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【268話】三皇后の密談、厄種の萌芽〈後編〉

「国境の防備は固めておくべきじゃな。儂は戦争反対しておる。だが、西アルテナ王国の北部が脅威に晒されるなら、自衛は当然の行為じゃ。それに先ほど名前が出たフォレスター辺境伯は⋯⋯ロレンシアの父親じゃろ?」

 アルテナ王家に仕えてきた忠実なる家臣。フォレスター辺境伯の令嬢であった女騎士ロレンシアは、女王セラフィーナと共に入内し、巨大なボテ腹をいだく側女となっていた。

 父親は愛娘の身に起きた顛末を耳にしている。昨年末の故国凱旋で、超乳巨胎の淫体を貴族達に披露した。国母と慕われた女王セラフィーナの公開出産、さらには国士の女騎士ロレンシアの劇的な変貌。淫らな噂はアルテナ王国の全土に広がった。

 フォレスター辺境伯は病を理由に領地から出てこず、王都への呼び出しにも応じなかった。反帝国よりな立場は明らかだった。

「ロレンシアが入内してから関係は断絶しているそうです。フォレスター辺境伯はメガラニカ帝国と距離を取っていました。かといって、バルカサロ王国や中央諸国とも接近していない。中立状態ですね」

 メガラニカ帝国やバルカサロ王国の干渉を防ぐため、フォレスター辺境伯は所領に引きこもり、苦肉の策を弄していた。

「軍務省ではフォレスター辺境伯の領土を中立国にする案が出ている。先の戦争で主戦場にはならなかったが、三国と隣接する土地だ。ここを中立地にすれば戦争が回避できる。妙案だと思わぬか?」

 レオンハルトの提案にウィルヘルミナは眉をひそめた。

「中立国? 東西分割に飽き足らず、北部まで独立させるおつもりで?」

「フォレスター辺境伯の領地は北部における一部地域だ」

「ケーキのように分け合うと? まるで分離主義者の国家解体です。西アルテナ王国の民衆でさえ認めないでしょう。戦争回避の妙案? 笑える冗談ですね」

「冗談を言っていないぞ。アルテナ王家に仕えてきたフォレスター辺境伯は自治領主のようなものだ。歴史があり、一族は尊敬を集めている」

「今でこそ真紅の忠臣と褒め讃えられているフォレスター辺境伯家。その先祖は裏切り者の腰巾着です。メガラニカ帝国の連邦制が崩壊した際、背信者の子孫に協力した見返りでもらったご褒美。我が国から不当に奪われた土地です」

「大昔の歴史は今さらどうでもいい」

「帝国貴族の主流派はそう思っておりません。評議会と国民議会、民衆もです。ご自身の派閥が少数派であることをお忘れなく」

「当時のメガラニカ帝国は分離を認めた。大陸を統べた連邦制は崩壊したのだ。そうしなければ国体の維持が不可能だったからな。国際政治には融和や妥協が必要だ。教会やルテオン聖教国は譲歩を見せている。我らもそうすればいい。永世中立のフォレスター公国を樹立させる。国主はロレンシアが産んだ御子を使う。担保としては十分だろう」

「勇猛果敢なレオンハルト元帥らしくもない。それはヘルガ・ケーデンバウアーの入れ知恵ですか? 弱腰な譲歩は敵勢力を増長させます」

「弱腰ではない。融和だ」

「そうですか。その説明だけでは議会の賛成は得られません」

「無用で、無益な争いを避けるためだ。皇帝崇拝と教会の教えは相性が悪い。直接統治よりは間接統治。帝国に馴染めぬ者達へ逃げ場所を作る。そういう配慮が求められているのだ。貴公とて分からぬわけではあるまい。⋯⋯評議会は我らで動かせる。国民議会は帝国宰相なら説き伏せられるだろう?」

「簡単に言ってくれます。帝都襲撃で国民議会の議事堂が破壊される前だったら、強権を振るえたかもしれません。魔物の襲撃を許し、ベルゼフリート陛下の御命が危うくなった。私達の責任を問う声は、国民議会で少なからず上がっています」

「耳が痛いな。後れを取ったのは事実。そこは反論が難しい⋯⋯。国防委員会に報告書を提出したのは失策だったな」

「ですが、隠蔽はありえない。緊急事態宣言を発令したのですから、解除後に国防委員会へ報告するのは避けられません。これは憲法規定です。全てを開示したわけではありませんが、大妖女レヴェチェリナを名乗った魔物が何を目的としていたかは共有するべきでした」

「国民議会はタカ派が主流だ。強硬な思想を煮詰めた奴らが国防委員会の構成議員となっている。バルカサロ王国を滅ぼせと要求されたらどうする?」

「議員は『侵略しろ』とは言っておりません。メガラニカ帝国の安全を帝国軍に確約してほしいのです。劣勢のバルカサロ王国は卑劣な手段を使ってくるかもしれない。皇帝陛下の御身が脅かされます。この意味はお分かりになるはず」

「⋯⋯⋯⋯」

 戦力差は著しい。蘇ったメガラニカ帝国は強大な国家だ。けれども、一撃で息の根を止める方法がある。ベルゼフリートが絶命した瞬間、メガラニカ帝国の命運は尽きる。

 唯一無二の勝機は皇帝暗殺。ベルゼフリートの死は巨大な災禍を引き起こし、大陸全土の人々を道連れにしかねない。戦争に勝利したとしても、最悪の結末となる。ルテオン聖教国の教皇庁は危険性を把握し、マリエールを後宮に送り込んだ。けれど、バルカサロ王国の愛国義勇軍にそのような思慮深さは期待できない。

「いざなとなれば帝国軍は戦う。私が戦場に赴く。皇帝陛下の安全は確約する。しかし、戦争は最後の手段だ。そこは譲れない」

「よろしい。承知しました。私も最善を尽くします」

「本当だろうな?」

「宰相派の妃達には過激な動きを控えさせます。国民議会の国防委員会にも働きかけましょう。ですから、フォレスター辺境伯領を中立国とする妥協案は議会に出さないでください」

「⋯⋯⋯⋯」

「厄種に上質な肥料を与えるような行為です。そこは私も譲れない」

「分かった。国境の防衛力強化、西アルテナ王国の軍備再編。そこまでに留める。ひとまずは様子見だ⋯⋯。バルカサロ王国の内乱がどう転ぶかだな」

 大混乱の渦中にありながらも、バルカサロ王国の反帝国感情は高まり続けていた。窮乏した民衆に担ぎ上げられた指導者は、滅びの道を突き進むかもしれない。その危険性をレオンハルトは懸念している。

「愛国義勇軍がバルカサロ王国の内乱を鎮圧したら国王は誰になるのじゃ? 敗色濃厚の第二王子と第三王子は無理じゃろ? 処刑まではせぬだろうが、修道院に幽閉か、僻地に流刑といったところか? 荒れ果てた国を誰がまとめる?」

「第四王子だったロアフォードは帰国を拒否しています。そもそも廃嫡済みで、軍師団のしつこい説得に応じなかった賢い男です。死地には帰らないでしょう。後継者に指名されていた第六王子のアーロンは、グウィストン川で消息不明。おそらく死亡しています。早く死体を見つけたいところです⋯⋯。消去法で残る王子はガイゼフだけですね」

 かつてアルテナ王国の王婿であり、セラフィーナの夫であった男ガイゼフ。その名が再び三頭会議で挙がった。

「奇縁よのう。セラフィーナの前夫か。ガイゼフが再び表舞台に出てくるとは⋯⋯」

 カティアは憐憫の情を込めて言った。

「待て、待て。ガイゼフは精神を病んで長期療養中だぞ。娘のヴィクトリカ女王からも距離を置かれている。参謀本部が掴んだ確かな情報だ。バルカサロ王国の新王にガイゼフを担ぐ? ありえないな。病人には無理だ。遠縁の傍流となるが、バルカサロ王国には王位継承権を持つ貴族が大勢いる」

「血筋が遠ければ求心力に欠けます」

「だからといって病人は使わない」

「ガイゼフが負った心の傷は深いようですね。先の戦争でレオンハルト元帥が追いかけ回したせいでしょうか?」

「私だけのせいじゃない。ベルゼフリート陛下にセラフィーナを寝取られたからだ」

「原因が元妻の姦通ならば、やはりレオンハルト元帥が元凶です。セラフィーナを孕ませたのも、王子であったリュートを処刑したのも、軍務省の手引きだったのですから」

「やめろ。蒸し返すな。そもそもあれは⋯⋯参謀本部の⋯⋯ユイファンの発案だ。仕方なくだぞ? それに⋯⋯おかげでアルテナ王国と早期講和が実現した⋯⋯」

「はい、はい。その通りですね」

「その顔をやめろ」

「生まれつきの美貌です。嫉妬されても困ります」

「そういう意味ではない⋯⋯」

 美しき淫魔は精液入りの紅茶を飲み干した。ティーカップの口縁フチに付着した精液を舌先で舐め取る。

「アルテナ王国とバルカサロ王国では事情が違います。どの王子を担ぎ上げるとしても、弑逆されたチャドラックの子供に価値はありません。王妃イシュチェルの胎だけが重要⋯⋯。第六王子アーロン以外はです」

 帝国宰相ウィルヘルミナは明言した。帝国元帥レオンハルトと神官長カティアの両名は異議を唱えない。この場にいる者達は誰一人として驚きもしなかった。

 バルカサロ王家の王統は密かに奪われている。

 当初は薄っすらとした疑義だった。この数週間で調査が進み、三皇后はバルカサロ王家の真相を確信した。弑逆された国王チャドラックの出自には偽りがある。

「今ごろ、軍師団も調べているはずです。内乱の発端となった国王チャドラックの後継者指名が何を意図していたのか。その調査に取り掛かれば、すぐさま気付くでしょう。ひょっとしたら第四王子ロアフォードと接触した際に聞かされたかもしれない」

「いっそ、情報を流してやってもいいがな。アルテナ王国の商人を使えば流せるぞ」

「やるならグウィストン川で死体を見つけてからです。イシュチェルが産んだ唯一の王子アーロンが生きていると困ります。川さらいの成果は見込めそうですか? 帝国元帥」

「グウィストン川でアーロンの死体は見つかっていない」

「釣果は無しですか。残念」

「講和条約の関係で大規模な部隊展開が難しい。だが、やれるだけはやっている。下流域に捜索隊を派遣した。万が一にでも生きていたら不味いからな⋯⋯」

「東アルテナ王国に保護された可能性は?」

「東岸に流れ着いたのは死体だけだ。生存者は一人も確認されていない」

「イシュチェルから聞き出した話によれば、グウィストン川で船が沈没したとき、アーロン王子は乳母に抱えられていたそうです。東アルテナ王国での亡骸が見つかったという噂がありますね」

「参謀本部は真偽不明と分析している。あのユイファンも慎重姿勢だ。鵜呑みにはしたくない」

「ユイファン少将の気持ちは分かります。アルテナ王国の商人を介して伝わってきた噂です。商人達は利益があるからメガラニカ帝国と付き合っているだけです。本当の忠誠心は東アルテナ王国に向いているかもしれない。情報を仕込まれた可能性が拭えません。噂よりも物証が欲しい」

「墓を暴いてみるか。死体を調べれば真偽が分かる」

「⋯⋯可能なのですか? 東アルテナ王国での墓荒らしです。露見したら外交問題になりますよ」

「無論、帝国軍は動かせない。だが、バルカサロ王国から流れてきた難民にやらせることは可能だ。金で釣って、墓から死骸を持ち帰る。我が国と違って火葬はしていないはずだ。骨は残っているだろう」

 レオンハルトは薄汚い策謀を嫌う武人気質だ。けれど、弱肉強食の摂理は否定していない。敵国の王家に対する温情はなく、必要とあれば非情な決定を下す。

 将来の憂いを絶つため、敗者は徹底的に一掃する。たとえイシュチェルがアーロンの助命を嘆願しても、レオンハルトは帝国元帥の立場上、絶対に受け入れない。アーロンを生かすことで殺す以上の利益、あるいは殺害で生じる損益の証明。どちらかが求められる。

 教会圏において王侯貴族は手厚く保護される。特に王族の殺害は非難を浴びる蛮行だ。しかし、メガラニカ帝国で保護されるべき人間は皇帝だけであった。

「元帥の提案は魅力です。しかし、墓荒らしはやめましょう。神官長が反対なさるご様子」

「儂は聖職者じゃからな。死者を弄ぶのは好ましくない。立場上、賛同できん。宰相と元帥は綺麗ごとが嫌いかもしれぬだろうな」

「構いませんよ。ルテオン聖教国が融和姿勢を示している今は時期が悪い。焦りは禁物です。幸いにも私達はイシュチェルの身柄を確保できました。教会が施した聖印を最大限利用させてもらいます。真の王統をつむぐために⋯⋯。あの女は本当に良い拾いものでした」

 ウィルヘルミナは冷酷に微笑む。ベルゼフリートに与えた新しい玩具。しばらくの間、バルカサロ王国の未亡人で遊び続けるだろう。

「教会の修道院が守っていた王族の血統者か⋯⋯。まさに思わぬ拾い物だったな。どれだけの人間が裏事情を把握していたのやら。それにしても、イシュチェル本人でさえ、己の血統に無自覚なのは考え物だ」

 子宮に刻まれた聖印を分析した結果、メガラニカ帝国は血統の秘密に辿り着いた。イシュチェルの聖印はバルカサロ王家の血統証明書だった。

「イシュチェルが孕んだ後、レオンハルト元帥が教えてさしあげたらどうです? 貴方こそが本物のバルカサロ王家だと」

「私が恨まれるだろ」

「子宮の聖印はバルカサロ王家を繁栄させる祝福。母胎が王家の女ですから、父親が誰であっても産まれてくるのは王統の赤子。不妊の加護なんて最初から存在しない。聖印の効果を全て分析できたわけではありませんが、妊娠する公算は大きくなりました」

「ご高説どうも。貴公がイシュチェルの前で話してやればいい。私は根が善良だ。性悪になれない」

「くふっふふふふ」

「なにが可笑しい?」

「いや、失礼いたしました。ただ、その⋯⋯。国母と慕われていたセラフィーナ女王を孕ませる淫謀を企てた御方がよく言いますね。あれは軍務省の計画でした。つまり元帥のご意向だった」

「⋯⋯くどいぞ。戦争を一日でも早く終結に導くためだ。実際、アルテナ王国の女王セラフィーナを孕ませたのはだったろう」

「ええ。バルカサロ王国の王妃イシュチェルもになってほしいものです」

「本当に嫌味な女だ」

「嫌味ついでに、この場で懸念事項を共有しましょう。今年で三十九歳、ヒュマ族の妊娠適齢期を過ぎています。精子が届くでしょうか? こればかりは運任せですね」

「そこに年長者がいる。ご意見を賜ったらどうだ?」

「儂は長命種のハイエルフじゃぞ。三十九歳なぞ、はっ⋯⋯。小娘じゃのう。しかし、短命種の三九歳か⋯⋯。儂の記憶によれば、ヒュマ族の女仙ではイシュチェルが最年長やもしれぬ」

「イシュチェルが妊娠すれば記録更新なのですね。きっと成し遂げてくれます。ベルゼフリート陛下にご褒美を用意しておかないと⋯⋯♥︎」

 ヒュマ族の熟女ではセラフィーナが例に挙げられる。だが、セラフィーナの入内は三十六歳。しかも、先祖にサキュバス族がいるため、美貌の老化が常人より遅かった。それに比べて、イシュチェルは純血のヒュマ族だ。バルカサロ王家の落胤であり、教会の修道院が守り抜いた王統の血を引く女。その事実を知っていた者は教皇庁でもごく僅かだった。

 バルカサロ王国の根底を揺るがす秘密。イシュチェルが真の王族ならば、国王チャドラックと前王妃エルシェベナが築いた王朝は正当性を失う。

 真相を知った偽王チャドラックは血統を正すために決断した。簒奪劇の筋書きを書いた前王妃エルシェベナを謀殺。教会に助言を求め、密かに保護されていた修道女イシュチェルを娶った。

 王統の血筋を取り戻すための再婚だった。世継ぎを産ませるため、老王チャドラックに代わって第一王子ドラホミールの精子で人工授精が行われた。イシュチェルが出産した第六王子アーロンは、遺伝上の父親が第一王子ドラミホール。容姿が瓜二つなのは親子だから当然だ。

 長兄が摂政となり、幼年の末弟が後継者となる。国王チャドラックが宣言してしまった滅茶苦茶な後継者指名。しかし、内実を事細かに知ったうえで聞けば納得できる決定だ。国王チャドラックの真意は、偽りの王統を正す荒療治にあった。

 ところが、第二王子ジルベールと第三王子ザトリシオは血筋の秘密を知らされていない。

 たとえ真相を明かされても拒絶したであろう。プライドの高さは本物の王族以上だ。今さら王族から降りるわけにはいかないのだ。

 その一方、第四王子ロアフォードは王位簒奪の真相にいち早く勘付いた。父親による母親の殺害。その現場を目撃し、なぜ殺さねばならなかったのかを探り続けた。その結果、過去に起きた王位簒奪の簒奪劇を知った。

 バルカサロ王家の乗っ取りを首謀した人物こそ、前王妃エルシェベナの一族であった。鮮血革命で粛清の嵐が吹き荒れた時期、幼少のチャドラックが排除され、偽物とすり替えられた。王族だと思い込まされた偽物の少年は、自分が王族のチャドラックと信じていた。粛清を生き延び、国王に即位した後も、数多くの王族をまとめ上げる国主なのだと疑わなかった。

 ――チャドラックは賢王を演じたが故に気付いてしまった。

 血筋は偽物であろうと、王統に抱く誇りは本物だった。偽王は王位簒奪が許せなかった。だから、もっとも血の濃い王族を探した。分家では簒奪の汚れを完全に洗い流せない。

 教会の修道院で保護されていたイシュチェルは、主要な王族が抹殺された鮮血革命で唯一生き延びた本家の末裔であった。王妃ではなく、バルカサロ王国の女王となるべき高貴な血筋の女だった。

 ベルゼフリートは知らぬ間に隣国の女王二人を我が物としていた。人妻のセラフィーナと未亡人のイシュチェル。共通点は爆乳巨尻の美女であり、子持ちの母親であることだ。

 アルテナ王家の子宮は陥落済み。母親から女に戻り、そして再び母親となる。美しい白肌を小麦色に焼き上げ、二度目の懐妊を遂げた。売国女王の子宮は皇胤で新王朝を産む。かたや、バルカサロ王家の子宮は聖印が活性化状態を迎えた。巨根の味を覚えたオマンコでは、淫猥な肉欲が沸き起こり続ける。聖印の祝福効果を不妊化と誤認しているが、実際は妊孕性の多重強化だ。

 幼帝の活力漲る精子で、四十路の直前に差し掛かった完熟子宮は溺れつつあった。

(イシュチェルは王家の血統者。そうなると、不可解なのはバルカサロ王国に〈浄化の雨〉が届かなかったことです。ベルゼフリート陛下の恩寵を土地が拒絶している⋯⋯。なぜ? その原因を突き止めておきたい。豊穣を齎す雨雲が国境で阻まれたのは異常事態です⋯⋯)

 ウィルヘルミナは不穏な気配を感じていた。

 バルカサロ王国が勝手に自滅するだけならば、メガラニカ帝国の国益に適う。だが、死に際に不幸を撒き散らされては困るのだ。

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