⋯! 答えろ! 小僧!!」

「⋯⋯⋯⋯」

 老騎士の気迫に少年は物怖じしない。縄を振りほどき、絞首台にふらふらと歩いて行く。

「止まれっ!! 止まらぬのならば、攻撃するぞ!!」

 少年は老騎士の警告を無視した。ウィルヘルミナが十分に離れたのを確認し、老騎士は意を決する。

「⋯⋯従わぬのならば、やむを得まい! この場で征伐する!!」

 長剣に刻まれた聖印は、大神殿の巫女による祝福儀礼。神術式媒体となる聖騎士の剣だ。切っ先を少年に向け、老騎士は先制攻撃を放つ。

「闇を穿ち貫け――聖刃の裁きセイント・ダムナティオ!」

 光り輝く斬撃が少年の顔面に向けて放たれた。空間を伝播し、斬撃を放出する攻撃の神術式。熟達の剣技と合わされば、人体を容易く両断する一撃だ。

「――な!?」

 斬撃が静止する。否、捻れ狂う。空間が折り曲がる。

(馬鹿なッ!! 空間の歪曲⋯⋯? 力場で歪んだのか!?)

 頭では理解した。しかし、現実を受け入れられない。放出された斬撃は、老騎士にそのまま跳ね返った。

「うぐおぉぉおっ!」

 とっさに左手で利き腕を庇った。片腕が切り刻まれる痛みで老騎士は呻いた。即死こそしなかったが致命傷だ。蝿は血吹雪をあげる老騎士の傷口に襲いかかる。

「爺や!」

「ぐぅっ! 私にかまうな! 他の者ども! ウィルヘルミナ様をお守りしろ! ぬんぉおっ!!」

 蝿にまとわりつかれた左手を即座に切り落とす。このまま戦えば、守るべき主人を巻き込んでしまう。

「はぁはぁ⋯⋯!」

 老騎士は片腕を切り落とした痛みに耐えながら、考えを巡らせる。

(ウィルヘルミナ様をお守りせねば⋯⋯! あれは何だ? 魔物か? いや、ありえぬ。ここ破魔石の安置所。退魔結界の内側だ。そもそもあの少年は普通の人間だった。空間をねじ曲げるような力は⋯⋯ない⋯⋯はず⋯⋯な!?)

 老騎士の背筋に悪寒が走る。太陽が黒く染まっていた。

「これは時空断絶⋯⋯? この異常なマナ放流は⋯⋯なんだ⋯⋯ぁ⋯⋯?」

 予備動作なしでの空間歪曲。さらには天候操作。退魔結界を塗りつぶす穢れた力。常人になしえる業ではない。

「まさか⋯⋯そんな⋯⋯!」

 老騎士の顔から血の気が引く。青ざめているのは、出血で死にかけているからではなかった。

 少年の体躯は人間離れしていった。禍々しい蝿の王。圧倒的な力は神々しい。

 愛剣に刻まれた聖印が消え去る。

「大神殿の祝福儀礼が消えた⋯⋯」

 大神殿の巫女の祝福が消滅した意味。対峙する怪物の正体に老騎士は思い至ってしまう。

 屍肉を目当てに空を旋回していた黒鴉が地面に落ちる。散らばる数十羽の死骸。著しい速度で腐乱し、不快な匂いをあげながら液状化する。

 腐った血は発酵し、穢れた油分からおぞましい蛆が湧く。人間を喰らう黒蝿が生じた。

「――うぎゃぁああああああああああああぁぁぁっ! いてぇえ! 足がっ! 足をやられたぁああ!!」

「落ち着いてください! 騎士団が対処します! 指示に従って避難してください」

「うるせぇえ! 早くなんとかしろ!! あの化物を殺せよ!!」

「くるなぁっ!! やめろっ!! くそっ! 逃げろっ!! この羽虫どもは肉を食いちぎっていく! 火だ! 誰か火を!!」

「押すな! 押すなよ!! 俺が先だ!」

「建物だ! 建物の中に逃げ、あぎゃうぁああああああああああああぁぁっ! あががぁぁっっ!!」

 悲鳴が上がる。黒蝿が人々を襲い始めた。騎士達は領民を守ろうと抗う。だが無駄な抵抗だった。

 ある者は剣を振るう腕ごと食い千切られた。ある者は松明で群がる黒蝿を追い払おうとした。しかし、超常の虫に煙は効かない。

 黒蝿の軍団は容赦なく人体を貪り食う。矮小な羽虫が数千、数万、数億、数兆と膨れ上がり、人間の群れを狩る。

「ねえ! なんとかして!! はやく!」

「うぅあうあぁぁぁあ! 死ぃ、死んでるぞ! 殺されてる!!」

 指示を出していた騎士の顔面が捕食された。まとわりついた黒蝿が、数秒で顔の肉を喰らい尽くした。

「どけどけ! 邪魔だ! 馬に乗せろ! 俺がうぁぎゃあきゃあああああああああああああああぁぁぁっ!!」

 絶叫と悲鳴、逃げ惑う人間達。混沌の状況下、事態を正確に把握しているのは魔狩人だった。

 魔物狩りの専門家だからこそ、彼らは真っ先に気づいた。

「――止血する。腕の切断面を見せろ」

 魔狩人は片腕を無くした老騎士に治療術式ヒールを施す。

 黒蝿を近づかせないように、魔狩人の小隊は薄膜の防御術式を展開していた。

「私の治療はしなくていい。それよりもウィルヘルミナ様をこの場から連れ出してくれないだろうか?」

「拒否する」

「あの方はナイトレイ公爵家の次期当主だ。謝礼は――」

「魔狩人は金銭の授受を好まぬ。知らぬわけはあるまい? 我ら魔狩人は貴族の犬ではないのだ。被害を最小に抑えるため、できる限りの処置を行う」

「どうするつもりだ。魔狩人」

「お前が大神殿に急報を飛ばせ。少年の正体に気づいているのだろう?」

「⋯⋯⋯⋯」

 老騎士の無言は肯定を意味していた。

 襲われている人々は、少年が魔物か何かと勘違いしている。だが、時空を支配できる魔物は極わずかだ。迷宮や虚界の深層に潜む伝説級の怪物だけだ。

 メガラニカ帝国には超絶の力を有する怪物がいる。大陸を荒廃させる絶対の破壊者。正しく祭り上げれば絶大な繁栄を与え、蔑ろにすれば災禍を齎す上位存在。

「大神殿の巫女であれば、対処法を知っているやもしれん。我ら魔狩人にアレは殺せぬ。廃都ヴィシュテルの死恐帝を我らは止められなかった」

 魔狩人の小隊長は空を睨みつけた。

「空間の歪みが臨界に達したな。迷宮ダンジョンの深層、魔物の巣穴でしか見られない異常現象だ。時空断切が生じている。既に救援要請の飛翔虫を飛ばしたが、閉ざされれば外部との連絡手段がなくなる。その前にお前は脱出しろ」

「手負いの私ではなくウィルヘルミナ様を⋯⋯!」

「あの女は囮に使える」

「なっ!! 何を言っているんだ!! ウィルヘルミナ様を囮に使うだと!? そんな卑劣は断じて許さぬぞ!」

「いいや、やらせる。やってもらうぞ。我らで時間を稼ぐ。その間にお前が逃げろ。逃げ延びて、大神殿の大巫女カティアを必ず連れてこい。鎮める方法がないのなら⋯⋯アレキサンダー公爵家とケーデンバウアー侯爵を呼べ。総力を注げば殺せるやもしれん」

「駄目だ! 分かっているのだろう!? 殺すのは絶対に駄目だ!!」

「処刑の見物客を皆殺しにしたら、怒りを鎮めてくれるか? 寛大な御心で許してくれるなら問題はないがな。あの異形の姿を見る限り、許してはくれなさそうだ」

「それは⋯⋯」

「残念だが、手遅れだ。罪人を調べもせず、雑な処刑をやってくれたものだ。今度は首を括られる番というわけだ。相手に慈悲はなさそうだな」

 魔狩人は八つ当たり気味に言い放った。母親が死ぬ前なら、間に合ったかもしれない。だが、もはや止める手段はなかった。

「すまぬ」

 弁解の余地はない。副騎士団長の老人は唇を噛んだ。明朝に起きた騎士の変死事件。もっとよく調べるべきだった。神官の調査が終わるまで、死刑の執行を止めていればと悔いる。

「――あの少年は破壊者ルティヤの転生体。古代の勇者ですら持て余した大厄災。要するにお前らの皇帝だろう」

「そんなのは分かっている⋯⋯!」

 蝿の王と化した少年は絞首台を破壊し、吊された母親に縋り付いている。父親が死に、姉は目の前で殺された。そして、愛する母親までも奪われた少年は、世界の破滅を願った。

「腕の止血は終えたぞ。アレの意識がこちらに向く前に逃げろ。展開している防壁術式を張り直す。そのタイミングで馬を走らせろ」

「⋯⋯ウィルヘルミナ様を置いては逃げられん。別の騎士を行かせたい。いや、魔狩人の者でいい! ウィルヘルミナ様を連れて大神殿に行ってくれ!!」

「くどいぞ。時間がかかる。我ら魔狩人では大神殿や貴族をすぐに動かせん。お前はナイトレイ公爵家の懐刀だ。今の危機的状況が分かるはずだ。魔狩人は民のため、最善を尽くしている。お前は国のために最善を尽くせ」

 魔狩人は老騎士に自分たちの馬を与えた。馬は臆病な生き物だ。禍々しい気配に飲み込まれ、通常の馬は泡を吹いて倒れ始めている。だが、魔狩人の調教馬は魔物と戦うために訓練されている。

「行け。一人ならまだ逃げ切れる」

「助けを呼んでくる⋯⋯。必ずだ」

「不要だ。ここにいる者は我らを含め助からん」

「⋯⋯⋯っ!」

「馬は使い潰すつもりで走らせろ。鞍の下にある秘薬を嗅がせれば、疲れ知らずの駿馬となる」

 覚悟を決めた魔狩人達は、それぞれの獲物を構える。これから始まるのは決死の時間稼ぎだ。敵は大陸を滅ぼす大災厄。勝ち目はない。

 仮に殺せるとしても殺してはならない。

 相手は破壊者ルティヤの転生者。メガラニカ帝国の皇帝となるべき人物。死恐帝の災禍で国は滅びかけた。再び同規模の災いが起これば滅亡は不可避だ。

「――総員、取りかかれ」

「『はっ!』」

「相手は皇帝だ。我らは俗世に関わらぬ魔狩人だが敬意を忘れるな」

 阿鼻叫喚の地獄。死臭と悲鳴で支配され、異空間に変じる世界。老騎士を逃がした魔狩人は、残された騎士達とともにウィルヘルミナを守った。

 死者が増えれば、屍肉も増える。血肉を貪り喰らう黒蝿は数を増していく。黒蝿の大群が大空を覆い尽くした。


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