「あーそれか⋯⋯。部屋は帝城ペンタグラムへの入城特権とセットだから、僕の一存じゃ無理なんだよね。ヴァネッサ、 一番ランクの低い部屋なら大丈夫?」
「疎まれる妃は多いでしょう。帝城ペンタグラムに入城権を持つ方は、ごく一部に限られております」
「宮廷の慣例的には難しい?」
「簡単とは言えません」
「王妃にさえ与えていない権利を愛妾にあげるのは不味いよねえ⋯⋯」
「身分を言うのなら、愛妾のユイファン少将や側女のネルティさんがいます。前例はございます。陛下の望みを叶えるのが女官総長である私の役目です。セラフィーナさんのお部屋をご用意いたしましょう」
「ありがと。そういえばユイファンとネルティにも部屋をあげてたね。あの二人は使うどころか、帝城に近づかないけどさ⋯⋯」
「あのお二人は、我ら女官がお嫌いのようです」
寵姫と名指しされるユイファンとネルティは、女官と険悪な関係だった。女官の本拠地である帝城には、けして近寄ろうとしない。
「とても残念に思っています。ユイファン少将はともかく、ネルティさんは言葉遣いを改めていただければ大歓迎なのですが⋯⋯」
「敬語を使うネルティなんて薄気味悪いよ。公式の場では気を遣ってくれるけど、すっごく片言だもん。ん⋯⋯? あ⋯⋯!」
ベルゼフリートはユリアナの視線に気付く。女官総長と警務女官長がいるため、劣位のユリアナは下がった位置に立っていた。
皇帝に視線を向け続けるのは非礼だ。本来なら叱責される不躾である。しかし、ユリアナは特殊な女官であるため、注意はされなかった。
「そんな怖い顔で睨まないでよ。カティアと会うときは立ち会わせるからさ。それで満足して。約束は忘れてないよ」
「⋯⋯⋯⋯」
ベルゼフリートは接吻しようと近づく。ユリアナは華麗なステップで身を躱し、首を横に振った。無表情な顔を崩し、頬を膨らませている。ほのかに顔を赤らめていた。
「避けないでよ。キスくらいさせてー」
「陛下。彼女は真面目な女官です。どのような秘密をやりとりしているかは存じませんが、職務中は揶揄わないであげてください」
「面白いのに。だって、ヴァネッサやハスキーは悪戯しても平気じゃん。スカートを捲っても平然としてるし、女官ってそういうものなんじゃないの?」
悪戯好きな幼帝は、女官総長のロングスカートと警務女官長のミニスカートを左右の手で掴み、上に引っ張り上げた。
「ヴァネッサの下着は赤。それでハスキーは⋯⋯何でノーパン!?」
下着の色をチェックしようとしたはずが、ハスキーの膣部が丸出しだった。
「ノーパンじゃありません。ちゃんとよく見てください。サキュバス族の間で流行中のオープンショーツです」
「⋯⋯隠すべきところが隠れてない」
「オマンコとアナルを布地で覆わないタイプのセクシーランジェリーです」
「それもう下着じゃないよね?」
「夏場でも蒸れないので楽です」
「下尻が見えてるミニスカなのに? それでも蒸れるんだ」
「スカートは熱気がこもるのです。風をあてないと体温で蒸れてしまいます」
宮中で働く女官の中で、もっとも露出の多い煽情的なメイド服を愛用しているのが警務女官長ハスキーだ。
対照的に女官総長ヴァネッサは、伝統的なロングスカートのメイド装束で、常日頃から服装を整えている。
「帝国の夏は暑すぎますからね。高温多湿で参ってしまいます。特に胸の谷間が汗ばみます。風通しの良い服装でなければ、身体がベタついて辛いのです」
その点には爆乳のセラフィーナも強く賛同する。ハスキーのように警備で身体を激しく動かしたりはしないが、日常生活で乳間の汗ばみに悩まされてきた。
「風紀をとやかく言う気はないし、フルチンの僕が言える台詞じゃないけど、ほぼノーパンみたいなもんだよ。ミニスカだとオマンコが見えちゃうよ?」
「ご安心ください。このセクシーランジェリーは宮廷にいるときだけ穿いています。ここは天空城アースガルズですよ? 陛下以外は女しかいない聖域。どんな格好をしようと構わないでしょう?」
いくつかの規則はあるが、宮廷での服装は自由だ。全裸で出歩くのは禁じているが、際どい格好の妃は何人かいた。
(陛下のオチンポが勃起しているわ。私もあのセクシーランジェリーを買おうかしら?)
セラフィーナは艶やかなファッションを楽しんでいた。アルテナ王国で女王として暮らしていたときとは違う。衣装を自由に選べるのだ。
上乳を晒す大胆な破廉恥なドレスだろうと気兼ねせず、気に入ったものから袖を通した。後宮の女達は皇帝を愉しませるため、着飾りに力を抜かない。
(皇帝の心を掴むのなら、普段の衣装にも気を払わないとダメそうですわ。もっと誘惑できるように⋯⋯。私の身体をもっと魅力的に着飾らないといけないわ)
皇帝と女官の立ち話を聞いていたセラフィーナは、生まれて初めて男を魅力するファッションを意識した。宮廷には皇帝の寵愛を欲する美女が数多くいる。宮廷の頂点に立つには、女の魅力を磨き続けなければいけない。
セラフィーナがそんな懸想を思い巡らせているとは知らず、ハスキーとベルゼフリートの雑談は続く。
「下界ではガーターベルトの下にスパッツを履いていました」
ハスキーは肩を竦める。上官のヴァネッサがいる手前、言い訳の意味合いもあった。
「ほんとぉ? 昨日もオマンコ丸出しの下着だったりして」
戦勝式典でハスキーがどんな下着を履いていたのか。事実は確かめようがない。
「本当です。公開セックスは大好きですが、自分の恥部を晒す露出趣味は持ち合わせていません。娼婦街で客引きしている変態サキュバスではありません」
「え!? ほんと? 娼婦街ってそんなサキュバスいるの?」
「私が現役の剣闘士だったころは、裏路地にいました。尻尾の先端でオマンコを隠しているんです。宰相閣下が禁止令を出すまでは、種族特権でサキュバスだけは裸で公道を歩けたのです。自由で良い時代でした」
「ごほんっ! 陛下、そろそろ行きますよ。遊んでいたら三皇后をお訪ねする時間がなくなってしまいます。さあ、湯殿に参りましょう」
「はいはーい。ヴァネッサが洗ってくれる? いつもマッサージをしてくれるよね?」
「はい。陛下の大好きな包み込み全身マッサージをしてさしあげます」
「やったぁ! よろしくー」
全身を粘体に変えられる奉仕種族ショゴスは、主人を癒やす方法を数多く会得している。ヒーリングを織り交ぜたマッサージは、疲れ切った肉体を全快状態に回復させる。
「ただ⋯⋯その後ですが、私は業務があるので陛下に随伴できません。ハスキーを御側に置きます」
「りょーかい。ハスキー。ウィルヘルミナを怒らせないでね」
「承知いたしました。気難しい宰相閣下のご機嫌を損ねないように努めます」
普段と変わらない。女官総長が皇帝の御付きとなるのは稀だ。
アルテナ王国への訪問や、先日の戦勝式典でもヴァネッサは天空城アースガルズに残っている。身辺警護の指揮をとるのは、警務女官長もしくは副官の仕事だ。
「セラフィーナさんは一度、黄葉離宮にお戻りください。帝城ペンタグラムのお部屋をご用意しますが、本日はお帰り願います」
「分かりましたわ」
「手伝いの女官を後ほど呼びます。着替えと湯浴みは、その者達に手伝わせます。こちらで、しばらくお待ちください」
◇ ◇ ◇
寝室に残されたセラフィーナは、妃達が女官を嫌う理由が理解できた。
宮廷の女官達はお世話の名目で、親しげに皇帝と談笑し、長い時間を共に過ごす。皇帝の住居である帝城ペンタグラムにしても、実質は女官の根城だ。
「はぁ。盛り上がりそうだったのに⋯⋯。残念ですわ」
ヴァネッサが現れたりしなければ、ベルゼフリートは再びセラフィーナのオマンコに精子を注いでくれた。
(多くを望みすぎてはいけない。焦る必要はありませんわ。計画通りに進んでいるのだから)
半分まで挿入され、盛り上がる直前に乱入された。黄金色の恥毛には、我慢汁の雫が付着している。
(ロレンシアは地上に降りたわ。娘のヴィクトリカが帝都に潜入していたのは予想外だったけれど、きっと力になってくれる。ふっふふふ⋯⋯♥︎)
大きく膨らんだ腹を撫でる。胎内で育つ胎児達はセラフィーナが利用できる最大の切り札だ。
(本当に子供は良いわ。これから産まれるお胎の子ども達は、きっと大きな助けとなってくれるわ♥︎)
皇帝の赤子を宿している限り、妃と女官はセラフィーナに危害を加えられない。
(ガイゼフには申し訳ないけれど、祖国の自主独立を維持するためよ。メガラニカ帝国の宮廷で、私は権力を握らないといけないわ。皇帝の子を産み、寵愛を得て、実権を握る。皇后を動かす力を手にしてみせますわ!)
セラフィーナはベッドシーツに顔を埋めて、ベルゼフリートの匂いを嗅いだ。
若すぎる雄の性臭。自身の年齢を半分にしても、幼い皇帝の年齢を上回る。若々しい少年に種付けされ、女王の熟した女体は歓喜の声を上げているのだ。
(そうですわ。目的は変わっていませんわ。より現実的な手段を選んでいるだけ。今の私なら性技で皇帝を籠絡できるわ。不可能じゃない。くふっふふふふふ⋯⋯♥︎)
興奮状態の淫穴から、愛液が滴り落ちる。膣内に注がれた精子が混じり、白濁した雌雄の体液。新たな生命を宿し、膨大した子宮は、セラフィーナの精神を淫母に変貌させた。
元々大きかった爆乳をさらに肥大化させ、尻肉の重みも増している。
悪女と成り果て、幼帝の精神支配を目論んでいるのか。それとも愛妾としてほだされたのか。今の堕落したセラフィーナは、どちらとも捉えられる。だが、明確な事実はある。
皇帝ベルゼフリートとのセックスで、女王セラフィーナは真の意味で「男」を知った。悪女であれ、愛妾であれ、今のセラフィーナは「女」に目覚めた。
祖国アルテナへの愛国心。自身を女王と敬愛する民衆への想い。夫ガイゼフやヴィクトリカへの家族愛。帝国に殺された愛息子リュートの仇討ち。
それらの愛情はセラフィーナの人生そのものだ。何があろうと、どんな事情があっても、けして裏切れない感情だった。
忌まわしい愛欲に溺れ、ベルゼフリートの子を産み、ガイゼフに拒絶されようと、奥底にある心根は変わらない。
セラフィーナは己の心を信じている。しかし、絶対に揺らがないはずの愛は、セラフィーナ自身が知らぬうちに上書きされつつあった。
(あんっ⋯⋯♥︎ んあっ♥︎ んふうぅ⋯⋯♥︎ 匂いを嗅いでいるだけなのにオマンコがアクメしちゃいましたわぁ⋯⋯♥︎ 陛下ぁっ♥︎)
疑う余地はない。セラフィーナは新しい恋心を抱え込んでいた。本心で異性と見ているのはベルゼフリートのみ。愛する男とセックスを妄想するだけで、幸福を感じてしまう。
「あんっ♥︎ んぁ♥︎ あんぅうっ~~♥︎ 皇帝陛下っ♥︎ はやくセックスしたいですわぁ♥︎」
女王の過去を完全否定し、妻としての、母親としての、あらゆる人々の信頼を裏切る危険な感情。危険極まる漆黒の愛情は、日に日に大きくなっていく。
芽生えた邪な恋心は、セラフィーナの清らかな魂を背徳的な穢れで染め上げた。