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【12話】息子の亡骸を啄む者達

 セラフィーナは鬱々うつうつとした気分で、リンジーの言葉を反芻はんすうしていた。

 去り際にリンジーは「二人きりで会う機会はもう訪れないでしょう」と言った。今後、リンジーから助言を求めるのは難しい。セラフィーナは1人で考えなければいけなくなった。

 リンジーとの入れ替わりで、セラフィーナの書斎を訪れる者がいた。その男はメガラニカ帝国の外交官と名乗った。

「——単刀直入に申し上げます。ガイゼフ王との婚姻関係を維持し、皇帝陛下の求婚を拒絶してもらいたい」

 セラフィーナは男の顔に見覚えがあった。

 メガラニカ帝国との戦争を回避しようと交渉に臨んだ際、帝国側の参事官だった男だった。

「レオンハルト・アレキサンダー元帥とは真逆の言葉ですわ。軍務省の息がかかった人間ではないのですね」

「私は宰相府所属の外交官です。元帥閣下は優れた武人ではあります。しかし、内政においてはド素人です。戦後統治は宰相府より派遣される高等弁務官が主導します。理解できますか? セラフィーナ女王が留守の間、我ら行政官がアルテナ王国をお預かりするのです」

「そちらの女性は……?」

「ああ⋯⋯。彼女のことはお気になさらず。ただの立会人です」

「そう」

 参事官を名乗る男の背後に立つ女。名乗りどころか挨拶すらせず、沈黙を続ける美女がいた。

 セラフィーナは頭を働かせる。秘書官のように装っている。けれど、飛び抜けて容姿端麗な女性だ。雰囲気は皇帝が引き連れている女官達と酷似している。

 皇帝に仕える宮廷関係者だと容易に想像がついた。

「いまさら敗戦国の女王に何を遠慮するのですか? 私に気を使う必要はありません。脅迫なら鈍感な私にも分かるよう脅してください。しかし、交渉ならちゃんと説明してください。嘘偽りのない本音で、話し合いましょう」

 参事官は言葉に詰まった。舌戦は得意分野だ。しかし、それゆえに本音を語り合うのは苦手だ。

「ごほん。話が早い。私は帝国宰相ウィルヘルミナ・ウォン・ナイトレイ閣下の名代として参ったのです」

 メガラニカ皇帝には3人の皇后がいる。三皇后で随一の権力を握り、実質的なメガラニカ帝国の支配者。その人物こそ、帝国宰相ウィルヘルミナであった。

「⋯⋯ウィルヘルミナ宰相の真意をお聞かせ願えますか?」

「我々はセラフィーナ女王が、皇帝陛下の王妃となることを望んでいません。既婚者であるセラフィーナ女王が皇帝陛下の妃となるには、ガイゼフと離婚する必要があります。そこで、離婚を拒絶し、ガイゼフとの関係を維持していただきたい」

「なるほど。理解できましたわ。軍務省と仲が悪いのですね……? 帝国元帥の邪魔をしているのが、貴方達なのですか?」

「ええ。隠すつもりはありません。軍務省は女官と結託し、貴方を王妃にしようとしている。しかし、我々は大反対なのですよ。異邦の王妃など論外です。家族を深く愛されているセラフィーナ女王にとっても不本意でしょう? 我々は利害が一致する者同士。協力できます」

「失礼ですが、都合よく私を利用しようとしているのでは?」

「失礼なんてとんでもない。都合よく利用しようとしているのは、紛れもない事実」

「⋯⋯はっきり言われるのですね」

「協力とは互いに利用価値がなければ、成立しない関係です。私達はアルテナ王国の存続を望んでいます。立場は違えど、お互いの目的は同じ。軍務省はアルテナ王国の併呑を考えているようです。しかし、それではまさしく侵略そのもの。まったく困ったものだ。野蛮極まる」

「私がウィルヘルミナ宰相閣下に協力すれば、アルテナ王国の存続を認めてくださる。そのように解釈してよろしいですか?」

「理解が早くて助かります。我々を信用してください。手土産というには不謹慎ですが、これから行うリュート王子の火葬に立ち会われませんか?」

「⋯⋯リュートの火葬?」

「ええ。その通りです。貴方は私に本音を語れと言われた。一国の国主に願われたのであれば、私も心の内を晒す覚悟を決めます。葬儀は手土産です。私達はセラフィーナ女王陛下を利用したい。軍務省が余計なことをして、祖国が荒廃するのは見たくありません」

「私が気にしているのは火葬の件です。その提案で、私が反感を抱くとは考えないのですか?」

「⋯⋯?」

「たとえば同じ提案を他の誰かが……。いいえ、何でもありませんわ。忘れてください」

 外交官の傍らにいる美女は一言も喋らなかった。しかし、セラフィーナの発言で眉を動かした。

 今のセラフィーナは自分で決めるしかない。何を口にすべきか、何を秘密にすべきか。これまでは誰かに相談して全ての物事を決めていた。これからは1人で戦うしかないのだ。

「⋯⋯私は皇帝から事実上の求婚を受けております。まだ返事をしておりません。けれど、返答は決まっております。私はガイゼフと離婚いたしません。メガラニカ帝国の皇帝に嫁ぐつもりはありませんわ」

「とても正しい判断です。宰相閣下には、セラフィーナ女王が賢明な御方であったとお伝えします。我が国と貴国の関係は、これを機に改善されていくでしょう」

 外交官の男は握手を求めたが、セラフィーナは拒絶した。

「あぁ。失礼。セラフィーナ女王が女仙となられたのを忘れておりました。触れられないのでしたね」

 本来であれば格下の参事官と女王が直接交渉するなどありえない。同格として握手をしてしまったら、自分の劣位を認める所業。だが、そもそも女仙が皇帝以外の異性と触れ合うのは禁忌だった。

「約束通り、息子の葬儀に立ち会わせてくれるのでしょう。連れて行ってくださいますか」

 それはセラフィーナが初めて女王として独り立ちした瞬間であった。

 自分の判断で国益を考え、初めて交渉を行った。内容は唯々諾々と相手に従属するものであったが、セラフィーナは自分の意思で決断した。

「——他にも誰かから取引を持ちかけられたのではありませんか」

 無言だった美女は初めて口を開いた。

「どうにも貴方の態度は気に食わない。何か、指示を受けているのでは?」

「⋯⋯教えれば代わりに何をしてくださいます?」

 女官長ハスキーはリュート王子の弔いを持ち出して、セラフィーナを利用した。しかし、葬儀は最初から予定されていたに違いない。

 ハスキーに対する心証は一段と悪化する。

「さしずめ同じ餌を二回もらった。そんなところですね。小賢しい女官あたりでしょうか……。よろしいでしょう。女王を連れて行ってあげなさい」

 美女は外交官の男に淡々と命じる。最後まで名乗らなかった。

 ◇ ◇ ◇

 セラフィーナは息子の葬儀に出席することができた。

 王子リュート・アルテナの葬儀は、母親として死を意味していた。これからセラフィーナは母親の人格を捨て、一国の女王として決断し、行動を決めていかねばならない。

 今までのように甘い判断は下せない。

 ——私は貴方とアルテナ王国を見捨ててはいません。

 リンジーの言い放った言葉は、セラフィーナの心に深く突き刺さっている。リンジーは「まだ」と言った。「絶対に」とは言ってくれなかった。

(リュートと一緒に死ねていたら、どんなに幸せだったか。いいえ、違う。これこそ自分勝手な我が侭なのですわ。けれど、今は……何もかも投げ捨ててしまいたい⋯⋯!)

 葬儀は王子のものとは、思えないほど質素だった。アルテナ王国側の出席者はセラフィーナのみ。残りはメガラニカ帝国の人間だった。

 アルテナ王国では土葬が主流だ。しかし、メガラニカ帝国は徹底した火葬主義で、骨すら残さずに焼いてしまう。しかし、ずっと城門に吊されているよりはましだとセラフィーナは思った。

 死臭を嗅ぎつけて蝿が集り、腐肉に蛆が湧く。カラスが遺体の尊厳を貶める。凄惨な姿を晒すよりは、灰となったほうが救いだ。

(ごめんなさい。私は母親だというのに⋯⋯。リュート⋯⋯! 貴方を守ってあげられなかった……!!)

 漆黒の喪服に身を包んだセラフィーナは、炎に焼かれる息子の遺体に祈りを捧げた。

◇ ◇ ◇

 大陸歴8年3月24日の夕刻。メガラニカ帝国への出国を2日後に控える中、セラフィーナ女王はリュート王子の密葬に参列した。

 同時刻、メガラニカ帝国の宰相府で動きがあった。

 帝国宰相ウィルヘルミナは、女王セラフィーナを王妃として迎え入れる勅令が下されたと議会に通達した。国民議会および評議会から強い反発を呼ぶ内容であった。一方、勅命の内容を事前に知っていた軍閥派と女官達は、計画の成功に胸を撫で下ろしていた。

 ——蠢動していた者達にとっても予想外の出来事があった。

 勅令に付随する形で、宰相府は「女王セラフィーナは皇帝の求婚を強く拒絶し、勅令は実現性を欠く」と発表した。

 皇帝が下した勅令は「セラフィーナを王妃として迎え入れる」。勅書の文面も同様の記載であった。

 これは「婚儀の要請」であって、求婚を受け入れるかどうかの決定権はセラフィーナ女王の自由な意思に委ねられている。

 帝国宰相と神官長は勅令に抗えない。しかし、求婚された当人が拒絶しているのなら、無理強いはできない。そんな言い分を持ち出した。

 本国の女官総長ヴァネッサは、宰相府の公式見解を受けて、速やかに帝国元帥レオンハルトに発表内容を伝えた。思わぬ反撃をくらった軍閥派であったが焦りはなかった。

 勅書は依然として有効だ。女王が皇帝の子供を産めば、ガイゼフ王との婚姻関係は破綻したも同然。セラフィーナの意思を砕いてしまえば、帝国宰相の小賢しい政治工作も無駄に終わる。

 時間稼ぎにしかならないと判断した。

 レオンハルトに誤算があったとすれば、それはリンジーの入れ知恵であろう。アルテナ王国側も策を巡らせようとしていた。

 帝国と王国、各陣営の思惑が渦巻く中、息子の葬儀を終えたセラフィーナは、ベルゼフリートが滞在する貴賓館に呼び出された。

 太陽は地平線の彼方に沈み、夜伽の時間が訪れようとしていた。

 喪服のドレスを着たまま、帝国の女官に連れられていく哀れな女王の姿を、白月王城の使用人達は黙って見ているしかなかった。

 昨晩、セラフィーナの寝室をベルゼフリートが訪れ、一夜を過ごしたことは城内で知れ渡っている。今夜の出来事についても、いずれは噂が流れる。

 ——しばらくすれば、噂は城下に広がる。いずれはバルカサロ王国に逃れた夫と娘は母の不貞を知る。


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