イシュチェルは戸惑っていた。
(居心地はとてもいい。華美な生活であることを除けば、周りは女性ばかりで昔を⋯⋯。修道院で暮らしていた時期を思い出しますわ)
黄葉離宮の側女達は心優しく接してくれる。
あらかじめ要注意人物と警告されたテレーズも、聖堂会の分厚い経典を押し付けてくるくらいで、初対面の挨拶は穏当に終わった。
(豹変ぶりに驚いてしまう。昨日の晩、乱交を繰り広げていた淫女達と同じ方々だとは思えませんわ⋯⋯)
イシュチェルは修道院で耳にした噂話を思い出す。
魔女の狂宴に参加して罰せられた人々は、普通の人間だったという。普段は仮面で本性を隠し、完璧な常識人の振る舞いで周囲を欺く。
黄葉離宮の側女達は、目覚めたイシュチェルを夕食に招待し、暖かく迎え入れてくれた。その中にはロレンシアの姿も合った。
(あの凛々しかった近衛騎士が⋯⋯今はあんな女性に⋯⋯)
その昔、バルカサロ王国の王宮で出会った赤毛の少女騎士と思わぬ形で再会してしまった。超乳巨胎の孕女に変貌したロレンシアは、後宮での暮らしに順応していた。
(私は怖い。ロレンシアさんを見ていると震えが止まらないわ。ここで暮らし続けていたら、私の心身も堕落してしまう⋯⋯)
イシュチェルは恐怖で震える指先を押さえ付ける。
つい数年前まで誇り高き女騎士であった少女が性奴隷に甘んじている。
国母と慕われていた女王セラフィーナの異様な豹変とも重なる。売国女王と蔑まれるような人物ではなかったはずだ。敗戦が運命の歯車を狂わせた。
(後宮は女を狂わせる魔窟⋯⋯)
イシュチェルの目に焼き付いているのは、少年に群がる淫女の光景。妊婦達が肉欲に身を委ね、競うように痴態を晒す乱交。膣穴で巨根を包み込み、精液を搾精する。
破壊者の荒魂を慰め、穢れは女仙の血肉に移る。ある意味ではもっとも重要な宮中儀式。皇帝の権威が最高潮に達した現在のメガラニカ帝国で、女仙は名誉ある地位だ。
しかし、修道院で育ったイシュチェルにその価値観は受け入れがたい。
(汚らわしい。乱交は罪⋯⋯。許されざる大罪⋯⋯! チャドラック陛下に誓った忠愛を私は貫く。⋯⋯けれど、⋯⋯それなのに、私はあのメガラニカ皇帝を恨みきれていない)
自身を凌辱した皇帝ベルゼフリートは好ましく思っていない。しかし、堕落した環境で育てられたがため、あのような人間になってしまったのではないか。あの皇帝が単なる加害者だとは思えなかった。
(皇帝ベルゼフリートはこの爛れた淫奔な生活に幸福を感じているのでしょうか⋯⋯?)
幼年者の性善説を信じるイシュチェルは苦悩する。バルカサロ王国の王妃になってしまったが、本質は教会の心優しい修道女だった。
「イシュチェル、今宵も夜伽役よ。準備はできているわね。私と一緒に来なさい。ベルゼフリート陛下がお待ちしていますわ」
夕食を済ませて私室で休んでいると、ネグリジェ姿のセラフィーナが室内に入ってきた。
後宮では愛妾セラフィーナが主人であり、側女の身分を与えられたイシュチェルは従者。呼び捨てにされるのは当然だった。
「セラフィーナ様、私も夜伽役に志願したいのですが駄目でしょうか?」
片手を上げたマリエールはセラフィーナに頼み込む。
部屋数に余裕がある黄葉離宮では、使用人に個室を与えている。だが、イシュチェルとマリエールは同室にしていた。そして、隣室は監視役のロレンシアである。
「マリエールは本当に積極的ですわね。ベルゼフリート陛下に貴方の意気込みは伝えておきますわ。けれど、期待はしないこと⋯⋯。万が一、お呼びがかかったら招待しますわ」
「分かりました。何とぞ、皇帝陛下によろしくお伝えください」
連れて行かれるイシュチェルを助けてあげたかったが、マリエールには何もできなかった。
「ああ、それとイシュチェルにはこの衣装を着てもらうわ。注文していた服が思ったよりも早く出来上がったの。きっと似合うと思うわ」
セラフィーナがイシュチェルのために用意した衣装は、昼前にロレンシア達が帝城市場のランジェリー専門店で受け取ったドレスだった。
衣装合わせの手間を省くために、自動調節の術式が縫い込まれている。術式が施された高級服は、袖を通せばピッタリのサイズになる。
イシュチェルは受け取ったドレスの異常性に気付いて硬直した。布面積が明らかにおかしい。恥部の部分に大穴が開き、このドレスを着てしまったら、全裸よりも恥ずかしい格好になる。
「セラフィーナ様⋯⋯これは⋯⋯その⋯⋯! この衣装では隠すべきところを⋯⋯隠せませんわ⋯⋯!!」
「性接待用のエロドレスよ。そういう衣装だもの。大丈夫。きっと似合うわ」
「こっ、これを着て⋯⋯皇帝陛下のお相手を⋯⋯」
この破廉恥なドレスを身につけるくらいなら、全裸になったほうがましに思えた。
乳房、背中、腹部、臀部、女陰、その全てが露わになる。そのくせ指先から両肩に至るまでの首周り、外側の腰と両脚を鮮やかな布地で覆う。付属品のブラジャーは、ハート型に乳輪部分がくり抜かれていた。一言で表現するなら変態痴女の制服であろう。
「黄葉離宮の外で着たら捕まってしまうから気をつけて。後宮にもルールがありますわ。全裸や品位のない姿で、皇帝陛下を誘惑する女仙が多いから、服装規定がいくつかあるの。乳房の露出具合まで指導されるのよ? 嫌になってしまうわ」
「⋯⋯⋯⋯」
「早く着替えてくださる? ベルゼフリート陛下をお待ちですわ。最近は遅刻が多いと咎められていますの。⋯⋯ご不興を買いたくないわ」
「分かりました。すぐに着替えますわ」
苦渋の表情でイシュチェルは頷いた。
オマンコが丸見えの淫靡な艶姿。入念な除毛処理で綺麗に磨かれた女陰がよく見える。
下腹部に浮き上がる聖印は薄っすらと発光していた。処女膜で固く閉ざされた前門の膣穴、後門の尻穴はアナルセックスを経験して締まりが緩んでいる。
「こっ、これでよろしいでしょうか⋯⋯?」
「よく似合っていますわ。でも、もうちょっとバストアップしたほうがよろしくてよ」
「んぁ⋯⋯! んっ! くぅ⋯⋯!!」
垂れ気味の爆乳をブラジャーで締め付けて引き上げる。
ハート型の穴開きから、肉厚な乳輪が飛び出した。修道院で育った淑女には受け入れがたい悪趣味な露出。イシュチェルは羞恥心で顔を真赤に染めていた。
◇ ◇ ◇
入内二日目の夜伽が始まった。
仰向けのイシュチェルに覆いかぶさり、爆乳の甘蜜を舐め回す。その姿は巨木の樹液を吸う昆虫のようであった。イシュチェルはベッドシーツを掴み、執拗な搾乳を歯を食いしばって耐える。
膣穴に押し当てられた亀頭が侵入を試みるが、処女膜は最愛の男にしか破れない。今のベルゼフリートではイシュチェルの純潔を奪えなかった。その代わり、豊満なデカパイに蓄えられた乳蜜を食らい尽くす。
穴開きブラジャーから飛び出た乳輪を甘噛みし、乳房を舌先で弄ぶ。
「はぁ⋯⋯。はぁはぁ⋯⋯っ! んぅっ⋯⋯はぅっ⋯⋯!!」
主寝室に充満した催淫香が理性を酔わせる。生涯で微塵も感じていなかった淫欲を掘り起こされ、強引に性感度が高められていく。それでも元修道女の王妃は忍耐強く、欲望を押し込めた。
「大きさの割にあんまり量がないね。もう空っぽみたい。オッパイの張りが弱いわけだ。誰もがセラフィーナみたいな巨峰にはならないけどさ」
ブラジャーに締め付けられても、イシュチェルの垂れ乳は溶けそうなほど柔らかい。それに比べ、セラフィーナの美乳はノーブラの状態でさえ、壮大な山脈として隆起している。
「若いときから、こんなずっと感じ?」
「答えたくありませんわ。そんなこと⋯⋯」
「あれ? いいのかな? 僕と仲良くしないと不味いんじゃないの? イシュチェルは自分の目的を忘れちゃった? それとも諦めた? 王子は死んじゃってるかもしれない。だったら、何をやっても無駄だもんね」
「性格が悪いですわ。修道院は自給自足です。私も農作業をしておりました。高貴な生まれの方々と違って、外見上の美しさは加齢と共に衰えますわ」
「⋯⋯⋯⋯」
「何か?」
「いや、イシュチェルが聖職者っぽいと思っただけ。長老派の妃達も農作業好きなんだよね」
「長老⋯⋯?」
「大神殿の女仙だよ。平均年齢が百歳以上なもんだから長老派って呼ばれてる。神官は長命種が多いんだ。イシュチェルは軍閥派ね。今の身分は愛妾セラフィーナに仕える側女だ」
ベルゼフリートはイシュチェルの乳首を指先で弄り回して遊び始める。
「くすぐったいです」
「別にいいじゃん。痛くしてないんだから。それとも子作りセックスする気になってくれた?」
「いいえ。私は皇帝陛下と子供を作りません」
「え~。それ、すごく困る。三皇后に頼まれた重要案件なんだってば~」
「それならばバルカサロ王の正当な後継者であるアーロンをお助けください。王位簒奪を目論んだ国賊を一掃していただけるのならば、私はどんなことでもいたしますわ」
「昨日も聞いた。それって無理難題。生死不明のアーロン王子は状況を聞く限り⋯⋯ぶっちゃけ死んでると思う。死体が見つかってないだけじゃん」
「⋯⋯アーロンは生きておりますわ。私は信じています」
「そう。王殺しの主犯は⋯⋯ええっと⋯⋯、第二王子と第三王子だよね。名前は⋯⋯なんだっけ?」
ベルゼフリートの疑問に対する答えはセラフィーナが教えてくれた。
「第二王子ジルベールと第三王子ザトリシオ。かつて私の夫であったガイゼフの兄王子達ですわ」
「そうだったね。最近は遊んでばっかりで、ド忘れしちゃったよ。セラフィーナにとっては元義兄だね?」
「昔の話ですわ。ベルゼフリート陛下。私とバルカサロ王家は無関係ですもの。既にガイゼフとの婚姻関係は解消されたのですから」
愛欲に忠実な悪女セラフィーナは、バルカサロ王国の王妃イシュチェルに侮蔑されようとも、過去の婚姻関係を完全否定する。
かつての夫婦生活が不幸せだったとは言わない。しかし、ベルゼフリートに想いを上塗りされ、女心は染まり切った。後ろ指をさされようと、人々から蔑まれて憎まれようとも、メガラニカ帝国の皇帝を愛し続ける。
「バルカサロ王国はどうなるんだろうね? 難民問題で僕らは迷惑してるけど」
「王殺しの王子達は仲違いをしているそうですわ。双方の陣営が戦力不足⋯⋯。大飢饉の噂も聞こえております。バルカサロ王国の惨状は酷いようですわ」
「大飢饉? それってどこで仕入れた情報?」
「キャルルさんからお聞きしました。農作物を害する疫病が蔓延しているそうです。凶作と戦火は広がり続けておりますわ。北方の大国は案外、あっけなく滅びるやもしれません」
セラフィーナは軍閥派で大きな影響力を持つキャルル・アレキサンダーと手を結び、重要な情報を流してもらっていた。
(実際のところ、大きく傾くでしょうけれど、国そのものが滅びるまではいきませんわ。バルカサロ王国は北方随一の大国。メガラニカ帝国に及ばないというだけで、国力が飛び抜けておりますわ。しかし、イシュチェルの危機感を煽ることが今は重要⋯⋯)
ベルゼフリートに話しているが、本当はイシュチェルに向けて囁いている。囚われの身にある王族が、故国の窮状を聞かされたとき、どんな心境に陥るかは知っている。セラフィーナは漏れかけた笑みを慌てて噛み殺した。
「ずるい。僕のところに情報きてなっ、わわっ⋯⋯! ちょっと急に動かな⋯⋯うぁ⋯⋯!」
急に跳ね起きたイシュチェルに、ベルゼフリートは押し飛ばされそうになった。即座にハスキーが動き、ベルゼフリートがベッドから転げ落ちないようにする。
「大丈夫ですか? 皇帝陛下」
「ありがと。ハスキー」
無礼な行動に警務女官達は怒り心頭だったが、イシュチェルの意識はセラフィーナに向けられていた。
「飢饉とはどういうことですか!? 農作物の疫病? 詳しく教えてくだ⋯⋯あっ⋯⋯」
イシュチェルは言葉を詰まらせる。
唾を飲み込み、自分のしでかした無礼をやっと認識する。主寝室は静まり返っていた。
「もっ、申し訳ございません⋯⋯! その⋯⋯私⋯⋯!! 失礼いたしました⋯⋯!!」
「意外と力強いね。よいしょっと⋯⋯。ふぅ。僕は怒ってないし、たぶん周りの皆も寛大な心で許してくれるよ。怪我をしたわけじゃない」
「ベルゼフリート陛下。イシュチェルは私に仕える側女ですわ。先ほどの無礼、あとでお仕置きをしておきます」
セラフィーナは従者の失態を詫びる。だが、ベルゼフリートは気にしていなかった。
「しなくていいよ」
「ですが⋯⋯」
「その昔、僕の顔面にゲロをぶちまけた人がいるんだけど、僕は怒ったりしなかったよ。そうだよね。セラフィーナ?」
「そんなこともありましたわね。⋯⋯覚えてらっしゃったんですか」
「忘れるのは無理だね。あの経験は⋯⋯」
過去の醜態に言及されると、セラフィーナは何も言えなくなってしまった。警務女官達も口元を隠して苦笑いしている。
「セラフィーナ、話の続き。飢饉について教えてよ。僕も気になる。バルカサロ王国は凶作なの?」
「そのようですわ。農作物を毒素で汚染する白カビが発生したと聞いています。汚染された穀物を食べた人間が食中毒で倒れるなどの被害が出ていますわ」
「一大事じゃん。汚染された食べ物を口にしたら死んじゃうの?」
「微弱な毒ですわ。人間なら死にはしません。お腹を下したり、嘔吐や吐き気の症状が出るようですわ。けれど、鳥、豚、牛、馬などの家畜にとっては致命的な猛毒となるとか。バルカサロ王国は畜産が盛んです。被害は甚大でしょうね」
セラフィーナにとっても他人事ではなかった。アルテナ王国の穀倉地帯に疫病が持ち込まれれば、壊滅的な損害を被ってしまう。食料価格は値上がりを続けており、供給量の余裕はない。
「国庫には義倉が⋯⋯! どこの領地も凶作の備えはしておりますわ!」
イシュチェルは救いを求めるように叫んだ。しかし、セラフィーナは首を横に振る。
「通常時であれば対応できたでしょう。けれど、今は内乱の真っ只中ですわ。各地域の物流は寸断され、第二王子と第三王子の陣営が戦時物資を奪い合っております。しかも、今まで穀物を輸出していたアルテナ王国との国交は断絶⋯⋯。食料を緊急輸入する余裕もない。八方塞がりですわね?」
「そんな⋯⋯!」
「イシュチェルは本当にご存知なかったのね」
「難民が国外に逃げているのは知っておりましたわ。けれど、飢饉が発生しているなんて話は一度も⋯⋯」
「家臣は気付いていたのではないかしら? 回避不可能な大飢饉が目前に迫っていたから、大切な王妃と第六王子を国外に逃がそうとした。それが軍務省の見解ですわ」
セラフィーナの説明を聞いて、ベルゼフリートは大げさな仕草で頷いた。
「あー、そっか! なんか、分かってきたかも!」
「どうされました? ベルゼフリート陛下?」
「僕とイシュチェルが子作りしなきゃいけない理由⋯⋯! 〈浄化の雨〉で疫病を退治する気なんだ!」
「〈浄化の雨〉とは何でしょう。ひょっとして、帝都新聞で記事が載っていた人工降雨と関係が?」
「僕の力を使って天候を操るんだ。人工降雨で穀物の成長を促進したり、味を良くしたりできる。疫病の予防や治療もできるはずだよ。僕が健在なら疫病の発生が抑制されるから、〈浄化の雨〉は滅多に使われないけどね」
大神殿が〈浄化の雨〉を発動させたのは、ベルゼフリートが皇帝に即位した年だけであった。災禍が続いていた時代の後遺症を消し去る目的で、帝国全土の土壌を清めた。
「イシュチェルを孕ませることにも関係があるのですか?」
「あると思う。〈浄化の雨〉は皇帝の支配が及ぶ地域にしか届かない。バルカサロ王の領土には届かないんだ。でも、僕が王妃のイシュチェルと結ばれれば、バルカサロ王国の土壌も浄化できる⋯⋯のかも⋯⋯? たぶん⋯⋯? ん? どうなんだろ?」
「納得できていないご様子ですわ」
「うん。生まれが問題なんだ。イシュチェルって王妃ではあるけど、王族の血統じゃない⋯⋯。そこが微妙なところ⋯⋯。セラフィーナみたいに王族の家系じゃないでしょ? 詳細は大神殿に問い合わせないと分かんないや」
ベルゼフリートは自分の言葉に自信がない様子だった。
「ハスキーは分かる?」
ハスキーに助言を求めてみるが、専門外だと首を横に振られてしまった。メガラニカ皇帝の力を使った恩寵は、国家に絶大な繁栄をもたらしてくれる。その効果と副作用は大神殿の神官達が秘匿している。
禍を転じて福と為す。
謂わば毒と薬。紙一重の違いなのだ。
扱い方を誤れば恩寵は災禍を生じさせる。破壊者ルティヤの力はいとも容易く国を滅亡させる。事実、道を踏み外した破壊帝は狂気に陥り、大陸全土で暴虐を尽くし、国々を滅ぼしていった。
「アルテナ王国には〈浄化の雨〉が届くのですね?」
「西側は確実に届くよ。セラフィーナは僕と子供を作ってるでしょ。アルテナ王家の女で、しかも女王だ。皇帝の支配地と見做せる。妃達が僕の子供を産みたがるのは、実際の恩恵があるからなんだ」
「つまり、形式的な結婚ではなく、子供を作る必要があるのですね」
「交わった証が重要なんだってさ。メガラニカ帝国は三皇后が妃達の代表だし、そこまで気にする必要はないんだ。三皇后のうち、一人でも子供を産んでいれば、宮中祭祀で恩寵を発動できる。そもそも僕が住んでいる土地だから、実際は放っておいても大丈夫って説もあるね。だけど、国外は事情が違う。その土地を支配する土着の一族に僕の子を孕ませなきゃいけない」
血統の交わりは支配の証。セラフィーナはベルゼフリートの赤子が宿った胎に両手を添えた。
(嬉しいですわ。誇らしい⋯⋯。私とベルゼフリート陛下の愛し子達が国土に祝福を与えてくれる⋯⋯♥︎)
これから生まれてくる新たな御子。既に産み落とした三つ子の娘達。皇帝と女王の遺伝子を受け継いだ子供達のおかげで、アルテナ王国は恐ろしい疫病から逃れられる。
――だが、バルカサロ王国は違う。
祖国の窮状を憂うイシュチェルは暗い表情で俯いていた。
