2025年 2月10日 月曜日

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【37話】侵食される心 愛し合う夫婦のように

NOVEL亡国の女王セラフィーナ【37話】侵食される心 愛し合う夫婦のように
 

 黄葉離宮には浴室が三つある。そのうち二つは離宮の主人が使う。残りの一つはロレンシアやリアなどの側女専用だ。

 主寝室に隣接する小さめの浴室で、ベルゼフリートとセラフィーナが混浴している。天然の大理石を研磨して作られた湯船は一人用。高身長のセラフィーナが恵体を沈めると湯船から水が溢れ出た。

「やっぱりセラフィーナのオッパイは大きいから浮かんでくるね。浮き袋みたい」

 ベルゼフリートが少年でなければ、身を屈めたとしても、二人で一緒に入浴はできなかっただろう。

 護衛の女官達は脱衣所に待機させている。二人きりになりたいとベルゼフリートが命じた。

 ハスキーは難色をしめしたものの、今さらセラフィーナがベルゼフリートに危害を加えるとは思えない。何かが起ころうとすぐに異常を察知できる状況だったので、ハスキーは許可した。

「さっきの中出しで何回目になるんだろうね〜。オマンコの形が僕のオチンポに馴染んできたね。くすくす」

「陛下とは、もう数え切れないほど……してしまっていますから……」

 湯船に入る前、互いの素肌を洗い合ってるときに軽めのセックスをした。

 ベルゼフリートに男根を捻じ込まれ、膣内射精を受け入れた。セラフィーナは後宮の日常ハーレムに染められている。今は女王ではなく、皇帝に奉仕する一人の女だ。

「それでさ、本題だけど、夜の話は本気?」

 ベルゼフリートは浮かんできた乳房を指先で突いて遊んでいる。

「僕にはリスクがないから協力してあげてもいいよ。セラフィーナをママだと思って甘えたら、心が癒やされたから。でもね、ウィルヘルミナに喧嘩をふっかけるのは……。とても危険だよ。そもそもさ、セラフィーナがアルテナ王国を去ってから、何が起きたかは聞いてる?」

「……ヒュバルト伯爵を中心とする東部地方の諸侯が、アルテナ王国からの独立を宣言したのでしょう。ある程度は聞き及んでおりますわ」

「実はその前にね。帝都で事件が起きたんだ。凱旋門広場で講和条約に反対する国民集会が行われていた。アルテナ王国との戦争で、帝国は賠償金を得られなかった。帝国の民はお怒りなんだよ」

 そのあたりの事情をセラフィーナは知っていた。アルテナ王国は講和条約で賠償金を明記させなかった。

 講和条約で認めたのは、アルテナ王家の女性王族をメガラニカ皇帝へ嫁がせることのみ。領土割譲を含め、戦後賠償には触れられていない。

「抗議は暴動に発展したんだ。帝都憲兵隊が駆けつけて、すぐ鎮圧したらしいけどね。でも、駐在所が焼き討ちされた。凱旋門広場の公園は、現在も厳戒態勢が敷かれている」

 メガラニカ帝国の国内情勢は刻々と変化していた。

 それにも関わらず、セラフィーナはまだ何ら行動を起こせていない。忸怩じくじたる思いを痛感していた。

「セラフィーナは微妙な立場だ。不用意な真似をすれば危ういよ。いくら皇帝の愛妾だとしてもね……。勅命で王妃を内定させたとはいえ、セラフィーナが承諾しないと有効にならないし。……そもそもの実効性が揺らぎつつある」

「どうして忠告されるのでしょうか……?」

「気持ち良くセックスしてくれたお礼。それに人妻を孕ませる機会なんて早々ないしね。セラフィーナ⋯⋯。アルテナ王国の女王だった過去を忘れて、静かに余生を送ったら……? ここでの暮らしは不自由がないよ」

「私は今もアルテナ王国の女王ですわ。戦争に負け、私は沢山のものを失いました。けれど、まだ失っていないものがありますわ。祖国を守るためにやるべき使命を全うする。その覚悟は決めておりますわ」

「殊勝な心掛けだ。でも、いざというとき、僕は君を絶対に守らない。それだけは覚えておいて……」

「ええ。もちろん。分かっておりますわ」

「僕を上手く利用できるといいね。応援はしないけど頑張って」

 ベルゼフリートはセラフィーナに利用されることを承諾した。

 危険な綱渡りとなる。虎穴に入らずんば虎子を得ず。このまま座して、祖国の滅びを待つつもりはなかった。

「過去を調べたいのなら、公文書館に資料が保管してある。場所は帝城ペンタグラムの近郊だから、誰でも利用できる公共施設。今日の午後、連れて行ってあげる」

 湯船から上がったベルゼフリートは背筋を伸ばす。

 湯で温められた浅黒い肌から、白い湯気が昇る。

 幼年者の小さな体躯は、発育の途上にある。細い手足、肩幅は狭い。濃密な肉体関係を結んでしまったせいか、ベルゼフリートの裸体を見るだけでセラフィーナの鼓動は高鳴ってしまう。

「髪を洗うの手伝ってあげる。セラフィーナも湯船から出なよ」

 入浴中のセラフィーナは髪が浸からないように後ろ髪を束ねて夜会巻きシニヨンヘアとしていた。ベルゼフリートに誘い出され、セラフィーナは結んだ長髪を解いた。

 金糸を思わせる優美な黄金の長髪。すらりと伸びた両脚、肉付き豊かな尻、引き締まった腰のくびれ、丸々と膨らんだ肥沃な乳房、そして優しい母性を感じさせる美貌。

 この世に美女は数多くいる。けれど、この奇跡的なボディを努力せずに得た麗人はセラフィーナくらいであろう。

(そういえば昔、ガイゼフと一緒に入浴したことがあったわ。まだリュートやヴィクトリカが産まれる前。結婚した最初の年だったかしら……?)

 湯を張った木桶に髪を浸らせながら、セラフィーナは夫との思い出を振り返る。

 国内視察という名目の夫婦旅行で訪れた湯治場。乳白色の湯が湧く温泉を夫婦二人で独占した。

(十年以上も前の思い出⋯⋯。私はちゃんと覚えている。けれど、今から十年後の私は⋯⋯覚えているのかしら……? 祖国を離れてから1カ月と経っていないのに、大切な家族との記憶が色あせていく。想いは上書きされてしまうの? 十年後の私が覚えているのは……)

 曇り止めが施された鏡に、自分自身の姿が映った。

(リュートが処刑されて1年と経ってない。だけど、遥か昔の出来事に思えるわ……)

 全裸のセラフィーナはヒノキの風呂椅子に腰掛けた。恥部を隠そうとする意識は働かない。ベルゼフリートに裸を見せるのが、後宮では当たり前なのだ。

(本当ならこんな心の堕落は許されないわ。ガイゼフと夫婦の誓いを立てておきながら、私は姦淫の悦びを受け入れてしまっている……。ふしだらな女と嘲られて当然ですわね)

 仇敵の国主たるベルゼフリートは薔薇の香りがする洗髪剤で、女王セラフィーナの髪を優しく洗う。

 泡が目にかからないように、前髪も後ろに逸らしてくれた。

 普段の何気ない生活行為を手伝ってもらっている。安直にセックスするより、今の状況に背徳感を感じた。

「とてもお上手です。他の女性にもされているのかしら? 殿方とは思えないほど、手慣れていますわ」

「宮廷で暮らしていると自然と身に付くよ。妃や女官とセックスしまくってる生活だもん。美女に尽くすのは嫌いじゃない」

 ベルゼフリートと交わす何気ない会話。指先で頭皮を揉まれる感覚を堪能する。芳しい薔薇の匂いが醸成した嬌艶な雰囲気に酔う。

(時の流れとともに、私はこの出来事を忘れられるの……? 誰かに髪を洗ってもらうなんて、何ら特別な行為ではないのに……)

 精神を侵食されているかのような錯覚。被害妄想に近いものだと理解しつつも、大切な夫との思い出を上書きされているのではないかと恐怖を覚える。

(あぁ……。私の心に食い込んできているのが分かってしまう……。子宮が火照る⋯⋯♥︎)

 セラフィーナの股座から、愛液の涎が流れ出ていた。


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