大使館でアベルト伯爵と情報交換をした翌日、ルキディスは王都の貧民街を訪れていた。
ルキディスが連れてきた護衛はシェリオンのみ。ユファとシルヴィアは家で留守番をさせている。
シルヴィアが妊婦腹でなければ連れてきていただろう。王都育ちで元警備兵のシルヴィアは王都の事情に精通している。
普段と違ってシェリオンはメイド服を着ていない。シェリオンのような絶世の美女が、メイド姿で貧民街を歩けば噂となってしまう。質素な黒いローブを羽織らせ、顔も見えないようにさせていた。
フードで頭部を覆えば牛の角が見えなくなる。豊満な乳房もローブで身体のラインが隠れるので、そこまで目立たなくなった。
ルキディスもシェリオンとお揃いのローブで素顔を隠す。周りに覚えられたくないので、特徴を現さない格好を心掛けていた。
「ここが貧民街……。思ったよりも人通りが多いな」
夕暮れ時の貧民街は賑やかだった。
空気は汚い。貴族街や平民が住む市民地区と違い、濁ったドブの匂いが漂っている。しかし、王都の一部ということもあり、最低限の秩序はあった。巡回する警備兵の姿があった。
暮らし方さえ覚えれば、格安の家賃で王都に住める。低賃金の肉体労働者が多く住んでいるようだ。
「貧民街にさえ、街灯があるのか。国力の差を痛感してしまうな」
小さなところでサピナ小王国との違いを見せつけられる。
貧困対策に力を入れていたラドフィリア王は、貧民街の全域に街灯を設置した。街灯の先端に付いている結晶灯は、夜になると光り輝いて道を照らしてくれる。
貧民街を明るく照らして何の意味があるのだと貴族たちは不満だった。だが、犯罪発生率の低下という大きな効果があった。
賢王は灯りの有無で、夜間の犯罪発生率が大きく変わると知っていた。だから、犯罪が多発する地区に街灯を設置させた。
「初めて来ましたが……。スラムの雰囲気はどこの国も同じですね」
「たしかに、そうだな」
ルキディス達は今でこそ貴族と同じ豊かな暮らしをしているが、こうした貧民街で暮らしていた時期もあった。
冥王はかつての貧困生活を思い出す。
最初は洞窟暮らしだった。シェリオンとユファに子を産ませながら、食事は自分で森から取ってきていた。野性味のある暮らしが懐かしい。
(毒キノコで餓えを満たしていた日々もあったな……)
人間の街に入り込んでからは、スラムで暮らすことが多かった。昔のルキディス達は、魔物のくせに人間らしい苦労をしながら生活していたのである。
「昔は日雇い労働をしていた……」
サピナ小王国で革命を起こす前、まだ眷族がシェリオンとユファの二人しかいなかった時代の昔話だ。二人の眷属を連れて、ルキディスはエリュクオン大陸を放浪していた。
行き着いた国でルキディスは日雇い仕事に従事し、路銀を稼ぐ。見窄らしい貧乏旅行。だが、嫌な思い出だったとは考えない。
「貧乏だったころ懐かしくもある」
「貧乏……。ご主人様、せめてエリュクオン大陸を放浪していたとき、と言いませんか?」
冥王が日雇い労働をしていたと人間が知ったら、どう思うだろうか。かつてルキディスと一緒に土木工事をしていた労働者も、まさか隣でツルハシを振っていた同僚が、魔物の王とは思っていなかっただろう。
「シェリオンとユファには迷惑をかけてしまったが、あれはあれで楽しかったんだ。ああいう貧乏旅行が、もう出来ないと思うとな……」
「たしかに、そうかもしれません」
生活の変化が良い事とは限らない。
小国とはいえ、国主の地位を手に入れた。暮らしは安定したが、かつてのような自由はない。
仕事に追われる日々だ。貧民街を訪れたのは調査の一環。貧民街には魔女と呼ばれる麻薬の売人がいる。
王立騎士団は麻薬の密売組織を一網打尽にしようとしている。だが、未だに組織の全貌が掴めず、苦労しているそうだ。
「統治機構は優秀だが、縦割り過ぎるのかもな。警備兵、憲兵、王立騎士団、わざわざ三つに分ける必要はないだろう。せめて警備兵と憲兵は組織統合すべきだな……。俺ならそうする」
行政の無駄をルキディスは指摘するが、聡明なラドフィリア王は百も承知だった。賢王の手腕を持ってしても旧態依然とした体制を変えるのが難しかったのだ。
特に憲兵と警備兵は上下関係が強く、無理に統合すれば反発が生まれる。警備兵だったシルヴィアから、そのあたりの事情は耳にしていた。
警備兵は憲兵の従僕的な扱いで、命令ばかりしてくる憲兵を快く思っていない。憲兵も憲兵で警備兵を見下している。
そうしたなかで王立騎士団は国王に仕える騎士。下っ端の警備兵だったシルヴィアは、騎士団の活動についてはよく知らなかった。
「魔女が薬を売っていると言っていましたが、売人は三角帽子でも被っているのでしょうか?」
貧民街の通りにそれらしい服装をしている人物はいない。
「元警備兵のシルヴィアが教えてくれた。アベルト大使が言っていた魔女は占い師だ」
「占い師ですか……?」
「それと、貧民街の警備兵は品性がないそうだぞ。シルヴィアが勤めていた貴族街の支部と違って、貧民街の警備兵は質が悪い。見ている分には普通の勤務態度だがな」
ルキディスは、巡回をしている二人の警備兵とすれ違う。革鎧の制服を着用し、手に長槍を持っている。
ペタロ地区で見かける真面目な警備兵と違って、同僚とのお喋りに夢中だ。しかし、制服に乱れがあったりはしない。外見上はシルヴィアが言うほど荒れているように見えなかった。
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ルキディスとシェリオンは魔女を見つけた。
路上で客引きをしている娼婦に「どこに行けば魔女に占ってもらえる?」と聞いた。すると、娼婦は「銅貨一枚で教えてあげる」と言ってきた。
娼婦の要求通り、ルキディスは銅貨一枚を渡し、魔女のいる場所を教えてもらった。
魔女が店を構えていたのは、表通りから外れた路地裏の奥だった。近くの街灯は壊れている。結晶灯は光を放っていない。
今夜は曇りで月明かりがなかった。太陽が沈むと光源がなくなり、周囲が真っ暗になる。暗がりでは民家の窓から漏れるわずかな光りしか頼りにならない。
「暗いな。ランタンを持ってくれば良かった……」
ルキディスは魔物のくせに夜目が利かない。人間並の視力しかないので、こうも足下が暗いと歩きにくい。
シェリオンは真っ暗闇であっても、周囲を完璧に見通す魔眼を持っている。主人が転んだりしないように暗闇の路地を先導した。
「曲がり角の奥に人間がいます。一人です。近くに他の人間はいません。近辺の建物は倉庫や作業場のようです」
シェリオンの感覚は鋭い。ルキディスはまったく感じ取れないが、シェリオンが言うのなら、その通りなのだろう。腹心の眷族に冥王は全幅の信頼を置いている。
「魔術符は温存したい。だが、出し惜しみはするべきじゃないな」
ルキディスは他の人間が近づいてこないように魔術符を壁に貼り付けた。魔石チョークで六芒星を描き、各頂点に六枚の魔術符を配置する。
暗闇で目が見えずともこれくらいの作業なら、手の感覚だけで行える。
「符陣形成――魔術結界ラビリンテ・ウォークス」
ルキディスは魔術符を得意としている。
発動したラビリンテ・ウォークスは人払いの魔術結界だ。魔術の素養がない一般人は、大火事などの大騒動が起きない限り、結界内に入ってこない。結界が展開中の路地裏を無意識的に避けてくれる。
魔術結界の動力源は、魔術符に込められた魔力だ。魔力が尽きると魔術符は焼き切れて灰となる。
下準備を終えたルキディスは、魔女が待っているだろう曲がり角の向こうへと進んだ。
「――いらっしゃいませ」
路地裏の奥にいたのは、小柄な赤髪の少女だった。
小さな机の上に水晶玉を置いている。水晶玉は僅かに発光していて、路地裏を照らす唯一の光だ。
シェリオンの言っていたとおり、一人しかいない。
「ここで面白いモノが買えると聞いた」
「面白いモノ……ね。面白いかどうかはその人次第じゃない? アタシは楽しいモノだと思うわ」
ルキディスは相手の警戒を解くために、被っていたフードを外した。
「あら、かっこいい人。ひょっとして、貴族街から来たの? 最近はそういう人が多いのよ」
「余計な詮索はするな。俺は金を払う。そっちは商品を渡す。それで十分だろう?」
「商人だったらね。でも、アタシ達は商人じゃないもん。売る相手は、選ぶように上から言われているの。金を渡されて品物を出すだけなら、こんなところで商売なんてしてないわ。まずは自己紹介。アタシは魔女のセリーヌ。よろしく」
セリーヌと名乗った魔女は、まだ幼い少女だった。大人びた口調で話そうとしているが年齢は十二歳前後。ルキディスは匂いで分かった。
女性というよりは女子、大人ではなく子供だ。ルキディスもこんな幼い子供が薬物の売人だとは想定してなかった。
「売るのに何か条件があるのか?」
「大正解。一見さんお断り。初めてのお客さんには売れない決まりになってるの。だって、貴方が王様の飼っている犬だったりしたら困るじゃない」
王立騎士団が動いているとセリーヌは知っているようだった。
「次に来たときは売るってことか?」
「お客さんとして相応しかったらね。まずはお兄さんの名前とか、職業とか、そういうのを教えて。お客さんになれるかは後日連絡するから。私達からの連絡がこなかったら、縁がなかったってこと」
「思ったよりもしっかりしている。貴様のような子供に売人を任せる組織にしては慎重だな」
「失礼な男ね。アタシのこと、子供扱いしないで! 客扱いしてあげないよ?」
「その容姿で凄まれてもな……。まあいいさ。暇つぶしには持ってこいだ。俺が信頼できる客か、確かめてみるといい。――セリーヌ、俺とお喋りをしよう」
ルキディスは〈誘惑の瞳〉を発動させる。警戒心が強そうなので、「信頼感」を与えようとした。だが、セリーヌの瞳術を弾いた。
「……ダメよ。まずは名前と職業、それと住所を教えて? お話しをするのはそれから。そういう決まりなの」
セリーヌは瞳術の発動に気付いていない。しかし、警戒心を強めていた。〈誘惑の瞳〉は失敗すると、次も失敗する確率が高くなる。
短期間に連続で失敗すると、明確な敵意や不信感を抱かれてしまう。最悪の場合、ルキディスの正体に勘付かれる。
(ガキだと侮った。警戒心が強すぎる……。俺の弱々しい瞳術は効かないらしい)
明確な意思や強い精神があれば〈誘惑の瞳〉は無効化できる。セックスしている女に対しては、確定で成功するが、通常時の成否は相手の精神状態に依存する。
「――貴様は十二か十三だな?」
「何が……?」
「貴様の年齢だ。ひょっとして奴隷なのか? それとも親が売人でその手伝いか?」
「あのさぁ……。質問してるのアタシ、答えるのはアンタ。逆なんだけど? アンタ、本当に客? 買う気あんの!?」
「実を言うとまったくない。ここに来たのは、ストレス発散のためだ」
「はぁ……?」
「俺は嫌いなんだよ……。苦労して耕そうとしている畑に、除草剤を撒かれるようなもんだからな。人間が死ぬのは大歓迎だが、麻薬は殺し方としては最悪なんだ。優秀な人材が失われる」
「なに? アタシに説教? そのために来たわけ?」
「薬物はまさに疫病。薬を売りさばいている売人は、疫病を撒き散らしている害虫だ。排除すべき社会の害悪だと確信しているよ。だが、売人といっても色々ある」
「アンタ、何なの?」
「望まずにやらされている。そうした事情を考慮してやる必要があるだろ? 幸いなことに、貴様は配慮を必要としていないようだ。匂いで身体の痛み具合は分かる。売るだけでなく、自分にも使っているな?」
「……アタシが自分で使っちゃ悪いの?」
不穏な気配を感じ取ったセリーヌは、ポケットの中に入れてある護身用の道具を取り出そうとする。
「悪いさ。生命は創造主が与えた恩寵。自己の行動で生命を害するのは戒律違反だ」
目の前にいる黒髪の美青年は、薬を買うような人間に見えなかった。しかし、麻薬の取締官とも思えない。もっと異質で不気味な存在だと感じた。
「冷やかしなら帰って……」
「一人で商売をしているのは何かあったとき、すぐ逃げられるようにするためか? さしずめ足下の地下水道にでも逃げ込むんだろうな」
「…………」
セリーヌの小さな矮躯でしか通り抜けられない細い側溝があった。いざというときの逃走経路だ。
「地上での追いかけっこでも、この辺なら地の利のある貴様のほうが有利だ。一度逃げられれば捕まえるのは難しい。――もっとも、ここまで近づいてしまえば、逃しはしないがな!」
「…………ッ!!」
セリーヌは逃走を決断する。ルキディスから明確な悪意が発せられるのを感じ取った。
ポケットの中に閃光玉がある。紐を引っ張れば激しい閃光が炸裂する非殺傷武器だ。
強い光は目眩ましとなって、相手の視界を奪ってくれる。しかし、セリーヌは閃光玉を使用できなかった。
その前に自分の視界が真っ暗になったからである。
「——ぎゃッ!?」
セリーヌが動くより前に、シェリオンの鉄拳が顔面に叩き込まれた。頭蓋骨が潰れないように手加減された一撃であるが、いきなりの不意打ちである。
セリーヌは何をされたか理解できないまま仰向けにふっ飛ばされた。
「シェリオン……? 殺してないだろうな……?」
「加減はしたつもりです。ですが、軽かったので殴り倒してしまいました」
「加減したつもりじゃ駄目だぞ……。薬物の売人は死んでもいいが、セリーヌは女だ。死体だと苗床にできない。生け捕りが望ましい」
シェリオンの鉄拳で殴り飛ばされたセリーヌは、血塗れの鼻を手で押さえた。
「ほう。良かった。生きてはいるようだな」
眷族であるシェリオンが本気を出せば、頭部が爆裂四散していただろう。シェリオンなりの手加減のおかげで、セリーヌは鼻血を流す程度の負傷で済んでいる。
脳震盪で気絶しなかったのは偶然だ。それくらいキツい一撃だった。
「ふざけんなっ……! いきなり何すんのよ!!」
「意識もしっかりしている。前に一度、シェリオンは勢いで殺してしまったことがあったから心配したぞ。騒がれると面倒だ。シェリオン、セリーヌを大人しくさせろ」
シェリオンは片手でセリーヌの華奢な肉体を持ち上げる。
「叫んだら殴り続けます。――顔面を」
叫べるはずがない。なぜならシェリオンはセリーヌの首を掴んで持ち上げているからだ。
首をギリギリと締め上げる。セリーヌは声を上げられない。首の血管を塞き止められ、顔面が真っ赤になっていった。
「っんぁ……! ぁがぁぁ…………!!」
じたばたと抵抗するが無駄な行為だ。シェリオンはセリーヌの衣服を素手で千切り、剥ぎ取っていく。
「ぐぁっ……ぁ……やめっ……!」
セリーヌはあっという間に靴下と靴しか履いていないに姿された。裸体にひん剥かれる。
セリーヌの肉体がまだまだ未成熟だとよく分かった。肋骨が薄らと浮き出ており、胸は無乳に等しい真っ平ら。
実際、セリーヌは十二歳になったばかりの少女だった。
「痩せすぎだろ。ちゃんと食べてないな……」
ルキディスはセリーヌの裸体を貧相と酷評した。
着ていた衣服を剥がれたセリーヌは、やっとシェリオンの首絞めから開放される。壁に手をついて、呼吸を再開するが、酸欠状態はすぐに解消されない。
肺の中に新鮮な空気をいれて、少しずつ体内の酸素を回復していく。
「ぜぁはぁ……ッ! はあ……ッ!!」
セリーヌは気絶する一歩手前まで首を絞められた。逃げ出そうにも、酸欠の身体は言うことを聞いてくれない。呼吸が落ち着くまで、走れそうになかった。
それにセリーヌは服を剥がれて全裸だ。シェリオンは恥部を隠していた下着をも破り捨ててしまった。
「アンタら……! よくもやってくれたな……! アタシに手を出してただで……すむ……と……組織が……」
少女の強がりは、あっけなく崩された。
シェリオンが右腕の拳を振り上げたのだ。その目に憐れみだとか、情けといった感情はない。屠殺場で家畜を殺す係の人間は、きっとこんな目をしているのだとセリーヌは思った。
叫んだら殴るというシェリオンの言葉は、嘘偽りが含まれていない。それでもセリーヌは勇気を奮い立たせて、小さな声で反抗する。
「アタシに手を出したら、絶対に組織が報復する。馬鹿なことしたね……」
「ここで起こったことを、組織に伝える奴がいればの話だな」
セリーヌはルキディスに唾を吐きつけようとしたが、それを看過するシェリオンではない。
「――はぎゃぁあっ!」
唾を吐き出す前に、シェリオンの鉄拳制裁が放たれる。頬に一撃をくらったセリーヌは、殴られた勢いに耐えきれず路地の壁に叩きつけられた。
「おいおい……。大丈夫なんだろうな? ヤバい音がしたぞ」
「さっきよりも弱めです」
殴られたセリーヌは、壁を支えにしてなんとか持ちこたえた。
血の混じった唾を飲み込む。抵抗すれば容赦のない暴力が振るわれる。反抗的な態度をとるのは損だと理解した。
セリーヌは貧民街育ちの孤児だ。どんなに理不尽でも、強者に屈服することが長生きするコツだと知っている。納得ができなくても、そうするしか弱者は生きていく道がない。
(暴力バカ女と違って、あの男はアタシを殺さないようにしているみたい。それに服を脱がされたってことはアレが目的でしょ。あぁ……もうぅ……最悪よ……!)
まだ毛も生えていないセリーヌのオマンコは怯えていた。未成熟ではあるものの、女としては機能する。
これからされるであろう行為をセリーヌは分かっていた。
(どうせやるなら金を払えよ。もう……! マジでやってられない……。服も破られちゃったし!)
セリーヌは鼻から出ている血を手で拭う。鼻孔の奥が深く傷つき、鼻血が止まらなかった。
「――痩せていようが、幼かろうが、雌は雌だ。俺のために使わせてもらおう。薬物を撒き散らす害虫掃除もできて一石二鳥だ」
ルキディスはセリーヌの赤髪を掴んで身体を壁に押し付ける。
「くそがっ! この変態やろ、んぎゃぁ!」
セリーヌの顔面を壁に叩きつけた。売人とはいえ、相手は幼い少女だ。普通の人間なら暴力の行使をためらう。しかし、ルキディスはためらわない。魔物だからだ。
「アタシみたいな子供相手にしか勃たないってわけ? あぅっ……! んぁっ……!?」
ルキディスはもがいているセリーヌの背後から、膣穴に指を挿れる。
幼い身体ではあるが、生殖能力があると膣液で判断した。膣の具合は悪くない。こんな状況にも関わらず、セリーヌの身体は陰茎を受け入れる準備を整えている。
(痛いっ……! 乱暴に指を突っ込みやがって……!! ロリコンの変態男……っ!!)
膣口は濡れていた。度重なる暴行でセリーヌは生命の危機を感じ、そして自分を襲っている男が、これから何をしようとしているかを認識できていたからだ。
人間は本能的に死を恐れる。もし相手が陵辱目的で襲っているのなら、暴れて殺されるよりは、我慢して暴虐に耐えるほうが生存率は高い。
(……犯される……! ここで私とヤるつもりなんだ……!!)
セリーヌとて貧民街で生まれ育った人間だ。強姦は珍しくない。しかし、自分が事件の被害者になるとは思っていなかった。
薬を売る魔女となったセリーヌは、麻薬組織の保護を受けている。荒くれ者であっても、セリーヌに手を出さなかった。
末端とはいえ構成員であるセリーヌに危害を与えるのは、組織への敵対行為だ。
(ほんと、最悪の夜! ヤりたいなら、連れている暴力女にやらせればいいじゃない……!! くそっ! くそっ!! 指で弄くってくるっ!!)
セリーヌは心のなかで悪態を吐く。その間、ルキディスは指でセリーヌの膣をクチュクチュとかき混ぜていた。
「子供にしか発情できないロリコン野郎! 絶対に報復してやるから覚悟してなさい。泣いて懇願したって、アタシはアンタを許さゃ……んゅうぅッ!?」
指とは違うモノがセリーヌの膣道に押し入ってくる。
(あぅっ! なにこれ? 熱いっ……!? 挿れられた……!? うそ……っ! こいつのオチンポ……でかすぎるっ……!! こんなの無理やり突っ込まれたら……! やばっ……裂けちゃうぅう……!!)
ルキディスは極太の男根をセリーヌの小さなオマンコにねじ込んだ。はち切れそうなくらいに膣穴が開大し、セリーヌは苦悶の声をあげる。
(あぁ……あぁっ……! 腰が砕けるっ……!! やばいっ! こいつの……やばいぃいっ……!!)
立ちバックで犯されるセリーヌは、腰をオチンポで持ち上げられ、つま先立ちになる。ぎちぎちになったセリーヌの膣は挿入された肉棒を締め上げた。
「ませたガキだな。既に貫通済みとは……。まあ、生娘じゃないからすんなりと入った。少々狭いが悪くはないぞ。ガキ扱いするのは失礼だったかもな。振る舞いを改めてやろう。こうして俺の雌になってくれているわけだしな。喜べ、雌に対する最低限の礼節は、尽くしてやる」
恥毛すら生えていない幼女の膣口に、強姦魔は根本まで男根を突き刺した。
「んゅぁぁっ! うぁっ、痛いっ! 痛いっ! 裂けるっ!! いやぁぁぁぁああああ……!! いっ! いぎぃっ! おっ、おおっ……おぉぅ……!!」
強引に最奥まで亀頭が入り込む。巨大な亀頭が、セリーヌの子宮口を押し上げて内蔵を圧迫する。
(……入ってる……オチンポ……オマンコの中に入り込んでる……。動き出した……。オマンコの奥♥︎ 掻き混ぜられる……♥︎)
セリーヌは耐えるしかなかった。どんな屈辱を受けても耐える以外の選択肢がない。こんなところで助けを呼んでも誰も来ないだろう。むしろ来られたほうが困る。
「あぁっ♥︎ あぁぁっ♥︎ んんぁっ♥︎」
今、誰かが路地裏に入ってきたら、ルキディスと繋がっているのを見られてしまう。しかも、セリーヌは全裸だ。
「う、うごかすなぁっ……あぁっ……!?」
人が滅多に来ない路地裏とはいえ、こんな場所で強姦してくる男は頭がおかしいとセリーヌは思った。
(こいつのオチンポ、デカ過ぎぃ……! きつぅ……! 痛いのに……痛いのに! 悔しいのに……!! オマンコが感じちゃう……♥︎ 気持ち良くなっちゃうぅ!)
セリーヌは十二歳の少女であったが、初体験は済ませている。金貨三枚で幼女にしか興奮できない変態商人に処女を捧げた。
貧困街育ちのセリーヌは処女膜を破られようと金貨のほうが欲しかった。金が必要になると、その後も何度か身体を売って小遣いを稼いだ。
世の中には、幼い少女にしか欲情できない類の人間がいる。一夜だけ我慢するだけで金貨を得られる。
未成年の売春は犯罪であるが、貧民街ならよっぽど派手にやらない限り捕まることはない。
「んぁっ……! 変態色情魔……ぁぁあっ! ちくしょうぅ……!! 組織の力を使って、絶対にアンタをぶちのめぇ……! んぁあぁっ! ちょ、やめてぇ! もっとゆっくりぃ……ぁんんぁ……!! それはやめ……! やめてぇ……!! セックスで気持ち良くさせてあげるから、もっと優しくっ……! んっ、んひぃいああぁあぁぁ……!」
壁に押し付けられながら、背面立位で犯される。突き上げられる度に、セリーヌの華奢な身体は浮き上がってしまう。
セリーヌはつま先立ちで肉棒の猛攻を受け続ける。ルキディスは乱暴にセックスを続けた。
薬の売人は嫌いだった。しかし、今のセリーヌは種付けされている女だ。
憎悪と愛情がルキディスの中に併存している。ルキディスは、セリーヌの赤髪を掴み上げ、身体を壁に押し付けつ、歪んだ愛情を与える。
「あぁっ……んぁっ……あふぅうっ! あふぅううっ~~!!」
セリーヌは苦痛で顔を歪ませてたが、次第に結合部から愛液の絡み合う音がなりだした。痛みが消え、快楽だけが強まっていく。
「んぐうゅ……っ! ふゅ、ざけるなんぁぁ……! ンあぁッ!! アンタなんかの変態オチンポにィ、負けなぁんんぁぁお……っ! 無理やりなんだから、こんなのぉっ! んお、おっ、おっ、おおおぁぁぉお……♥︎ んぃひっ……♥︎ あんぅううゅぅぅうーーッ♥︎」
暴力的なセックスなのに、身体はお構いなしだった。濁流となって押し寄せる快楽で理性が吹き飛び、狂乱に堕ちていく。絶頂したセリーヌは雌の叫びを上げてしまった。
「絶頂したな。膣穴が痙攣しているのが分かるぞ。小柄だと犯しやすくて助かる」
「出すな……! はぎゅッ……ぅ!? やめてよぉ……んぁうッ! 出すなっ……! ヤるなら外にぃ……っ! 外に出せ……っ!」
ルキディスは突き刺した男根を膨張させる。セリーヌは雌の感覚で、射精が近づいていると分かった。中出しだけは避けようともがく。だが、ルキディスは挿入した男性器を外そうとしない。
「アタシが孕んだらどうする気……んぎぃっ!?」
そればかりか、さらに奥へ奥へと突き上げてくる。セリーヌは膣内射精を防ごうとするが、子宮口には亀頭が食い込んでいた。
「外に出したら種付けの意味が無い。こうやって貴様と交わっているのは孕ませるためだぞ?」
「ふざけんな……っ! アタシが……んぁッ! これでっ……、本当に妊娠したら……んぉんぁっ……! 出すなっ……だすなってばぁああっ! アンタの赤ちゃんなんか作りたく……んあぁああああああぁぁ♥︎」
溶けそうな意識の中で、セリーヌは子宮に精液を注がれているのを感じた。麻薬をキメたときと同じか、それ以上の快楽に呑み込まれる。
「あ……っ、んあっ、あっ……! うそ……ぉ。熱いの……どぴゅどぴゅ入ってる……!! どうして……? なんでこんなに気持ちいいのぉぉ……♥︎」
ルキディスは高濃度の魔素をセリーヌの胎内に放つ。子宮口に直射された冥王の精子は、セリーヌの身体を侵していく。体細胞に溶け込み、冥王の雌専用の子宮に作り変えていった。
セリーヌは自分の子宮が熱くなって、急速に膨らんでいく。冥王の種付けは長かった。一度の射精で全てをやり終えるつもりだったからだ。
「なぁにこれぇ……? おなか……ぱんぱんにふくらんでるぅ……。おぉっ♥︎ んおぉっ♥︎」
射精は一分経っても終わらない。精液を詰め込まれ続けるセリーヌの下腹部はどんどん大きく膨張していった。子宮が膨らんだせいで、腸や胃などの内臓が圧迫される。下腹部が肥大化し、骨盤が軋み始めた。
「はぐぁ……っ! あぎゅぁぁあぁ……! あははははっははは? なにこれ? オマンコがこわれちゃうぅのぉお……♥︎ おかしくなっちゃうぅう……! 気持ち良すぎて、おかしくなっちゃうぅうのぉお……♥︎」
適性を持たない雌が、高濃度の魔素を含んだ精液を注がれてしまうとすぐさま苗床化が始まる。
セリーヌの魂は冥王の汚染で壊されてしまった。瞳は白濁していき、人格が失われていく。
「あんぎゅぁ……。あああ……ぁぁ……。助けてぇ……。誰か……ぁ……。こんなのイヤぁああああ……♥︎」
セリーヌの人間性が断末魔の嬌声を叫ぶ。瞳が濁りきり、腹は弾けそうなくらいに精液で膨れ上がっている。幼い少女の子宮は精液袋になっていた。
「……苗床化ですね。この人間は眷族の器を持っていなかったようです」
「高濃度の魔素を注いでやった。一瞬で苗床化してしまったな。薬物のせいで魔素に対する感受性が高かったのかもしれない。おっと、漏らし始めたぞ」
「おぉ……おぉおぉ……♥︎ おぉぉおぉぉぉ~~♥︎」
セリーヌは不様に小便を垂らしていた。オマンコには極太オチンポが突き刺さったままだ。苗床となった子宮に精子を送り続けている。
「こいつには期待していなかった。苗床化は当然の結果だな。しかし、薬で身を滅ぼすよりは有意義な死だ。俺の子を産んで死に絶えるのだからな」
セリーヌは口から泡を吹き出して気絶した。
意識が戻ろうとも、壊れた自我は戻らない。冥王の子を産むだけの繁殖母体。子宮に詰め込んだ大量の精液で、苗床は下級血族を量産してくれることだろう。
「たくさん子どもを産めるように、もっと腹を膨らませてやろう」
注がれた精液が枯渇する前に卵子がなくなって、繁殖母体は死ぬ。しかし、セリーヌは幼年で子宮内に蓄えている卵子が多い。ルキディスは多めに精子を注入してやった。
「ん……っ♥︎ んっうぅぅ~~っ♥︎」
苗床として完成したセリーヌは淫猥な呻き声をあげる。
さながら極太オチンポの容れ物であった。背後からセリーヌを犯すルキディスは、少女の体躯には似合わない精液ボテ腹を撫でます。
「貴様は赤子が出来ることを恐れていたな。だが、怖がる必要はないぞ。死ぬまで貴様の面倒は見てやる」
ロリ妊婦状態となったセリーヌを放置すれば、ここで魔物の子を産んでしまう。家に持ち帰り、何時ものように箱に詰めてサピナ小王国に送らなければならない。
「――これくらいの体躯なら取り込めるな」
〈変幻変貌〉を使って、ルキディスは自身の肉体を液化させる。セリーヌと身体を重ね合わせ体内に取り込んでいった。
〈変幻変貌〉を使えば、体を入れ物にできる。セリーヌのような少女であれば、体内に収納して隠しておける。
「家に戻るまでは俺の体内で犯してやる」
セリーヌの腹は精液でボテ腹になっているせいで、キディスの恰幅が太めになってしまう。細身のままだとセリーヌの腹が収まらない。
「ふむ。ぎりぎりのサイズだな……」
麻袋にいれて運ぶよりは、こっちのほうが安全だ。だが、体内収納は大人が運べない。しかも、人間を取り込んでいると身動きが難しくなる。体内にいる人間の手足が邪魔になるからだ。
「よし。収まった」
四肢を削いで胴体と頭部だけにすれば、自由に動くことが可能となる。しかし、手足の切断は手間がかかるので滅多にやらない。
「情報を吐かせずに、苗床化させてしまってよかったのです? もうセリーヌからは何も聞き出せません」
シェリオンは後片付けをしていた。剥ぎ取った衣服に特殊な薬剤をふりかけて溶かしてしまう。路地裏に残されているのは、小さな机と椅子、光源となっている占い用の水晶玉だけだ。
「魔女は末端の売人だ。たいした情報は持っていない。情報収集ができるのならそれでもよかっだが、できなくてもよかったんだ。王立騎士団が動いているのなら、いずれ麻薬組織は潰されるだろう。売人の撲滅は騎士の仕事だ」
ルキディスは苗床化したセリーヌを体内で犯し続ける。生意気な薬の売人だったが、今は我が子を繁殖母体となってくれた。
抱いた女は愛でてやるのが義務だとルキディスは思っていた。
「薬の売人が消えたとして捜索願いを出せるはずがない。セリーヌは少し幼すぎた。しかし、子が産める雌だ。産まれる子供は小ぶりかもしれないがな。クックククク……!」
「ご主人様の子胤です。母親が小さくてもきっと立派な魔物を産みます」
「それにしてもだ。魔女というから成熟した女だと思い込んでいた。まさか少女を売人にしているとはな。麻薬を売りさばいている組織は何を考えているのやら……」
「少女であれば切り捨てるのが簡単だからでしょうか?」
「さあな。麻薬を売り捌いている連中の考えなど、知りたくもない」
ルキディスはセリーヌが使っていた水晶玉に興味を抱いた。けれど、すぐ関心を失った。水晶玉は単なる結晶灯でしかなく、特別な道具ではなかった。
「特別な代物ではなさそうだ。これも溶かしてけ。撤収するとしよう。家に帰って、箱詰めの準備をするぞ。ん? どうしたシェリオン?」
「……ご主人様。何者かが我々に接近しています」
「俺達に気づいているか?」
「いいえ。気づいていません。誰かに追われているようです。一人が先行していて、その後ろを複数人が付け回しています」
「ほう。逃げているのか」
「こちらに来ているのは偶然のようです。逃げている人間は、道を把握していません。でたらめな逃げ方をしています」
シェリオンは優れた聴力で、接近する人間の位置関係を正確に把握した。
「おや? 俺の構築した〈人払いの結界〉を踏み抜いた。まだ効果時間は残っていたはずだ。魔術結界を無視するくらい追い詰められているということか?」
「そのようです。どうしますか?」
「離れたほうがいいだろう。売り場から魔女が消えているんだ。俺達が怪しまれてしまう。面倒事に巻き込まれたくない。鬼ごっこをしている連中と出くわさないように先導してくれ」
「承知しました」
「ところで、なぜ追われているか分かるか? さすがのシェリオンでも会話は聞き取れないか?」
「声は聞き取っていますが、内容は不鮮明です。追われているのは若い人間の女で、追っているのは男です」
「……女か? それなら予定変更だ。どんな女が追われているかだけ確かめにいこう。おっと。セリーヌめ。まだ意識が残っているみたいだな」
ルキディスはゆっくりと身体を動かす。内部に取り込んだセリーヌのせいで、関節が動かしにくい。下手に動くとセリーヌの手足が折れてしまう。
(取り込む前に関節を外しておけばよかった……)
今さら気づいても後の祭りである。とにかく転ばないように注意しながら、ルキディスは騒動が起こっている方向に向かった。