美少女作家を名乗り、筋肉強化に励んでいる佐間野隆紀(サマノ・タカノリ)さん。『今はセフレでいいから』が書籍化し、『スキル【絆】が思ってたのとなんか違う。』のコミカライズ企画も立ち上がる中、ボディビル大会を見据えて大胸筋の増強も怠らない。「小説と筋肉だけで生きていきたい」と大志を語る佐間野さんにインタビューした。
【取材:三紋昨夏】
昔から物語を作るのが大好きだった
――創作活動を始めた「きっかけ」について教えてください。
創作活動そのものを始めたのは幼少期からですね。いわゆる、物語を空想するのが大好きな子供だったんです。小学生の頃は落書きレベルの漫画をいっぱい描いていました。小説を書き始めたのは「文字で書くのも面白い」と気付いてからです。
20歳前後の時期に自分は絵よりも文字が向いていると感じて、小説執筆に創作の舵を切りました。小説は一般向けの全年齢作品をずっと書き続け、成人向けジャンルに進出したのは最近です。「ノクターンノベルズ」に投稿を開始したのが2024年の末頃で、それが官能小説の処女作となっています。
――成人向け小説を書こうと思われたのは?
当初は一般向け小説で、ある種のウケ狙いとして性行為の匂わせ描写をよくしていたんです。本番シーンはカットで事前と事後だけを書くという手法で。
ただ、それを繰り返すうちに「相思相愛の成人男女がいたら、致すのは当たり前じゃないか……?」という当然の帰結に辿り着いたんですよね。
それ以来、徐々にエロ描写への抵抗がなくなり、むしろ楽しくなってきました。そもそも抵抗っていうほど抵抗もなかったんですけど。気恥ずかしさとでもいいますか。
ともあれ、現代ラブコメ作品にお色気の要素を持たせようと、エッチな方向に書き進めていったら「エロありのほうが面白いな」と感じ始めました。しかし、読み合い企画に参加した際、持ち込んだ作品に「エロいらんくね?」と指摘されちゃって。全年齢のラブコメ作品だったので、ガチなエロシーンは入れてなかったんですけどね。
――全年齢作品だからこそ、エロが余分な要素と受け取られたのかもしれませんね。
そうなんですよ。全年齢向けの一般作品だから、お色気は不要だと……。ただ、むしろそこで私は「いやでも、でもエロを書きたいねんよな」と改めて自覚し、全年齢の作品に中途半端なお色気を混ぜるのではなく、完全な成人向け作品を書かなければと向かい合いました。
そこで、まずは「ノクターンノベルズ」で異世界ファンタジーのエロ作品を投稿したんですが、これは勢い任せの練習作だったこともあり、完結まで書けませんでした。その反省もあって、次は完結まで書き上げた短編作品を投稿したところ、日間ランキングの1位になりました。フランス書院で書籍化した『今はセフレでいいから』の原点となる作品ですね。
その後、「カクヨム」から移植した作品『スキル【絆】が思ってたのとなんか違う。』のR18版もヒットし、コミカライズ企画を打診され、官能小説で手応えを掴みました。
――ご自身のペンネームに由来はありますか。
由来は滅茶苦茶ややこしいんですけど、アナグラムですね。初期は「邑樹政典(ムラキ・マサノリ)」名義で小説を発表していました。これを因数分解的なアナグラムで変換してます。
元の名義をアルファベットに分解した後、漢字の読み方を別読みしたり、ゴチャゴチャと組み直せば「佐間野隆紀(サマノ・タカノリ)」になるんです。でも、ちゃんと説明したところで「そんなん分かるかい!」ってなると思います(笑)
グヂャグヂャに乱れた感情描写
――専門の活動ジャンルは? 性癖やエロに関する「こだわり」はありますか。
今まで投稿してきた作品ジャンルという意味でなら、異世界ファンタジーと現代ラブコメです。作品全体の数としては異世界ファンタジーが多いものの、「ノクターンノベルズ」では現代エロが多めです。
性癖やエロに関するこだわりは……そんなに無いですね。人気ジャンルや売れ筋の作品を参考にしながら、自分ならどう書くかとトライアンドエラーを繰り返しています。
あえて表現でこだわっているポイントを挙げるなら、“感情描写”かもしれません。エロに限らず、キャラクターの感情がグヂャグヂャにされているのが好きです。
単なる快楽堕ちではなく、ヒロインの心が色々な面で取り乱される。ひょっとしたら、そのあたりが唯一のこだわりかもしれません。自分の作品では感情が振り切れてるキャラクターが多く登場します。怒るにしても、悲しむにしても、感情のエンジンがフルスロットルです。中途半端な感情描写よりは、どこまでも振り切れてるほうが絶対に面白くなると思っていて。
エロシーンそのものは客観的な目線で描写し、どうしたらエロく見えるか、読者がエロく感じてくれるかを考えながら、登場人物の感情を文章に乗せていく。そういう書き方をしています。エロシーンの感情描写ではヒロインに焦点を当てて、男側の感情や台詞は必要最低限しか書かないようにしてるんです。
AVで例えるなら、男優のお尻や後ろ姿を見せられても嬉しくないじゃないですか。
エロ漫画など、どのアダルトコンテンツでもそうですが、私としては竿役を丁寧に書く必要はないと思っていて。小説においてもそれは同じです。一人称視点であっても五感に訴える描写を除いて、男側の内面や感情はエロシーンであまり描写しないように心掛けています。
まあ、気持ちいいとかそういうのは書くんですけど。そこは読者の皆さんにも同調していただきたいところなので(笑)
――「処女作」「代表作」など、思い入れのある作品を教えてください。
思い入れのある作品ですか……。悩みますね。代表作であれば、現在は『今はセフレでいいから』で間違いないですが、一般作品も含めて思い入れが一番あるのは『彼女たちは爛れたい』かもしれません。
「小説家になろう」と「カクヨム」で公開している全年齢向けの作品です。前半にあたるエピソード1では直接的なエロが無いものの、一般向けの括りでは結構エッチな青春物語となっています。
自分なりに良くまとまっていると思うし、自著の中ではお気に入りの作品ですね。カクヨム版だと2000以上のフォロワーが付いていて、今もじわじわと増え続けています。当時の「カクヨム」はエッチなラブコメディが流行していた時期で、わりと多くの読者に刺さったようです。
流行ジャンルが変わり、作品も完結して更新がされなくなっても、読者が増え続けているロングセラーなコンテンツになりました。
まあ、上のほうはもっとすごいんで、あくまで佳作レベルでの話ですけどね(笑)
属性×属性でキャラクター立ち
――作品作りのコツなど、創作するにあたっての「ネタ出し」「企画」はどのように考えていますか?
だいたい新作のネタを思いつくのは、X(旧Twitter)で流れてくる投稿やイラスト、アニメだとか、流れてきた歌、そういう創作物にビビッと刺激を受けたときですね。「自分なら、こういう物語を作る」「このキャラクターがいたら、こういう展開にする」と天啓がくるんです。
物語のパーツ集めというか、属性の掛け合わせに近いです。属性をマッチングさせて、面白そうな組み合わせを探していく。例えば、エロの世界で「ボーイッシュ幼馴染」は定番ですよね。まず「幼馴染」があって、その属性に「ボーイッシュ」が融合されているわけです。
じゃあ、「幼馴染」に「ギャル」を組み合わせたらどうなるか。「ギャルな幼馴染」に変化します。キャラの属性を色々な組み合わせで試行錯誤するんです。
登場人物の属性が決まったら、次は舞台を用意してあげます。
「ボーイッシュ幼馴染」で小説を書く場合、もどかしい両片想いのジレジレ系を書くのか。それともヒロインと主人公は一方的、あるいは両片想いの関係で、あるきっかけで一線を越える展開にするのか。私が書いた過去の作品であれば、幼馴染ヒロインに恋人ができそうになった瞬間、主人公の「誰かに取られたくないっ!」という焦りから物語が始まるみ感じです。
登場人物の属性と行動原理を作り、それに舞台や方向性を与えてあげれば、自然とキャラと物語が動き出します。
プラモデルやジオラマ造りと似ているかもしれません。パーツを用意して組み上げていくというか。プロットは設計図のようなもので、基本的にはそれ通りに組み上げますが、細部の装飾やカラーリングはそのときの温度感に合わせてアレンジできる余地を残しておきます。
もちろん、プロット自体はちゃんと作ります。でないと、着地点が分からなくなってしまうので。色々あって最初の想定通りに執筆が進まなくても、着地点は決まっているのでまったくの別物が出力されることは少ないです。
例えるなら「ガンダムMk-II(マークツー)」を作ろうと思ったら、「サイコ・ガンダム」ができてたみたいな。見た目はよく似たタイプのガンダムだけど、サイズ感がまったく違うじゃないですか。
――な、なるほど! 何となく分かるのですが、ガンダムの知識がゼロなんです( ;∀;)
「東京タワー」を作ろうと思ったら、「東京スカイツリー」が建ってしまった感じですかね(笑)
形と大きさがちょっと違ってしまうのは結構あります。どちらもタワーだけど、サイズが違うやんみたいな。
ただ、タワーを作ると決めたのに「国会議事堂」ができるなんてことはないです。でも、「通天閣」や「エッフェル塔」ならあり得るかもしれません。
文章レイアウトは読者に伝わらない
――執筆で愛用しているツールは何ですか。また、サービスや参考資料など、創作活動で役立つオススメがあれば教えてください。
「Googleドキュメント」を使っています。パソコンでもスマホでも書けるのがいいんですよね。
私は視覚情報に集中力を乱されるタイプなので、あえて文字列が乱れる表示設定にしています。綺麗に整えられた体裁の文章を見ると、逆に意識を引っ張られてしまうんですよね。
小説家の皆さんなら分かってくれる方も多いんじゃないかなぁ……。
私が少し変わっているのは、気になるからこそ執筆環境の文章表示を弄るところかもしれません。
考えてみてください。読者の目線に立ったとき、デバイス次第で表示される行数や一行に収まる文字数は変化するわけじゃないですか。パソコンとスマホでは見え方がまるで違うし、画面サイズだって異なります。
執筆時に見ている視覚情報は、実際のアウトプットと一切関係がない。スマホの画面は文字が詰まるので、行や段落に対するこだわりを捨てることができます。最終的に読み手の環境によって表示は変わるので、そこを気にしても仕方がないと自分を納得させられるんです。
行の流れとか、文字の並びとか、改行のバランスとか、そこに時間と労力を注いでもウェブ小説や電子書籍では、自己満足にすらなりません。
――そこは電子媒体と紙媒体の大きな違いですね。文字サイズだって読者が設定で変えられちゃうんですから。
改行の位置やぶら下がり処理は、電子媒体がない時代であれば意味を持っていたかもしれません。実際、そこにこだわっていた作家さんの話も聞いたことがあります。
ただ、現代のウェブ小説ではほとんど無意味に近いと思っていて。執筆環境のオススメと言えるかは分かりませんが、私のように視覚情報に引きずられるタイプの作家さんはスマホで執筆できるようになると楽になると思います。文章レイアウトの美しさにこだわりを抱かなくなりますから。
最近はパソコンで書いていることも多いですが、一時期はスマホでしか書けない時期もありました。
R18は選択肢が広がる
――これから創作活動を始めようとしている人にアドバイスするとしたら?
もし貴方がエロ小説を書けるなら、さっさとR18に振り切ったほうがいいと思います。
もちろん、エロが書けなかったり、望んでいる作風と異なるなら、ご自身の土俵で頑張るべきだと思いますが、中途半端に全年齢向けの一般作品でエロをやろうとしているなら、R18に振り切ったほうが選択肢は広がります。どうしても画一的になりがちな全年齢と比べて、いろんな需要がありますので。
――沢山の創作者が「ノクターンノベルズ」に墜ちてきてほしいですね。
以前だったら“墜ちる”と表現して良かったかもしれませんが、これからは一概にそうとは言えないかもしれませんよ。
いわゆる全年齢エロがどんどん広がっていって、そこを入口にドドッとR18に客層が移ることもあるかもしれません。
たとえば「ノクターンノベルズ」は異世界モノの需要がとても高い反面、作品数はまだ少なめです。なので、異世界×エロでしっかりした作品を書けば、凄まじい勢いでバズるケースが多々あるんですよね。男性向け作品の読者層が「小説家になろう」や「カクヨム」とかなり重なってきていて、その一方で供給側が追いついてない感じです。
あと、これはエロと関係ないのですが、男性向け作品で商業化を狙うならコミカライズ原作を想定してないとこれから先は厳しいでしょうね。私自身の『スキル【絆】が思ってたのとなんか違う。』がまさしくそうなんですけど、身の回りでもコミカライズ原作として、書籍化の打診をいただくケースが増えている印象です。
今や活字本で売れるのはごく一部の上澄みだけですからねぇ……。
あ、そういう意味ではR18はまだまだ書籍化も活発なほうかな? やはりエロしか勝たんということか……。
小説を書き、大胸筋も鍛える
――今後の目標、目指しているものを教えてください。
先の長い話ですが、いつか小説の収入メインで食っていけるようになることです。
あえて独自性を出すなら、小説と筋肉だけで生きていきたいと思っています!!
――佐間野さんはボディビルもやられているのですよね。ちなみに今はどの部位を鍛えているのですか?
現在は弱点部位の大胸筋を鍛えているところで、2月のコンテストに向けて強化中です!
――最後にメッセージをお願いします。
当面、「ノクターンノベルズ」での作品公開が難しい状況が続きそうです。そこは私の活動を応援してくれている読者の皆さまには申し訳なく思っています。
最近は『今はセフレでいいから』などにかかりっきりでして……。しばらくの間、おそらく書籍化作品の作業が落ち着くまでは、新作の投稿は厳しそうです。精一杯頑張るので、応援していただければ嬉しいです!!
――インタビュー取材にご協力いただきありがとうございました!
佐間野さんのプロフィールと作品をご紹介しています。
読者の皆様、ぜひご覧ください。
【プロフィール】佐間野隆紀さん

美少女作家(!?)です! 著作「今はセフレでいいから」シリーズがフランス書院eブックス様より発売中。その他、コミカライズも密かに準備中。中の人がフィジークコンペティターなので、筋肉の話もします。アイコンはかつてアストルティアという異世界にいたときの近影。小説、漫画原作、筋肉のお仕事募集中です! 気軽にDMください!
◆X(旧Twitter)
https://x.com/matanyori
◆ノクターンノベルズ
https://xmypage.syosetu.com/x9797cm/
【作品紹介】
今はセフレでいいから


僕にはギャルの幼馴染みがいる。
名前は天宮夏希。いつもキンキラの金髪をポニテにした、明るく奔放なギャルだ。
そして、僕と彼女はいわゆる『セフレ』という関係でもある。
ある日、僕らはいつものように夏希の家でセックスに興じていたが、そんなとき、突如として彼女の友人である眞鍋詩織が現れる。
夏希とはまったく別の、どちらかというとクールな印象を覚える清楚系美少女ギャルだ。
予想外の登場に焦る僕だが、なんとそこで聞かされたのは、『彼女の処女卒業を手伝ってほしい』というとんでもないお願いだった。
そして、その日を境に僕の日常はまるで想像もつかない方向に転がりはじめていく――。
スキル【絆】が思ってたのとなんか違う。
大学生、折原キョウスケは若くしてお一人様を満喫する生粋のぼっち愛好家だった。
しかし、そんな性格が災いし、取るに足らない病気であっさりと孤独死してしまう。
せめてこんなことなら、いざというときに頼れる友達くらい作っておけばよかった……。
死の間際、そう後悔するキョウスケだったが、そんな彼に神はチャンスをくれた。
異世界での新たな人生を授けてくれたのだ。
神は転生の最中、キョウスケに世界を混迷から救うことを願い、そのための力を与えてくれた。
その力の名は【絆】スキル――そう、キョウスケが前生で蔑ろにしてきたものだった。
かくして、新たな世界に降り立ったキョウスケの第二の生がはじまった。
今度は人との絆を大切にし【絆】スキルの力を持って世界を混迷から救ってみせる――。
そう心に誓ったキョウスケは、信頼できる仲間を作り、数々の冒険を乗り越えていった。
そして、ついには魔王の領地を目前とするところまでたどり着いたのだ。
いよいよ魔王の領地へと攻め込もうという前夜、キョウスケは今までの冒険に思いを馳せていた。
しかし、そこでキョウスケは仲間たちから思わぬ宣告を受けることとなる――。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
本作は、力不足を理由にパーティを追放された主人公が力をつけて再起を図る冒険ファンタジー成り上がりチートハーレム作品です。
※本作は別名義にてカクヨムで公開している『スキル【絆】が思ってたのとなんか違う。』のR18版となります。また、この度、コミカライズされることが決定いたしました。








