2025年 1月16日 木曜日

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【204話】アルテナ王国の高貴なる血筋

NOVEL亡国の女王セラフィーナ【204話】アルテナ王国の高貴なる血筋

 太陽が地平線の彼方に沈んでいく。さざ波が押し寄せる砂浜は、鮮やかな夕焼け色で染まっていた。

「⋯⋯⋯⋯」

 うつ伏せのセラフィーナは強張った肢体をほぐし、背面の仕上げに取り掛かる。

 全身を余すところなく陽光に晒し、艶肌を汚していく。肌焼けを促進するサンオイルを塗り込んだ皮膚は、効率良く太陽光を吸収し、純白の媚肌を焦がしていった。

 ――けどの浸食が拡がる。

 荒淫の余韻による高まりとは少し違う。日焼けで負った軽度の火傷はヒリヒリと痛む。数日後には火傷の赤みが治まり、色素が沈着して小麦色に実るだろう。褐色肌の美女にセラフィーナは変貌しようとしている。

(そろそろ頃合いかしら?)

 セラフィーナはむくりと体を起き上がらせた。

 オイルで湿った表皮は陽光で輝く。股間に茂った黄金色の恥毛を見下ろす。つい先ほどまで交合で酷使していた恥部は濡れている。

「⋯⋯⋯⋯」

 妊娠済みのオマンコにたっぷり注がれた特濃の精液。愛液混じりの白濁液が垂れていた。

「はぁ⋯⋯♥︎」

 男根が突っ込まれていた肉壺は極太の形状をしっかり記憶し、膣道にはポッカリと大穴が開いている。愛液で濡れた恥毛を爪先でより分けて、セラフィーナは流れ出た精子をすくい取る。

「あ~ぅ♥︎ んっ♥︎ んれろ♥︎ じゅるぅりゅうぅ♥︎」

 いやらしく舌を突き出し、指で擦り取った精液を舐めた。

 精子を美味しそうに頬張る。その様子は淫魔族そのものだった。

 ベルゼフリートに本物のセックスを教え込まれてから、淫母の本性は隠しきれなくなった。より淫乱に、より淫奔に、淫欲のままに生きている。

(苦味、エグ味、独特の塩っぱさ。そして、ほんのり甘い味⋯⋯♥︎ 美味しい。陛下が仰っていたわ。私の先祖にはウィルヘルミナ宰相のようなサキュバスが板に違いないと⋯⋯。精飲で充足感を覚えるのも、性奴隷に最適な肉体も、きっと血脈に宿る先祖の遺伝なのでしょう)

 ベルゼフリートとのセックスが終わってから、セラフィーナは無口になった。心中はドス黒い感情で満ちていた。

(ふふっ♥︎ 自分の醜い本性は自覚しているつもりでしたわ。でも、私は思っていた以上に⋯⋯。くふふっ。悪い女で、最低の母親⋯⋯。まさかこんな俗悪な嫉妬心をヴィクトリカに向けてしまうなんて。決別を言い渡したあの時よりもずっと深く⋯⋯。私は娘を嫉んでいるわ)

 恋仇のウィルヘルミナに向けていた対抗心よりも強く燃え上がる嫉妬心。血の繋がった実娘だからこそ、漆黒の感情が荒ぶった。悔しさで指先の爪を噛んでしまう。

(ヴィクトリカが産んでしまった。あぁ、どうしてかしら? よりにもよって男子⋯⋯! アルテナ王家の男子を⋯⋯!! 皇帝陛下の子胤で⋯⋯!! 私が先に産むはずだったのに!!)

 初孫の生誕を喜ぶ気にはなれなかった。ベルゼフリートに心を奪われる前であったのなら愛娘の子宝を祝福した。だが、今となっては状況がまるで違う。セラフィーナの愛情はベルゼフリートに向けられている。

 海辺で無邪気に遊ぶ幼帝を見つめる。セラフィーナの身体を辱め、心を塗り潰した男。これまでの人生で築いた全てを捧げた少年。

 セラフィーナの心はベルゼフリートのモノになった。しかし、ベルゼフリートはセラフィーナのモノにはなっていない。

(寵姫の地位を盤石にするのなら、公妃くらいにはならなければダメかもしれませんわね)

 彼はメガラニカ帝国の皇帝だ。政治的にはお飾りといえど、大国の頂点に立つ大君。後宮で暮らす数多くの美女を侍らせ、お気に入りの寵姫は両手の指で数え切れぬほどいる。

(この状況⋯⋯。とても不味い気がしますわ。冷静になって立ち回らなければ⋯⋯。メガラニカ帝国がいち早く性別を把握したのは、アルテナ王家の男子に利用価値を見出しているからですわ)

 セラフィーナの胎にも赤子は宿っている。だが、産まれてくるのが男子とは限らない。最初に生まれたのは三つ子の三姉妹だった。

 アルテナ王家は女系の一族で男子が産まれるのは珍しかった。

(アルテナ王家の男子⋯⋯。息子のリュートが帝国軍に処刑された一年前、唯一の男性王族は絶えてしまったわ。そもそも軍閥派はバルカサロ王家の血が混じった王子を排除したかったはず⋯⋯。反乱の旗手として中央諸国に担がれかねないから⋯⋯)

 アルテナ王国とバルカサロ王国の分断は講和条約の大前提だった。

 軍閥派は賠償金や領土割譲よりも、リュートの処刑を強く求めた。その裏には情報将校のユイファンがいたとセラフィーナも勘付いている。

(本来、ベルゼフリート陛下と結ばれるのはヴィクトリカのはずでしたわ)

 両陣営の大誤算は王女ヴィクトリカが担うはずだった役割を女王セラフィーナが担っている現状だ。娘に逃げられたから、母親を孕ませた。

 偶然が重なり、セラフィーナはベルゼフリートと契りを交わした。

(ヴィクトリカは今や反帝国の急先鋒ですわ。アルテナ王家とバルカサロ王家の血筋⋯⋯! 私の胎から産まれた娘⋯⋯! 地位を否定しても、出生までは否定できませんわ)

 政敵となったヴィクトリカが男児を出産した事実。娘に先を越された母親の心は醜く荒れきっている。

 気付けば噛み締めた指先に血が滲んでいた。

(ベルゼフリート陛下のお気持ちは⋯⋯? ヴィクトリカが産んだ御自身の息子をどう思っているのでしょう)

 あらゆる騒動の中心にいるのはメガラニカ帝国の幼帝だった。

 セラフィーナとの情事を終えたベルゼフリートは、ビーチの浅瀬で戯れていた。宮中の色事に染まった皇帝は、年相応の幼童らしさも兼ね揃えている。黄葉離宮の側女達を遊び相手にして楽しげだ。

 元一級冒険者の妊婦達は、ボテ腹の肉体で軽やかに動き回っている。

 一人だけぎこちない動きの側女がいた。犬の耳と尻尾を海水で濡らしたリアは、緊張で動きがぎこちない。ベルゼフリートに抱き付かれたリアはひっくり返りそうになった。

 海中なら尻もちをついても怪我をすることはないだろうが、ルイナとアリスティーネが駆け付けて支えてあげていた。

(ベルゼフリート陛下が妊娠させた女は沢山いますわ。昨年の夏、ヴィクトリカを孕ませたのは単なる気紛れ⋯⋯。そう信じていいのかしら⋯⋯?)

 日が沈みかけている。業を煮やした女官総長ヴァネッサと警務女官達は、暗くなる前にベルゼフリートを陸へ連れ戻そうと、メイド服が濡れるのも気にせず、海に突き進んでいった。

(陛下の真意はいずれ確かめるとしましょう。まずは与えられた仕事の対処ですわ)

 今晩の夜伽役は黄葉離宮の女仙達が務める。愛妾セラフィーナと側女達が総出で性奉仕を行う。忙しくなる前に相談を済ませておきたかった。

「貴方はどう思う? ロレンシアの率直な意見を聞かせてほしいわ。旧帝都ヴィシュテルの復興計画と冒険者組合からの提案⋯⋯。ヴィクトリカが産んだ男児⋯⋯。世の動きは激動ですわね」

 セラフィーナは呼び寄せたロレンシアにあらましを伝える。そのうえで問いかけた。

 帝威に屈し、自分と同じように祖国を裏切って一人の少年に恋した元女騎士。ロレンシアはセラフィーナの心情に誰よりも共感できる臣下だった。

「ヴィクトリカ様の御出産については、こちらからできることはありません。相手の出方を待つしかないと思います。男児が生まれた件、表沙汰にはなっていません」

「そうですわね。帝国の新聞では一切報じられていませんでしたわ。ベルゼフリート陛下もウィルヘルミナ閣下から聞くまでは知らなかったみたいです」

「産まれた男児の父君はベルゼフリート陛下です。秘密出産をなさったのでしょう。妊娠していた事実は知られていたはずですが、経緯は伏せられておりました」

「明かせるはずがないでしょう。反帝国の旗振り役がメガラニカ皇帝の赤子を孕んでいたなど⋯⋯。しかし、教会の信徒である以上、堕胎は許されませんわ」

 セラフィーナの黄金髪が海風で舞う。邪悪な女王の笑みは上手い具合に隠れた。アルテナ王国は教会の信徒が多い。無垢の赤子を殺すのは大罪。意図せぬ妊娠であろうと、敬虔な信徒の女は産まねばならない。

(私やロレンシアもそうでしたわ。身籠もったばかりのころ、まだ自分の本心に向き合えなかったときは悩ましかった。けれど、今や⋯⋯♥︎)

 真紅の長髪が突風でなびく。凜々しかった女騎士は、すっかり若妻の母性愛で満ちた顔付きになっている。椅子に腰掛けた巨孕の妊婦は、専用の搾乳器を装着し、超大化した巨乳からミルクを吸い取る。母乳の分泌量が著しいせいで、一日に三回は搾らなければ乳房が腫れてしまう。

「泌乳の頻度が増しているわね。若い身体が羨ましいわ」

「肉体改造による影響だと思います。ショゴス族十人分の寄生卵子を抱えているせいです。女仙でなければ子育てで大忙しでした」

 搾乳はロレンシアの日課だった。セラフィーナとの会話が一段落する頃には、空のガラス瓶が母乳で満たされた。

 発達した乳腺は驚異的な速度でミルクを生産する。セラフィーナをも凌駕する乳房の重量は、鋼鉄製の騎士鎧と同等の重みがある。

 細身で俊敏に動き回れた身体の感覚は忘れてしまった。肥えた淫体のロレンシアが、速剣を振るう精悍な近衛騎士だったのは過ぎ去った栄華だ。ここにいるのは皇帝の寵愛を欲する女仙の一人。

 側女のロレンシアは己の考えを包み隠さない。同類たる愛妾セラフィーナに提案する。

「今はヴィクトリカ様のことは忘れてしまうべきです。むしろセラフィーナ様がお考えになるべきは、旧帝都ヴィシュテルの復興計画です。とてつもない額の費用が必要となります」

「冒険者組合を信じるべきかしら?」

「植民の第一陣に冒険者を派遣するのは良いアイディアだと思います」

 旧都ヴィシュテルの復興はメガラニカ帝国の悲願だった。死恐帝が鎮まった後も魔物の住処となるなど、忌み地扱いだったが、大妖女レヴェチェリナの事件が解決し、ついに復興計画は始動した。

「セラフィーナ様。確認したいのですが、復興費用の全額をアルテナ王国が負担するわけではないのですよね?」

「ええ。皇帝陛下の仰るところによれば、宰相府は増税で費用を捻出しないそうですわ。復興費の六割は、帝国の予備費や帝嶺宮城の宝物庫にあった財物の売却益をあてるそうです」

 帝嶺宮城ていれいきゅうじょうの宝物庫に入ったセラフィーナは、山積みの金銀財宝を目撃していた。

「そして二割は帝国貴族や大商人、民間からの借り入れ。残る二割が冒険者組合の負担額ですわ」

「冒険者組合の負担額が単独で二割ですか? なるほどです。金貨一千億枚以上の費用が⋯⋯。ララノア達から冒険者組合の懐事情を聞きましたが、そんな大金を用意する資金力はないはずです」

 メガラニカ帝国の冒険者組合では、とても負担できない大金である。そこで出資者として名指しされたのがアルテナ王国だった。

「逆立ちしたって帝都の冒険者組合は復興費を捻出できませんわ。アルテナ王国の国王夫妻が協力しなければ、この復興計画は頓挫しかねない。そういうお話だと認識していますわ」

 アルテナ王国が直接関与するのではなく、冒険者組合を経由して旧帝都ヴィシュテルの復興に投資する。莫大な資金を投入し、復興後に利益の回収ができれば、その見返りは大きい。だが、再建が順調に進むかは未知数だった。

 帝都がアヴァタールに移り変わって、五百年以上の歳月が過ぎている。遷都を主張する者はごく少数の夢想家だけ。今後もアヴァタールが帝国の首都であり続けるのは明らかだった。

「軽々しく動かせる金額ではありません。特に今のアルテナ王国は建国以来の動乱期にあります」

「その言い振り、私を気遣ってくれているのね? 言われずとも、重々承知しているつもりよ。私に対する信頼はドン底。臣民の求心力が落ちていることはよく分かっておりますわ」

「私に対する評価も似たようなものですよ。しかし、戦争終結後、国家が東西に分断されて国力は半減しています。この点は軽視できません」

「一日も早くアルテナ王国を統合しなければなりませんわね。穀物地帯は私が支配する西側にあるけれど、東方街道の商業路が使えなくなったのは痛いわ」

「今年から主立った交易路が閉ざされ、流通の混乱があったと耳にしています」

 メガラニカ帝国の支配圏に組み込まれた西アルテナ王国は、バルカサロ王国を始めとする中央諸国と距離を置いている。

 長年連れ添った前夫のガイゼフはバルカサロ王家の人間だった。そのため、以前は緊密な関係を維持していた。強引な離婚の代償はそれなりに高く付いた。

「その代わり、メガラニカ帝国との交易は盛んになっていますわ。アルテナ王国の穀物輸出に応える需要が帝国内にはあります。しばらくは帝国経済の恩恵で持ち堪えられるでしょう」

 西アルテナ王国の交易はメガラニカ帝国との取引が主軸になった。戦争経済から脱却したものの、宗主国に首輪を付けられた状態だ。

「一方で反発も⋯⋯。ラヴァンドラ商会の進出が国内貴族の動揺を招いております。セラフィーナ様のお考えをお聞きしたいです」

「依存したくはありません。けれど、中央諸国との関係が絶たれた今、帝都最大の財閥を無下にできないわ。宰相派のラヴァンドラ妃殿下は利益に目聡い御方ですもの。利潤を分かち合えるのなら、心強い味方となってくれますわ」

「ラヴァンドラ妃殿下とは協力関係を?」

「手を取り合える仲ですわ。あの御方は帝国宰相の地位を狙っているのです。上級妃でくすぶり続ける気はないでしょうね。ラヴァンドラ商会は勢いのある大財閥。しかし、新興貴族ですわ。歴史を重んずるメガラニカ帝国では肩身が狭い。そう耳にしています。本当にお気の毒ですわ」

 資源開発では帝都随一の財閥であるラヴァンドラ商会が動いていた。目覚ましい復興の裏側で、併合の動きが加速している。商圏の侵略はその第一歩だ。

「セラフィーナ様は資源開発のお許しを与えられたのですよね?」

「ラヴァンドラ妃殿下は私達の子供を育ててくださっているわ。その御礼よ。返書したのは先週だったかしら。王家の管理地に限ってはいるけれど、鉱脈探しの許可を与えましたわ」

 セラフィーナが産んだ三つ子の三姉妹。三女のギーゼラはラヴァンドラ商会に預けられていた。ロレンシアが産んだ息子ジゼルもラヴァンドラ商会が養育している。

(アルテナ王家の子女とフォレスター辺境伯家の男子。使い道はいくらでもありますわ。しかも、子供達の父親はベルゼフリート陛下なのですから⋯⋯)

 セラフィーナとロレンシアが腹を痛めて産み落とした乳飲み子達。どちらもアルテナ王国の高貴な血筋である。生まれと血統の価値をセラフィーナは知っている。

「メガラニカ帝国は内政に注力したいはず。けれど、必ずいつかは拡大政策に転換しますわ。きっと私達は征服の模範事例モデルケースになるでしょう。ベルゼフリート陛下には女を屈服させる魔性がありますわ」

 セラフィーナは思わしげな言い回しでロレンシアに微笑みを向ける。ベルゼフリートには歴代の皇帝にはなかった悪性がある。

 貞淑な人妻や忠義深き女騎士を染め上げ、虜にする堕落的な魅了カリスマ。セラフィーナとロレンシアは身をもって経験している。

「私が無位無冠の愛妾ではなく、もっと強い権力を宮廷で振るえる立場だったなら、西アルテナ王国の有力諸侯に子女を差し出させて、皇帝陛下に忠愛を誓わせるのだけど⋯⋯。それは先の話ですわね」

 淫悦の味に溺れさせてしまえば、どんな女であろう幼帝に屈する。ある意味、ヴィクトリカが早々に帝国外に出て行ってくれたのは好都合だった。もし女仙となって入内し、宮中で暮らすようになっていたなら、まず間違いなく心変わりしたはずだ。

(私にとって最悪の展開。それはヴィクトリカがメガラニカ帝国側に転向してしまうこと。帝国の敵であればこそ、売国女王と罵られる私にも価値が生じますわ)

 もしヴィクトリカが後宮入りした場合、セラフィーナは宮廷闘争で実娘を負かさなければならない。ベルゼフリートの助力がどちらに割り振られるかは微妙だった。帝国に屈せず、永久に帝国の敵であってくれと、セラフィーナは願ってしまう。

「まだ遊びたいよ。ヴァネッサ。もうちょっとだけ~」

「いけません。夜の海は危険です。約束通り、幕舎にお戻りいただきます。お風呂にも入っていただかねばなりません」

 ヴァネッサに抱えられたベルゼフリートが運ばれていった。黄葉離宮の女仙達も海から上がり、水着に付いた浜辺の砂を手で払っている。

「ロレンシア、私達もそろそろ引き上げましょう」

 日没を見届けたセラフィーナとロレンシアは皇帝専用の天幕に向った。 黄葉離宮の女仙には夜伽という大仕事がある。

 ◆ ◆ ◆

 庶務女官は人数分の湯船を用意してくれていた。

 湯上がりのセラフィーナは日焼けで敏感になった肌をココナッツオイルで保湿してもらった。

 夕餉の準備が始まった時、それまでベッドで爆睡していたアレキサンダー公爵家の眠り姫こと、ブライアローズは撤去された。身内の誰かが引きずって回収したようだ。

 身を清め、腹も満たした。八人の美しい妊婦達は性奉仕用の衣装に着替える。女王、女騎士、武官の娘、冒険者。出自がどうであれ、今宵は皇帝に御奉仕する肉奴隷。後宮ハーレムの一員となった瞬間から、たった一人の主人に忠愛を捧げる。

 砂地に敷かれた分厚い絨毯のうえで、黄葉離宮の女仙は一斉に叩頭する。

 両手、両膝、頭の額を床に擦りつけ、媚尻だけが上がる。媚びへつらう雌犬の姿勢を維持する。獣尾を生やした獣人族の二人、リアとエルフィンは尻尾を小刻みに振る。犬族と狐族に共通する忠愛仕草だ。

 愛妾セラフィーナは皇帝ベルゼフリートの許しを乞う。焦らされること数秒、やっと御言葉を賜り、ひれ伏していた上体を起こす。

 眼前に肉々しい巨根があった。特濃大量の精液を生成する陰嚢には、恥毛が生えておらず、児童の股間に馬の生殖器を無理やり付けたかのようなチグハグ感がある。

「――ちゅっ♥︎」

 亀頭の尿口に接吻する。裏筋を舌先でなぞり、睾丸を皮袋越しに咥え込む。見上げるセラフィーナの卑しい視線が、見下ろすベルゼフリートの眼差しと重なった。

「愛しき皇帝陛下。誠心誠意、御奉仕いたします。破壊者ルティヤの荒魂を私達の身体でお鎮めください。お望みのままにお愉しみくださいませ♥︎」

 海辺に設営された天幕で、八人の妊婦と一人の少年による乱交際が始まった。性悦の饗宴は女仙を瘴気で穢し、皇帝の心身を浄める。

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