「依頼状は偽物、なれど帝国宰相の署名は本物⋯⋯! 悪質な詐欺に遭った気分だよ」
軍閥派の次席、主席宮廷魔術師にして王妃たるヘルガ・ケーデンバウアー侯爵は立腹していた。宰相府から送られてきた顛末書をまるで汚物を触るかのように摘まみ上げる。
「帝国にたった二人しかいない特級冒険者だろうとも、帝国宰相の署名を偽造すれば処罰は免れない。⋯⋯悪知恵を働かせたものだ。いや、手の込んだ嫌がらせというべきか」
廃都ヴィシュテルから齎された不吉な凶報。特級冒険者ネクロフェッサーの調査結果は魔物を統率している者の存在を強く示していた。
「しっかりと情報だけは持ち帰ってきているのが悔しい」
「気持ちは分かる。だが、今に始まった話ではないだろう。その辺にしておけ、ヘルガ」
帝国元帥レオンハルトは休暇明け早々に頭が痛くなる問題を突きつけられた。
「偽の依頼状に帝国宰相ウィルヘルミナ・ナイトレイの名が直筆で印されていたのだろう? 呆れてしまうな。ほとんど本物と違わないだろ」
「冒険者組合のギルドマスターも騙された。帝国宰相ウィルヘルミナの直筆書状を特級冒険者が持ってきた。そもそも疑うほうがどうかしているよ」
「違和感を抱き、軍務省に問い合わせたケーデンバウアー侯爵家の騎士団長は有能過ぎたようだな。さすがは貴公の部下だ」
「ケーデンバウアー侯爵家の騎士団長だ。間抜けには任せられないよ。宮廷は横暴だと拗ねているがね。⋯⋯しかし、ウィルヘルミナ宰相らしくない。荒っぽい手段だ。正規の手続きを踏めば問題はなかった。元帥閣下に話を通しておけば、私だって納得はしたよ」
「軍務省が面子を気にして反対すると思っていたのではないか。阿呆らしい。特級冒険者を使えるなら、私は賛成するつもりだったぞ」
「ふむ⋯⋯。そこがおかしい。今回の一件、帝都の冒険者組合も不満を漏らしている。金貨の山を積んで黙らせたようだが、そういう問題ではあるまいさ」
ヘルガは肩をすくめる。帝都の冒険者組合とは関係が悪化していた。最初の発端は一級冒険者のパーティーを寿引退させてしまった一件だ。
「ギルドマスターの苦情は捨て置けばいい。ララノア達の件なら軍務省に非はないぞ。そもそもメガラニカ帝国は憲法で職業選択の自由が保障されている。連中にとやかく言われる筋合いはない」
「我々としては良い人材を手に入れた。セラフィーナの側女になるとは思わなかったけどもね」
熟練の冒険者だったララノア達を側女の護衛に貸した翌月、皇帝に見初められて宮中に入内となった。ギルドマスターからすれば、最初から引き抜き目当てだったと思い込むのは当然だった。
稼ぎ頭の一級冒険者パーティーを奪われ、帝国に文句の一つも言いたくなる。しかし、ララノア達は皇帝の御子を身籠もったというのだから、腸が煮えくりかえっていようと表面上は祝福するしかなかった。
悪感情が積もり積もった真っ只中、特級冒険者ネクロフェッサーのやらかしである。
宰相府は「公文書を偽造し、無許可で廃都ヴィシュテルの調査を行ったのは違法行為である。しかし、今回は多めに見てやる」と厚かましく免罪を言い渡した。
ギルドマスターからすれば「宰相の直筆署名がモノホンなら共謀での仕込みだろ。宮廷の面倒ごとに冒険者組合を巻き込むな、ボケが!」と吐き捨てたくもなる。
なぜ帝国宰相ウィルヘルミナは正式な手順で依頼を出さなかったのか。その理由は単純明快である。手続きに時間がかかりすぎるからだった。
「特級冒険者ネクロフェッサーを紹介したのはラヴァンドラ王妃に違いない。評議会を欠席し、さらには陛下の伽役指名まで蹴って、貿易交渉に励んでいたと言うが⋯⋯誤魔化しだ」
「そうだろうね。ラヴァンドラ王妃は陛下の御子を産めていない。セラフィーナの娘を養子にする気ではないかと囁かれているが、自己顕示欲の高い女だ。自分の子を欲しがっている。商談なんかで陛下の誘いを無碍にはしないだろうねえ」
「帝都最大のラヴァンドラ財閥は冒険者と太いパイプがある。特級冒険者との繋がりは深かったはずだ。うちの家と違って、帝都の貴族は冒険者達を頼っている」
アレキサンダー公爵家は冒険者との繋がりが薄い。自前の兵力を持っているため、そもそも冒険者組合に依頼などしないからだ。領民達も全く同様で、困ったことがあれば領主にお願いすればすぐさま解決する。
ケーデンバウアー侯爵家やナイトレイ公爵家などの大貴族はそれぞれの領地で私兵である騎士団を持っている。
一方でラヴァンドラ伯爵家など領土のない貴族は、自由に動かせる兵力を持ち合わせていない。しかし、商売で得た富は有り余っている。そういう者達は面倒ごとが起きたときに冒険者を雇う。
「宰相閣下がわざわざ依頼状を偽造した理由は? 帝国元帥殿は何だと思うね?」
宰相府が冒険者組合に依頼を出すのは異例である。通常は軍務省に依頼し、国軍を動かすのが筋だ。しかし、正規の手続きを踏めば何らおかしいことではない。
「廃都ヴィシュテルの調査は二ヶ月後に実施する予定だった。魔狩人と軍務省の共同でな」
「⋯⋯実際には無理だっただろうね。私も同行できず、アレキサンダー公爵家からも人員を出せなかった」
「ウィルヘルミナ宰相は焦っていた。私は三頭会議で何度も急かされた。⋯⋯だが、廃都ヴィシュテルは死地。魔狩人が送った前回の調査隊は半数しか帰ってこれなかった」
「私らの主張は至極真っ当だよ。兵士を使い捨てにはできない。そもそも帰ってこれないのなら無駄死だ。宰相府の要請だろうと準備なしに調査など不可能。軍務省参謀本部もそう判断していた」
「私はウィルヘルミナ宰相を納得させたつもりだった。しかし、キャルルが殺した魔物の一件で心変わりしたらしい」
「中央諸国で聖者を殺した上位種の魔物マルファム。⋯⋯私も気にはなったとも。内陸部で暴れていた魔物がいきなりメガラニカ帝国に出没した。損害なしで討伐できたけれど、元帥閣下の可愛い妹御でなければ、多くの人間が死んでいたよ」
「損害はあったぞ。アレキサンダー公爵家に城砦破損の賠償請求が届いた」
「ああ、そういえばそうだった。お気の毒に。裁判で争うなら良い法律家を紹介するよ」
「賠償の問題はともかく、魔物達の蠢動をどう考えるかだ。評議会や国民議会は軽視しているが⋯⋯宰相はそう考えていないのだろう」
帝国宰相ウィルヘルミナは内政の専門家であって軍略に疎い。けれど、一流の政治家は危機に敏感だった。
「⋯⋯上位種の魔物が帝国内ではまったく悪さをせず、今まで大人しくしていたのは不気味に感じる。特級冒険者のネクロフェッサーも同意見だったらしい」
帝国軍や魔狩人、宰相府内部の調整が困難と判断し、特級冒険者ネクロフェッサーを動かした。
偽造された宰相府の依頼状。しかし、帝国宰相の署名は本物。全てが終わった後、特級冒険者ネクロフェッサーの独断専行を無罪放免とするために、ウィルヘルミナが事前に手を回していたのは明らかだった。
「⋯⋯帰ってきたネクロフェッサーは何をしている?」
「バルカサロ王国と連絡を取ろうとしているよ。いや、天文監察補助隊の性質を考えれば、各国の冒険者組合に警告を伝達したはずだよ」
「これだから冒険者は厄介だ。口止めできなかったか⋯⋯」
特級冒険者ネクロフェッサーは完璧に依頼をこなすだろう。しかし、大きな副作用がある。
冒険者は国家に帰属しない中立勢力。一級冒険者程度なら圧力をかけられるが、特級冒険者に国家権力は通じない。
「口止めはしたとも。うちの騎士団長が頑張ったさ。しかし、魔狩人にも情報共有されてしまった。廃都ヴィシュテルの事情が他国に知れ渡るだろうね」
「冒険者や魔狩人は中立組織だ。だからこそ、帝国軍が単独で調査するのが望ましかった。人員さえ割ければな⋯⋯」
アルテナ王国やバルカサロ王国で起きていた謎の集団失踪事件。失踪者の共通点は一つ。反帝国の思想を抱いている者達であった。
一部の陰謀論者はメガラニカ帝国が拉致および暗殺を行っていると非難した。当然ながらメガラニカ帝国は疑惑を否定する。しかし、陰謀論者の主張は正しい面もあった。
特級冒険者ネクロフェッサーは廃都ヴィシュテルで倒した魔物を解剖し、人間の細胞が混在している事実を突き止めた。
失踪した人間は廃都ヴィシュテルに連れ攫われていた。
「廃都ヴィシュテルに潜む魔物は人間を拉致している。しかも、メガラニカ帝国の人間には一切手を出さず、外国の人間だけを狙った。魔狩人の警告を今回ばかりは無視できない」
計画的犯行なのは明らかだ。もしメガラニカ帝国の人間に被害が出ていれば、軍務省は動かざるを得なかった。魔物を統率する者が存在し、メガラニカ帝国の注意を引かぬように蠢動していたのだ。
「やれやれ。陛下を襲った不届き者の捜査だけでも忙しい時期に⋯⋯」
「ネクロフェッサーが報告した気脈と地脈の異常滞留は、私のほうで調査を進めるよ。それと、陛下がいるグラシエル大宮殿に三重の退魔結界を仕込んでおく」
「廃都ヴィシュテルの魔物は天空城アースガルズに侵入した女と関係していると、貴公は思うのか?」
「魔物は呪いと毒に完全耐性がある。女仙の瘴気で害されない。そもそも魔物は生物とは言えないからね。⋯⋯敵が魔物なら退魔結界は保険になるよ」
「帝都アヴァタールの退魔結界を破壊できるとは思えないがな。栄大帝時代の神官長が構築した太古の大防壁だ。結界内での重ね掛けは、問題が起こると聞いているぞ」
「その当たりは配慮するさ。あくまでも保険。用心はすべきだとも。なにせ死恐帝の災禍が起こったとき、ヴィシュテルの退魔結界はあっけなく崩れた。完全無欠の術式はありえない。現在の帝都アヴァタールとて同じさ。綻びは必ず生じるものさ」
「分かった。いずれにせよ、陛下の護衛態勢は引き続き強化する。私の姉達を置いておけば問題あるまい」
「陛下はグラシエル大宮殿の暮らしに不満を爆発させているらしいけどねぇ。今は窮屈な生活を我慢してもらうしかない」
◇ ◇ ◇
石英ガラスで囲まれたドーム状の温室御苑は、高温多湿の熱帯雨林気候が完璧に再現されている。
二月下旬のメガラニカ帝国は、厚着が手放させない真冬の寒季。けれど、太陽光の暖気を溜め込んだ温室は、真夏の蒸し暑さを保っていた。
岩棚から滝が流れる大きな溜池には、水草の鬼蓮が浮かんでいる。花粉交配用に放たれているミツバチ達は水をせっせと巣に運んでいた。
「おぁっ♥︎ んんぉっ♥︎ イクぅ! イぎぃますぅぅうっぅ~~♥︎」
「そんなエロい顔しちゃっていいの? 宮廷画家に描かれてるんだよ。くすくすっ! いい作品が仕上がりそうだね。なんだったら、ガイゼフに送りつけちゃおうか? セラフィーナが僕に抱かれて、幸せに享受してる姿を見せてあげたいよっ!」
「あぁっ♥︎ んぁっ♥︎ 幸せっ♥︎ 今までっ、アルテナ王国にいたころよりもぉっ♥︎ 陛下のお側にいるときが、幸せですぅっ♥︎ んぁぁああぁっ⋯⋯♥︎」
溜め池の近くに置かれた季節外れのサマーベッドで、半裸状態のセラフィーナが淫らに喘いだ。汗まみれの少年と熟女は、生殖器を激しく交わらせる。
(刻まれちゃうっ♥︎ 子宮に遺伝子が刷り込まれるぅっ♥︎ 陛下の極太オチンポぉ♥︎ 強すぎっ♥︎ 私を支配しようと突いてくるっ♥︎ こんなの堕ちるに決ってますわぁ♥︎ この快楽を味わえるなら♥︎ 私は一生涯ぃ、陛下の性奴隷で構いませんわ♥︎)
騎乗位でのセックスに飽きると、ベルゼフリートはセラフィーナを下に組み敷き、まんぐりがえしの姿勢に変えさせた。
「陛下っ♥︎ 犯してぇっ♥︎ めちゃくちゃに⋯⋯♥︎ 性奴隷のオマンコを可愛がってくださいぃっ♥︎」
巨根でガバガバに拡張されながらも美形の陰唇。咥えた男根が唸る。皇帝専用の膣穴は白濁液で満たされていった。
「おっ♥︎ んぉっ⋯⋯♥︎ きたぁ♥︎ 陛下の元気な子胤♥︎」
「子壺をいっぱいにしてやるっ! 孕んじゃえ⋯⋯!」
「あぁっ♥︎ あぁんんぁああああ~~っ♥︎」
大回廊での前哨戦とは比較にならぬ力強い種付け。ベルゼフリートの精力はまだ衰えが見えない。底無しの大放精。射精をする度に、精液の量が増大していった。
「はふぅ~~。射精が一段落するまでちょっと休憩しよ。ふぅ。運動したら、お腹空いちゃった。ねえ、おっぱい、ちょうだいっ⋯⋯! いいよね? こんなに子胤を注いであげたんだもん。御礼にセラフィーナのミルクを飲ませてよ」
「はいっ♥︎ もちろんですわぁ♥︎ ご賞味ください♥︎」
ベルゼフリートはセラフィーナの爆乳から芳醇な母乳を吸い上げる。両手で乳房を揉みしだき、刺激で乳腺を弛ませる。
「んぷっ♪ とっても濃厚。美味しい。まさしく精が出る味っ♪」
子猫のように舌先で桃色の乳首を舐める。五人の子供を産んだ経産婦のものとは思えぬ美しく鮮やかな乳輪。肌の艶は生娘と何ら変わらない淫母。幼さが色濃く残る少年は美熟女に甘える。
「夜の相手もセラフィーナにしてもらうからね」
「喜んでお引き受けいたしますわ。陛下の御体に宿る荒魂を慰撫させていただきます」
「セラフィーナの時間が空いてるなら僕ところ来てよ。グラシエル大宮殿での生活って窮屈なんだ。お引っ越しでワクワクしてただけど、天空城アースガルズの暮らしが恋しい」
「ほんの三ヶ月の我慢ですわ」
セラフィーナはキャンパスで絵を描く女官を横目で見る。
宮廷画家が制作したエロ絵画はグラシエル大宮殿に寄贈される予定だった。さまざまな体位で犯されるセラフィーナの淫態を後世に伝える作品集となる。
(グラシエル大宮殿に飾るとか、ガイゼフに送りつけると言っているけれど、陛下は本気なのかしら⋯⋯? まあ、今さら気にはいたしませんわ)
アルテナ王国の女王は羞恥心を失っている。今さら誰に見られようと構わなかった。誰の前だろうとベルゼフリートが望むのならば、セラフィーナは股を喜んで開き、男根の挿入を歓迎する。
「自制しなきゃいけないのは僕も分かってる。でもさー。セラフィーナは外出許可をもらってるんでしょ。いいなぁー。僕も帝都を練り歩きたいなー」
いじけているベルゼフリートは人差し指でセラフィーナの乳首を弄り始める。
平時であったなら帝都でお忍びデートもできたかもしれない。ついそんな妄想を抱いてしまったセラフィーナの乳首は勃起した。母乳が滲む乳首をベルゼフリートは爪先で遊ぶ。
「明日はどこ行く予定?」
「明日はラヴァンドラ伯爵邸と冒険者組合を訪問する予定ですわ」
「ラヴァンドラ伯爵邸に⋯⋯? 商会で買い付けとかするの?」
「陛下に産ませていただいた私の可愛い愛娘は、ラヴァンドラ伯爵家で暮らしていますわ。ラヴァンドラ商会にも用はありますが、ギーゼラに会ってまいります」
セラフィーナが産んだ三つ子の娘達。元夫ガイゼフとの間に産まれたリュートとヴィクトリカを捨て去った今、自分の子供と思っているのはベルゼフリートの血を引く三姉妹だけだった。
長女のセラフリートはアルテナ王国で次代の君主となるべく帝国軍の管理下にある。次女のコルネリアは大神殿に引き取られ、巫女となる予定だ。
そして、三女のギーゼラはラヴァンドラ伯爵家に引き取られた。帝都を訪れるのなら、娘の成長を見ておこうとセラフィーナは思った。
「そっか。ギーゼラに会うんだ。僕も機会があったら会いに行くつもりではあった。噂を知ってる? ラヴァンドラ伯爵家の養子にするかもしれないって。あれ、本当なのかな?」
「あくまで噂ですわ。ラヴァンドラ妃殿下が世嗣をお産みになられます。ギーゼラにはメガラニカ帝国とアルテナ王国の架け橋になってほしい⋯⋯。母親としてはそう願っていますわ」
「いいの? 不義の子が架け橋になっちゃうよ? くすくすっ! 今でこそセラフィーナは僕の愛妾だけど、会ったばかりころは酷かったもん。ゲロをかけられたのはまだ覚えてるよ?」
「あの出来事は忘れていただきたいですわ。当時はまだ陛下の魅力を理解できていなったのですから⋯⋯。今の私は陛下だけを愛しておりますわ」
「なんだか不思議。僕とセラフィーナに三人も子供がいる。ほんと、あっという間。今じゃ僕らは夫婦で、こんなに愛し合ってるだもん」
「陛下が私の心を奪ってしまった⋯⋯。おかげで私は祖国で売国妃と罵られていますわ。捨て去った人々⋯⋯ガイゼフやヴィクトリカにも恨まれている⋯⋯けれど、ちっとも後悔なんかしていません。皇帝陛下に、ベルゼフリート様にお仕えできるのなら⋯⋯♥︎」
「メガラニカ帝国とアルテナ王国が終戦したのは⋯⋯えーと⋯⋯三月の⋯⋯」
「昨年の三月二十三日。私と陛下と最初に交わった日でもありますわ」
「言い方が違ってない? 僕に強姦された日でしょ? あのときはまだ人妻だった。ガイゼフの女。だけど、今は違うよねえ? 皇帝の妻だ。セラフィーナは僕の女になった」
「はいっ♥︎ 今の私は陛下の女ですわ♥︎ 身も心も奪われ、捧げて、ベルゼフリート様の虜になった卑しい性奴隷♥︎ 不義であろうと、背徳だろうと、許されぬ非道であろうと⋯⋯愛してしまった♥︎ 愛さずにはいられませんでしたわ⋯⋯♥︎」
「⋯⋯僕もこんなにセラフィーナが好きになるとは思わなかった。終戦が去年の三月だから出会って一年と経ってないのにね。でも、きっと、セラフィーナは僕を誰よりも知ってる」
「それは⋯⋯亡くなられた母君の⋯⋯?」
「うん。ウィルヘルミナはあの惨劇を間近で見て生き残った唯一の人。でも、僕を産んだ母親の記憶を知ってるのは、セラフィーナだけだもん。追体験をしたのはセラフィーナが特別だからかも? ちょっと似てる気がする。僕のママとさ」
母親に甘える初々しい少年の表情だった。祖国を攻め、愛息を処刑し、自身を辱めた男の子。セラフィーナの母性愛は背徳的で歪んでいる。
かつては国母と呼ばれた清廉な女性だった。セラフィーナ自身が人道を外れていると自覚していた。しかし、魔性の少年に魅入られた母親は愛しげに抱きしめてしまう。
「陛下が授けてくださった御子のおかげですわ。過去を視る異能を持っておりました。成長すればきっとメガラニカ帝国のお役に立ちますわ」
セラフィーナが出産したのは昨年の十三月十五日、三つ子の姉妹は生後三ヶ月を迎えた。出生時から体重は倍増し、オモチャを握り締めて遊び始める頃合いである。
この時期になると視力や聴覚が発達し、世話をする両親と他人の区別がつくようになる。
天賦の異能を本人が自覚するのは五~六歳と言われている。セラフィーナとベルゼフリートの娘達が才能を開花させるのはまだ先の話であった。
「羨ましい。異能っていいよね。破壊者ルティヤの転生体ってのも異能の力みたいなもんだけどさ。次元を操るとか、影を操るとか、石化の瞳力とか、そういう特別な力が僕も欲しかったよ」
次元を操るアレキサンダー公爵家。影を使役する防人の一族。強力な瞳力を持つ半蛇娘族。ベルゼフリートの周りには異能力者が多くいる。しかし、異能は後天的には発現せず、生まれなからに与えられるか否か、天与の才能だ。
「陛下も特別な力をお持ちだとは思いますわ」
「まあね。そのおかげで楽しいハーレム生活を堪能できてる。パパとママには感謝しないとね。そういえばセラフィーナは能力がないんだっけ?」
「⋯⋯そのはずです。食べる量は特技みたいなものですわ」
「いっぱい食べるよね。もう一回調べてもらったら? もしかしたら胃袋が異空間に繋がってたりするかもよ?」
(私には特別な力はないはず⋯⋯だけど⋯⋯)
大回廊で流れ込んだ情景。性的絶頂で幻覚を見てしまったと言われたら、その通りだと思った。しかし、誰かの記憶を盗んでしまった気がした。
(誰かの記憶だとして⋯⋯? あれは人間の経験なのかしら?)
セラフィーナの子宮を再現してしまったレヴェチェリナの大きな誤算。
共時性同期でベルゼフリートの精液を盗み、リュートの骨に受肉を行わせた。受肉の妖儀は受胎のメタファーだ。
三つ子を妊娠していたセラフィーナは胎児の異能を利用できた。同様の現象が先程も起きていた。子宮の共時性同期は双方向に作用する。――すなわち、レヴェチェリナの思考がセラフィーナに伝播してしまう。
ベルゼフリートと深く交わったことで開花した特異体質。異能が天から与えられた才能であるのなら、セラフィーナが得てしまった奇異な能力は、破壊者ルティヤからの贈り物だった。
(⋯⋯そういえば、幻視に出てきた奇妙な外套の剣士は言っていましたわ)
――地脈と気脈の異常滞留。原因は帝嶺宮城で間違いない。
(帝嶺宮城。知っていますわ。廃都ヴィシュテル⋯⋯死恐帝の災禍が生じた忌地。棄てられたかつての帝都⋯⋯!)
セラフィーナは意味もなく爆乳を揉んでいるベルゼフリートに訊ねてみる。
「陛下。廃都ヴィシュテルの帝嶺宮城に人間はいるのですか?」
「へ? どうしたの急に? 廃都ヴィシュテルに住んでる人なんかいないよ。死恐帝の災禍でインフラが破壊されちゃってさ。退魔結界もなくなった。わんさか魔物が湧いてるって噂だ」
「⋯⋯人間は近づけないのですか?」
「いつだったか魔狩人が調査したけど、死傷者が出たんだ。それ以来、メガラニカ帝国は調査の許可を出してない。偶に命知らずな盗掘者や冒険者が忍び込んで死んでる。侵入する前に機雷原で吹き飛んでるのが大半なんだってさ」
「それなら、帝嶺宮城に辿り着けるような人間はいないのですね⋯⋯」
「どうだろ? いるにはいるじゃないかな。レオンハルトとヘルガが行こうとしてたよ。でも、戦争が始まって計画は頓挫しちゃった。あと特級冒険者のお爺ちゃんが直談判しにきたことがあったかな」
「特級冒険者のお爺ちゃん?」
「ネクロフェッサー。僕の即位式に参列してくれたんだ。そのときに廃都ヴィシュテルの調査を許可してくれって頼まれた。ダメだったけどね。三皇后が許さなかった。でも、許可なんかなくても、あのお爺ちゃんならやっちゃいそう。ルール破りの常習犯なんだ」
「⋯⋯冒険者が国に逆らうなんて許されないのでは?」
「そうでもないよ。国内に二人しかいない特級だからさ。多少はお目こぼし。ファンも多い。僕は好きだし、西方の沿岸部やドワーフ族が住む山岳地帯だと凄い人気だよ。明日、冒険者組合に行くなら逸話をたくさん聞けると思う。くすくすっ! 大神殿と大喧嘩した武勇伝とかね」
「特級は一級の上だと分かりますけれど、それほど特別扱いされるものなのですか?」
「一級冒険者は凄いよ。ララノア達がそうだよね。でも、特級は努力でなれるもんじゃない。冒険者の最高峰だ。ギルドの鬼札、規格外だから特別なんだよ。生ける伝説さ。厄介で傍迷惑な問題児とも言うけどね」
「帝国に特級冒険者は二人いると言われましたわ。もう一人は?」
「特級冒険者ノエル・ウェイジャー。元々はメガラニカ帝国軍の兵士だったけど、軍の規律生活に馴染めなくて冒険者になった困ったオジさん。一昨年だったかな。失踪届が出てたよ」
「え? 行方不明なのですか?」
「ああ、大丈夫だよ。あの人は定期的に失踪するから誰も心配してない。僕が皇帝に即位してから五回くらい失踪してる。人間関係を定期的にリセットしたいから、ダンジョンの深層に潜っちゃうらしいよ」
「どちらも性格に問題がありそうですが⋯⋯特級冒険者なら廃都ヴィシュテルの帝嶺宮城に辿り着けるでしょうか?」
「いけるんじゃないかな。でも、立ち入り禁止区域だから勝手に入ったら怒られるよ」
「特級冒険者で十字の剣を使いますか?」
「ネクロフェッサーだね。有名だよ。十字星剣のことでしょ。別名は〈星詠の大聖〉。木剣のレプリカを持ってるよ。ん? あれ? セラフィーナってネクロフェッサーと会ったことがあるの?」
「ただ、ちょっと気になってしまって⋯⋯。おかしなことを訊いてしまって申し訳ありませんわ。さあ、休憩はこのへんにして続きをしましょう♥︎ 宮廷画家の筆も止まってしまっていますわ♥︎」
「ヤる気まんまんだね。次はセラフィーナが上になって。好きなように動いていいからさ」
「ふふっ♥︎ 承知いたしましたわ♥︎」
セラフィーナは体位を変える。ベルゼフリートを押し倒し、騎乗位の姿勢で跨がった。両脚を蛙のように折り曲げ、巨尻を揺らしながら杭打ちを始める。
パァンッ! パァンッ! パンッ!!
温室御苑で肉音が反響する。木組みのベッドが軋む。蒸れた吐息を吐き、ビショ濡れの長髪から汗の飛沫が散る。爆乳の荒れ狂いを意に介さず、欲するがままに悦楽を喰らう。
「あうっ⋯⋯! セラフィーナっ⋯⋯! もっとゆっくりじゃないと僕⋯⋯! はうっ⋯⋯!!」
「何を仰いますの? 陛下ったら♥︎ ふふっ♥︎ まだまだ陛下のオチンポは元気ですわ。オマンコでビクビク震えてるっ♥︎ 我慢できず、出していますわね♥︎ 衰え知らずの射精っ♥︎ すごいですわぁ! もっとぉ! もっとぉお! 欲しいですわ!!」
搾精したベルゼフリートの精液がレヴェチェリナに掠め取られていると知らずに、セラフィーナの子宮は胤を吸い上げる。
「んっ、くっ⋯⋯! 止めどなく精液が溢れてくる。すごいや。セラフィーナの淫乱オマンコは最高の使い心地! セックスの相性が抜群で怖くなっちゃう。毎晩、呼んじゃおうかな。僕を楽しませてくれるよね?」
「ええ、もちろん♥︎ 陛下を退屈なんかさせませんわ♥︎」
【今話のまとめ】
ヘルガ王妃「廃都ヴィシュテルがきな臭い」
レオンハルト元帥「軍を派兵しなきゃダメか。人員がなぁ⋯⋯。手が空いてれば姉か妹を行かせるのに」
ヘルガ王妃「宰相の考えは分からんけど、陛下の護衛は厚くしとこうよ」
レオンハルト元帥「うん。うん。陛下の安全が最優先(`・ω・´)」
◇ ◇ ◇
特級冒険者ネクロフェッサー「廃都にヤバい魔物が大集合してる気がする。帝国の役人がゴチャゴチャ言ってるが無視して外国で言い触らすぞい! 人類の脅威なのだ!」
侯爵家の騎士団長「やめろ馬鹿! 殺すぞ!! 国防上の機密情報を言い触らすな!」
特級冒険者ネクロフェッサー「お前さん程度じゃ一回くらいしか殺せんよ。殺したければ殺せば? はい、死にました。気は済みましたか~(笑)」
侯爵家の騎士団長「クソ爺がぁ!! ヘルガ様! こいつを一千回くらい殺してくれえぇ!!」
特級冒険者ネクロフェッサー「ちなみに宰相とは話が付いてるんでね(^o^) あと皇帝の坊ちゃんとも親しいよ? えーとヘルガ様ってだ~れ? 侯爵? 王妃? 宮廷魔術師? そんな弱々しい後ろ盾じゃ話にならんぞい。どうする? それでもやっちゃうの? こっちには宰相と皇帝がいるんだけど(笑)」
侯爵家の騎士団長「うぜー爺だ!! 宰相閣下はなんでこんなクソ冒険者が捏造した依頼書に署名してるんだよ!?」
特級冒険者ネクロフェッサー「超有能だから☆(ゝω・)vキャピ」
ウィルヘルミナ宰相「(ネクロフェッサーがマッピングした廃都の地図。現在の帝都と重なる部分があるような⋯⋯? しかも、破壊されたはずの石橋や城壁が修繕されているのでは⋯⋯? 軍務省と大神殿に確認を取って⋯⋯)」
◇ ◇ ◇
セラフィーナ「特級冒険者について教えてください♥︎ あんっ♥︎ あんっ♥︎」
ベルゼフリート「問題児のお爺ちゃん、失踪癖のある困ったオッサン。どっちも腕は確かだけどねー。お爺ちゃんのほうが十字星剣を振り回してるー。レプリカの木剣を誕生日にもらったんだー。即位式でもらった本物の真剣は没収されちゃったからね」
セラフィーナ「(まさか私がさっき見たのは特級冒険者⋯⋯?)」
ベルゼフリート「冒険者組合で武勇伝を聞いてみればー? あ、それはそれとして、夜もよろしくね。なんかセラフィーナを抱いてると絶好調!」
廃都の魔女レヴェチェリナ「熱盛! 精子ゲット! 儀式の準備が整ってきた! もっとセラフィーナとヤりまくれっ!!」
◇ ◇ ◇
【後日談】
宮廷画家「皇帝陛下のご所望通り、エロ絵画を仕上げました! どうぞ、ご覧くださいっ!!」
ベルゼフリート「えっろ⋯⋯! すごくエッチだ! でもさ、なんか僕のお尻が大部分を占めてない? しかも、描き込みがやけに細かいような⋯⋯?」
宮廷画家「はい! 可愛いお尻です(ジュルリ♥︎)」
ベルゼフリート「⋯⋯透明人間みたいしちゃっていいよ。僕の表情もいらないかな。眉毛と口と汗だけでよくない? もっとセラフィーナをメインにしよう」
宮廷画家「な!? なぜですか!?」
ハスキー「えぇ!? 何を言ってるんですか!? 陛下。これのほうがいいです。綺麗で可愛いお尻! キュートな少年のヒップ!! 垂涎物ですよ!? 手直しをするなんてとんでもない!」
レギンフォード「警務女官長の言うとおりです。素晴らしい作品ではありませんか? 見苦しいセラフィーナさんの陰毛が隠せていますし、美事な技法です。さすがは宮廷画家! 素晴らしい!!」
宮廷画家「警務女官や軍閥派の側女はこう仰っています。陛下はご自身のスケベなお尻に自信を持つべきです!」
ベルゼフリート「あ⋯⋯うん。(これだとセラフィーナよりも僕のお尻が目立ってるじゃん。竿役は目立たないのが最適解だと思うけど⋯⋯ここだと多勢に無勢か。女仙がオカズにするのって僕のほうだもんなぁ。失敗した)」
セラフィーナ「陰毛が見苦しい⋯⋯ 帝国の女性は永久脱毛してるから私もしたほうがいいのかしら⋯⋯どうしましょう⋯⋯。痛いのは嫌ですけど、陛下のためなら⋯⋯」
ベルゼフリート「セラフィーナは似合ってるから生やしたままでいいよ」