フランス書院は11月4日、第35回「フランス書院文庫官能大賞」の結果を発表した。新人賞に『ヒトヅマンション』が選ばれた。大賞、特別賞、ノンフィクション部門は該当作品なし。
eブックス賞は『エロゲーのライバルポジに転生したけど、モブキャラ好きな俺はメインヒロインを避けてゲームの背景女子たちを攻略していこうと思う。』、女性向けのe-ノワール賞は『エスター公爵家の男たち』が受賞した。
受賞作講評
新人賞
『ヒトヅマンション』(Rさん)
多様な人妻たちの欲望と秘密を、七瀬という純朴な青年を軸に描き切った、高い完成度を誇っている。そして、ヒロインの魅力と性描写が見事に相乗効果を生んでいる。特に、人妻一人一人が持つ複雑な事情(セックスレス、コンプレックスなど)と、それに呼応する七瀬の「正直な性欲」とのコントラストが、物語に深い感情的な奥行きを与えていた。
「トルネードフェラチオ」「乳搾りパイズリ」など、バラエティに富んだシチュエーションと、五感を刺激する緻密な描写のクオリティは、新人としては秀逸で、濃密な快楽の応酬が持続する構成力も特筆に値する。
人妻たちの人間的な魅力と、それを際立たせる巧みな濡れ場の描写が融合した、完成度の高い傑作として、新人賞に値すると判断した。
eブックス賞
『エロゲーのライバルポジに転生したけど、モブキャラ好きな俺はメインヒロインを避けてゲームの背景女子たちを攻略していこうと思う。』(Tさん)
前世でやりこんだエロゲーの世界にライバルポジとして転生した主人公がゲーム中のモブキャラを「攻略」していく話。
ユニークかつ斬新な設定に惹かれて読み始めたが、テンポの良さやエッチシーンの素晴らしさに魅了され、いつしか世界観の虜になってしまった。
主人公・陽介が「背景女子」たちに向け続ける一途で、どこまでも一直線な情熱と行動力は、地味めなヒロインに魅力を感じる読者はもちろん、すべての読者の心を掴むに違いないだろう。
選考の結果、本作にeブックス賞を授与し刊行を決定するものとする。
e-ノワール賞
『エスター公爵家の男たち』(柴田)
不遇ヒロインが人外のヒーローたちに見初められ、愛されていくという、大変魅力的な作品でした。
竜の血筋や義兄・義弟の生い立ち設定が、「親子もの」という女性向けでは珍しいテーマを受け入れやすくさせていると感じます。片方が人外キャラクターである場合に必ずといっていいほど付随する寿命問題についても言及されており、単なる溺愛や執着を感じさせるストーリーに留まらず、切なさも伴う結末に胸を打たれました。
一方で、物語の中心が公爵様(ヒロインとは番の関係)に集中していたため、義兄弟との甘い描写が薄めに感じました。せっかくのバリエーション豊かな家族設定ですので、書籍化の際にはハーレム作品としての魅力をさらに高めていただきたいと考えています。
受賞を逃した作品の講評
『風逢楼 女将さんの柔肌に触れて』(M.Mさん)
疲れた青年が癒やしを求めて訪れた旅館「風逢楼」。そこが一種の娼館であったという設定が、まず読者の心を掴む。
テンポよく濡れ場へと移行し、読者を待たせない構成が素晴らしい。特筆すべきは、主人公が指名するヒロインの女将の「柔らかいセリフ」と、疲れた心に寄り添う「癒やしのホスピタリティ」だ。その卓越した表現力は、「パイズリだけでこれだけ読ませる」という、新人離れした圧倒的な筆力にも表れている。
分量的にやや少なく、完成度を考慮したため受賞は見送りにしたが、部内では「もっと著者のセンスと才能を見たい」という声が続出した。魅力的なヒロイン側の視点、高評価の「セリフ」などを盛り込めれば、さらにアップデートした作品が見られたに違いない。
『人妻性奴隷【セックスレス人妻の軟禁調教】』(K.Kさん)
専業主婦のヒロインが夫と共に拉致され、夫の眼前で「汚される」という王道の設定。土台となる夫婦の関係性が序盤にしっかり描かれているので、その後の濡れ場がより際立つ構成となっていた。
「監禁」という密閉されたワンシチュエーションの中で、SM的な支配=被支配の構図を導入し、長尺の物語を読ませようとした野心は高く評価された。昨今、硬質な凌辱小説の書き手が減っている中、その才能は貴重な存在と言える。
惜しむらくは、ヒロインが「落ちる」のが早く、初期段階から快感を覚えてしまったことだ。15万字という長さを活かし、人妻には序盤は抵抗してほしかった気もする。またところどころに良い濡れ場はあるのだが、平均するとキャラたちのセリフがやや弱かった。さらにキレのある凌辱者のセリフ、官能的なヒロインの心情やセリフを作れると、受賞に近づくだろう。
『ぼくの大好きなお義姉ちゃん』(Rさん)
父親の再婚相手の連れ子である晴子に一目惚れした昇太朗。それと同時に、義姉となった晴子も弟に一線を越えたレベルの愛情を抱いてしまい……という物語。
作者の力量は確かで、キャラクターへの深い愛情を感じられる素晴らしい作品であることは間違いない。
だが、本作の核となるテーマ──いわゆる「おねショタ」要素を含んだ作品は、熱狂的な支持層を持つ一方、現在の市場の環境において最大限に作品の魅力を届けられる「売り場」が限られてしまっている現状がある。
eブックス賞受賞は見送ることとなったが、なんとか読者の皆様に本作をお届けすることができないか、編集部として検討していきたい。
『意外と優しい隣の席の色白巨乳ギャルは、オタクな俺の言いなり性奴隷になりたいスケベなM女だった』(M.Hさん)
クラスの陽キャギャルにエロ漫画の趣味がバレてしまい絶望──と思ったら、「エロ漫画みたいに、あたしのことえっちな玩具にして、いじめてくれない?」と性癖を告白されて……という話。
お馴染みのギャルモノではあるが、全体的に丁寧で質の高い作品だった。台詞や地の文の力で、眩しくも優しいギャルの言動が鮮やかに描き出されている。近くで見ていて飽きないだろうなと思わせるくらい感情豊かで反応がよく、大変魅力的なヒロインとなっていた。
彼女の性奴隷宣言からはライトMなプレイが始まるが、意外とリード自体はギャルがしており、マゾの誘い受けといった雰囲気。淫らな放課後を通して徐々に気持ちも繋がりあい、絶頂した後に彼女が笑顔を見せるシーンは素晴らしかった。
ただ、もっと引きのある設定などが欲しかった。タイトルもテンプレにカウンターしきれていない印象。冒頭のワンシーンか設定、タイトル、キーフレーズなどで、さらに惹きつけられる何かを探したい。主人公を引き立てる優しさは感じられるヒロイン像だったので、これを描ける作家性は大事にしつつ、さらなるアイデアを期待したい。



